2016年11月14日 00:00
「タイタンフォール」は、タイタンと呼ばれる巨大ロボによる重厚バトルと、そのパイロットによるアクロバティックなアクションという、全く異なる2つの要素を1つの流れるようなゲームプレイにまとめあげた傑作だ。2014年春に登場した前作はまだまだ色褪せない面白さを保っているが、その登場から2年半を経過した10月28日、個性的な内容をさらに拡充した続編「タイタンフォール 2」がエレクトロニック・アーツから発売され、多くのプレーヤーが日夜プレイに勤しんでいる。
最新作の特色がわかるところまでやりこんでみると、本作はタイタン&パイロットの複合という骨格を守りつつも多くの点で前作からフィーリングが変わっていることがわかる。ゲームの根本を揺るがすような革新要素はないが、尖った部分は同じくらい備えつつ、より多彩で新鮮な体験を得られるよう再構成した1本、という印象だ。本作は同じEA傘下の人気シリーズである「バトルフィールド」のように、換えの効かない基本テイストは守りつつも毎作興味をそそるような新味を入れていく、定番シリーズとしての歩みを見せているようだ。
前作では描かれなかった独特の世界観が明らかに。心に残るストーリーモードで対戦に備える
本作で大きな変化のひとつとなったのはシングルプレイ用ストーリーモードの導入だ。前作は対戦オンリーのゲームで、今作も対戦メインのゲームなので作品の本質は変わっていないが、無味乾燥としたチュートリアルではなく感動の冒険物語を体験しながら本作独自のユニークなゲームシステムやテクニックも磨けるというのはとても良いことだ。
正直筆者も前作をやりこんでからかなりの時間が経過していて、本作独自のウォールランニングを活かしたアクロバティックアクションや、タイタンの様々なガジェットを駆使した戦い方の感覚をだいぶ忘れていた。今作では発売プラットフォームがPS4にも拡大しているため、「タイタンフォール」は今作が初めてというゲームファンも多いだろう。
このシングルプレーヤーキャンペーンでは、操作の基本から、作中に登場する全てのタイタン・ロードアウト(装備)までを使いこなせるよう、プレーヤーを成長させてくれる。オンライン対戦デビューの準備ができるだけでなく、ストーリー展開も心に残る出来栄えだ。
ストーリーで描かれるのは宇宙時代、舞台はフロンティアと呼ばれる辺境の星系だ。ここでは巨大開発企業IMCが率いる私兵集団と、ミリシアという入植者達の軍隊が支配と開放をめぐる争いを続けている。主人公のジャック・クーパーは、IMCの抑圧に立ち向かうべくミリシアに志願した下っ端のライフル兵だ。その彼がとある戦いをきっかけに、バンガード級タイタンBT-7274の搭乗を任され、パイロットとして頭角を表していくことになる。
本作のテーマは「機械と人間の絆」。人工知能が登場する作品ではしばしばクローズアップされるテーマだが、それが本作では駆け出しのパイロットと、歴戦のタイタンという対比で描かれていく。ロボット三原則よろしく、タイタンには3つの絶対指令がプログラムされている。「1.パイロットへリンクせよ」、「2.任務を遂行せよ」、「3.パイロットを保護せよ」、だ。この掟を頑なに守るBT-7274は、新人パイロットである主人公にとってこれ以上なく頼もしい存在だ。はじめは保護者として。
この世界では、タイタンのパイロットは超エリート兵だ。専用のジャンプスーツによりウォールランニングやダブルジャンプの能力を得、超人のように一般兵をなぎ倒して戦うさまはほとんど超能力者である。それがタイタンに搭乗すると、巨大な手足を意のままに操り、弾丸を受け止めて跳ね返し、多数の敵を一度に撃滅する殺戮マシーンと化す。そういったパイロットの戦い方をひとつひとつ、BT-7274は教えてくれる。
