「GOD WARS ~時をこえて~」レビュー

GOD WARS ~時をこえて~

日本神話の、昔話の登場人物が新たなストーリーを描くタクティクスRPG
カグヤが、キンタロウが、クマが瑞穂国の安寧をもたらす

ジャンル:
  • タクティクスRPG
発売元:
  • 角川ゲームス
開発元:
  • 角川ゲームス
プラットフォーム:
  • PS4
  • PlayStation Vita
価格:
6,800円(税別)
発売日:
2017年6月22日

 角川ゲームスから6月22日に発売されたプレイステーション 4/PlayStation Vita用タクティクスRPG「GOD WARS ~時をこえて~」(以下、GOD WARS)。本作は、日本の神話や昔話に登場するキャラクターをベースにしたタクティクスRPGだ。

 登場人物もヒロインのカグヤ、その幼なじみのキンタロウ、キンタロウと行動を共にする八百万の神であるクマ、カグヤの母親であり、富士国を治めるツクヨミ、出雲国の国王スサノオ、そして日向国の女王であるアマテラスなど、日本人なら必ずどこかで耳にしたことのある人物だ。

 ストーリーはまず富士国から始まる。長であるツクヨミが突然国を出ていってから13年。代わりに統治を任されたキツネの治世はよいとは言えず、民に不満がたまっている。不作も続くために暴発寸前だ。そしてついに民が蜂起。キンタロウもみんなを見捨てることができない、と戦いに行くことになる。それについて行くクマ。

 以前富士山が噴火したときに山の怒りを鎮めるため、カグヤの姉・サクヤはいけにえとなった。カグヤは再びの噴火に備え、いけにえとなるために竹の結界にて幽閉生活を送っていた。そこにキンタロウが現われ、カグヤを助けることになる。

 初めのストーリーはこのような流れだが、カグヤを救出するポイントでチュートリアル戦が始まる。ここではそれほど難易度も高くなく、移動方法や戦闘方法のさわりを学ぶのが目的だ。

皆を見捨てることができずキンタロウも戦いに
本殿へ乗り込む民衆
そしてチュートリアル戦へ
無事カグヤを救出するキンタロウ

戦うのが楽しいと思わせる、しっかりとしたバトルシステム

 「GOD WARS」の戦闘システムは、ちょっと前のゲームになるが「ファイナルファンタジー タクティクス」を想像してもらえればよい。前後左右から攻撃できるが、前から攻撃するよりも横から、それよりも後ろ側から攻撃をしかけた方が命中率が上がるうえ、ダメージが大きくなる。また高低差という概念が導入されており、高いところから低いところを攻撃した方がよりダメージが高くなる。つまり、敵の後ろを取り、高い位置から攻撃すれば、大きなダメージを与えられるということだ。またステージには川が流れているものも存在する。その場合は渡ることができない箇所や、「跳躍力」が必要となる場所もあるので、移動には注意した方がよいだろう。

側面、背面からの攻撃には補正がかかる
高さによる補正もあるので高低差についても注意したい
川を渡らなければならないステージも存在。この場合は移動できない場所もある
1マスを飛び越えるためには必要な跳躍力が変わる

 ところでゲームスタート時には「簡単」、「普通」、「難しい」の3種類から選んでスタートできるのだが、とにかくストーリーを楽しみたい場合は「簡単」を選んでおく方がよいだろう。「簡単」と「難しい」で敵のパラメーターを比べてみると、「難しい」ではHPも高く、攻撃力も高いなど、強くなっていることがわかる。このように難易度によって敵の強さが変わる。ある程度システムになれてきたら、ワールドマップのオプション画面で難易度を上げて挑戦してみてもよいだろう。

「簡単」での敵のパラメーター
「難しい」での敵のパラメーター

 戦う手段だが、物理攻撃系と法術攻撃系(いわゆる魔法みたいなもの)があり、キャラクターの特性によって、どちらが得意なのかは分かれている。だいたいはキャラクターのイメージに合わせてあるのでわかりやすいが、詳細はワールドマップ画面から「編成」を選び、「ステータス」を確認することでそれがわかるようになっている。

