★PS3ゲームレビュー★
映画を超えたストーリーテリングの手法に衝撃 秘境に隠されたマルコ・ポーロの伝説に挑め! 「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」 |
|
株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントが10月15日に発売する「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」は、“PS3を持っていて良かった”と心から思える良質のアクションゲームである。本作のテーマはズバリ「トレジャーハント」。プレーヤーは主人公ネイト・ドレイクとなり、行方不明になったマルコ・ポーロの13隻の船団に隠された謎に挑む。
「インディージョーンズ」シリーズ、「ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝」といった映画をはじめとして、日本の小説では菊池秀行の「トレジャーハンター」シリーズなど、“秘境探検と宝探し”というテーマは様々な名作を生み出してきた。
宝探しと冒険のテーマは、ゲームでもその最初期から「ピットフォール」、「スペランカー」といった作品が作られ、「トゥームレイダー」シリーズといったヒット作も生み出された。本作は従来の作品で描かれた冒険活劇のエッセンスを取り込みながら、これまでどのゲーム、映画でも成し遂げなかったスケールと臨場感、インタラクティブ性を盛り込んだ作品となっている。
本作は特にナンバリングは付いていないが、原題は「UNCHARTED 2: Among Thieves」となっており、2007年12月6日に発売された「アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝」の続編に当たる。前作に登場したキャラクターなども登場するが、本作からはじめてもまったく問題はない。むしろよりスマートに改良され、スケールを増した本作をまずプレイし、気に入ったら前作もプレイするというスタイルでも問題ない。「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」は、これまでのゲームという枠を越えた冒険活劇を体験できる。多くの人に触れてもらいたい作品だ。
【10月22日追記】計44点の新しいスクリーンショットとマルチプレイモードのレビューを追加しました。
■ 絶体絶命の連続! ピンチを自らの力で切り抜けるゲームならではの冒険活劇開幕!
主人公ネイト・ドレイク。声を当てるのは東地宏樹さん。軽口を叩きながら、時には愚痴をこぼしながらピンチを切り抜けていくのが楽しい |
ゲームをスタートすると、いきなりネイトは血だらけで宙づりの列車の中。一気に作品世界に引きずり込まれ、生き残るために思わず必死になる |
勝生真沙子さんの声でとても色っぽい雰囲気を持つクロエ。敵か味方か微妙にわからないところが魅力的だ |
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」では主人公ネイトが気絶から回復し、あたりをゆっくり認識するという場面から始まる。ネイトが座っているのは、赤い布の張られた椅子。ここは、豪華そうな列車の座席だ。もうろうとした意識で、ネイトは自分の手が真っ赤な血に染まっているのを見て、正気を取り戻す。ネイトの腹部からたくさんの血が流れ出し、押さえていた手を血だらけにしているのだ。
次の瞬間、ネイトは車外の景色がおかしいことに気がつく。空と山の位置がおかしい。景色が90度回転している。その認識と同時にネイトめがけ椅子や箱など車内のものが落ちてくる。それらは車両後方のドアを突き破りはるか彼方に落下していく。物と一緒に落下したネイトも車外に放り出される。ネイトがいたのは、断崖絶壁で連結器でかろうじてぶら下がっている車両だったのだ!
