★DSゲームレビュー★
ストーリーは一見の価値あり! 宇宙を舞台にした大河SF RPG 「無限航路」 |
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「無限航路」は株式会社セガが6月11日に発売したSF RPG。プレーヤーは主人公ユーリを扱い、広大な宇宙空間を旅する。他に例を見ない独自の戦闘システムや、自分なりの戦艦が作れる造船システムなど、特徴的な要素の多い本作だが、実際に遊んでみて最も印象深かったのは、そのスケールの大きなストーリー。
ここではその触りだけ紹介すると、主人公の少年ユーリは小マゼラン銀河の辺境、惑星ロウズに住む。この惑星は領主が発令した「航宙禁止令」によって、住人が宇宙へ出ることが禁じられていた。それでも主人公のユーリは、高名な冒険家であった亡き父の遺志を継ぎ、宇宙へ旅立つことを決意する。
ユーリは宇宙へ旅立つために、「打ち上げ屋」と呼ばれる人物に連絡を取る。やがて「トスカ・ジッタリンダ」と名乗る女性がユーリの前に現われ、トスカの協力を得て宇宙に旅立つユーリ。辺境の星ロウズから出発したユーリは、宇宙を旅しながら、遂には全宇宙を舞台とした戦いに巻き込まれていく。
ゲームを進めていくと、ユーリは様々な惑星や、それを含む国家を旅することになる。それらひとつひとつが緻密に描写されており、地域の特徴や、国家の性格などがよく表現されていて、これを見て回るだけでも面白い。世界観の構築、表現には非常に手間がかけられ、完成されていると感じた。
打ち上げ屋のトスカと出会った主人公ユーリは、トスカと共に広大な宇宙空間へと旅立つ。少年ユーリが、経験と共にやがて青年へと成長していく過程も本作のストーリーの見所だ |
■ ジャンルとゲームの流れ
本作のジャンルはRPG。見た目は少々異なるものの、ゲームの基本的な流れは一般的なそれと同様だ。ストーリーの進行とともに行動範囲が広がり、途中でエンカウントする敵との戦闘を終えると報酬としてお金と経験値が手に入る。
移動は少し特徴的になっていて、マップ上で航路と目的地を設定すると、後は自動的に目的地まで移動してくれる。この間にランダムで敵艦隊とエンカウントし、戦闘になる。
戦闘はリアルタイムで進行する。ただプレーヤーが操作するのは艦船単位ではなく、艦隊をひとまとまりとして操作するため、これも実際の感覚は一般的なRPGに近いものだった。筆者は最初リアルタイムストラテジーのような複雑なものを想像していたのだが、そういったものをイメージしていると多少異なる印象を受けるだろう。
航海の途中で立ち寄ることになる港では、コマンドを選択していくことで会話をしたり、艦船を購入、改造したりできる。ここの感覚はRPGと言うよりも、どちらかと言えばアドベンチャーゲームに近い操作感覚となっていた。
マップの移動はやや特殊。行き先までの経路を選んで、決定を押すと後は自動的に移動してくれる。途中敵にエンカウントすると戦闘開始となる |
港での行動はアドベンチャーゲーム風。ほぼ全ての港には酒場がある。情報を集めるときは、まず酒場に行って話を聞こう |
■ 艦隊同士の戦闘
戦闘は前述した通り、プレーヤーは艦隊を操作する。そのため個々の艦に対して耐久力(HP)や砲撃の攻撃力などのパラメータは存在するものの、攻撃を選択すれば全艦が攻撃し、回避を選択すれば全艦が回避する。
プレーヤーが選択できるコマンドには、大きく分けて「移動」と「行動」の2種類が存在する。
「移動」には前進、後退、待機の3種類があり、これで敵艦との距離を調整する。艦船に搭載された兵装には射程距離が設定されているため、こちらが攻撃する時にはできるだけ多くの砲が射程に入るように、逆に相手の攻撃を受けるタイミングではなるべく敵の砲の射程外に移動するようにすることが基本になるだろう。
