「Racing Wheel Apex for PS4 PS3 PC」レビュー

Racing Wheel Apex for PS4 PS3 PC

ゲームパッドから次の次元へ。レースシムでもしっかり使えるビギナー向けハンコン

ジャンル:
  • ステアリングホイール
発売元:
  • HORI
開発元:
  • HORI
プラットフォーム:
  • PS4
  • PS3
  • Windows PC
価格:
13,980円(税別)
発売日:
2016年10月20日

こちらが今回ご紹介するHORI「Racing Wheel Apex for PS4 PS3 PC」

 「自分も最新レースゲームを楽しみたい!でも、高級なステアリングホイール型コントローラー(ハンコン)を導入するのは、設置スペースやコストの問題があってちょっと無理かな……かといって、ゲームパッドで遊ぶのものなんだか、せっかくの本格ゲームがもったいない気もするし……」。そんな貴方にオススメしたいのがHORI「Racing Wheel Apex for PS4 PS3 PC」だ!

 9月からの新作レースゲームラッシュに合わせて、ここまでロジクール「G29 Driving Force」やThrustmaster「T300RS GT Edition」といったPS4/PS3/PC対応の高性能ハンコンのレビューをお届けしているが、今回ご紹介するHORI「RWA」は、それらとは全くカテゴリーの異なる、低価格帯の製品である。ステアリングとペダルユニットがセットで税込み15,098円。「G29」や「T300RS」の1/3のお値段で買える、お手軽レーシングギアだ。

その価格と機能。レースゲーム入門者への救済となるか?

外箱。高級ハンコンのものよりふたまわり以上小さく、重量も軽い

 この価格帯には、かつて「Driving Force GT(DFGT)」(ロジクール)が君臨していた。2010年発売の歴史的名機である「DFGT」は実売15,000円前後と安価でありながら、ロックトゥロック900度のステアリングにフォースフィードバック(FFB)機構も搭載。機能的には上位機種の「G27」等と遜色のない内容を確保しており、つい最近までハンコン入門用の鉄板機として不動の地位を確保していた。そう、PS4時代になるまでは。

 「DFGT」の対応はPS3/PC。PS4では使用できない。このため、PS4時代になってからは長らく、低価格帯ハンコンの王座は空席だった。かねてよりの円安の流れもあって、デバイス類の価格は上昇傾向にあり、かつて15,000円で買えた「DFGT」も、いま新製品として同等のものが出てくればおそらく2万円台中盤の価格におさまることだろう。

 そんな中でも1万円台で登場したPS4対応のThrustmaster「T80 Racing Wheel」はいくらかのレースゲーム入門者を救済することになったが、やはり全体的に見て、この価格帯におけるラインナップ不足は否めなかった。

ステアリングユニット。使いやすさがよく考えられたボタン配置が好印象
グリップ部のラバーコートもなかなか良い質感
L2/R2ボタンはリム上に配置。即座にアクセスできる

 そこでHORIから2016年10月に発売されたのが本製品、「RWA」である。本製品は、PS4/PS3/PCに対応し、ロックトゥロック270度のシフトパドルつきステアリングホイールと、アクセル・ブレーキの2ペダルからなるペダルユニットから構成されている。フォースフィードバック機能はなく、スプリングでセンタリングフォースが実装されている。

 ステアリングの直径は28cmと、「G29」と同等である。ガワはすべてプラスチック製だが、グリップ部分はしっかりラバーコートされており、デザイン、質感ともに期待以上のレベル。

 特にステアリング中央部のボタン配置はよく考えられており、使いやすい。十字パッドおよび4つのメインボタンが、ステアリングを握りながらでもすぐに押せる位置(外側寄り)に配置されているほか、L2/R2ボタンがリム上に配置されているのも素晴らしい工夫点だ。このあたりの使い勝手に直結するUXデザインは、値段3倍の上位機種たちよりも優れている。このL2/R2には、レース中に瞬時の判断使用する機能(DRS/KERSなど)をぜひ割り当てておきたい。

パドルも含めてすべてプラスチック製。ゆえに重量は非常に軽い
後ろから。形状はけっこうおしゃれだ

ステアリング中央上部の「ASSIGN」ボタン。これで各種設定モードを起動
設定中はLEDランプが各色に点灯し、現在のモードがわかるようになっている

 本製品には、こういった外面からわかる特徴のほかにも、いくつかの独特な機能がある。

 ひとつは、カスタマイズ機能だ。ステアリング上にはDUALSHOCK 4同等のボタン構成に加えて、ホイール動作のカスタマイズを行える追加の「ASSIGN」ボタンを装備。この追加ボタンを長押しすることで、リニアリティ、デッドゾーン、ボタン割り当てといったホイール動作のカスタマイズを行なうことができる。“レースに勝つ”と銘打った「ウィニングモード」というモードの起動も、このASSIGNボタンから行なう仕組みだ。それぞれ詳しくは後述する。

 また、いっさいの駆動機構のない「T80」とは異なり、本製品にはフォースフィードバック機能の変わりに、ゲームパッド同様のランブル(振動)機能が搭載されている。ゲームパッドがブルルと震えるあれと同じものだ。縁石に乗り上げた時、タイヤがスリップしたとき、何かと接触したとき、などなど、ハンドルの振動による感触を得られる。

 ただ、このランブル機能は、デバイスの大きさに比べて出力が弱いことと、振動のソースが1箇所にしかないため、表現力はあまり高くない。持ち手と各トリガーが独立振動するXbox Oneコントローラー(ランブルモーターが4つもある)のほうが高性能だ。しかし、無いよりはあったほうがはるかに良い。そういう存在だ。

