モバイルゲームレビュー

突如大財閥の令嬢となった“私”が目指すは
専属執事との恋? それとも理想のご主人様?

「」

  • ジャンル:恋愛シミュレーション
  • 配信元・開発元:StyleWalker
  • 利用料金:月額315円、従量課金315円(30pt)/525円(50pt)
  • プラットフォーム:iモード、EZweb
  • 対応機種:FOMA 903i/703i以降(iモード)、WIN BREW対応端末(EZweb)
  • 配信日:2008年10月6日(iモード)、2月26日(EZweb)
  • アクセス方法:
    iモード: iMenu → メニューリスト → ゲーム → 恋愛ゲーム → 執事たちの恋愛事情
    EZweb: au oneトップ → カテゴリ(メニューリスト) → ケータイコンテンツ → ゲーム → 美少女・乙女ゲーム → 執事たちの恋愛事情



 世のお嬢様方の中では「執事」がブームだ。ドラマやアニメのほか、執事喫茶なる店も増えているとか。損得勘定抜きに自分にかしずいてくれる男性が欲しいのか、それとも執事が必要なほどの「お嬢様な自分」に萌えるのか、はたまた執事の制服に憧れるのか……。

 まぁ理由なんかどうだっていいが、とにかく執事は素晴らしい。お嬢様や執事に憧れない乙女はいないし、黒いユニフォームに身を包んだステキなバトラーに「お帰りなさいませ、お嬢様」とか「お茶のおかわりはいかがですか?」と声を掛けられたくない女性なんかいないと断言できる。「執事たちの恋愛事情」は、急にお嬢様になってしまった主人公と自分専任の執事が織り成す、恋愛アドベンチャーゲームなのだ。




■ 2週間続く専属執事との生活。甘~いエンディングを目指せ!!

 物語は、主人公が突然大財閥の令嬢になってしまうところからスタートする。とはいっても、隠し子だったり、ややこしい財産争いなどはない。姉が名門九条院家の御曹司「九条院慎一郎(くじょういんしんいちろう)」と結婚したのだ。両親と離れて暮らす姉妹をバラバラにできないと、主人公も九条院家で暮らすことになった。

 新しい住まいは迎賓館かと思うようなゴージャスなお屋敷。自室には天蓋つきのベッドや専用のパウダールームもある。九条院家とは何者なのか、そして義兄の仕事は何か、さらに庶民たる姉などと簡単に結婚してよかったのか。などなど、疑問は後から後からあふれてくるが、お嬢様は重箱の隅などつついたりしない。ここは「急に令嬢になって、生活が上流階級になった」とだけ把握できていれば大丈夫だ。


物語の舞台は、恐ろしいほどの大邸宅。「どんな事業をしたら、こんな家に住めるの?」なんて野暮なツッコミはなし


 経験したことのないお屋敷暮らしや、上流階級のお嬢様の集まる学園生活に戸惑う主人公。義理の兄「慎一郎」と、「慎一郎」の専属執事でもあり執事長でもある「樫原侑人(かじわらゆうと)」は、主人公を見かねて「専属の執事」をつけようと提案してくれた。慣れない生活を陰になり日向になり支えてくれる執事との、不思議な関係が始まる。

 ゲームはテキストを読み、1日に1、2回表示される選択肢を選ぶことで進む。1回のプレイ時間は5分から10分程度で、その回のストーリーが終了すると次回は実時間で20時間後になる。選択肢を選んだ結果、執事の好感度が上下し、14日から16日後にエンドへと到達。選択の良し悪しや気持ちは結果表示されないが、選択肢によってはキャラクターの周りがキラキラと輝く。この輝きが好感度アップの証。3つの選択肢からキラキラの発生するものを選ぶのが、執事と仲良くなりたいお嬢様には必須となる。

 エンドの種類は「Butler's Ending」、「Love Ending」、「Special Love Ending」、「Seclet Night Ending」の4種類。がんばって高感度を上げると読んでいて思わず顔が赤くなるような甘いストーリーが展開することも。


姉の結婚相手「九条院慎一郎」は義妹思いの優しい青年。専属執事の「樫原侑人」はお屋敷の端々にまで目を光らせる、デキる男。「樫原侑人」のシナリオも読みたかった気もする
1日に数回示される3つの選択肢から1つを選んでストーリーを進める



■ プロ執事から外国の貴族まで、攻略候補はバラエティ豊かに7人

 攻略キャラクターは7人とかなり多い。年齢は下は15歳から上は25歳まで。真面目、さわやか、ツンデレ眼鏡、ショタ、お坊ちゃま、果ては外国の貴族まで、性格も職業もムードも違う男性たちから1人を選んで、自分専属の執事になってもらう。攻略の順序や条件などはないので、お見合い気分で好きなタイプを選ぶのがよさそうだ。

 ただ、主人公への気持ちは7人でかなり違う。最初から主人公を「姫」と呼び、“好き好き光線”を出してくる人もいれば、「執事とお嬢様」の関係から一歩も踏み出そうとしない堅物もいる。2週間以上のおつきあいになるので、どの男性を選ぶかじっくり悩んで決めよう。