はがれ落ちる部品を避けながら、崖からぶら下がる列車を必死によじ登るネイト。水平な場所に立てたと思ったのもつかの間、車両そのものが落下に向かって滑り出す。必死にかけ上がり、地面にたどり着く。あたりは吹雪が吹きすさぶ山の中。前には脱線しぐしゃぐしゃになった上、所々で炎を上げる列車の残骸がある。何があったのか、何故ネイトはここにいるのか。その疑問に応えるように、地面に倒れたネイトは4カ月前の物事を思い出していた……。
腹から血を流し空中に宙づりという、絶体絶命のシーンが本作のチュートリアルになる。何でこんな過酷な状況に……というプレーヤーの疑問に答えは与えられない状況で、ネイトを生き延びさせるためプレーヤーは彼を操作することになる。ネイトは超人的な身体能力を持っており、指を引っかけ足をかける場所さえあれば垂直の壁も易々と上っていける。
チュートリアルでありながら、ものすごい高さの描写の上、巨大な氷塊が落ちてきたり、つかまっていた手すりが折れたりとトラブルが連発する。特に車両そのものが下に滑り落ちていくシーンは、足先から恐怖が這い上ってくる感覚が体験できる。落ちていく車両から脱出し、固い地面で息をつくネイトを見たとき、プレーヤーはゲーム開始から数分にもかかわらず、九死に一生を得た安心感を感じるはずだ。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」はこのように危機また危機、ピンチに次ぐピンチを“プレーヤーの力”でかいくぐっていく楽しさを存分に体験できる。崩れる足場、ひたひたと押し寄せてくる敵の大群、頭上から襲いかかってくる戦闘ヘリ、突如として動き出す超古代の罠……こういった危機をネイトはその能力をフルに使って突破していく。プレーヤーの操作で、ネイトは飛び、しがみつき、駆け抜け、撃つ。プレーヤーはゲームをプレイするごとに突破口を見つける眼が鍛えられ、ネイトの操作に習熟していく。プロのトレジャーハンターとして成長していく自分を実感できるゲームである。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」ではネイトはマルコ・ポーロにまつわる伝説を解き明かしていく。14世紀初めの商人であり旅行者だったマルコ・ポーロはヴェネチアからイラン、中央アジアを経て元に入り、皇帝フビライ・ハンに仕えた後、帰国を果たした。「東方見聞録」という後のヨーロッパに大きな影響を残した書物の作者として有名な人物だ。
ネイトが列車から脱出する4カ月前、ネイトにこの話を持ってきたのは、以前一緒に盗みをやった冒険家ハリー・フリンだった。彼はあるスポンサーがマルコ・ポーロの日記を入手し、トルコの博物館にあるマルコが持ち帰ったオイルランプにヒントが隠されていると語った。マルコはフビライの元から去るとき、14隻の船に皇帝からの贈り物を満載して帰ったのだが、ペルシャに着いた船は1隻だけだった。オイルランプには消えた13隻の行方が記されているというのだ。
フリンは仲間として、ドライバー役の色っぽい美女クロエを紹介する。ネイトはクロエの魅力に惹かれ、それに応えたクロエと共にフリンを出し抜くことを計画する。しかし先に裏切ったのはフリンだった。オイルランプから13隻の船の行方を知ったフリンは一足先に逃げてから、ネイトをその場に残したまま警報装置を作動させる。博物館のど真ん中に取り残されたネイト。警備員達が構える銃から伸びるレーザーポインターの光の中、ネイトは追いつめられた獣そのまま、脱出口を必死に探す……。
このトルコ博物館潜入ミッションもチュートリアル要素が強い。相棒のフリンが進む道を進んでいくことでネイトがどんなアクションができるかわかるようになっている。さらに今作には「スプリンターセル」や「メタルギアソリッド」シリーズのようなスニークアクションが追加されており、敵の視線をかいくぐり背後に忍び込むことで無音で敵を倒せる。ステージ2ではスニークアクションの練習もでき、ゲーム性の幅も見せてくれる。