こちらはペダルユニット。底面のプレートを引き出して固定面を拡張するといった機構も備えており、使い勝手を向上させるための工夫が光る

入力精度

ハンドルの切り角は最大で270度(片側135度)
ペダルのストロークは短い。ブレーキは特に短い
アクセルのストロークはブレーキよりちょっとだけ長い

 ステアリング、ペダルとも、各軸16ビットの精度はあるが、ハード的にステアリングのロックトゥロックが270度と狭いことや、ペダルの可動域が(上位のハンコンに比べると)狭いこともあって、高精度の入力は、できないとはいわないが、かなりの神経を使うことになる。ダイナミックに操作しようとすると、特にペダルは0か1かのデジタルな操作になりがちだ。

 また、高精度の入力をしたい場合、ステアリングのデッドゾーン設定が障害となる。本製品は7段階のデッドゾーン調整が可能だが、デフォルトの4では中央15度程度が無反応域となるため、じわっと曲がるということができない。

 そこで、「ASSIGN」ボタンから設定モードに入り、デッドゾーンを最小の1にするのだが、それでも多少のデッドゾーンが残る。このため、直進時も細かな修正が連続するレースシム系では、ロングストレートを走るだけでも非常に神経をすり減らす感じになる。ファームウェアのアップデートは可能なので、今後、完全にデッドゾーンをなくした設定ができるようにしてもらいたいところだ。

 精度の面では確かに神経を使う部分が多いものの、よりカジュアルなアクション系のレースゲーム(例えば「TrackMania」など)では、極端から極端への入力が素早く行なえる特性は役に立つ。特に、「ASSIGN」ボタンから「ウィニングモード」を起動すると、もともと270度しかなかったロックトゥロックが180度にまで狭まり、左右100%のステア操作を瞬時に切り返すことが可能だ。

 ペダルについては、ストロークの狭さゆえに微調整が難しくはあるものの、スプリング自体はかなり柔らかめなので、しっかり足首に神経を集中すれば、スロットルのじわ入れ、ハーフブレーキ、ブレーキのじわ抜きといった操作もできなくはない。このあたり、ペダルが硬いThrustmaster「T80」に比べれば、なんとかレースシムでも通用する感じである。

 いずれにしても、本格的なレースゲームやシムが前提としている高機能なハンコンに比べると入力精度が落ちるのは間違いないところなので、ゲーム内のアシスト機能は積極的に使ったほうがよい。ABS・TCSといったペダルワークのアシスト機能は必須といえるだろう。

テーブル等の固定のため付属する、吸盤とバイス
吸盤を使う場合はこんな感じ
バイスを使う場合
バイスのストロークはっけっこう長いので、厚めのテーブルでも固定可能

無謀を承知で本格レースシムで難関コースを走ってみる

テストドライブのため、自家製レースリグに装着された「RWA」一式

 これまでお届けした「G29」、「T300RS」のレビューでは「Assetto Corsa」を用いたテストドライブの模様をお届けしてきたので、本製品でも同様のテストドライブを行なってみた。もちろん、条件は同等。アシスト機能は、ファクトリーデフォルトで設定されている申し訳程度のABSとTCSのみで、ほかはなにもなし。この条件で難関・ニュルブルクリンク北コースを1周してみた。

【HORI RWA(Racing Wheel Apex) テストドライブ】

いつも以上に慎重に走り出しつつ、中盤近くには「案外いけますねぇ!」となってくる
しかし名物のカルーセルコーナーで痛恨のミス。パドルの押し方が甘く、チャタリングを起こした。気をつけよう。

 とにかく神経を使うのが、直進時の微調整と、ペダルワークである。ステアリングはデッドゾーンがあるし、ペダルは軽く踏んだつもりがフルスロットルまたはフルブレーキになりやすいので、両腕、両足に全神経を集中してミリ単位の制御を行なっていく。

 そうすると案外走れるものだ。序盤こそ怖くて安全マージンを大きくとった走りになったものの、全長20キロメートルのコースを半周するまでには、力加減がなんとなくわかってきて、ブレーキングもアクセルも、ステアリングもそれなりに思い通りに操作できるようになってきた。まあ、ブレーキはかなりの程度、ABSに依存していたのは間違いないけれども。

 と、調子が上がってきたところ、後半にさしかかる地点のヘアピンカーブ(カルーセル・コーナー)への進入時にパドルシフトがチャタリング的な挙動を起こし、3速→6速に一気に入った結果、一瞬の混乱から減速が遅れ、コースアウトというミスを犯してしまった。幸い大きなダメージはなかったためそのまま走り続けたものの、やや集中が途切れて終盤付近は少々ミスが増えてしまった。

 とはいえ、難関のニュルブルクリンク北コースを、ゲーム的なアシスト機能はいっさいなしで走りきれた。「Assetto Corsa」でこれができるなら、「iRacing」だろうが「F1 2017」だろうが「Project Cars 2」だろうが、「GT Sport」だろうが、なんでも来いである。HORI「RWA」で走れないレースシムはない!

ゲームパッドで遊ぶより、はるかに楽しい

 そしてとても大事なのは、安価でシンプルなとはいっても、本製品がきちんとステアリングホイールとしての機能を果たせるということである。コーナーでじわりと切り角を調整し、少しずつスロットルを踏み込んでいく、この楽しさがきちんと味わえる。ゲームパッドでプレイするのと比べれば、越えられない壁があるほど、遥かに楽しめる。

 本製品でレースシムをそこそこ走れるようになったら、ハイレベルな走りで必要となる繊細な操作感覚を完璧にマスターできるだろう。そこでより上位のハンコンを用いれば、即座にさらにハイレベルな走りができることを保証する。そういう点から言っても、HORI「RWA」はレースシム入門者の養成マシーンとして際立った体験を提供してくれることだろう。