 なお戦いの基本は「各個撃破」だ。飛び込まないように注意しながら敵をおびき寄せて、味方で囲んでタコ殴りする方法で相手を倒していこう。法術が使えるキャラクターが増えてきたら、遠隔攻撃でHPを削りながら近寄って倒すのでもよい。EASYモードならとにかく飛び込んで戦っても問題ないが、「難しい」の場合はこの鉄則を踏まえていかないと、すぐに倒されてしまうことになる。

ワールドマップ画面。場所の移動などはこちらで行なう
ステータス画面。職業の選択やスキルの設定、装備の変更ができる
キンタロウは物理攻撃の能力が高いので「戦人」などの職業を選ぼう
逆にハナサカは法術攻撃力が突出しているので「法術士」の方がよい

職業レベルを上げてキャラクターを育成

 「GOD WARS」では「職業」という概念が導入されており、キャラクター独自の「固有職業」とともに、「主職業」、「副職業」をそれぞれ1つずつ割り当てることができる。職業には「戦人」、「祈祷士」、「法術士」などが用意されており、戦人なら物理攻撃の能力が高く、法術士ではその名前の通り、法術の力を使って戦うことができる。こちらもキャラクターの能力に応じて職業を割り振っておく方がよいだろう。なお、装備できるものは主職業に関係して変わるようになっている。また職業レベルを上げていくと、新たな職業が使えるようになり、その種類もどんどんと増えていく。

 本作で登場する武器と防具はかなりの数に上る。装備品によって能力が増減するのは当然だが、遠くの敵を倒せる弓矢だけでなく、隣2マス分攻撃できる武器もあるなどその種類は多彩だ。これだけ数が多いとどのように装備したらよいのか分からなくなってしまうが、「お任せ装備」というシステムが用意されており、「前衛攻撃向け」、「前衛防御向け」、「中衛向け」、「後衛向け」の4種類で自動的に割り振ることができる。どれにしたらよいのか迷った場合は、こちらを使うのがよいだろう。また道具や武器、防具などを売っている「よろず屋」では「試着」といって、そこで売っている武器や防具を試しに着けてみることができる。ここにも「お任せ試着」があるので、お金に余裕があればお任せ試着で強い装備を試着して、そのまま購入という流れも可能だ。

 戦闘中にMPを消費して使える「スキル」だが、職業ごとにさまざまな能力が用意されている。戦闘が終わったあとにもらえる「JP」をスキルツリーで割り振ることで、その能力が使えるようになるとともに、レベルアップも可能だ。序盤ではカグヤは「回復の祈り」のスキルを向上させておいて回復役として使い、キンタロウとクマは「強撃」などの物理攻撃系のスキルを獲得しておくと便利だ。スキルの中には「パッシブ」として、常に物理攻撃力を上げる「物理攻撃強化」や、盾を装備できる「盾装備」といったものがあり、その中から3つだけ選んで装備させることができる。戦闘を有利に進めるためにも、スキルの用意は万全にしておきたい。

装備に迷ったら「お任せ装備」で設定してしまおう
「よろず屋」でも「お任せ試着」によって戦闘での役割に応じた装備を調えられる
職業ごとにスキルが用意されている。JPも職業に合わせて割り振られる
「戦士」のスキルツリー。JPを消費してスキルを覚えたり、レベルアップさせることができる。水色のアイコンがパッシブスキルだ

 なお戦闘中、フィールドには「つづら箱」が置かれている。これには2種類があり、きらきらしている箱の方には珍しいアイテムが入っていることもある。行動の中の「調べる」というコマンドでつづら箱を開けることができる。ただし中にはわなが仕掛けられているものもあり、アイテムを得ることができるものの、状態異常やダメージを負ってしまうこともある。わなを回避するためには「錠前破り」というスキルを覚える必要がある。

フィールド上のつづら箱を開けてみよう
ここでは薬草を手に入れることができた
きらきらとしたつづら箱を発見
こちらには戦闘不能を回復する「生命の石」が入っていた
つづらの中にはわながしかけられているものも
移動が制限される「鈍足」になってしまった