ステージ2ではなによりもフリンに裏切られる瞬間が面白い。あたりには敵だらけという絶望的な状況。自棄になって進んでも倒されるだけだが、あきらめず道を探すことで脱出口が見えてくる。いくつものレーザーポインターに追われながらの脱出劇は、アクション映画そまのままで、逃亡に成功するととても気持ちがいい。映画ならではの奇跡的な成功を自分の手で実現させる楽しさ。本作は映画のような名場面をインタラクティブなアクションで実現するという、これまで多くのゲームが挑んできた課題を1段高いレベルで実現している。
プレーヤーの気持ちをゲームに引き込むための工夫として、本作はステージ間やムービーに移る際のロード時間が存在せず、すべてがシームレスに繋がっていく。ステージの繋がりさえもシームレスで、映画で場面が変わるような自然さで次のステージに繋がっていく。のめり込むタイプのユーザーは休憩するタイミングがなかなか決められないかもしれない。さらに本作の高画質なグラフィックスは、ムービーとリアルタイム描画をほとんど違和感なく繋げ、実に自然なムービーの挿入を実現している。このとぎれのないゲームプレイのリズムを実現する高い技術は驚異的である。
本作は日本語吹き替え版となっており、声優達の熱演ぶりも特筆しておきたいところだ。裏切り者のフリンは、神奈延年さんのさわやかな声によって独特の胡散臭さが表現されている。クロエを演じる勝生真沙子さんの声はとても色っぽい。ゲーム中も愚痴をいったり、怒ったり冗談を言ったりと細かいやりとりがあるが、その短い台詞の中にクロエの色っぽさ、妖しさを表現しているのが楽しい。前作から引き続き登場する老年のトレジャーハンター、サリバンを演じる千葉繁さんは、ユーモラスな口調で独特のチョイワルエロオヤジっぷりを見せてくれる。ベテラン声優達を見事に起用した翻訳スタッフにも拍手を送りたい。
■ 静と動のコントラストが楽しいアクション。徐々に目覚めていく超古代の遺跡
ステージをじっくり観察することで先に進む突破口が見えてくる |
本作のキーアイテムとなる儀式用短剣そっくりな遺跡。刃に描かれた模様が足場になるというアイデアが面白い |
ド派手なアクションと映画以上の演出の融合、というのが「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」の最大の特徴だ。本作にはいくつもの名場面があるが、その1つは公式ページの「プレイムービーvol.2」で見ることができる。
内戦状態のネパール市街。ネイトとクロエは目もくらむような高さのビルの上を進む。突如襲ってくる軍用ヘリ。機関銃に追い立てられながら、張り出したバルコニーをジャンプで進む2人。ビルの中に逃げ込むも、敵兵士が待ちかまえており、銃撃戦になる。
さらにヘリが味方もろともビルを攻撃。壁に大穴を開けられ、そこからさらに攻撃され、敵兵もまた2人を追いつめる。業を煮やしたヘリはミサイルを一斉発射。地面が大きく揺れ、ビルそのものが崩壊する。傾いていくビル。椅子も机も家具も兵士の死体もすべてが地を滑っていく。倒れたビルが隣のビルにぶつかる瞬間、ネイトとクロエは傾いた床を走り窓を突き破って隣のビルに飛び込む。
息をするのを忘れそうなピンチの連続、キャラクターのいる建物そのものがリアルタイムで崩壊していくというこれまでのゲームのスケールを超えた仕掛け、これだけ派手なシーンを作り出すのはハリウッド映画ですら難しいだろう。大事な部分はこれらのシーンがインタラクティブであり、変化する状況に合わせてプレーヤーがネイトを操作することで「生き残らせている」という点だ。しかも本作ではこのテンションがゲーム終盤までとぎれることなく続くどころか更にスケールアップしていくのだ。そのボリュームと詰め込まれたアイデアにプレーヤーは何度も驚かされることになるだろう。
