★DSゲームレビュー★

手軽なのにじっくり遊べるやみつきの面白さ
DSに広がるマイトレイン! マイタウン!

「A列車で行こうDS」

  • ジャンル:都市開発鉄道シミュレーション
  • 発売元:株式会社アートディンク
  • 価格:5,500円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(4月23日)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)

 自分の思い通りに線路を引き、そこで都市が発展していく。そんな鉄道を中心とした都市開発を心ゆくまで楽しめる「A列車で行こう」シリーズが、ついにニンテンドーDSで楽しめるようになった。手軽にプレイが開始できる携帯機ながら、本格的な街作りをじっくり楽しめるのがなんといっても嬉しい作品だ。

 さらにこの「A列車で行こうDS(以下、『A列車DS』)」では、カメラモードによって自分が育てた都市を3D視点で好きなように眺めることもできてしまう。手軽なのにじっくり楽しめるがゆえ、時間を忘れてプレイしてしまう。机の片隅に置いたDSに自分の理想通りに作った都市が映り、それを眺めているだけでも楽しい。そんな本作の魅力を紹介していこう。



■ 都市開発シミュレーション「A列車で行こう」がDSに! タッチペン操作がグッド

こちらが「A列車で行こうDS」のメイン画面。上はマップの全体図やカレンダー、損益など、情報が表示される。下は、操作画面やアイコンだ

 「A列車DS」はプレーヤーが鉄道会社の社長となって、都市を開発していくシミュレーションゲームだ。様々なクリア条件が設定されたマップがあり、それをクリアしていく形式になっている。各マップのクリアを目指していくうちに都市作りをするための基本が身についていき、いくつかのステージをクリアしたあとはフリープレイで自由な街作りを楽しめるようになる。ステージクリアの条件を満たした後に、次のマップに進まずそのマップで遊び続けるというのもできる。

 「A列車」シリーズをよく知る方へ「A列車DS」がどういうゲームかと簡単に説明するなら、シリーズ作品の「3」または「4」をベースに、DSならではのタッチペン操作等の快適操作、携帯機ならではなプレイへの手軽さ、秘書たちをはじめとしたガイド役のキャラクタが加わっているタイトルだ、となる。

 多少、電車の種類などゲームのサイズが携帯機向けにコンパクトになっているところはあるが、おおむね削られているところは少なめ。手軽に、それでいてじっくりと遊び込める。多くの人は、「DSでよくここまでできるなぁ」という感想になるはずだ。

 次に、「A列車」シリーズをあまり知らないという方へどんなゲームかを簡単に書いていこう。都市を開発するとは言っても「A列車DS」はタイトルの通り“鉄道を中心に都市を発展させていく”というシミュレーションゲームだ。線路を引いて駅を建設して、そこに列車を走らせれば、人の動きが生まれ、周辺地域の開発が始まっていく。

 家が建ち、店が建ち、少しずつ賑やかに広がっていく。そんな街の景色を見守るのが、なんとも魅力的なゲームだ。また、順調に駅を利用する人が増えて行けば、最終的には高層ビルなども建ち並ぶようになる。

 もちろん鉄道以外にも、交通機関で言えば、道路を引いて停留所を設置してバスを走らせたり、港を作って船を行き来させることもできる。また、建築物も住宅からビル、さらに遊園地などの娯楽施設まで、様々な種類を子会社として経営することも可能だ。経済面では、銀行との融資のやり取りや株式の売買まで行なえる。ようするに交通機関が中心ではあるが、都市開発および会社経営を幅広く楽しめるというわけだ。


鉄道会社だけに鉄道が開発の基礎にはなるが、そのほかにも子会社を建設したり、道路の整備やバスの運行、様々な業務プランなど、いろいろなアプローチで都市を発展させていける
なんといってもタッチペン操作が楽ちんかつ直感的でいい。画像のようになぞるだけだ
「A列車DS」には、操作のガイドや経営のアドバイスをくれるキャラクタが登場する

 DSでプレイできる1番のいいところは、まず手軽さだ。ハードウェア的に携帯機ならではの「ちょっとした時間にすぐ起動してプレイできる」という気楽さと、じっくりと楽しめるソフトの魅力がうまくマッチすると、その相乗効果は計り知れない。「A列車DS」はその好例の1つで、ちょっとした隙間のような時間にプレイを開始したのに、気づいたら長い時間、都市を見守っていたなんていうことがしょっちゅう起こった。