ときには敵の罠にかかり、離れ離れになることもある。超人的なパイロット、自律思考が可能なタイタンはどちらも、単独でも戦える存在だ。でも、互いに助け合わなければその道程は厳しい。そんなときでもBT-7274は感情を表すことはないが、どんな状況であれひたむきにパイロットを保護しようと奮闘する。それがジャック・クーパーのパイロットとしての成長を促し、人間と機械の間により強い信頼関係を作り上げていく。その流れがプレーヤーの心を打たずにはいられないのだ。
といったテーマを軸に進む本作のストーリーモードは、タイタンと二人三脚で戦う、あるいはパイロット単独で戦う多彩なロケーションがあり、ウォールランニング等の本作独自のアクションを駆使した探索や謎解き、目をみはるような風景、手に汗握るボス戦などなど、非常に濃密だ。プレイ時間を引き伸ばすような同じことの繰り返しはほぼ無いといっていい。ボリュームとしては5時間程度でひととおりクリアできる内容となっているが、大作映画のような見ごたえ、そしてやりごたえがある。
そしてクリアするころにはパイロットとタイタンの扱いをひととおりマスターしていて、オンライン対戦への準備が整っているという寸法だ。ちょっと切なさの残るエンディングを味わったら、さっそく対戦モードに突入してみたくなる、そんなふうにできている。もちろん高難易度のチャレンジや、観察力と移動テクニックを要求するコレクタブル要素など、シングルプレイならではのやりこみ要素もきちんと用意されているので、ストーリーモードを納得できるまで繰り返し遊んでもいい。
多数の要素が新しく。前作同様、尖った内容もより濃密となったオンライン対戦
本作のメインディッシュであるオンラインモードは、かなり長期のプレイを前提として組み立てられている。それはパイロットやタイタンのカスタマイズ要素(武器やガジェットなど)をひととおりアンロックするのに計算上で数百時間かかることからもわかるが、パイロット・タイタンまわりのシステムやバランスが作り出すゲーム性そのものが、長時間の経験を経てはじめて本質的な深みに到達できるよう設計されているように感じられるからだ。
基本的なテイストは前作と同じく、とてもスピーディで爽快かつ迫力あるアクションを楽しめるゲーム性だ。パイロットとして地形をアクロバティックに駆け回り、空中戦を交えたダイナミックな銃撃で敵を倒していく。巨大なタイタンに遭遇すれば地形を活かした奇襲やクローキング等の欺瞞アビリティと対タイタン武器で対応し、タイタンメーターが溜まって自分のタイタンの召喚が可能になれば、巨大兵器の圧倒的パワーで暴れまわる。本質はまったく変わっていない。
それでも加えられた変更は数多く、パイロットに加えられたスライディングのアクションでは敵に対する投影面積を最小にしつつトリッキーな動きを実現し、グラップリングフックによって本作のアクロバティックアクションにさらに輪をかけた立体機動が可能になっていたりもする。習得は難しいが、使いこなせれば達人の気分を味わえる。他にも変化したことはたくさんあるが、なかでもタイタンのカスタマイズ要素は全部変わったと言っていい。ただ、実はここに前作のプレーヤーからすると抵抗のありそうな部分もある。
前作では3種のシャーシに様々な武器やガジェットによる戦闘アビリティを自由に組み合わせることができ、非常に自由度の高いカスタマイズが可能だった。それが今作では、シャーシの種類は6種類に増えたものの、武器の組み合わせは固定となった。各シャーシが持つ戦闘アビリティも固定なので、わかりやすくいうと、格闘ゲームのキャラ選択に近い仕様になったと言える。
これはプレーヤーから自由を奪ったように見え、抵抗を感じる部分だ。しかしこの変更が「タイタンフォール」というゲームの本質的なゲーム性を高めている。重要なのは、本作ではタイタンの姿をチラと見れば、それがどんな能力を持っていて、どんな戦い方をしてくるかがわかるということだ。前作では武器もガジェットも組み合わせ自由だったので、しばらく交戦して手の内を全部見るまで全容を把握しにくかったが、本作では出会った瞬間に「こいつはこれが得意でこう来るからこう戦おう」とわかるのだ。味方のタイタンも同様に、「こいつとはこういう連携ができるな」とすぐわかる。おかげでタイタン同士の戦闘がよりわかりやすいものになった。