もちろん、「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」のゲームプレイは常に追い立てられるようなシーンばかりではない。腕ききのトレジャーハンターであるネイトの優れた能力はどんな場所でも足場を見つける観察力と、突破していく行動力にある。プレーヤーはステージをじっくりと観察し、ネイトが進むことができるルートを見つけ、不可能と思える場所を突破していく。崖につけられたちょっとした傷、崩れかけた遺跡の壁にあるつきだした岩、電柱の看板など、ネイトがつかめる場所を探し、前に進むルートを切り開いていくのだ。
どこを進むことができるか最初はわかりにくいかもしれないが、宙づりになった列車から脱出するステージ1、先に進むフリンが「お手本」を見せてくれるステージ2で基本的なヒントは与えられる。また、つかまる場所に関しては濃い黄色など強調された色が塗られていたり、カメラアングルでプレーヤーが気付くように工夫されている。断崖絶壁や、建物の外壁、崩れた遺跡など、とても通ることができない場所に道を見つけ突き進んでいく楽しさは、自分が腕ききトレジャーハンターになったような気持ちになれる。
ゲーム前半はトルコ博物館や、敵のアジト、内戦により荒廃したネパール市街といったステージだが、中盤以降マルコポーロが訪れ、去ったという伝説の地「シャングリラ」を求め、遺跡に隠された謎を解いていくこととなる。ネイトが謎を解き明かすことで悠久の時を越え、遺跡のメカニズムが動き出す。「宝探し」の興奮が背筋を駆け上がる瞬間だ。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」はじっくり考え突破口を見つける、何かに追い立てられながら一瞬の判断で事態を突破していく、という静と動の2つのアクションシーンが魅力だ。アクションゲームは動の要素を重視するあまり、ほんの少しのタイミングが合わないだけで何度も死ぬ、という状況を作りがちだが、本作にはそういう意地の悪いシビアさはない。その上で練習を積むことでよりかっこよく、スマートにプレイできる幅を持たせている。良質のバランスのアクションゲームとなっているのだ。
公式ページでも紹介されているステージ6のシーン。執拗に追いすがるヘリはついにネイトとクロエのいるビルを爆破する。一瞬のチャンスに隣のビルに飛び移った2人の前で、ビルは完全に崩れ去る | ||
落ちる列車、崩れる崖、背後からひき殺そうとする車。一瞬の判断の遅れが命取りとなる動のアクションシーン | ||
ステージをじっくり観察することで先に進む突破口が見えてくる。つかんでいるところが崩れることも |
■ 手強い敵と対峙する本格的なTPS要素。武器を変え、地形を利用し、様々な方法で生き残れ!
壁に隠れ、敵の隙をついて射撃。本作の敵はかなり手強く、同じ場所に居続けると手榴弾を投げられたり、回り込まれたりされてしまう |
敵に気付かれなければ格闘攻撃で一撃で倒せる。ステルス攻撃は音がしないため、他の敵に見つからなければ連続して敵を倒せる |
謎解きと移動のアクションと共に「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」の大きなゲーム性となっているのがシューティング性だ。本作は本格的なTPS要素が盛り込まれており、プレーヤーは迫力の銃撃戦を体験することになる。
プレーヤーはステージ3から激しい銃撃戦を体験することになる。欧米のFPS・TPSはゲームの中核を担うジャンルとして進化を続けており、本作もその最新トレンドを取り入れている。本作には「練習」、「初級」、「中級」、「上級」の難易度があり、この難易度設定でTPS部分は大きく変わる。
本作の戦闘システムは基本的には敵の射撃をかわせる物陰に入り、敵を狙って撃つというものだ。今回は主に中級でゲームを体験したのだが、敵のAIが巧妙で苦戦させられた。敵は物陰に隠れながら移動し、こちらの隙を見て移動してくる。じりじりとこちらを追いつめるだけでなく、回り込んで攻撃してきたりする。
