★DSゲームレビュー★
自由度が高く、痒いところに手が届く作りで 爽快な戦闘が楽しめるSRPG 「シャイニング・フォース フェザー」 |
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2009年2月19日、株式会社セガから「シャイニング・フォース フェザー」(以下、本作)が発売された。「シャイニング」シリーズというと、近年はアクションRPGとしての印象が強いが、本作はシリーズの原点に回帰した、シミュレーションRPGとなっている。開発を担当しているのは、「サモンナイト」シリーズなどでシミュレーションRPGに定評のある株式会社フライト・プランだ。
本作のゲームの流れは、物語が展開されるストーリーパート、複数の味方キャラクターを操作して敵に立ち向かっていく戦闘パート、キャラクターの強化を行なう探索パートの3つに大きく分けられている。ここからは、その3つのパートの概要と、本作の魅力について紹介していこう。
■ 魅力的なキャラクターが活躍するストーリーパート
ゲームをスタートすると、まずは主人公であるトレジャーハンターのジンと、その相棒のケンタウロスのベイルが、遺跡を探索中に、飛空艇を起動するための鍵であるコアユニットのアルフィンと出会うところから始まる。アルフィンのマスターとして登録され、飛空艇を手に入れたジンが、各地を訪れる中で新たな仲間と出会い、アルフィンと飛空艇を手に入れようとする帝国と戦っていく、というストーリーだ。
ストーリーパートでは、自由奔放な性格のジンが、高圧的な帝国の将軍達を相手に、一歩も引かずに戦いを挑んでいく物語が楽しめる。ストーリーが進んでいく中で味方になる仲間たちも、どのキャラもひとクセある個性的なキャラクターが揃っており、キャラクター同士の掛け合いを見ているだけでも楽しい。
また、メインストーリーでは、豪華声優陣によるボイスが再生されるほか、重要な場面ではムービーも再生されるなど、DS離れした演出が楽しめる。これらの効果的な演出の数々を見ているうちに、知らず知らずのうちにストーリーに惹かれていくことだろう。
■ 戦闘パートでは、自由度の高い戦闘が楽しめる
出撃準備では、一定の出撃位置に好きなように味方ユニットを配置できる。防御力が高い盾役のキャラクターや、足の遅いキャラクターを前方に配置するのが基本だ |
ストーリーパートの次は、戦闘パートとなる。ここからは戦闘パートの概要について紹介していこう。
戦闘が始まると、まずは出撃準備として、味方ユニットをフィールドに配置するところから始まる。フィールド全体を見て、敵ユニットの位置を考えながら配置していこう。
戦闘は、ターン制のシミュレーションとなっており、1ターンに1回、敵味方のユニットに行動がまわってくる。
味方ユニットを行動させる際は、画面左上にあるMOVE(移動力)ゲージがなくなるまで移動可能となっており、攻撃スキルやフィールドスキルなどの行動を、フォースと呼ばれるゲージを消費して行なうようになっている。MOVEやフォースがなくなるまでは、何度でも行動できるので、移動して敵ユニットを攻撃し、さらに移動して敵ユニットの攻撃範囲外に退避する、といったことも可能だ。
戦闘フィールドは、マスなどによって区分けされておらず、自分の好きなようにユニットを移動させることができる。ユニットの周りには攻撃可能な範囲も表示されており、敵ユニットが攻撃可能範囲内に入るとハイライト表示されるため、攻撃できるかできないかもわかりやすい。
■ 戦闘カットではボタンを押すだけの簡単な操作ながら
爽快感のある戦闘が楽しめる
攻撃を選択すると、戦闘カットへ画面が変化する。戦闘カットでは上画面の右下に、A、B、X、Yボタンに攻撃スキルと攻撃可能回数が表示され、この中からボタンを押すと攻撃アクションが開始、フォースがなくなるまで連続攻撃可能となっている。