これはゲーム中でのタイタンの新陳代謝(破壊、再生のペース)が高まったこととも大いに関係している。タイタンの防御機構はシールド、アーマー、コアの3段階となっているが、前作ではシールドが自然回復していたところ、本作では特殊な方法(敵タイタンからバッテリーを奪い、味方のタイタンに移植する)をとらない限り回復しなくなった。このため、どんなに強いプレーヤーが操るタイタンでも、続けて攻撃を受ければあっけなく破壊される。それに加えて本作ではパイロットの対タイタン兵器が目に見えて強化されたため、とにかくタイタンがドカドカ壊れる。このおかげで状況がより目まぐるしく変化するようになったのだ。
このようなタイタン新陳代謝のペースでは、前作のようにしばらく交戦しないと互いの手の内がわからないという内容になっていると、わかる前にタイタンが壊れてしまうため駆け引きが大味になってしまうだろう。味方との連携、例えば味方にシールドを張ってもらって、自分はその背後から狙撃をするといった協力プレイも、その場その場のアドリブで瞬時に判断できる。タイタンの見た目で手の内がわかるように変更された、という理由はまちがいなくこれで、本作におけるタイタン同士の戦いや連携をより緻密・濃密にしている。
ゲームの流れとしても、タイタンが長生きすぎるとプレイ内容も硬直してしまうという恐れがあった。その点本作ではタイタンを使ったバトル、パイロットのみでのバトルといった変化が急ピッチで進んでいき、プレイの流動性が高まった。このあたりの方向性がわかると、本作のプレイが俄然面白くなる。そしてこの点、「プレイの流動性を高める」というのがおそらく本作のゲームデザインにおける重要な隠れテーマだ。
これまた流動性の高い定番ゲームモード「賞金稼ぎ」
本作で最も遊ばれているゲームモードは「賞金稼ぎ」というもので、非常に流動性の高い、手に汗握る秀逸なルールになっている。
「賞金稼ぎ」では、マップ中の規定の地点に出現するNPC兵および賞金首と呼ばれるNPCタイタンがターゲット。NPCはウェーブ方式で出現し、第1ウェーブでは一般兵中心、第2ウェーブでは賞金首タイタンが出現、第3ウェーブではさらに多くの兵士、第4ウェーブでは賞金首タイタンが2体出現……というふうにどんどんエスカレートしていく。5対5の2チームに分かれたプレーヤーは、これらのターゲットの撃破を巡って対決する。ターゲットを撃破するとチームスコアとなり、より多くのターゲットを倒すことがチーム勝利につながるというルールだ。
ここで面白いのは、ターゲットを倒すとスコアと同時に各プレーヤーにクレジットボーナスが与えられる点。一般兵なら10ドル、機械兵なら20ドル、タイタンならダメージに応じて最大500+とどめボーナス100ドルという感じで、各プレーヤーが所持することになるポイントだ。そして与えられたクレジットは、ウェーブ終了後に一定時間使用可能になる「バンク」にてアップロードすることで、はじめてチームスコアとなる。獲得しても、アップロードするまでスコアとして確定しないというわけだ。
そしてアップロード前のクレジットボーナスを抱えたままパイロットが倒されると、所持金額の半分が敵の手に「強奪」される。ここでパイロット同士の熾烈な駆け引きが生じる。マップ上2箇所に配置された「バンク」は狭い屋内にあるためタイタンに乗ってはアクセスできず、パイロットの姿で入っていかねばならない。また金額が大きいとアップロードに時間がかかり、バンクのそばに釘付けになる。全てのプレーヤーが最も無防備になる瞬間だ。その瞬間を狙って倒し倒される混戦が発生。NPCの撃破で遅れをとったチームは「バンクで待ち伏せて強奪する」という作戦も大変有効なので、ありとあらゆる手を使った騙し合い、化かし合いが勃発する。
