移動や雑魚敵との戦闘などを簡略化し、コマンド選択だけでサクサクと進行するRPG風アドベンチャー |
6月29日に配信を開始した「ボクも世界を救いたい」。株式会社ポイソフト開発のWiiウェアで、同社からリリースされた王様シミュレーション「王だぁ!」と世界観を共有した勇者育成アドベンチャー。あくまで世界観を共有しているだけであり、「王だぁ!」をプレイしていなくても楽しめる。
RPG要素の強いアドベンチャーである本作では、行動は全てコマンド選択により行なう。移動や雑魚との戦闘などが簡略化され、サクサクと進行していくのが特徴だ。
モードは、ストーリーや条件の異なる3つのシナリオが用意されたシナリオモード、シナリオモードで育てた勇者の活躍を見守るシミュレーションモード、シミュレーションモードで利用できる勇者の登録などが行なえる勇者エディットモードの3つ。勇者エディットモードでは、パスワードを使えば他のプレーヤーが育てた勇者を登場できる。また、公式サイトで公開されているパスワードを入力すれば、シナリオモードで登場するキャラクターも登録できる。
Wiiリモコンだけでなく、クラシックコントローラやゲームキューブコントローラでの操作に対応。Wiiリモコンには片手でプレイできるメリットが、クラシックコントローラとゲームキューブコントローラには素早い入力がしやすいなどのメリットがある。
■ ストーリーや条件の異なるシナリオがプレイできるシナリオモード
シナリオモードには3つのシナリオが用意されており、1つのシナリオをクリアすれば、次のシナリオがプレイ可能になる仕組みになっている。1つ目のシナリオ「憧れの勇者」編、2つ目の魔族シナリオ「なにもないセカイ」編は、選択できる種族に制限があり、移動も任意に行なえないがストーリー性が強いゲームになっている。物語を楽しむのに特化したシナリオと言えるだろう。3つ目のフリーシナリオ「勇者になろう!」編はストーリー性は薄いものの、全種族が選択可能で、自由な移動が可能と育成に最も力を注げるシナリオになっている。
種族は人間、エルフ、ドワーフ、魔族の4つがあり、それぞれに特徴がある。人間は全ての能力が平均的。エルフは知力と素早さに長け、魔法や弓矢が得意。ドワーフは力が優れていて、武器を扱う能力が高い。魔族はあらゆる能力が他種族より優れているが、魔王の部下という印象が強く、世間の風当たりがあまり良くない。見た目で選ぶのもいいが、育てたい勇者のタイプに応じて決めるとシナリオがクリアしやすい。
プレイできるシナリオは全部で3つ。それぞれ異なったストーリー、条件でのゲームが楽しめる | 平均的な人間や知力と素早さに優れたエルフなど、それぞれ特徴ある4種類の種族が用意されている | 種族を選んだら名前を入力。特定のものだけだが、漢字を名前に入れることもできる |
1つ目と3つ目のシナリオの目的は勇者に任命されること。任命されるのに重要なパラメーターが名声。名声を上げるには教会に行ったり、依頼をこなしたりすればいい。クリアを目指すなら、名声を上げることに注力しよう。2つ目のシナリオでは最後のボスに勝利しなければクリアできないので、戦闘能力アップを目指すといいだろう。
勇者会に任命されなければ勇者にはなれない。名声を上げるのが近道だ | 教会では戦闘もなく、ノーリスクで名声を上げられる | 人々の要望に応えれば一気に名声を上げられる。勇者らしい行動を心がけたい |
■ コマンドを選択すればすぐに結果がわかる!サクサク進むのが気持ちいい
本作では、フィールド、ダンジョン、街の探索といったコマンドを選ぶだけですぐに結果がわかるようになっている。1つ行動すると、1ターン終了となり、1週間が経過する。どのシナリオであってもプレイできるゲーム内時間には制限があるため、その制限の中でどう行動していくかが重要になるわけだ。なお、道具屋でのアイテム購入、仲間コマンドでのステータス確認、アイテム売却などではターンは消費しない。
行動でターンを消費するのは「フィールドの探索」、「ダンジョンの探索」、「街を探索する」の3つ。「フィールドの探索」は安全に経験値を稼ぐことができ、アイテムを入手しやすいのがポイント。「ダンジョンの探索」は「フィールドの探索」に比べ、多くの経験値とお金を稼げるが、探索に失敗するリスクがある。また、「ダンジョンの探索」のみ、ダンジョンのボスとの戦闘が発生することがあり、倒すことで経験値とお金が追加で獲得でき、アイテムをドロップすることもある。
フィールド、ダンジョンともに、参考になる適正レベルが表示されているので必ずチェックして行動を決定したい。パーティーのレベルがダンジョンと合わない場合やアイテム狙いならフィールドの探索を、経験値稼ぎならダンジョンの探索と使い分けるといいだろう。