「行動」は移動と異なり、選択するときに一定値のコストが掛かる。これがコマンドタイム(CT)と呼ばれるもので「CTゲージ」として上画面左に表示されている。これは時間とともに増加していく。
行動の基本となるのは「全砲斉射」と「通常砲撃」と「回避機動」の3つ。
通常砲撃が文字通り通常の攻撃。これに対して全砲斉射は通常砲撃の約3倍の攻撃力を持つが、相手が回避機動を取っていた場合、回避されてダメージを与えられない。通常砲撃よりは全砲斉射のほうが効率よくダメージを与えられるが、情況を考えて使わないと台無しになってしまう。
回避機動は1度選択すると、次に他の行動を選択するまでその効果が持続する。この間に相手の全砲斉射が来ると、ほぼノーダメージで回避することができる。ただしその逆に通常砲撃が来ると、回避率が下がり、通常よりもやや大きなダメージを受けてしまうことになる。
敵の行動を推測するには、戦闘中の敵艦のシルエットが参考になる。フレームの色が黄色から緑に変わったのに攻撃がこないときは「回避機動」、フレームが赤なら「全砲斉射」や特殊攻撃を狙っていると考えられる。
そのほか行動には白兵戦を挑むものや、ゲーム中盤以降で使用可能になる艦載機を発進させるもの、あるいは副艦長に任命したクルーの特殊能力を発動させるものなどが存在する。これらの行動をうまく使い、相手艦隊を全滅させれば戦闘勝利となる。
敵とエンカウントしたあとに、迎撃を選べば戦闘開始。戦闘は艦隊全体に対してコマンドを選択する形式なので、意外とシンプルな内容になる。敵艦隊を殲滅すれば戦闘勝利となり、経験値とお金が得られる |
■ 白兵戦
戦闘中に相手艦隊に接近し、白兵戦のコマンドを実行した場合や、ゲームの進行途中で遭遇するイベントでは白兵戦が行なわれる。
白兵戦では、斬撃、射撃、指揮官攻撃の3種のコマンドが選択でき、それぞれじゃんけんの要領で3すくみになっている。斬撃は射撃に強く指揮官攻撃に弱く、射撃は指揮官攻撃に強い。
じゃんけんがベースになっているので運の要素が強いように感じるが、艦隊の格闘能力や乗員数などのパラメータも大きく評価されるため、もし勝てない相手に出会った場合は内装を変更して艦隊の格闘能力を強化したり、乗員数を増やしたりすることでより確実に勝利できるようなシステムにはなっている。
白兵戦はじゃんけんの要領で行なう。ただし乗員数や格闘能力などのパラメータが大きく評価されるため、同等の能力の相手に当たらなければじゃんけんでの細かい勝敗は大勢に影響しないように感じた。ここで勝利すれば、そのまま戦闘勝利となる |
■ 艦隊の編成と改造
艦隊のカスタマイズは本作の肝となる部分。プレーヤーはお金をためて艦船を購入し、これを自分なりに改造、最後に配置を決定して編成することになる。
艦船はゲームを進めていくことで設計図が手に入り、1度設計図を手に入れれば、港に存在する造船工廠でいつでも購入することができる。艦船には巡洋艦、駆逐艦、空母、戦艦などの種類が存在するが、基本的には価格が高いものほど基本性能が高い。
艦船を購入するには莫大な資金が掛かるため、慎重に行なう必要がある。ただ高価な艦船は性能も高いので、行き詰ったら思い切って高いものにも手を出してみよう。ただし内装もしっかり行なわないと100%の性能が発揮できないので、そのための資金を残しておくことも忘れずに |
購入したばかりの艦は内装が施されておらず、100%の力を発揮できない。艦船を購入したら、自分なりに改造していくことになる。
内装は各艦ごとに決められた区画の中に、内装モジュールを設置していくことで行なう。内装モジュールもゲームを進めていくことで設計図が手に入り、各港の改造工廠でいつでも設置を行なうことができる。
内装モジュールはパズルゲームのようなブロックを、艦内の空きスペースに埋めていくことで設置していく。