 次に、タッチペンを使った操作の快適さが挙がる。線路や道路を引く時や撤去する時は、線を引くようにペンを滑らせればいい。子会社の建築物を建てるときも直感的にタッチするだけだ。また、L/Rボタンでは画面の角度を90度ずつ切り替えられる。建物の影に隠れている場所をタッチするときに切り替えるわけだ。十字ボタンで画面の位置を動かし、片手にタッチペンを持ったスタイルが、プレイ中の基本姿勢になる。

 プレーヤーは鉄道会社の社長だ。そして、その業務を支えてくれるキャラクタ達もいる。操作のガイドやアドバイスをくれるのは「秘書」だ。常にかわいらしい笑顔を見せ、新しい機能の解説をしてくれたり、マップのクリア条件を満たすためにアドバイスしてくれたりする。そのほかにも、売上げ等の経理をガイドしてくれる経理部長や、子会社関連のやり取り、事業計画などをガイドする事業部長など、各所にキャラクタが登場する。

 彼らの役割は、まずゲームをとっつきやすくしてくれることだ。人工物だけになりがちなA列車の画面を暖かく、丸い印象にしてくれている。また彼らのアドバイスは、小難しくなりがちな要素も非常にわかりやすくしてくれる。経営がうまくいっているのかや、子会社を作ったり駅を作ったりといった行動や判断に対して、ざっくりとだが、いいのか悪いのかを教えてくれる。初心者でもスムーズにプレイできるうまいサポートだ。会話のスキップもスムーズなので、熟練者の邪魔にもならない。

 操作性や会話スキップのレスポンスなどもろもろがそうなのだが、全体にストレスを感じさせないよう丁寧に作られているのが、最大の魅力だと感じる。手軽に始められて、遊びやすくて、じっくりといつまでも意欲を途切れさせない。プレイし始めるとなかなか止められない。それでいて、スリープ機能があるから一時中断はたやすい。DSとA列車が秀逸なマッチ具合を見せている。

 遊ぶ際の注意点として、セーブは欠かさずに行ないたい。上に書いたように遊びやすくていつまでもプレイしたくなってしまうからだ。私は寝る前に横になりながら眠気の限界になるまで遊び、そのまま眠ってしまって朝になったらDSのバッテリーが切れていた、なんていうことが何度かあった。もちろん最後にセーブしたところまでデータは失われてしまう。きっと既にプレイ済みのユーザーの方は、上のような出来事に「ありすぎて困る」と同意してくれることだろう。「限界まで遊んでしまうからセーブはこまめに行なおう」と、レビューに書くことになるなんて、なかなかない。それぐらいハマったら面白いということでもある。


社長であるプレーヤーをサポートしてくれるキャラクタたち。それぞれ言葉で項目についての良し悪しなどをアドバイスしてくれる。無機質になりがちな画面も華やかになっている


■ 鉄道を敷き、道路を整備し、都市が育っていく。子会社から株式まで、経営者は大忙し!

ゲームはマップが進むに連れて段階的に機能が解除されていく仕組み。各機能に丁寧なガイドがされるので、説明書いらずにプレイできる
ダイヤや運行の開始・終了時刻が車両ごとに個別に設定できる

 実際に都市を作っていく様子を、おおまかに書いていってみよう。まずは自分の名前と会社名を決める。そして、最初のマップへと進んでいく。最初から秘書が丁寧にガイドをしてくれるので、シリーズ作品未体験のかたでも非常にスムーズにプレイを開始できるのがありがたいところだ。

 いくつかのシナリオまでは、機能が段階的に解除されていく。その都度、秘書をはじめとした様々なキャラクタたちが、どのような機能か、そしてどのように活用するのかを教えてくれる。当初は鉄道に関するところからだ。線路の引きかた、電車の設置、進行方向の決定という、本当に基礎的なところから段階的に教えてくれる。「A列車」シリーズは比較的複雑なゲームなのだが、この「A列車DS」については説明書いらずと言ってもいい。それぐらいにガイドが1つ1つ、順番に丁寧に行なわれていく。

 実際に自由に街を作っていく時、私の場合は環状線を作る事が多い。輪っかに線路を引いて2重にし、時計回りと反時計回りに電車を走らせるという、基礎中の基礎のような作り方だ。将来的に環状線同士を繋げるために、1駅だけ3ホーム、4ホームにできるように土地を購入しておいたりもする(駅舎から向かって外側にホームが増えるので、環状線を作る場合なら駅舎は内側に必然的になる)。