一方、こちらの武器は反動が大きいため連続で標的に当てるのが難しい。また、同じ場所に居続けると容赦なく手榴弾を投げてくるため一瞬も油断できない。さらに敵にはレーザーポインターを装備し、大ダメージを与えてくるスナイパーや、ロケット砲、グレネードランチャーで攻撃してくるものがいて、これらを最優先で倒さないとあっという間にやられてしまう。防弾服に身を包んだ耐久力の高い敵や、盾を掲げた敵は正面から進軍してくる。
本作のシューティング要素はかなり本格的で、「間口が広くて、質のいいアクションゲームだなあ」と本作に関してイメージを持ちつつあった筆者の感想を吹き飛ばした。敵が巧妙な上、かなり歯ごたえがある。初めてプレイするユーザーにとってはステージ4が壁になるかもしれない。敵から隠れ、手榴弾が投げられたら避け、チャンスを逃さず敵を仕留められるFPS中~上級者の腕が必要となると感じた。
難易度が高いと感じる人は難易度を下げればOKだ。練習や初級にすれば敵は身を隠さず攻撃してくる。彼らをよく狙って撃てばいい。TPS初心者には難易度を下げることをおすすめしたい。しかしより迫力のあるゲーム体験、危機をすり抜ける冒険魂を持ったプレーヤーはぜひ中級以上の難易度で、困難を克服する気持ちを味わって欲しい。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」では戦いを有利にする“自由度”にも注目したい。今作では物陰に隠れ敵の背後に回ると一撃で敵を倒せるステルス攻撃ができる。戦闘の開始直後、これでどれだけ敵を減らせるかで難易度は大きく変わってくる。2~3人かたまった敵もいるので実際には難しいと思うが、うまいプレーヤーは敵を警戒状態にさせずにすべての敵を倒せるかもしれない。
ショットガンを使ってみたり、スコープ付の銃で狙撃したり、ゲームを進めていくことでプレーヤーの腕は上がっていく。筆者は動き回り、相対する敵を少なくするという作戦を積極的に行なってみた。時には後退するのも有効である。集弾率は悪くなるが走りながらの射撃も時には役に立つ。距離をつめて殴りかかるのも楽しい。
「仲間」もかなり役立つ。本作のシングルプレイに登場する仲間はゲーム的には無敵になっていて、いくらダメージを食らっても死なない。持っている銃はハンドガンがほとんどで攻撃力は高くないのだが、敵を引き付けてくれるのもありがたい。パートナーを狙っている敵を側面から攻撃するのは非常に有効だ。
筆者は最初にプレイしたとき、TPSとしての歯ごたえの強さに、「PS3を代表するタイトルとして、この難易度はどうなんだ」とも思ったが、プレイを続けていくことで乗り越える楽しさを実感できた。検証のため1度クリアしてから難易度を下げて挑戦してみたが、逆に物足りなく感じたほどだ。ギリギリの戦いを切り抜ける興奮、圧倒的な不利な状況を手にした武器で覆す爽快感こそ、開発者がプレーヤーに感じてもらいたいものなのだろう。
本作は1度クリアして終わるタイプのゲームではない。プレーヤーの工夫次第で戦いは大きく有利になる。より上の難易度を目指すだけでなく、ステルス攻撃やよりスマートなプレイなどプレーヤーの挑戦心に応えるゲーム性を持っている。公式ページにアップされているプレイムービーのプレーヤーはかなりウマイ。これ以上の超絶プレイも見てみたい。
■ あらん限りのアイデアが盛り込まれ、スケールアップしていく舞台とアクションシーン。シャングリラの秘密とは?
シャングリラへの鍵となるといわれる儀式用ナイフ。このナイフで古代の遺跡が蘇っていく |
仲間の踏み台となって先へ進む。オンラインではプレーヤー同士で協力できるようだ |