ここでは対艦管制室や対空管制室など戦闘が有利になるものの他、食堂や保安局、医務室など、居住性を高めるものも設置できる。本作には疲労度の概念があり、寄港せずに旅を続けていると、徐々にクルーの疲労がたまってしまい、戦闘時のCTゲージの増加速度が著しく低下してしまう。居住性が高い艦隊は、この疲労度の上昇を抑えることができる。
ボス戦など一部のイベント戦では、そこに到達するまでにかなり長い間寄港できない時間が続くので、居住性は非常に重要なパラメータだ。個人的には戦闘用のモジュールよりも、むしろこちらを優先して設置していく方がゲームをスムーズに進めやすいと感じた。
また、艦船購入時には司令艦橋、動力室、最低稼動人数を満たすための乗員船室など必須のモジュールが自動で設置されているが、ここで設置されるものは最低ランクのモジュールなので、ゲームが進んで来たら、一旦全て削除してから、必要なものを自分で設置しなおすようにした方がいいだろう。
艦船の購入、改造が済んだら、実際に艦隊に組み込み、編成を行なう。
ここでは3×3の9マスの区画の中に、艦船を配置し、艦隊を編成する。艦隊に組み込める艦の数は、最初は1艦のみだが、ゲームを進めていくことで最大5艦まで増加する。
前列に配置してある艦ほど攻撃を受けやすく、後ろに配置しておけば前の艦がやられるまでは攻撃の回避率が高い。
旗艦が撃沈されるとゲームオーバーなので、旗艦を一番後ろに配置し、装甲や耐久度の高い艦を前列に配置するようにするといいだろう。戦闘に関係するのは前後のみで、左右に関してはどこに配置しても効果は同じようだ。
改造は艦船の中の空きスペースに、パズルゲームのようなブロックを配置していくことで行なう。空きスペースと相談しながら、試行錯誤するのは本作の醍醐味だ。内装だけでなく、兵装や艦載機の購入もでき、精算は全て終わったあとになる。所持金と相談しながらあれこれ試してみよう。全て終わったら、艦隊を編成しなおすのも忘れずに |
■ クルーの配置
ゲームを進めていくと、徐々に仲間が増えていく。仲間になっただけでは効果がないので、彼らを役職に配置しておく必要がある。役職は副艦長、オペレーター、砲雷長、保安長など多くのものが存在し、適切な役職に設定していくと艦隊の能力が補正され、有利に冒険を進めることができる。
また、各キャラクターには一部特技が設定されている。これはA(アタッチメント)系とC(コマンド)系の特技に分類され、Aはその特技に適した役職に配属すると補正効果が得られ、Cは艦長か副艦長に設定すると戦闘時に特殊コマンドが使用できるようになる。
特に重要なのはコマンド系の特技で、筆者がお世話になったのは「応急隊」と「戦場の女神」の特技。このコマンドを戦闘中に実行すると、前者は艦隊の耐久力が、後者は耐久力と乗員数が一定値回復する。これがあるとないでは戦闘の流れが変わってくるので、副艦長にはその能力値を無視してでも、これらの特技を持つクルーを配置していくのがお勧めだ。
クルーを配置すると艦隊の能力が補正され、戦いやすくなる。特に副艦長の座は重要で、ゲーム序盤で仲間になるチェルシーは勝利の女神の特技が使えるため、筆者は非常にお世話になった |
■ インターフェイスがやや不親切に感じる面も
本作に関して、不満点を挙げるとすれば、それはインターフェイス面に関してだろうか。
いくつか例を挙げると、例えば戦闘中のダメージ表記。戦闘時に攻撃を行なうと、砲撃の演出と、その着弾時の演出が入る。着弾時の演出でヒットした攻撃のダメージは表示されるが、この演出は毎回表示させるものにしては長すぎる。Rボタンを押せばスキップできるので、慣れてくるとスキップすることになるのだが、演出をスキップしてしまうとその攻撃でどの程度ダメージを与えられたのかがわからなくなってしまう。
艦隊を強化し、強くなっていくことがゲームの目的の大部分を締めるものであるにも関わらず、それが実感しにくい表現になっているのは問題だろう。