 作り始めの当初は、駅は簡素な駅舎、走らせる電車も3両編成程度の小規模なものだ。電車は1両から5両までに編成を調節できるが、そこは乗客数に合わせていく。街が大きく発展して乗車率が高まったら、編成を増やしていくという具合だ。

 電車には個別に運行計画を設定できる。運行する時間や曜日を決められるわけだ。デフォルトだと24時間常に電車は運行されるが、さすがにそれは非現実的なので、夜に終了し、朝に開始するよう設定していく。収支が問題ないなら自由な発想で設定したっていいし、現実に即した設定にしてもいい。

 何を作るにしろ必要なのは「資金」だ。お金が少なくなってくると経理部長が、資金が少なくて不安ですと指摘し、資金が尽きたときには悲痛な表情で「我々はもうお終いです……」と語る。売上げと費用のバランスを測りつつ、余裕ができたら拡大していく、という感じにゲームを進めることになる。

 もう1つ、街が発展していくのに欠かせないのが「資材」だ。資材とは工場等が生産する白い四角形の物体で、これを消費して街が作られていく。子会社で物件を作るときや、大きな駅を作るときにも必要なので、この資材を乗客用の電車とは別の貨物車で各所に運んでいく。環状線を作っている例だと、住宅から少し離したところに工場などのある工業地帯を決め、環状線の中に1~2車両の貨物車にそれを運ばせる。各駅の近くに資材置き場を作っておけば、そこに運ばれた資材が置かれ、それを消費して街がじわじわとできあがっていく、というわけだ。

 貨物車の運行も乗客用車両同様に、こまかに設定できる。資材を積み卸しする設定も各駅ごとに設定できるので、発展させたい地域にまんべんなく行き渡るようにしよう。


都市が発展するのに欠かせないのが「資材」。生産された資材を貨物車で別の資材置き場へと運んでいこう。子会社の物件や駅を作るのにも資材は欠かせない。重要なポイントだ
電車だけでなく、道路を整備してバスを運行すると開発のスピードは速まっていく。道路も、線路のようにタッチペン操作でスラスラと作っていける
開発をうながす意味でも、収入目当てでも重要なのが子会社。特にマンションは人口増加に直接的に影響するし、都市が発展してから売却すれば黒字になりやすい

 駅、電車、貨物車だけでも街は作られていくが、それだけでは開発されるスピードは物足りない。道路を整備するのがいい。道路は線路と同じようにペンでなぞるようにタッチして作れる。駅前から別の駅まで、環状線の中を巡らせていく。道路ができたら、停留所の設置とバスの運行だ。電車で駅を作り、電車を走らせるのと基本的に同じ。バスは運行情報で曲がり角をどの方向に進むかなど、進路をこまかに設定できる。

 ただしこの道路関係の要素なのだが、「A列車DS」で気になったところとして、停留所の設置数が少ないと感じた。都心のように細かく停留所を設置してバスを巡らせていると、マップを半分ほど埋めたあたりで停留所の設置数が限界になってしまう。運行しているものを間引きしていって調節すればいいのだが、どうも全体のスケールと数があわない印象を受けた(そもそも『A列車』シリーズは、電車やバスの移動距離のスケールと時間があわないところもある)。

 さて、ひと通り交通機関が整ったらいよいよ時間を進めていく。アイコン欄にあるマスコンが時間のコントロールになっていて、停止から1速、2速、3速、4速、早送りというコントロールになっている。いじる時には停止にして、動かすときには1~4速、資金を貯めるときや街を発展させたいときは早送りだ。

 電車による発展がひと通り身についたら、次は子会社による経営だ。子会社は資材を生産する工場やコンビナートがある「工業」、雑居ビルやデパートなどがある「商業」、スタジアムや遊園地などがある「娯楽」、港と空港がある「運輸」、神社や公園などがある「公共」、マンションの「住宅」といったジャンルがあり、80種類近くがある(同建築物のタイプ違いを含む)。

 都市の発展は、そのまま人口次第とも言える。そこで手っ取り早く人口を増やすことができるのが、マンションだ。駅の近くにどーんと建ててしまえば、その周辺に家々や他社の物件ができあがっていく。こうした子会社は他社も次々に作っていくのだが、開発をうながす意味で自分で作るのも手だ。収入源としても扱いやすい。他社の物件を買い取ったり、自社の物件に個別に経営方針を設定することもできる。景気の流れが年ごとにあるため、景気の悪いときには「経費節約」の方針にする、といった具合だ。