攻撃時にはキャラクター下にバーが表示され、バーの中央に来た際にタイミングよくボタンを押すことで大きなダメージを与えられる。基本的にバーが伸びる速度は一定なので、タイミングよく押し続ければいいが、敵を倒した際などにスローがかかったりするので、確実にいいタイミングで押すには、目押しする必要がある。
また、戦闘カット中にはボタンを押し続けることで連続攻撃でき、それによってバーストゲージが増加、バーストレベルが上がると、1回あたりのダメージが増加するようになっている。バーストは後述するユニオン攻撃やコネクト攻撃時のダメージに大きく影響するので、意識しておきたい要素だ。
攻撃には、通常の攻撃スキルのほかに、フォースが100%のときに出せる、複数同時攻撃やフォースMAX、仲間と協力して出すユニオン攻撃やコネクト攻撃など、さまざまな種類がある。ここからは、これらの攻撃方法の違いと特徴について紹介していこう。
・複数同時攻撃
フォースが100%あるときは、範囲内の敵ユニットを複数体攻撃することが可能となる。複数同時攻撃では、武器の種類によって2体目以降の敵に与えられるダメージが変化するが、1体目には通常の攻撃スキルと同じだけダメージを与えられるので、攻撃範囲内に敵ユニットが複数いるときは、フォースを100%まで貯めて複数同時攻撃をしたほうがお得だ。
まずは攻撃するユニットを複数選択する。武器にもよるが、最初に選んだユニットに大きなダメージを与えるので、選ぶ順番も考えたい | 敵ユニットを倒した際には、スローが入りボタン入力のタイミングがずれるので、敵が複数いる分、ボタン入力のタイミングは通常の攻撃よりも難易度が上がる |
・フォースMAX
フォースMAXは、必殺技のようなもので、範囲内の敵ユニットすべてに大ダメージを与えるものや、味方のステータスを大きく上昇させるものなど、各キャラクターごとにさまざまな能力が決められている。ただし、1回の戦闘につき1度しか使用できないため、使いどころをよく考えて使用したい。
ジンのフォースMAX、一閃 朱雀は範囲内のすべての敵に大ダメージを与える。敵ユニットが密集している位置で使用したい | フォースMAX使用時には、キャラクター固有のカットインが表示されるほか、派手な演出もあわせて表示される |
・ユニオン攻撃
一定範囲内にいる味方ユニットと、協力して攻撃するのがユニオン攻撃。ユニオン攻撃では、2体のユニットのフォースが合計されるため、攻撃回数が増えてバーストしやすい。また、攻撃力が低いユニットの余っているフォースを、攻撃力が高いユニットと共用して使えるというメリットもある。
ユニオン攻撃を行なうには、一定範囲内にいる味方を選択した後、攻撃する敵ユニットを選択すればいい | ユニオン攻撃では、味方のユニットはAIが操作してくれるので、ボタン入力は1キャラクター分だけ行なえばいい |
コネクト攻撃は、味方の行動順が連続しているときにのみ行なえる攻撃で、1体の敵に対して味方が次々と登場して攻撃する、というもの。ユニオン攻撃との大きな違いは、3体以上の味方とも連係できることだ。最大で5体分のフォースを一度に使えるので、バーストも含めた総合ダメージはかなりのものになる。また、コネクト攻撃時にのみ、吹き飛ばしと呼ばれる特別な攻撃を仕掛けることも可能だ。ボスのみが残った状況などのときに、狙っていきたい。
・フィールドスキル
これらの攻撃のほかに、フィールドスキルという行動も用意されている。フィールドスキルは、単体や範囲内にいる複数の敵ユニットを攻撃するものや、味方を回復するもの、味方を強化する補助の3つに分けられる。これまでに紹介した攻撃と違い、フィールドスキルでは、戦闘カット時にボタンを入力することがないため、常に安定した性能を期待できるのが特徴だ。