フィールドやダンジョンの探索では適正レベル、探索難易度、取得シルバー・経験値が事前にわかる | アイテムを入手しやすいフィールドの探索。一気に複数のアイテムが入手できることも | 滞在する街によって、挑戦できるダンジョンの数やレベル帯が異なる |
「街を探索する」では、学問所、魔法研究所、武具工房といった場所を選択し、探索を行なう。探索すると様々なイベントが発生するのだが、その中で特に重要なのが市場と教会。
市場では仲間を見つけることができ、最大で2人までのメンバーをパーティーに組み込める。仲間がいた方が有利に冒険が進められるため、早い段階でパーティーを3人構成にしておきたいが、パーティー構成を考えて仲間を決めるのを忘れてはならない。最低でも1人は回復魔法が使える構成でないと冒険の難易度が上がってしまう。また、タイプだけでなく、初期レベル、パラメーター、種族についても考慮にいれておきたい。最初から高レベルでパーティーに参加してくれる仲間も存在するのだ。どんな仲間が存在するのかは、プレイしていれば自然とわかるようになる。クリアするだけであれば、それほど拘る必要はないが、パーティー構成を変えてプレイすると違った印象でゲームが楽しめるので、ベストなパーティー構成を目指してプレイするのもいいだろう。教会は前述の通り、名声を上げるのに活躍してくれる。
■ シンプルでわかりやすいコマンド選択式バトル
イベントやダンジョンなどではバトルが発生することがある。戦闘はベーシックなコマンド選択方式。たたかう、まほう、スキル、どうぐ、防御の5つのコマンドを駆使して戦う。ただし、コマンドで行動が決定できるのは主人公のみで、味方は自動で行動する。
敵を全滅させれば勝利、味方全員のHPが0になると敗北となる。主人公が死んでも、味方さえ生きていれば敗北しないので、強い味方がいるなら、自分のレベルに見合わない高レベルのダンジョンに挑戦する選択もアリというわけだ。HPやMPは戦闘終了後、自動で全快するため、宿屋で回復といった行動は必要ない。移動もそうだが、要所以外の行動が省略され、面白い部分のみピックアップされているのが本作の特徴と言えるだろう。
一部のイベントバトルでは敗北するとゲームオーバーとなってしまう。本作にはセーブ機能があるものの、「セーブして終了する」しかなく、“正しい手順でゲームを終了しないと、そのデータの続きからプレイできない”仕様になっているため、事前にセーブしておいて、ミスしたらリセットして再開という手段は通用しない。ゲームオーバーとなったら、最初からやり直すしかない。セーブ、ロードを繰り返して、安易に強い勇者を育成させないためにこのような仕様になっているのだろうか。
レベルアップするとパラメータアップ用のポイントが4点獲得でき、力、速さ、体、知力、運のいずれかに割り振ることができる。物理特化、魔法特化など、育てたい勇者のタイプに応じて割り振るといいだろう。仲間がレベルアップした場合には、ポイントの割り振りはなく、自動で成長していく。装備品、スキル、魔法についても自動的にアップデートされていく。
ベーシックなRPG風のコマンド選択式バトル。画面左上に表示された行動順を考慮に入れて、コマンドを決定しよう | 状態異常効果のある武器や魔法も存在する。状態異常系はボス戦でも効果を発揮するため、頼りになる | 経験値を獲得し、レベルアップしたらポイントを振る。どう育てるかを決めて計画的にポイントを使いたい |
まほうコマンドで使える魔法は、ダメージを与えるもの、回復、蘇生など様々で、そのほとんどが道具屋で購入可能。装備と違い、魔法は強力なものほど消費MP量が大きくなるため、いくらお金があっても自分のMP量にあった魔法を購入しないといい結果は生み出せない。魔法に特化させて育てるなら、ダメージや成功率を上昇させる知力やMPが増える装備を揃えたい。
スキルも魔法と同じくほとんどが道具屋で購入できる。スキルはバトル中のスキルコマンドで選択して使用するバトルコマンドタイプと、習得しているだけで自動で発動する自動発動タイプがある。バトルコマンドタイプの技は発動に失敗することがあり、失敗すると数ターンスキルが発動できなくなってしまうリスクがあるものの、魔法消費と異なりMP消費がなく、使い勝手がいい。自動発動タイプは常時発動するものと、確率で発動するものがある。スキルの発動率には運のパラメーターが関わるため、スキルを重要視するなら、運を上げておきたい。
局面に合わせて的確なコマンドを選択するのはもちろんだが、戦闘を有利に進めるには、レベル(ステータス)、装備、スキル、魔法、アイテムが欠かせない。レベルはフィールドやダンジョンを探索することで上げられるが、レベル以外は一部の例外を除くと、道具屋で購入するしかない。装備などにはレベル制限がないこともあり、手に入れられれば強さに直結する。ダンジョンを探索したり、アイテムを売却して、お金を稼いで、強力な装備やアイテムを購入したい。