 すでにお屋敷で執事をしているのは2人。真面目な好青年「中岡久志(なかおかひさし)」と、常に冷静で潔癖なメガネ男子「真壁直樹(まかべなおき)」。執事に憧れている庭師のさわやか青年「大木隆也(おおきたかや)」と、無口で不器用、少し強面なところもある庭師見習い「高口誠吾(たかぐちせいご)」。屋敷で下働きをする「古手川瞬(こてがわしゅん)」はかなりかわいらしい雰囲気。

 お屋敷で働く人々に加え「ウォルフガング・ラインスドルフ」と「山科晶(やましなあきら)」の2名のシナリオも用意されている。主人公の写真を見て一目惚れし、海外からはるばる参上した「ウォルフガング」、通称「ウォルフ」はヨーロッパの貴族。主人公を姫と呼び、仰々しく話す真性の王子様のシナリオは、プリンセス気分で読みたい。「山科晶」は義兄のまたいとこ。ツンデレ気味の彼とは「マイ・フェア・レディ」気分の物語が楽しめそうだ。


正統派の執事を望むなら、お屋敷の執事、「中岡久志」と「真壁直樹」がおすすめ
好青年の「大木隆也」、不良っぽいところもある「高口誠吾」、とってもキュートな15歳の「古手川瞬」なら、友達感覚のストーリー展開になりそうだ
上流階級で育った「山科晶」と「ウォルフ」は、本物のレディ教育をしてくれそう



■ 目指すは障害を乗り越えた愛? それともストイックな関係?

 屋敷で働く従業員とお嬢様の恋愛は、昔ほどではないものの障害が多いよう。さまざまな困難を乗り越えて、恋に落ちるかどうかは、物語の進め方にかかっている。執事とお嬢様という本来の関係を頑なに守り「Butler's Ending」へと到達するプレイもストイックで魅力的かもしれない。後で説明するデートアプリには、この「Butler's Ending」が必須になるため、狙ってエンディングを見る必要もありそう。

 恋人同士になった後の、各キャラクターの変化もオモシロさの1要素。慇懃無礼に近いほど丁寧に接していた執事が亭主関白気味になるなど思いもよらぬ変化もある。昨日まで「私」、「お嬢様」と丁寧に話していた某執事が、急に「俺」、「○○(名前呼び捨て)」になったときは、その変わり身の早さに驚愕を覚えたほど。「ちょっと極端すぎない?」と思わないでもなかったが、そんなに変化しない人も多いようなので、そのあたりはメリハリなのかもしれない。ともかく、お気に入りの執事がふたりだけのときに、どんな顔をするのか、好感度を高めて確認してほしい。

 1日が終わると執事からメールが届く。絵文字を多用する人や、必要事項しか書かない人など、メールにも個性が色濃く現われる。こちらも、親密度が高まると共に内容が変化する。恋人同士のようなうれしはずかしメールが届くかどうかは、ゲームの進め方次第だ。


各キャラクターのはにかむ顔もさまざま
ストーリーの進み方によっては、各キャラクターのスチルも手に入る。選択肢に注意して、お気に入りキャラクターのステキな笑顔を手に入れよう



■ 攻略にはオシャレも不可欠。あの人好みのコーデで迫れ!

 恋人とのデートや気になる男の子とのお出かけ、「どんな服を着ようかな?」と悩んでしまうのは女性共通の楽しい悩みのはず。彼の好みや、お出かけ先にあわせて衣装を選ぶのは、リアルでもバーチャルでも同じ。「執事たちの恋愛事情」でも、自身のファッションが大切な要素になっている。各執事の好みやTPOにあわせて衣装を選ぶ必要がある。

 オフィシャルサイトの「アバターショップ」でポイントを使って衣装を購入し、「お嬢様の部屋」にあるクローゼットで着替えやコーディネートに勤しむ。執事好みの衣装を着ていれば「今日のお召し物はステキですね」なーんて、執事が褒めてくれるのだ。もちろん好感度だって変わってくる。男女問わず、自分好みのファッションを身に着けてくれていると、褒め言葉の1つも飛び出すだろうし、好きな気持ちだって高まろうってもんだ。衣装は「義兄がクローゼットに揃えてくれた」ため、ゲーム開始時からそれなりに揃っている。手持ち服を着まわすのか、オシャレに燃えるのかはユーザー次第。リアル世界と同じく、お財布と相談しながらセンスを発揮しよう。

 オシャレにはもちろんシチュエーションだって考えなければならない。大切なパーティの日に普段着なんてもってのほか。ウェディングパーティのときには、財閥のお嬢様にふさわしいドレスを選ぶなど、TPOにふさわしい服装を選ぶのがゲームのコツにもなる。


