2017年7月11日 17:00
スパイク・チュンソフトが開発中のプレイステーション 4/PC用アクション「FIRE PRO WRESTLING WORLD」のPC(Steam)版が7月11日に配信が開始となった。価格は2,000円(税別)と格安。早期アクセスゆえに当初は機能が限定されるが、順次アップデートが行なわれ最終的に正式版と同じ仕様になる。Steamでよく見かける配信/販売形態で、正式発売を待ちきれないファンには「お得!」のひとことだ。
今回は、そのアーリーアクセス版のファーストインプレッションをお届けする。ほぼ配信版と同等の評価版を使用しているため、7月11日より配信されるものと一部表現や仕様などが異なる可能性がある点をあらかじめご了承願いたい。
念のため~「ファイプロ」とはなんぞや?~
1989年にPCエンジンで発売された初代「ファイヤープロレスリング」以来、さまざまなプラットフォームでシリーズ作品を輩出し続けた2Dプロレスゲームの超定番。2003年に「完結編」をうたった「ファイヤープロレスリングZ(PS2)」が発売されたが、そこはプロレスらしく“引退即復帰”とばかり2005年に直近……といっても約12年前にさかのぼるのだが、前作「ファイプロ・リターンズ(PS2)」がリリースされる。
約12年という干支がひとまわりする長い雌伏の期間を必要としたのは、先日の「ファイプロ復活祭り」の記事でお知らせしたとおり。実は筆者も「『ファイプロ』めっちゃ久しぶりだなぁ。『リターンズ』は家のどこかにあるはずだけど、どんなだったっけ」とネット検索するとかつて自分がレビューを書いていたことに驚くという体たらく。アラフィフで記憶がアレな筆者としては、12年プレイし続けているコアなファンはともかく、恐らくそうじゃない人のほうが多いだろうし、さらにはここ数十年のプロレスブームの浮き沈みでそもそも「『ファイプロ』ってなに?」という完全にまっさらな人なども想定し、本当にざっくりと「ファイプロ」シリーズの特徴を説明したい。
ジャンル“2Dプロレスゲーム”とあるように「ファイプロ」は2D表現を徹底してきたシリーズだ。初期は2Dドット絵が当たり前の時代だから当然といえば当然だが、プレイステーション以降“ポリゴンを使った3D表現”が主流になっても「ファイプロ」だけは2D表現を貫いてきた。これは“2Dでしか表現できない感覚”が「ファイプロ」のアイデンティティでもあるからだ。
恐らく3Dモデルで作ったレスラーを動かしたほうが、なんだかんだ表現としてはリアルに寄っていくだろう。実際3Dポリゴンのプロレスゲームが複数社からリリースされたし、現在でも海外団体モチーフで毎年度版が作られる超リアルな他社製品があり、もはや遠目には現実と区別がつかないレベルまで突き抜けたグラフィックス表現を誇る。だが、それは「ファイプロ」ではない。
2Dらしいコマ割りと適度な誇張、メリハリとケレン味あふれる操作感。初代から続く、組み合ったレスラーが腰を落とす“その一瞬”にすべてをかけるタイミング勝負。そして何より自身の“プロレス観”を体現する喜び。「ファイプロ」のファンは、あふれる“プロレス愛(LOVE)”と同等かそれ以上に「ファイプロ」を愛してしまっており、こればかりは12年どころか何年経とうが身体から染み付いて抜けるものではない。
前述のとおり偉そうなことはいえない筆者だが、それでもまた言いたくて仕方がない。名言製造機の表現を一部お借りして。2017年7月11日。「ファイプロ」は帰ってきた。プロレスゲーム界の“ど真ん中”に……。
シンプルメニューでわかりやすい操作性 ~PC解像度でクッキリ大迫力!~
基本メニューはシンプルで「オフラインプレイ」、「オンラインプレイ」、「クリエイトモード」、「オプション」から階層構造となっており、とてもわかりやすい。ちなみに筆者が今プレイしている評価版はオンラインプレイ非対応だが、アーリーアクセス版はシリーズ初のオンライン対戦を実現。アーリーアクセス当初はプレーヤー操作が最大1対1、AI同士が最大4対4。これらも含め、各機能などは正式版に向けて順次拡張されていく。