回復やダメージを与えるものなど魔法の効果は様々。強力な魔法ほど多くのMPを必要とする | スキルはMP消費なく繰り出せるが、失敗すると数ターンスキルが発動できなくなるリスクがある | 道具屋では武器、防具、魔法、スキル、消費アイテムなどが購入できる。よく検討して購入しよう |
■ 君の勇者は魔王を倒せるか!? 勇者を見守るシミュレーションモード
シミュレーションモードではシナリオモードクリア時に登録した勇者の活躍を見ることができる。見守るだけで一切手出しはできない。勇者がやられてしまうか、魔王を倒すまで、育てた勇者を信じてひたすら見守るのだ。無事に魔王を倒せるのか、やられてしてしまうのかは、育てた勇者次第だ。
問題を解決したり、レベルアップしたり、悪いことをして捕まってしまったり、犬にされてしまったりと多彩なイベントが発生する。イベントの種類は豊富で、自分で育てた勇者たちがどうなっているのか見ているのが地味に楽しい。
通常はイベントを送るのにボタン入力が要求されるが、オートモードを利用すれば、イベント内容を読むことができる程度のスピードで自動進行してくれる。寝る前にオートモードにしておいて、起きてから結果を確認するなんて使い方もアリだ。
登録した勇者の各種ランキングが閲覧できる機能もあり、こちらもなかなか興味深い。レベル、人気、解決した問題の数など勇者らしいものだけでなく、おたずねもの(泥棒をしたのがバレたり、他の勇者を倒したなどの悪者勇者の度合い)やおおどろぼう(お城や民家に泥棒に入った回数)なんて項目も用意されている。
シミュレーションモードでは多種多様なイベントが発生する。育てた勇者が活躍するのは嬉しいものだ | ランキングでは登録した勇者たちの各種ランキングが閲覧できる。勇者が今何をしているかを知ることもできる | 育てた勇者が世界を救った!様々な勇者を育成し、どれだけ早く世界を救えるかトライするのも楽しい |
シミュレーションモードに投入できるのは自分が育てた勇者だけではない。パスワードを使えば、他のプレーヤーが育てた勇者が登録できる。Twitter上では「#bokupass」のハッシュタグを付けて、育てた勇者のパスワードがつぶやかれているので、チェックしてみるのも面白い。さらに公式ホームページではシナリオモードで登場するキャラクターのパスワードが公開されており、登録すればシミュレーションモードに登場させられる。
パスワードを外部記憶媒体に出力する機能などには対応していないため、パスワードを公開するには、表示されたパスワードを間違えないように書き写すか、画面を撮影、キャプチャーするしかないのが残念。手間がかかるし、間違いも起きやすい。入力面も同様で一文字ずつ入力する他ない。何かしら、手間をかけずにできるようにして欲しかったと考えるプレーヤーは多いだろう。
育てた勇者のパスワードを公開したり、他のプレーヤーの勇者の登録が可能。文字数が多いので入力ミスに注意したい | 育てた勇者はシナリオモードをクリアした場合にのみ登録できる。登録の際には年齢、外見、性格などを変更可能。年齢は低く設定すると長く生きる可能性が高まるが、行動の確実性が低くなるなど、設定内容がシミュレーションモードの結果に影響する |
■ 最後に
RPGのおいしい所だけをピックアップし、アドベンチャー形式で楽しめる良作。コンセプトがしっかりしているし、独特の世界観も好きな人にはたまらないだろう。1,000Wiiポイント(1,000円相当)という価格で遊べるのも嬉しいところだ。
コマンド選択式アドベンチャーで、選択肢もそれほど多くないため、シミュレーションであった「王だぁ!」と比べても遊びやすい。どうすればよいか悩むことが少なく、難易度が低めに設定されているのも遊びやすさを助けている点だろう。
シナリオによって異なるが、1シナリオクリアまでのプレイ時間は1~4時間程度。何度もプレイして、強い勇者を育成することに楽しみが見出せるのであればボリュームは十分と言えるだろう。
前述の通り、事前にセーブしておいて、失敗したらロードということができず、最初からやり直しになってしまう点やパスワードについては少し残念に感じた。また、シミュレーションモードやパスワードによる勇者のやり取りに関係してか、期間に制限なく勇者の育成・冒険を楽しめない点についても不満を感じる人が多いのではなかろうか。シミュレーションモードで使えなくてもいいので、じっくりと自由に勇者を育成したり、アイテムを集めたりできるモードが欲しかった。勇者の育成や冒険が楽しいからこそ、そう思えてしまう。「王だぁ!」、「ボクも世界を救いたい」とアイディアの詰まった斬新なタイトルをリリースしているポイソフトが次にどんな意欲作をリリースしてくれるのか、今後にも期待したい。
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(2010年7月12日)