1/72「タイ・インターセプター」レビュー

1/72「タイ・インターセプター」

精度の高いモールドと作りやすさとが魅力の「SW」ビークル最新作

ジャンル:
  • プラモデル
発売元:
  • バンダイ
開発元:
  • バンダイホビー事業部
価格:
2,592円(税込)
発売日:
2016年7月30日

 バンダイが展開中の「スター・ウォーズ」(以下、「SW」と略)プラモデルの最新商品、1/72「タイ・インターセプター」が、7月30日に発売された。

 バンダイは2014年からプラモデルによる「SW」シリーズを展開している。ダース・ベイダーをはじめとする人気キャラクターを立体化するのに加え、作品を象徴する様々なビークルも続々と発売している。

 バンダイのホビー事業部が、これまで発売した製品のノウハウを詰め込み、精密なディテールと作りやすさの両方を確立し定評を得ているこのシリーズ。今回組み立てた「タイ・インターセプター」はもちろん後者に当たる製品で、これまでに発売された「タイ・アドバンストx1」、「タイ・ファイター」に続く銀河帝国軍の戦闘機となる。

 「SW」シリーズのプラモデルと聞いて筆者が思い出すのは、アメリカのMPC製の輸入プラモデルだ。特に「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」が公開された1983年頃に発売されたものは、劇中のスチール写真を使ったインパクトのあるもので、当時中学生だった筆者に強烈な印象を与えた製品だった。とはいえ、輸入品だけに値段が高くなかなか手が出せるものではなく、模型店の棚の上のほうにあるシュリンクされたパッケージを、指をくわえて眺めていた記憶がある。

 その後2000年代に入っての国内メーカーのファインモールドによるキット化(現在は生産終了)を挟んで今回、国内大手のバンダイが、昨年の「フォースの覚醒」公開に先駆けて2014年からシリーズ化し、ついにガンプラなどと同じ棚に「SW」のプラモデルが並べて販売されることになったのである。

 今回キット化された「タイ・インターセプター」は、帝国軍の「タイ」シリーズの戦闘機の中でも筆者が特に好きな機体であり、今回このレビューの題材として選んだ。バンダイホビー事業部のノウハウが詰め込まれた「SW」ビークルの最新キットの出来映えに改めて注目いただきたい。なお製作は塗装などを行なわない“素組み”にて行なっている。

コクピットの周囲はシールで色分け。「開発者の執念」を感じさせるディテール表現

「タイ・インターセプター」パッケージ。黒を主体としたパッケージはシリーズ共通だ

 この「タイ・インターセプター」は、「スター・ウォーズ エピソードVI ジェダイの帰還」に登場する、銀河帝国軍の戦闘機だ。六角形の翼(設定ではこの部分ソーラーパネルだが、本稿では便宜上“翼”と呼称する)が特徴的なタイ・ファイターの後継機であり、より機動性に優れた機体として、エンドアの戦いの第2デス・スターを巡る空中戦にて、反乱同盟軍のファイターやミレニアム・ファルコンを苦しめる様子が描かれている。

 タイ・ファイターから継承する中央部の球状コクピットに、タイ・アドバンストのような傾斜した翼を持ち、そこにはコクピットからの視界を確保するための大きな切り欠きが設けてある。その先端には4門のレーザーキャノンを装備していて、これらの特徴はもちろん本キットでも再現されている。

 1/72スケールでキット化されたこの「タイ・インターセプター」。8枚のランナー構成で、パーツ数はかなり少なめだ。ガンプラのシリーズなどと比べると、色分けは少なめなものの、それでも特徴的な翼の黒いソーラーパネルなどは塗装をしなくても、その見た目は再現されている。

【「タイ・インターセプター」パーツ】
A2パーツ(左)、B1パーツ(右上)、B2パーツ(右下)
Cパーツ(上)、Dパーツ(下)
Gパーツ(左上)、SWE1パーツ(右上)、SWB-13パーツ(下)
マーキングシール(左)、水転写デカール(右)

 インパクトがあったのはコクピットの周囲の色分けや、内部のパネルなどがマーキングシールによって再現されていた点だ。コクピット後部の色分けにはわずか数ミリ角のシールを使用している場所もあり、「開発者の執念」のようなものを感じられた。