オプションも「サウンド」、「コントローラー振動」、「入場シーンスキップ」、「スクリーンモード」、「コントローラーセッティング」、「キーボードセッティング」、「スタッフクレジット」、「言語」、「同期信号」と充実している。
評価版ゆえか筆者手持ちのX-input対応コントローラーで一部認識されないものもあったが、Steamタイトルで使えるものはアーリーアクセス版でも問題ないはず。不安なら今のPCゲーム界の事実上標準コントローラー「Xbox 360/ONEコントローラー」なら大丈夫。キーボード操作も味わいがあっていいが、これは黎明期8bit系PCユーザー向けというべきか。個人的にはコンシューマから綿々と続くシリーズだけに、コントローラー操作が1番しっくりくる。
「ファイプロ」といえばコレ! ~なんでも作れるクリエイトモード~
クリエイトモードは、「ファイプロ」のアイデンティティでも重要度が極めて高いモードで、操作で“俺のプロレス観”を表現する最高の味付け(演出)ともいうべき必要不可欠な存在。アーリーアクセス版は「レスラーエディット」、「レフェリーエディット」、「チームエディット、」、「リングエディット」、「ベルトエディット」、「技名称変更」、そして他ユーザーがアップロードしたエディットデータをダウンロードして使える「ワークショップ(Steam Work Shop)」がある。
アーリーアクセス版のエディットは、操作性、視認性などすべてにおいてシリーズ最高峰の完成度。最注目のレスラーエディットは「素体から作成」、「モデルから作成」の2通りが可能。「素体から作成」は文字どおり各パーツをひとつずつ丁寧にエディットしていく。「モデルから作成」は30パターンあるモデル(ひな形)を好みに応じて変えていくといった具合。エディット項目はどちらも同じなので、好きなほうを使うといい。
30パターンのモデルは、そのままオフラインでレスラーとして選択可能だった。先日の「ファイプロ復活祭り」で松本ディレクターが説明したとおり、昨今の版権事情を踏まえて「ファイプロ」伝統のパロディ名称、名前をエディットして即ポン出しというのはできなくなった。とはいえモデル30体の完成度は非常に高く、そのまま操作しても実に楽しい。「自分でエディットは面倒くさい!」というシリーズのファンも少なくないだろうが、ワークショップが充実するまでモデル30体でも十分楽しめるだろう。
さて……肝心のレスラーエディットの項目は「レスラーネーム&プロフィール」、「レスラーメイク」、「スキル」、「パラメータ」、「技装備」、「CPUロジック」が基本。「レスラーネーム&プロフィール」は、ニックネーム(入れ替え対応)、ショートネーム、ロングネーム、階級(ヘビー級/ジュニアヘビー級)、性別(男/女/男?/女?)、出身地(不明を含め40種)、生年(不明/1900~2017)、生月、生日、身長(100~240cm/不明)、体重(40~250kg/不明)。見た目の限界はともかく設定としてミゼット的なのもイケるということだろうか。
「レスラーメイク」は外観に関する項目。ファイトスタイル(ストロング、テクニック、アマレス、パワー、ルチャ、シューティング、ミステリアス、骨法、古武道、ボクシング、総合系)、身長サイズ(S/M/L/G/F)、コスチューム(最大4)、プリセット(43種)倍率(頭、胴体部、腕、手、脚/85~120&の規定範囲内)、ポーズ(直立、構え)、肌の色(統一する、部位別にする)にくわえて、今作では顔、胸、腹(腰)、上腕、下腕(前腕)、すね、もも(太腿)、手、脚の各部位ベースに色と最大9レイヤーが設定できる。前後姿のプレビューはもちろん、レイヤーを重ねるため360度アングルを把握したいパーツプレビューが回転に対応しているのは本当にありがたい。