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」はあらん限りのアイデア、アクションシーンが詰め込まれている。開始からラストまでは実際の時間としては、熱を入れてやり混むタイプの人なら12~15時間ほどでクリアできると思うが、冒険のスケールがどんどん大きく、壮大になっていく事に驚かされるはずだ。本作をプレイして得られる感動や臨場感は、数十時間のプレイ時間を要する大作RPGと比べても全くひけは取らないと思う。
ステージそのものの「雄大さ」も注目して欲しい。トルコ博物館の屋根の上から見る街並み、ボルネオのジャングルと青い海、ネパールの荒廃した街と雄大な山々……もちろんゲーム的にはプレーヤーが移動できる範囲は限られているが、その場その場の行動の指針がしっかり設定されている上、ピンチの連続で狭さは感じない。激戦の合間に美しい遠景にため息をつく瞬間がいい。ゲームの舞台はネパールからさらにユーラシア大陸の奥へと移っていく。膨大な資料で作られたその土地の特徴を活かした作り込みにも感心させられるだろう。
細かいこだわりという点では、ネイトの手帳も面白い。ネイトは冒険で得た様々なヒントを手帳に書き記しており、この情報をヒントに謎を解き明かしていくのだが、他のページには冒険の地を踏むために使った旅券が入っていたり、前作のヒロイン・エレナとの思い出なども書き記されている。ちなみにエレナは本作にも登場し、ゲーム中盤から大活躍してくれる。ネイトとクロエ、エレナの恋の行方も見所の1つだ。
やり込み要素としては、特定の武器で何人倒すといったプレイスタイルに合わせたメダル(実績)システムや、各ステージに隠された宝物といった要素がある。ゲームを進めることで得られるポイントを使うと映画のメイキング映像のような制作エピソードを収録したボーナスムービーも見ることができる。
とても通れないような困難な地形を細かく観察し、突破口を見つける喜び。敵の集団や戦闘ヘリの嵐のような攻撃からダッシュで逃げ、安全地帯に着いたときの安堵感。多数の敵を前に、ライフルや手榴弾、拳銃ですべてを撃ち倒す爽快感。いくつもの仕掛けを解き明かし眠っていた遺跡が動き出す高揚感。本作はこれら、冒険活劇に欠かせない様々な楽しさを、これまでの作品にはないレベルで表現している。PS3でしかできない、PS3という高性能のハードの力を使いこなしたスタッフ達の作品をぜひ体験して欲しい。
今回は体験できなかったが、マルチプレイモードも注目の要素だ。オンラインでの協力プレイ、対戦プレイそれぞれに様々なモードが用意されている。協力プレイではオンライン用のストーリーも展開されるという。対戦プレイは特にチームプレイにおいてフレンドを招待し、「パーティー」として他のプレーヤーと戦えるところに注目したい。
オンラインプレイを扱ったムービーでは、「対戦でもシングルプレイでできた要素は全部入れてある」とスタッフが語っている。足場を見つけて上ったり、陰に隠れたり、ジャンプを駆使して敵の背後に回り込んだりと、地形を最大限に使った対戦が楽しめそうだ。さらにオンラインプレイは録画が可能になっており、他のプレーヤーの視点でも再生できるという。うまいプレーヤーのプレイを学ぶことも可能だ。さらに、強さに合わせたマッチング機能など様々な要素が盛り込まれているとのことだ。発売後はぜひ筆者も体験してみたい。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」は2009年のPS3のタイトルにおいて、最もリッチな、最も注目すべきタイトルといっても過言ではない。本作が指し示すアクションにおける演出、フィールドの表現、ゲーム性、様々なポイントで今後のゲームを語る上での「目標」になるだろう。日本では作品のパワーに比べて注目度が低いような印象を受けるのがやや残念だが、すべてのPS3ユーザーに注目してもらいたい作品だ。この記事が少しでも作品とユーザーの出会いのきっかけになってくれればと思う。
■ よじ登り、ジャンプ、地形をフルに使った対戦! フレンドとの協力プレイも楽しい!