物語は出雲国、そして日向国へ

 ストーリーはさらに進む。カグヤは諏訪に住んでいる姉・イワナガの元を訪ねる。幽閉から脱出して諏訪に来ることを驚くイワナガだが、一行を歓迎する。そしてカグヤは諏訪の地で八百万の神に出会う。神々はアマテラスとスサノオが戦支度をしていることを告げる。13年前に富士山が噴火したときも、アマテラスとスサノオは戦おうとしていた。しかしツクヨミが仲裁する形でいったんは収まったのだが、山の怒りは収まらなかった。そこでサクヤがいけにえになってしまった。今回も同じようなことなのだとしたら、ツクヨミは再びアマテラスとスサノオを止める旅に出たのか……。カグヤたちの目的地が出雲に決まった。そしてまずは、イワナガの勧めで、各務原にいるハナサカを訪ねることにする。

ひさびさの再会を喜ぶカグヤとイワナガ
八百万の神によると、アマテラスとスサノオが戦の準備をしているとのことだが……

 各務原でカグヤを待ち受けていたハナサカ。カグヤの優しい気配が近づいてくるのを感じていたという。ハナサカもツクヨミの行方は知らなかった。しかし神々の怒りを静めるための鏡を磨いていたことを明かす。この鏡は後々、荒御霊に侵されて祟り神となってしまった神々を救うだけでなく、荒ぶる者たちの意識をも正常にし、カグヤへ協力する仲間になっていくことになる。

 この後も「段」が進むごとにさまざまな出来事が起こり、仲間となる人々も登場していく。キャラクターが増えると戦いのバリエーションが広がるため、第1章の終わり頃には思い通りに戦えるようになっているのではないだろうか。

各務原に住むハナサカ。ツクヨミに仕えたこともある
八百万の神としての力を込めて磨いた鏡
ハナサカは物理攻撃よりも法術攻撃の方が上回る
遠くの敵を法術攻撃で倒そう
増えていく仲間は「絵巻」-「紗絆絵図」で確認可能だ
キャラクターのおおよその背景などが参照できる

 なおストーリーが進行していくと、アイテムなどを買える「よろず屋」だけでなく「やしろ」に行くことも可能となる。ここではミニクエストを受けることができるほか、「参拝」して品々を納めることで、命中力や回避力が上がるなどの効果を得ることができる。メインストーリーだけではキャラクターの成長が足りないと思ったときや、もう少しお金を稼ぎたいと思った場合には、どんどん受けるようにしたい。「推奨Lv」も表示されているので、自分のレベルが推奨Lvに達しているならば、クエストをこなしていった方がよいだろう。

「依頼」と「参拝」ができる「やしろ」
アイテムを奉納することで特別な効果を得ることができる
「依頼」ではミニクエストを受注することが可能
ミニクエストも戦闘方法などは同じ

次から次へとストーリーを進めていきたくなる作り

 「GOD WARS」をプレイしてみて思ったのだが、1つひとつの戦闘もテンポがよく、よっぽどな悪手を取らない限り戦闘不能になることもないし、ある程度の戦略性もあり、戦うのが楽しいと思わせるようになっている。キーキャラクターの登場ステージでは、多少難易度が高いと思ったものの、トライアンドエラーを何回か繰り返せばその攻略法も見えてくるようになっているので、飽きずに続けていくことができるだろう。

 加えてストーリーも面白い。冒頭にも述べたが、よく知る名前のキャラクターたちが登場するので親しみを持ちやすいし、次の展開はどのようになるのかと、ついつい先のステージへ進めていきたくなる。今回はストーリーの本の序盤しかお伝えしていないが、この後怒濤の展開を見せる、と言うことだけはお伝えしておこう。本作のキャラクターデザインを手がけた箕星太朗氏や、モンスターデザインを手がけた竹安佐和記氏のファンならもちろんプレイしておくべきだが、日本神話に興味があったり、「GOD WARS」の世界観に何となく惹かれたなら、是非とも遊んでみてほしいタイトルだ。