 ただそのサイズだけに、シールでは粘着力に若干の不安があったのも確かで、この部分に関しては塗装してしまうのも1つの手かもしれない。またシールと同じパターンの水転写式デカールが付属しているのもポイントで、貼る場所によって使い分けてもいいだろう。

【コクピット部分の組み立て】
着座したタイ・インターセプター・パイロットが付属。モールドの細かさに注目。ヘルメットの帝国軍マークはシールを使用している
コクピット内部には合計15枚ものシールを貼ってモニターを再現している。後述の枠のみのキャノピーのパーツを使えば、若干見やすくなるかも
キャノピー(下)と天井(中)は枠のみの色分けパーツか、シールで色分けしたクリアパーツのどちらかを選択。作例ではキャノピーを後者、天井を前者で製作している
コクピットの完成。キャノピー左右のモールドにはシールを貼っている。これだけでも見栄えはする

 作っていて感じられたのは作りやすさを追求した設計だ。翼などに使われている似通ったパーツは一部形状が変わっていて、パズルのように正しく組み立てないと、パーツがかみ合わない設計となっている。これにより、ランナーからパーツを切り取ってしまったあとでも、迷うことなく正しく組み立てられるというわけである。

【コクピット部分の組み立て】
翼はソーラーパネルのパーツを骨組みで挟み込むようにして組み立てる。大きめのパーツながら、モールドは非常に細かい
黒いパーツを見てみると、写真の左右で切り欠きの形状が異なるのがわかる。間違えるとパーツがかみ合わない設計だ
最後に翼の枠となる部分をはめ込む。こちらもパーツが違うとはまらないので、間違えずに組み立てられる
先端にそれぞれレーザーキャノンをはめ込んで完成。これをコクピットにはめ込めば、本体は完成となる

 組み立て自体は非常に簡単で、慣れた人なら1時間かからないで完成させることができるのではないだろうか。1番大変だったのは前述のシール貼りの作業だったわけだが、素組みの場合は貼ることで印象がかなり変わるので、見えるところだけでも貼っておくのがオススメだ。

 また発売中の「Xウイング・スターファイター」や「ミレニアム・ファルコン」などと比較して、本体の色がグレーと暗めなので、スミ入れをしなくてもモールドに影が落ちたときに見栄えがするのもいいところだった。もちろんスミ入れや部分塗装を施すことでより劇中に近い印象になるのは間違いないだろう。

 これだけ精度が高く作りやすい「SW」ビークルのキットを、実勢価格2,000円程度で入手できるのは、冒頭で述べた昔を知っているだけにやはり驚かされる。コレクションとして揃えるにも適度なサイズと価格であり、複数並べて飾るのも楽しいキットだ。現状で「エピソードIV~VI」の主要ビークルはかなり充実してきた印象もあるが、個人的にはまだキット化されていない「Bウィング・スターファイター」や「シャトル・タイディリアム」などの発売に期待しているところだ。

 プラモデルとして組み立てて楽しむとともに、コレクション的に集めるのも楽しそうなこの「SW」シリーズ。映画で観たお気に入りのビークルやキャラクターがキット化されているなら、ぜひ手にとってもらい、作りやすさと完成度を両立させた内容を体感してみてほしい。

【「タイ・インターセプター」完成!】
完成した「タイ・インターセプター」。デス・スター表面をイメージさせるディスプレイ台が付属する。可動箇所はない
機体正面。コクピット内部は辛うじて見える印象だ。簡単な電飾を施して内部を見えるようにするのもいいかもしれない
機体背面。少し分かりづらいが、コクピット後部の色の濃いグレーの部分に色分けのシールを貼った場所だ
機体上部。天井部分のスリットは窓であり、クリアパーツのほうを使えば劇中の雰囲気には近くなる
機体サイド。特徴的な形状の翼も完全再現。ビームキャノン先端は細いので注意が必要だ
専用の穴などは開けず、後部の六角形のモールドにスタンドを差し込んでディスプレイする考えられた構造だ
スタンドは前後左右に3段階ずつ角度を付けられる設計で、機体を傾けた動きのある角度でディスプレイ可能だ
ビームキャノンの発射時のエフェクトパーツが2本付属。劇中のシーンを再現可能だ
タイ・インターセプター・パイロットと思われるシルエットのフィギュアが付属。前弾の「Aウィング・スターファイター」から、立ち姿のフィギュアはこの仕様となった