2017年6月29日 07:00
プレイステーション 4/Nintendo Switch用アクションアドベンチャー「レゴ シティ アンダーカバー」は、Wii U版で高い人気を誇ったタイトルの移植版だ。レゴで作られたオープンフィールド「レゴシティ」を舞台に、アンダーカバー(潜入捜査)というちょっとダークなテーマで物語が展開する。
筆者には本作は“「グランド・セフト・オート」の様なクライムアクションを、「レゴゲーム」の文法でやったらどうなるか”と開発スタッフが果敢に挑んだ意欲作であると感じた。潜入捜査のためには犯罪も辞さず、街の中でハチャメチャに暴れる要素もある。もちろん「レゴゲーム」である以上、人を轢いたり、血なまぐさい要素はなく、ユーモアと笑いたっぷりだが、開発元のTT Gamesが非常に楽しんで、そして力を込めて制作している。
「レゴ シティ アンダーカバー」は良くできた、そして楽しいゲームである。本稿では本作の基本的な要素、ユニークなシステム、そしてオープンワールドで展開する「レゴゲーム」としての魅力を語っていきたい。
レゴでクライムアクション、ちょっぴり大人の雰囲気が楽しいオープンワールド
主人公・チェイスは2年ぶりにレゴシティに帰ってきた。彼は2年前凶悪犯レックスを逮捕したのだが、その際証人プログラムで保護されたはずのナタリアの素性を明かしてしまい、街から追放されてしまっていたのだ。
しかしレックスは刑務所を脱獄、ナタリアに復讐すべく街に潜伏してしまった。レゴシティの市長はチェイスを呼び戻し、レックスを再び逮捕するように命じる。チェイスは身を隠してしまったレックスの足取りを探るため、街にはびこる犯罪者達と接触、アンダーカバー(潜入捜査)を行ない、レックスに迫っていく……。
「レゴ シティ アンダーカバー」は、“潜入捜査”といういささかダークなテーマを扱っている。ギャング達の信用を得るために、銀行に忍び込んだり、偽の囚人護送車を使って囚人を逃がしたりするし、泥棒向けのサブミッションも用意されている。これまでの「レゴゲーム」とは一味異なる“アダルト”な雰囲気がある。
それでも明るく楽しい「レゴゲーム」ならではの“ノリ”が中心だ。くどいほどに盛り込まれたギャグ、画面内では突っ込み待ちのボケが終始炸裂しているし、レゴ達の動きはかわいらしくユーモラスだ。潜入捜査というハードな役回りのはずのチェイスは、なぜか農家で豚探しをやらされたり、宇宙センターで宇宙服を着ていたりする。原作ものが多い「レゴゲーム」だが、「レゴ シティ アンダーカバー」では、これまで培ったギャグセンスやノリを活用しながら、オリジナルのオープンワールドアクションをつくろう、という気合いが感じられる。
実際、「レゴ シティ アンダーカバー」は、プレイしていてその完成度の高さに感心させられた。広大なレゴシティは様々な地形がある。都市、駅、中華街に、オリエンタルな雰囲気の庭園、のどかな自然風景……様々な要素が広大なフィールドに盛り込まれている。ミッションも多彩だ。カーチェイス、探索、多人数を相手にした格闘、謎解き中心の仕掛けなどプレーヤーを飽きさせない。
本作の大きな特徴が“変装”である。チェイスはストーリーが進むごとに様々な姿を手に入れていく。ドロボウ、鉱山夫、宇宙飛行士に農夫……これらの職業には様々な能力があり、プレーヤーはこれらを活用して謎を解いていく。このゲーム性も「レゴゲーム」開発の手慣れた感じが強く、これまでの作品以上にわかりやすく、プレイしていて楽しく感じた。
「『GTA』シリーズは面白そうだけどエグイのは苦手」、「オープンワールドのゲームが好きだけど最近良い新作がない」、「遊びごたえたっぷりのゲームがやりたい」などなど、様々なユーザーのニーズに応えるゲームである。
筆者は「GTA」シリーズなどのオープンワールドのアクションアドベンチャーが大好きだが、本作も気に入った。ミッションを外れ探索したり、ミニゲームを遊ぶのもとても楽しいのだ。そしてなにより、レゴでできた街をオープンワールドとして楽しめるのがいい。クルマだけでなく、電車やヘリなどに乗ってフィールドの観光を楽しみたい、というプレーヤーには特にオススメのゲームである。
多彩な変装で難関を突破し謎を解け!