NPCをなぎ倒すには当然、タイタンが有効だ。タイタンはパイロットよりも足が速いし、火力もある。ドロップポッドひとつぶんのNPC集団をパンチ2発くらいでなぎ倒せるから、大半のプレーヤーがタイタンを呼び出した後はゲームのテンポもよりエスカレートしていく。NPC出現地点をめぐるタイタンバトル、ウェーブ間におけるバンク周りのパイロットバトル、この2つの要素が順繰りに繰り返されることで、ゲーム全体が非常に高い流動性を持って展開していくわけだ。
チーム内でタイタンの呼び出しタイミングを合わせて数で圧倒しNPC出現ポイントを完全に抑える作戦や、あるいはバンクでの待ち伏せなどをうまく成功させると大逆転の可能性もあり、勝負が決まる最後の瞬間までに汗を握る。繰り返しプレイすることで新たな作戦、勝負どころを見つけたり、パイロットカスタマイズやタイタンの種類に応じた戦略の幅もあり、新鮮味が尽きることがない。間違いなくこれが「タイタンフォール2」らしい面白さを100%発揮するゲームモードだ。
若干の難点もあるものの、進化した「タイタンフォール」として申し分なし
上記のように本作のオンラインプレイは、前作とはタイタンを中心とするバランスがある方向性をもって変わってはいるものの、その結果としてゲームの流動性がより高まり、プレイするほどにより面白くなってくるという感触がある。ある意味でゲームのほうが新しいシチュエーションへの遭遇を強制してくるので、立ち回りのレベルから、作戦、戦略のレベルまで、「こうしたらもっとうまくできるのではないか」という手応えをそこかしこで感じられる。そのあたりのが工夫の余地がなくなり、あとはエイムを磨くだけ、みたいな煮詰まり加減になるのは相当先の話だろう。
ただ、難点がないわけではない。例えば、タイタンを呼び出すメーターを貯めるため、必ず何らかの撃破スコアを重ねる必要がある点。前作ではスコア獲得での加速に加えて時間による自然増もあったので、全然活躍できなくても一定時間内にはタイタンを呼び出せるという点で救いがあったが、本作ではメーターの自然増がなく(あるいは極端におそく)とにかく何かをキルしなければずっと生身で戦うはめになる。このため弱肉強食の色合いが濃くなっていて、初心者が上級者の集まる部屋に入るとなにひとつできないという悲惨な目に遭いやすい。そこで心を折らず、テクニックを磨いてある程度戦えるようになれば問題ないが、オンラインプレイデビュー時が一番きついのは間違いない。初心者救済策として何か欲しいところである。
もうひとつは、ゲームモードが多いためにプレイ人口の部分集中が起きており、結果的にあまりプレイできないゲームモードが存在すること。本作には全部で10種類のゲームルールがあり、上述の「賞金稼ぎ」やシンプルなチームデスマッチとなる「消耗戦」はプレイ人口が多く問題なくマッチングできる。が、モードメニューの右のほうにある他のルール(例えば『キャプチャー・ザ・フラッグ』や『パイロットVSパイロット』などなど)は、そもそも参加しようとしているプレーヤー数が少なく、なかなかマッチングできない。なかなかマッチングできないと、人はすぐマッチングするモードに移動するため、ますます不人気のモードからは人がいなくなり、0か100かという両極に陥る。という悪循環になっているようだ。
このため本作できちんとプレイできるオンラインモードが非常に限られてしまっているのはちょっと残念だ。このようにいくつかのモードについては今後何らかの方策でもっと遊びやすくして欲しいところ。例えば「今日はCTFをプレイするとメリットボーナス!」みたいなイベントが毎日あると良さそうだ。「賞金稼ぎ」や「消耗戦」は黙っていても大勢プレイしているだだろうから。
といったツッコミどころはあるにしても、本作は傑作「タイタンフォール」を進化させた作品として申し分のない出来にしあがっているように思える。とにかくプレイに慣れてくると、対戦をいちど始めると延々とラウンドを重ねてしまう魅力があるのは確かだ。本作のプレーヤーが長く遊んでいけるよう、開発元のRespawn Entertainmentには継続的に的確な施策を実施していくことを期待したい。