基本的には、フォースを100%までためてから、複数同時攻撃やコネクト攻撃を行なえば、同じフォース消費量でもより大きなダメージを与えることが可能だ。ただし、フォースをためている間も敵からの攻撃を受けてしまうため、フォースをためるよりも攻撃して敵ユニットの数を減らしたほうがいい、という状況になることもある。このように、状況に合わせてどの攻撃を使うかを考えることが、悩ましくも楽しい本作のゲーム性といえる。
■ 探索パートでキャラクターを強化して次の戦闘に備える
レベルアップすると、ボーナスポイントをキャラクターのステータスに自由に割り振ることができる。長所を伸ばすのが基本だが、ときには弱点を補強することも考えたほうがいい |
見事に戦闘に勝利すると、戦闘の内容に合わせて経験値とミスリル(この世界におけるお金のようなもの)が手に入る。経験値を手に入れてレベルアップすると、新たなスキルを覚えたり各種ステータスがアップするほか、ボーナスポイントを自分の好きなステータスに割り振ることも可能だ。ボーナスポイントは、基本的には攻撃が得意なキャラクターはATK(物理攻撃力)、防御に秀でたキャラクターはDEF(物理防御力)といったように、長所を伸ばすといい。ただし、コネクト攻撃がしやすくなるようにAGLをほかのユニットに合うように割り振っていくことも考えたい。
各章はふたつのメインストーリーによる戦闘パートで構成されており、その合間には、飛空艇の中を移動して、仲間と会話をしたり、装備を強化することが可能だ。また、メインストーリーのバトルとは違い、必ずプレイしなくてもいいものの、ストーリーに関係したバトルが楽しめる、ブレイクバトルも用意されている。ブレイクバトルは何回でもプレイできるため、メインストーリーがどうしても進められない場合は、ブレイクバトルを繰り返して、レベルアップと装備を整えてから再挑戦するといいだろう。
■ 飛空艇の施設を機能拡張していこう
キャラクターの強化のほかにも探索パートでは、飛空艇内にある施設をミスリルを消費して機能拡張することが可能だ。ここからは、施設を機能拡張してできるようになることを、1つずつ順に紹介していこう。
・ラウンジ
ラウンジでは、これまでの戦闘で倒した敵の数や、最大累計ダメージなどが確認できる戦績記録や、攻略の手助けとなるヒントが得られる掲示板が用意されている。また、ラウンジのレベルがあがると、仲間になったキャラクター達との特別な会話を楽しめるようになる。
戦績記録では、プレイ中のさまざまな記録を確認できる。たまに確認するといいだろう | ラウンジをレベルアップすると、飛空艇内で話ができる仲間のキャラクターが増えていく。仲間と会話しなくてもストーリーは進められるが、面白い会話が多数用意されているので、仲間が増えたときには早めにレベルアップしておきたい |
・ライブラリ
ライブラリでは、敵ユニットの細かいステータスや所持アイテムの確認ができる敵ファイルのほか、世界観や歴史、登場人物やストーリーなどの情報を見ることができる。ストーリーパートではジン達のドラマに主眼がおかれており、細かい設定は解説されないことが多いため、ストーリーを進めていく中でわからないことがあったら、ライブラリを訪れて確認するといいだろう。
今までに戦った敵ユニットのステータスや、所持アイテムを確認できる。特定のアイテムが欲しい際に、落とす敵を確認するのに使うといいだろう | 世界観やキャラクターの詳しい設定も確認できる。ストーリーをより深く楽しみたい人は、ライブラリをこまめに確認するといいだろう |
・メディカルルーム
メディカルルームでは、戦闘中に起こる状態異常に対する抵抗力をつける予防接種を受けられる。予防接種には、個人予防接種と全体予防接種の2つがあり、全体予防接種では受けられる予防接種が全員同じになるものの、消費するミスリルが少なくて済む。