対戦のマップや、ゲームのルールなどは試合開始時に2つの候補が提示され、プレーヤーの投票で決定される |
ランクを上げることで様々な能力がアンロックされる。ゲームを通じて得られるポイントを使って、能力を獲得することができる |
マルチプレイはすべてのプレーヤーの行動が記録されている。うまいプレーヤーの動きを研究しよう |
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」はマルチプレイも充実している。マルチプレイというと対戦主体の「デスマッチ」や「チームデスマッチ」が定番だが、本作はさらに陣地を取り合ったり、宝物を奪い合ったりと様々な対戦ができたり、仲間と共に襲いかかる敵を倒したり、ミッションを協力して進める協力モードが用意されている。
協力プレイでは、例えば「Gears of War 2」や「Halo 3」などのようにキャンペーンを複数人でプレイするCO-OPプレイが一般的だが、「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」では、キャンペーンとは切り離され、最大3人で、専用のマップによる協力プレイ専用の「ミニミッション」や、襲いかかる敵を協力して倒す「サバイバル」といったモードが用意されている。
もっともオーソドックスな対戦モードについては様々なルールが用意されていて、最大5対5の10人で楽しむことができる。今回はチームデスマッチを中心に遊んでみたが、対戦マップは地下に大きな空洞ができていたり、上の方に足場があったりと平面だけでなく立体的な空間が用意されている。雪原地帯では吹雪で敵が見えにくかったり、戦場によっては一定時間に戦闘ヘリから爆撃があったり、戦車が通り抜けたりというイベントも発生する。マップに対して様々なアプローチをしていく楽しさがある。
使用できる武器は、RPGや手榴弾、移動速度が落ちる代わりに強力な攻撃が行なえるガトリングガンなど、シングルプレイで使えるものがすべて用意されている。どれを選び、どう使うかも戦いの鍵だ。一方、至近距離だと格闘攻撃が有利。こちらの攻撃をかいくぐって接近しようとするプレーヤーも多かった。この他、ぶら下がった位置に敵が来る事で行なえるステルス攻撃は非常にカッコイイ。
PS3と本作を持っている友人がいるならオススメしたいのが協力プレイだ。シングルプレイとは異なったマップでミッションに挑戦する「ミニミッション」や、襲いかかる敵を撃退する「サバイバル」、宝物を回収する「ゴールドラッシュ」といったモードがある。これらは最大3人でプレイすることができ、フレンドとあらかじめパーティーを組んでおけばスムースにプレイを開始できる。
ミニミッションはいくつものチェックポイントが用意されており、敵の攻撃をくぐり抜けつつ通過していく。2人が壁をよじ登りもう1人が下で敵と戦いながら支援、上にたどり着いたプレーヤーがスナイパーライフルで残った敵を殲滅するといったシチュエーションが用意されている。敵から格闘攻撃を仕掛けられたときは、他のプレーヤーが支援するといった状況もあった。
2人が建物の中で立てこもり、1人が遊撃隊として敵を背後から襲うという戦い方もできた。敵から倒された場合でも、他の仲間が生きていると蘇生してもらえる。3人の連携が必要不可欠で、どう戦うかで戦局は変わってくる。マルチプレイはボイスチャットに対応しており、「僕がこっちを守ります」といった感じで声を掛け合えるのが楽しかった。3人すべてが知り合いなら軽口をたたき合ったりとさらに楽しくわいわいプレイできそうである。
ちなみに、ミニミッションは3回全滅するとミッション失敗になってしまう。このモードは本作ならではの雰囲気に満ちているが、難易度は高いと感じた。クリアするためにはシングルプレイをクリアするくらいのプレーヤースキルが必要で、FPSビギナーがいきなりプレイするにはいささかハードルの高いモードだと感じた。
マルチプレイでは敵を倒したり、チームが勝利したりすると経験値がもらえ、プレーヤーはランクアップしていく。ランクが上がると装弾数を増やしたり、武器の命中率を上げるといったキャラクターの能力がアンロックされる。これらの能力は経験値と共に得られる「ポイント」を消費することで獲得することができる。
本作のマルチプレイは、自動的にリプレイデータが生成される。あとで見直して研究したり、お気に入りの映像を公式ページにアップロードしたり、リプレイシーンからスクリーンショットを切り出すことなどもできるなど多機能なリプレイモードとなっているが、個人的にはこのモードで上級者の動きを研究できるのが嬉しかった。どこでキャンプする人が多いか、うまいプレーヤーはどう動いているか、地形はどう利用すべきか、研究し学んでいきたいところだ。どうキャラクターを強化していくかのヒントも隠されているだろう。
「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」のマルチプレイはシングルプレイとは別な楽しさを持ったコンテンツである。日本のコアタイムでも数千人のプレーヤーが参加しており、気軽に様々なルールで協力・対戦プレイが楽しめる。ぜひこちらも楽しんで欲しい。
(C)2009 Sony Computer Entertainment America Inc.
Published by Sony Computer Entertainment Inc.Developed by Naughty Dog, Inc.
(2009年 10月 15日)