同じく戦闘中のコマンド選択パネルも個人的には気になる部分。戦闘中に選択するコマンドは全砲斉射、通常砲撃、回避機動、白兵戦、艦載機、対空迎撃、前進、待機、後退、特殊1、特殊2、特殊3、敵艦の選択などがあり、これら全てが下画面内に表示されている。この中のボタンをタッチすることで戦闘を進めていくのだが、多くのボタンがありすぎて、1つ1つのボタンが非常に小さい。移動系のコマンドであれば取り返しがつくので多少タッチしづらくても問題ないが、特に全砲斉射と通常砲撃のボタンが小さく、間違えてタッチしてしまうこともしばしばあった。ここのミスタッチは戦闘の勝敗を左右してしまう結果にもなりかねないので、もう少しボタンを大きくするとか、十字ボタンと各種ボタンでも選択できるようにしてもらえた方がよかったように思う。
また、クルーの設定画面で、副艦長に設定したキャラクターがコマンド型の特技を持っていた場合、戦闘中に特殊2のコマンドを使用することで、その特技を行使することができるのだが、クルーの設定画面ではその特技がどのような効果であるかが確認できない。その特技がどのような効果であるかを確認するにはどうしたらよいかと言えば、取り扱い説明書を読むと言うのも1つの手だが、ゲーム内で完結させるためには、港に行き、ヘルプを開いて「キャラクターの特技」の項目を開き、その中から該当の特技を選択する必要がある。これもできればクルーの設定画面で確認できるようになっていて欲しかった。
もう1つ、ゲームを進めていく上で、自分が今何をしているのかを見失ってしまいやすいのも気になる点。
次の目的地の地名などが会話中に出た場合、この会話を見落としてしまうと後から確認する術がない。こうなると行ける範囲内の地域をしらみつぶしに探索していくしかなくなってしまう。ストーリーの途中でセーブをして中断し、日を置いてプレイした場合などでも、このような状況に陥りやすい。特に各港で時々受けられるお使いクエストに関しては、ストーリーと関連性がない上に、1つ受けていると次のものが受けられないうえキャンセルもできないので、内容を忘れてしまったら2度と次のものを受けられない状況にもなりかねない。
何らかの方法で今受けているクエストが確認できるか、もしくはクエストをキャンセルできるようでないと、ゲームに慣れていないうちは苦労することになるのではないだろうか。
戦闘中のボタンは少し小さすぎるように感じるし、必要な情報がヘルプの奥深くに眠っていたりと、インターフェイス面ではやや不満が残る点も |
■ 宇宙空間を舞台にした壮大なストーリーは一見の価値あり
上に挙げたようにやや不満点は残るものの、本作の非常に練りこまれた壮大なストーリーと、世界観は一見の価値がある。
データベースの項目では、それまでに見つけた艦船や人物、特殊天体などが記録され、その発見率も表示される。これを見ていると、とにかく細かいところまで設定があり、本当によく練りこまれているな、という印象を受ける。
クリアするまでに掛かった時間は大体40時間程度だったが、途中ストーリーが一部分岐する場面もあり、全てを確認するためには2回、3回とプレイする必要がある。クリア後は所持金とレベルを引き継いだままニューゲームが行なえるようになっているので、やりこみ甲斐もあり、ボリュームは十分だ。
ゲームの世界にどっぷり浸かりたいSF好きには、ぜひ本作を心行くまで堪能してみてもらいたい。
データベースには、発見した艦船や人物が記録されていく。そのひとつひとつに設定があり、ファンなら思わず全てを確認したくなってしまうのではないだろうか |
冒険の途中で、特殊天体を発見することもある。物語とは直接関係ないが、これもデータベースに蓄積されていく。こういった細かな設定も、世界観により深みを与えている |
(C)SEGA
(2009年 6月 11日)