現在のコーデはゲームが始まる前に確認できる。執事の好みやTPOに配慮しながらオシャレを楽しもう



■ 「彼の気持ちを知りたい」乙女心に配慮!? 執事目線のパートで物語がさらに深化する

 通常の乙女ゲームは“私”目線で話が進む。1人称視点は心のうちを細やかに描けるが、「相手が何を考えているのか」はわからない。ここで別視点パートの登場となる。「Change of viewpoint 執事が見る景色」など画面に表示されると、視点が変わった合図。執事視点では「お嬢様のことをどう考えているか」や「執事とお嬢様の恋愛はどうか」など、彼らの本音が確認できる。仕事中だけでなくプライベートタイムの話もあるので、執事の私服や私室が垣間見られるのも嬉しい。

 不特定多数を攻略するのではなく、最初に決めた1人との物語を進める方式だからこそ許される“彼視点”の物語。ときには、ふたりで過ごす時間を横から眺める第三者視点まで登場し、物語はモザイクのように語られていく。主人公だけでなく、相手の心のうちを伺い、周囲が見守る様子を知ることで、よりキャラクターへの思い入れが深まると共に、ストーリーにも深みが増しているように思う。


執事目線のパートでは執事の心がわかる。迷っている様子や悩んでいる様子にドキドキも高まる
私服姿や私室の中が見られるのも、嬉しいオマケ?



■ 執事との後日談が読める「デートアプリ」に乙女心がキャッチされてしまうかも!

 本編以外にもゴールデンウィークやバレンタインデー、各執事のバースデーなど、イベントアプリも続々登場している。各イベントアプリは、一定の期間内は無料、その後はポイントを消費することでダウンロードできる。

 乙女として見逃せないのは「デートアプリ」だ。乙女ゲームでビミョウに不満だったのは、せっかく仲良くなった相手との関係がクリアされてしまうこと。他のキャラクターのシナリオへと進む度に、前回は甘い言葉を囁いてくれたあの人や、「大好きだ!」なんて叫んでくれたこの人が、冷たくなってしまうのが不満だった。同じゲームをぐるぐる遊んでいるのだから仕方ないとはいえ、どことなく寂しく感じてしまう。

 そこで「デートアプリ」の出番となる。本編をクリアした執事との後日談が読めるというアプリは、激しく乙女心(いや、私の心かもしれない)を掴んでいるのではないだろうか。

 しかし、この「デートアプリ」を遊ぶには、なかなか高いハードルが待ち構えている。各執事の恋愛エンド(「Love Ending」、「Special Love Ending」、「Seclet Night Ending」のどれか)と執事エンド(「Butler's Ending」)の両方をクリアしている必要がある。どう分岐すれば特定のエンドにたどり着けるのかわからない上、各ストーリーを終えるには14日から16日ほどかかってしまう。読みたいと願ってもなかなかに難しい「デートアプリ」は、選ばれたお嬢様のためだけのアプリなのかもしれない。


イベントアプリでは、特定の執事との後日談や彼らの休日の様子などが楽しめる



■ 女性の憧れ「お嬢様」生活を満喫。心地いい非日常世界で幸せな毎日を

紅茶やスイーツなどディテールにこだわっているのも楽しい

 「お嬢様」は、女の子の永遠の憧れだ。外国のお姫様のような生活に心奪われない女子などいないに違いない。執事、豪華な自邸、色とりどりのドレス、上流階級の会話…… 何から何まですばらしい世界で遊べるのが「執事たちの恋愛事情」。それだけでもうノックアウト、完敗の白旗を揚げてしまった。

 シナリオにはほどよい非日常と日常が融和しており、一般人な気持ちを持ったままお嬢様になってしまった主人公には、大いに共感できる。グラフィックスも「もう少しスチルが多かったらなぁ」などと贅沢な要求を抱くものの、お屋敷の描写も含めてとても作品に相応しいと感じている。スイーツを中心とする食事やファッション、小物のの描写が繊細かつ魅力的なのも、女性目線では面白い。普通の生活をしている人でも想像しやすいモノをちりばめて、上流階級の世界が描き出されているように感じた。

 ひとつワガママを言うなら、ポイント消費で1日何本もストーリーを読ませてほしかった。1人の執事との物語に2週間以上使う状況では、デートアプリのフラグ立てや、各執事のクリアに時間がかかりすぎる。毎日少しずつ読み進めるのもいいけれど、ガッツリ集中して読める機能があったらなと思わずにいられない。執事と過ごす優雅な時間や、恋人になったふたりのひと時を“ポイント”なんて野暮な存在に邪魔されるのはよくないのかもしれないし、上流階級のお嬢様にガツガツした態度は似合わない。が、どっぷり物語世界に耽溺するのもわるくはないと思うのだけれど。

 「お嬢様」や「執事」に憧れた経験のある人、お城みたいな邸宅に住みたいと半ば本気で思っている人にはとくにオススメ。ロマンティックな乙女心がぐいぐい刺激されて、日常生活に今までとは違う彩りが生まれそうだ。


2週間の生活の中で、執事たちのさまざまな表情が見られる


(C) 2008 StyleWalker. all rights reserved.

(2009年 6月 11日)

[Reported by 南奈実]