前述の「ファイプロ復活祭り」でも触れられているとおり「元ネタそのまま」のパーツはないが、ベースにレイヤーを9つ重ねられる時点で往年のファイプラー(「ファイヤープロレスリング」プレーヤー)はニヤケが止まらないだろう。松本ディレクターの「作れないものはない」は本当で、これなら不人気で短命に終わった超マイナーレスラーもほぼ再現できるはずだ。
スキルはレスラーランク(S~E)、カリスマ(S~E)、ファイトスタイル(オーソドックス、テクニシャン、レスリング、グラウンド、パワー、アメリカン、ジュニア、ルチャドール、ヒール、ミステリアス、シューター、ファイター、グラップラー、パンサー、ジャイアント、魔性)、返し技(同ファイトスタイルの種類)、打撃応酬の有無、好みの凶器(なし、イス、標識、竹刀、ハンマー、バット、有刺鉄線バット、蛍光灯)、テーマ曲、かけ声2種類がエディットポイントの消費なしに設定可能。
クリティカル(必殺、打撃、スープレックス、サブミッション、パワー、テクニカル)、特殊スキル(なし、スター性、クイックリターン、一発逆転、スタートダッシュ、根性、反撃、一撃必殺、流血、ハードコア、集中力、柔軟性、ハードボディ、スーパースター、暴走戦士、火事場のクソ力、猛反撃、見切り、闘魂、怪物、維新魂)、回復力、回復力(流血)、呼吸法、呼吸法(流血)、精神力(精神力)、首・腕・腰・脚それぞれの耐久度、移動速度、コーナーへの上り方、コーナー上昇速度は、高く設定するごとにエディットポイントを多く消費する。評価版のエディットポイントMAXは196に設定されていた。
パラメータは突き技、蹴り技、投げ技、関節技、絞め技、馬力、瞬発力、腕力、攻撃テクニック、ラフ攻撃、総合系攻撃、エンタメ攻撃、突き技防御、蹴り技防御、投げ技防御、関節技防御、絞め技防御、飛び技防御、叩きつけ防御、対ラリアット、防御テクニック、対ラフ攻撃、総合系防御、エンタメ耐性をそれぞれ1~10段階で設定。数値の分だけエディットポイントが消費される。
技装備は、小技/中技/大技(立ち、走り、カウンター、組み、バック、仰向け頭/足、うつ伏せ頭/足、ガード攻撃、がぶり攻撃、バックマウント攻撃、さらには各方向キー入力派生)、対角線(串刺し、連続串刺し、中央)、走り場外、ロープ際場外、場外エプロンから内、駆登り飛び(立、寝)、ポスト飛び(小、中、大、小+中)金網コーナー飛び、打撃応酬、決め打撃、走りダウン、コーナー組み、雪崩(前返し、後返し)、対エプロン組、場外エプロン組、ガード返し、バックマウント返し、ツー/スリープラトン(フロント、バック、コーナー)、入場パフォーマンス(1~4)、決めパフォーマンスが設定可能。
格技を設定する際は、たとえば小技なら全選択でスタイル内で選べる全種類が表示され、パンチ、チョップ、張り手、キックなど特定カテゴリを指定するとその内訳から選べるなど、とても使いやすくなっている。
CPUロジックは、対峙した状態、組み、バック、ロープなどなど、相手の位置や状態ごとに、ダメージ量などを基準にそれぞれ合計100%の割合で局面における行動を決めさせる。勝敗に大きく関わる項目のほか、パフォーマンス、優先動作、こだわり度合、慎重性、柔軟性、協調性、場外復帰カウント、タッチワーク、凶器などもこと細かに設定できる。
こうしたCPU同士の対戦観戦も「ファイプロ」の楽しさのひとつで、微細かつ多岐にわたる設定項目の多さに「なかなか理想の動きにならない!」と悩むこと間違いなし。逆に理想が具現化されたCPUレスラーが生まれたときの感動は言葉に尽くしがたく、これまでは自宅に遊びにきた友だちに無理やり見せるしかなかったが、アーリーアクセス版で晴れて世界中のファイプラーに「どうだ俺のエディットレスラーは!」と胸を張って披露できるようになったわけだ。