「レゴ シティ アンダーカバー」の最大の特徴が“変装”だ。チェイスはゲームを進めると様々な能力を獲得していく。基本となる「警察官」は、犯罪捜査に使える様々なセンサーと、高いところに上れるグラップルガンが使える。
センサーでは犯人の足跡を調査したどることができる。また音声・映像スキャナーとしてミッション中で活用できるほか、ミニゲームも用意されている。特に音声スキャナーは関係ない会話も拾えて、これが面白いのだ。「レゴ シティ アンダーカバー」は日本語吹き替え音声であり、細かいギャグやダジャレまできちんと翻訳され、吹き替えなどで活躍する声優達がノリノリで演じてくれている。こういった丁寧な翻訳は指すが映画会社のワーナーといったところだろう。
“変装”は変装ボタン長押しでいつでもホイールから呼び出せる。「ドロボウ」ではバールを使って鍵のかかった扉をこじ開けられる他、ペイントガンでものの特性を変化させられる。「鉱山作業員」はツルハシで岩を破壊できる上、ダイナマイトで堅いものを破壊できる。「宇宙飛行士」は謎のボックスやテレポーターを稼動でき、「農場作業員」は植物を急加速で成長させられる。
本作では状況に合わせてこれらの能力を活用してミッションに挑んでいく。いくつもの変装が必要な凝った仕掛けも多く、試行錯誤しながら前に進んでいくのが楽しい。「レゴゲーム」のお約束で、一旦様々なものを壊してから組み上げていくことで次へ繋がる仕掛けが多い。困ったときはとにかく周りのものを壊して、組み立てられるものがないか探していくのがセオリーとなる。
本作ではミッションを進めるのに「ビルダーパーツ」というレゴが必要となる。これらはミッションや、フィールドに隠されたブロックで、手元にない場合はフィールドを探索して集めておく必要があるが、一定数集めておけばすんなり先に進める。ビルダーパーツ収集は、フィールドを探索する大きなモチベーションとなる。
ミッションフィールドではストーリー時点ではまだアンロックできない仕掛けもある。これらはストーリーを進め、チェイスがさらに変装できるようになってから訪れることでより多くのビルダーパーツや、変装、乗り物などが入手できる。これらの仕掛けはフィールドにも多い。やり込みプレイ要素は非常に多く用意されている。
変装が少ない序盤はたしかに色々なところで「後でもういちど来てみよう」といわれてしまうのだが、探索は楽しい。中には序盤から手に入るビルダーパーツもあるし、ミニゲームも多く用意されている。ミッションを進めつつ様々なミニゲームにも挑戦しレゴシティを楽しむ、というのが本作のプレイスタイルだ。
超膨大なやり込み要素、レゴシティを歩いているだけで楽しい
ビルダーパーツはミッションを進めるだけでなく街の様々な施設を作ることができる。自由に車を呼び出すことができる「呼び出しポイント」が主なものだが、駅さえも作れる。駅はマップ上で見つけてアンロックするのだが、最後の1つはビルダーパーツで作るのである。ビルダーパーツはその名の通り「街を作る」ブロックでもある。やりこむほどに街も充実していくのだ。
電車は駅をアンロックすることで様々な場所に高速移動ができるだけでなく、電車を運転できる。この電車は特定のポイントでカメラアングルが変化し街の風景をいつも以上に楽しむことができる。この「観光列車」はぜひ体験して欲しいポイントだ。
他にも様々なやりこみ要素がある。「レース」と「盗難車」は、呼び出しポイントで呼び出すことができるクルマや乗り物を増やすことができるミニゲーム。チェックポイントを通過していくルールだが、狭い道や人混みの中を駆け抜けるなどハチャメチャなコースが楽しい。ボートのレースもある。盗難車は特定の場所に車を運ぶミニゲーム妨害車がガンガン現われてくる。これらにぶつかるとクルマはボロボロにされてしまうので、うまく避けてくぐり抜けなくてはならない。
他にもオブジェクトを組み立てたり、各地にあるレックスの像を破壊したり、様々な仕掛けを解いてビルダーズパーツを得るミニゲームが用意されている。全てをクリアするためには膨大な時間遊べるたっぷりとレゴシティを満喫できるのだ。
「レゴ シティ アンダーカバー」は、やはり「レゴでできた街」という要素が楽しい。オープンワールドとしてとても良くできており、そしてストーリーモードが各所に“エピソード”を加えてくれる。「ここでカンフーを習ったな」、「ここの鉱山は大変だった」、「ここはかなり凝った銀行だったな」などなど、プレイを重ねるほどに街に詳しくなる。
自由の女神や北東部の山奥、サンフランシスコのアルカトラズ島などを思わせる地形があって、アメリカの様々な名所をぎゅっと凝縮したような雰囲気も良い。そしてBGMやカメラアングル、エピソードなどで刑事ドラマのオマージュが込められているところも楽しいポイントだ。「レゴ シティ アンダーカバー」はとても楽しいオープンワールドアドベンチャーである。本作が「レゴゲーム」初挑戦、という人にもオススメしたいゲームだ。
LEGO CITY UNDERCOVER software ©2017 TT Games Ltd. Produced by TT Games under license from the LEGO Group.
LEGO, the LEGO logo, the Brick and the Knob configurations and the Minifigure are trademarks of the LEGO Group.
©2017 The LEGO Group. Nintendo properties used with permission. All Rights Reserved. Trademarks are property of their respective owners