予防接種は1人ずつ別々の状態異常を予防することもできる。特に弱点となる状態異常がある場合は、個別に予防しておくといい | メディカルルームのレベルがあがると、予防接種の回数を増やすことが可能になる。状態異常を連発する敵が相手にいるときに利用したい |
・バトルルーム
バトルルームでは、戦闘の練習や経験値・ミスリル稼ぎができるフリーバトル、戦闘カット時の攻撃の練習ができる、フォース練習が用意されている。フォース練習では、吹き飛ばし時の飛距離の計測が記録されるので、どれだけ吹き飛ばせるかチャレンジしてみるのもいいだろう。
フリーバトルでは、レベルに合わせた敵が登場するようになっている。敵の強さが物足りなくなったら機能拡張すると、より高いレベルの敵を相手にできるようになる | フォース練習では、ボタンの入力タイミングの練習ができるほか、吹き飛ばし時の最大飛距離も記録される。どれだけ吹き飛ばせるか挑戦するのも面白い |
・アルフィンのドレスアップ
飛空艇内の施設を機能拡張すると、機能拡張したレベルに対してポイントが与えられるようになっている。このポイントを消費することで、アルフィン専用のドレスを取得可能だ。
アルフィンのドレスには、属性ごとに戦闘時に役立つ支援能力が設定されており、ドレスの空きスロットに自分の好きな戦闘補助効果を付加することもできる。攻撃力をあげるドレスや、ミスリル獲得量やアイテム取得確率をアップするドレスなどがあるので、目的に合わせてドレスを交換するといいだろう。
■ 適度な難易度と快適なプレイが楽しめる良作
各章は、普通にプレイすると約2時間程度でクリアでき、10章構成となっているので、キリのいいところで中断しながら進めていくといいだろう。筆者はストーリーの先が気になる余り、メインストーリーのみを一気に進めた結果、約20時間でクリアできた。ブレイクバトルやフリーバトルを含めた、すべての戦闘をクリアするにはさらなる時間が必要だが、そこまでやるかどうかはプレーヤー次第だ。
1つ不満点をあげるとしたら、各キャラクターが持つフォースMAX技のうち、味方のステータスをアップする能力が強すぎるように感じられたことだ。特に防御力を大きくあげる能力は、一気に被ダメージが減ることもあり、戦闘の緊張感が損なわれるように感じられた。フォースMAXに関してはキャラクターの必殺技として、攻撃に限定してもよかったように思える。
とはいえ、ストーリー後半の戦闘は激戦が多く、レベルアップ時のステータス振り次第では、苦戦することもあるだろう。そういう意味では、フォースMAXスキルがあってちょうどいいレベルの難易度といえるかもしれない。また、そのような際に打開する手段がなくならないための手段として、フリーバトルやブレイクバトルが用意されているなど、ゲームが得意ではない人向けのフォローが十分になされている点は好印象だ。
また、Bボタンを押しっぱなしにすることでテキストをスキップできるのはもちろん、スタートボタンでテキストを自動送りにできたり、テンポよくプレイしたい人はコンフィグで戦闘カットの演出を省略できるなど、かゆいところに手が届く作りになっているのも嬉しい。テンポのいいストーリー展開と合わせて、プレーヤーが気持ちよく遊べるように細かい工夫が施されているのは、特筆すべき点といえるだろう。
以上のように、本作はじっくりと思考するシミュレーションゲームの楽しさや、爽快な攻撃が楽しめる戦闘カット、魅力的なキャラクター達が縦横無尽に暴れ回るシナリオなど、さまざまな魅力が丁寧に詰め込まれた内容となっている。ストーリーも「シャイニング」シリーズのファンはもちろん、「シャイニング」シリーズを知らない人でも楽しめる内容となっているので、本作に興味が沸いた人は、ファンならずとも安心してプレイしてもらいたい。
(C) SEGA
http://sega.jp/
□「シャイニング・フォース フェザー」のページ
http://shining-force.jp/sff/
(2009年 3月 17日)