レフェリーはレスラー同様に外観がエディットでき、名前やかけ声のほか、ダウン時間、フォールカウント、販促カウント、場外カウント、移動速度、乱入時間チェックがそれぞれ(長い、やや長い、普通、やや短い、短い)5段階で設定できる。チームは新チーム、設定、チーム移動、レスラー移籍や並び順が設定可能。リングデザインは名称、コーナーマット、リングマット、コーナー・鉄柱、ロープ、マット、垂れ幕の色がそれぞれ設定可能。ベルトは名称、階級(ヘビー、ジュニアヘビー)、試合形式ごとに形状とプレートを組み合わせて好きな色にエディットできる。
アーリーアクセス版の試合形式は4種類 ~初心者はミッションモードから~
昨今はスマートフォンにも4K端末がある時代。主流のPC環境でフルHD未満の人もほぼいない気がするが、前作のPS2版に比べるとPC版は同じ「ファイプロ」でもより鮮明かつ迫力ある画面を実現している。レスラーやリングなどのグラフィックスベースが同じでも、HD化された姿は(これまた当然といえば当然なのだが)見栄えが圧倒的に違う。クッキリとした2Dドット時代の雰囲気を最大限残したテイストが本当にたまらない。
さて……アーリーアクセス版の試合形式は、ワンナイトマッチ、ワンナイトトーナメント、オープンリーグ、バトルロイヤルの4種類が基本。それぞれサブメニューに、ノーマルマッチ、金網デスマッチ、断崖爆弾デスマッチ、SWA公式ルールマッチ、グルーサムファイティングが用意されている。前述のとおりアーリーアクセス版はオンラインプレーヤー対戦が最大1対1、CPU同士が最大4対4まで。オフラインはユーザー8人で遊べるが、実際それだけ人を集めるのはスペース確保も大変なので、早めにオンライン多人数対戦を実装していただきたいところだ。
オフラインで興味深いのは「ミッションモード」の存在。「組技のタイミングを覚える」など6つのチュートリアルから始まり、ナンバリング出題から「相手をピンフォールして勝利せよ!」など難しいものになっていく。クリアで技がアンロックされたというインフォメーションがあったが、もしかしたらこれをクリアしないと手に入らない技もあるのだろうか? ちょっとだけ気になるところだ。
どこからどう見ても超正統進化パワーアップ版「ファイプロ」! 買わないやつは「ダメだ!」
冒頭でお恥ずかしい告白をしたが、実際12年ぶりということで本当に久々に「ファイプロ」をプレイさせていただいた。懐かしさに目頭が熱くなるとともに、復活にふさわしいパワーアップが随所から感じられ「いくらアーリーアクセスでもマジで2,000円(税別)でいいんスか!?」と心配になるくらい。ぶっちゃけ長いことSteamを利用していると、アーリーアクセスに対してある種の“あきらめ”というか、あまりいい印象がなくなってくる。というのも、アーリーアクセスを“予防線”や“言い訳”にする開発者がいて、アーリーアクセスのまま放置されるケースも珍しくないからだ。
念のため前置きすると「FIRE PRO WRESTLING WORLD」がそうなるといいたいわけではない。松本ディレクターの情念は周知のとおりで、アーリーアクセスは待ちきれないファンに向けての文字どおり大サービスに違いない。これもSteamというプラットフォームが発展したおかげで、このように“正しく”使われる限りアーリーアクセスは開発側とユーザーの両社に大きなメリットがある。
1番大きなメリットは、正式版に向けてユーザーの意見が吸い上げられやすいことだろうか。ツイッターなどで新技の希望なども呼びかけられたが、やはりアーリーアクセスでプレイした人たちの“生の意見”はより具体性が増す。「『ファイプロ』の権化」と化した松本ディレクターや開発スタッフの方々にも、もしかしたら見落としがあるかもしれない。もしアーリーアクセス版をプレイして気になる点、気づいたことがあったら、遠慮なく意見をあげて欲しい。それが復活した「ファイプロ」をさらなる高見へと押し上げてくれるはず。微力ながら筆者もアーリーアクセス版を自腹購入して少しでも支えたいと思う次第だ。
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