 子会社を見栄え良く、美しく作っていくのは1つの醍醐味だ。例えば、海岸線沿いにはマリーナや遊園地を作ろうとか、山にはペンションやスキー場を作ろうとか、そうした色々なアイデアを詰め込んでいく。ひと通り街ができあがったら、次はもっと凝ってみようとか、地下をより発展させていこうとか、考えは尽きない。あえてフリーマップでのんびりとした田舎を仕上げ、一両だけの電車を走らせる、なんていうのも味があって良さそうだ。ちなみに駅の名前や電車の名前などは自由に設定できるので、実在の路線を再現したりすることもできる。


駅名や路線の名称なども自由に設定可能だ。現実の路線を再現してみるのも面白い。地下鉄を作ることも可能で、画像のように画面を断面図や階層図にして作っていける
情報量の多いゲームだが、上画面の情報レイアウトは見事に整っていて見やすい。新たに建った建築物などもアナウンスされるので、眺めているだけでも楽しめる

 プレイ中、1度は収支がうまく合わず資金に困ってしまう、このままでは破産してしまう、という状態になってしまうときがあるだろう。そうしたときに助けになってくれるのが「銀行」だ。融資を受けることで、一時的な危機を回避したり、拡大の資金にあてたりといったことができる。また、株式の取引も可能だ。架空の会社が並んでいて、一部の会社の株を買うと株主優待を受けられる。例えば石油会社の株主優待なら、バスやトラックの運行費が安くなる、といったものだ。

 このように色々と要素があって情報量が多いゲームなのだが、そこはDSならではの配慮がなされている。上画面にマップや株価、資金、損益の総合レポートなどが表示され、タッチした地形や物件、鉄道や駅などの情報もこまかに表示される。こうした表示周りもなかなか優れている。

 自分が敷いたレールに沿って、電車が動き出す。電車や駅をタッチすれば、その電車に何人が乗車しているかや、駅の利用者数などが表示される。街には人々の暮らしがあって、電車に乗って移動し、それぞれに活動しているわけだ。わたしたちがそうしているように。次第に建物がポツポツと増えていく。夜がきて朝になり、季節が巡っていく。画面の中の世界は、秋になれば色づき、冬になれば白く染まる。そんな画面を見ているだけで、なんだか嬉しくなってくるのが本作最大の魅力だ。



■ 自由な散策からオートモードまで3Dで再現されるマイタウンを楽しめる「3Dカメラモード」

 「A列車DS」の大きな魅力が「カメラモード」だ。これは3D視点で自分の作った都市を自由に見られるというもの。電車やバスの景色を楽しむ「車窓モード」や、前後左右、見上げたり見下ろしたりが自由自在な「散策モード」、さらに一定間隔で自動的にアングルが切り替わる「オートモード」も搭載されている。

 普段の見下ろし画面では感じられない、都市の街並み、ビルの高さ、電車から見える景色が楽しめる。駅からの視点なら、電車がホームに迫ってくる様子が見られる。もちろん「カメラモード」でも昼夜の流れは変わっていく。夜に光るビル群、観覧車の景色を楽しめる。

 特に秀逸なのは「オートモード」だ。例えば好きな音楽を聴きながら、次々にアングルが変わっていく都市を見ていると、なんだか妙にマッチしたりして面白い。このモードのために、凝った路線を敷きたくもなってくる。そんなことを考えていると、また新しいマップで新しく美しいレイアウトの都市を作り始めてしまう。そうしてまた、眠れない夜が始まってしまうのだ。

3D画面で自分の作った都市が再現される「3Dカメラモード」。このモードにはプレイ中にいつでも切り替えられる。オートモードで次々に切り替わる街並みを眺めるもよし、散策モードで好きな場所に移動していくもよしだ


■ 手軽に始められて、そこからじっくり心を掴んで離さない。そんな良作シミュレーション

 DSという携帯機ながら、じっくり楽しめる都市開発シミュレーション「A列車で行こう」がすっぽりと収まっているところが見事だ。手軽にDSを手に取れば、そこには自分の都市が広がっていく。自由に散策までできる。

 最初は何もなかったマップに、大都市ができあがったときには感無量。飽きるまでいつまででも見ていたくなるような、そんな愛着も不思議とわいてくる。机の片隅に置いたDSに目をやれば、いつでも都市が動き続け、変化を続けている。ぜひあなたも、手のひらサイズの中に広大な大都市を築き上げて見て欲しい。

 

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(2009年 6月 25日)

[Reported by 山村智美]