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PS4「セバスチャン・ローブ ラリーEVO」インプレッション

“伝説のラリードライバー”が監修するリアルラリーは、ラリーの醍醐味がたっぷり

発売日:3月17日

価格:7,800円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 3月17日発売予定のプレイステーション 4用ラリーレーシングゲーム、「セバスチャン・ローブ ラリーEVO」のインプレッションをお届けしよう。開発は、「MotoGP」シリーズなどレーシングタイトルを多数手がけるイタリアのデベロッパーMilestone、販売はインターグローとなる。

 本作は、世界ラリー選手権(WRC)のシリーズ9連覇を成し遂げ“伝説のラリードライバー”となったセバスチャン・ローブ選手が監修する本格ラリー・ゲーム。世界各国のラリーコースを収録、ラリーカーも50車種以上が登場するほか、なによりも、セバスチャン・ローブ氏の監修を元にしたラリー体験、“ラリー・ドライビング・エクスペリエンス”を重視したという、オンリーワンとも言えるタイトルとなっている。その魅力をお伝えしよう。

 なお、本作は予約を受け付け中で、予約特典には「新コース&新車種」のDLCが用意されている。

【PS4 「セバスチャン・ローブ ラリー EVO」 トレーラー】

ナビを頼りにコースを制す! ラリーならではの面白さがここにある

 本作でプレイできるモードは大きく分けると4つある。まず自分のラリーチームを作り、新進気鋭のルーキードライバーとしてレースに挑んでいく「キャリアモード」だ。

 小規模なレースから始まる様々なレースイベントに挑み、獲得したクレジットで新たな車を手に入れ、それを繰り返しつつ世界へと自分のラリーチームの名声を高めていく。積み上げたキャリアの最後に待つのは“生ける伝説”セバスチャン・ローブへの挑戦だ。

 ラリーチームはチーム名はもとより、ドライバーの名前や出身、ナビゲーターであるコ・ドライバーの名前や出身、レーシングスーツやヘルメットのスタイル、チーム名のフォントやカラーなど、詳細な設定が可能。それらは車にもペイントされるなど、ゲーム中にしっかりと反映される。

 基本的な走行の仕方やナビゲートのチュートリアルを経て、まずは試しにとスウェーデンのラリーコースを選択して、最初のレースへ! 雪深い森を駆けていく、いかにもラリーならではのコースを選択してみた。

 ラリーコースは、スタートからゴールまでを走破していく1本の長いルートであることがほとんど。ループスタイルのサーキットとは異なり、移り変わる景色、地形、路面、それらに“楽しい悪戦苦闘”をしつつ制していくものだ。そのためコースというかルート全体は非常に大きく長い。ゲーム的にはそれを丸ごと読み込むのでデータ量が多くなるのだが、本作のレース前の読み込みはそれほど長くもなく快適だ。

 うっそうと生い茂る雪深い森を疾走していくと、コ・ドライバーからのナビが音声と画面のマークとで伝えられる。例えば、左になだらかに抜けたあとに右に少しのコーナーが続くとすると「左6アンド右プラス40」といった音声であり、画面にも傾斜角の強さを緑、黄色、オレンジ、赤(赤に近づくほど急角度)という見せ方で伝えられる。

 なにしろ、長丁場のルートになるラリーではコースの全体表示などはされない。コ・ドライバーからのナビが頼りであり、それに対応していくことがラリーの醍醐味だ。不慣れなうちはナビを理解し反応するのは大変なのだが、次第に順応できるようになる。そうなってからは、次々に問題をリズミカルに解いていくような、ナビされたコーナーとルートに対して、自分がどう応えるのか、そういう独特な面白さ、心地よい緊張感が現われはじめる。

 舗装されたサーキットを走るものとは違い、ラリーはアスファルト舗装された道を走ることもあれば、自然の中に作られた荒れた道を走ることも。それらは道幅が狭く、特に夕暮れだと見通しもきかない場所だってある。プレイし始めの筆者は、タイムアタックどころか、無事に走破するだけでも一苦労だ。

 言うなれば“手強い”。スムーズに走り抜けることもままならず、道を外れて乗り上げ、車体が跳ね、コントローラーからは常に振動が伝わってくる。ひどいコースアウトをしたときにはさすがにL1ボタンでの「リワインド」という数秒前に巻き戻して走れる機能も使いつつ、なんとか走っていく。そのプレイはもう最初はひどいものだ。

 だが、それでも走り続けていくと次第に慣れていくものだ。ナビのルート情報に対して「これぐらいか!?」というスピードと進入角で入り、キレイに抜けたときの「いいぞ!」という高揚感。荒れた路面なだけに、決して機敏には応えてくれない車体をコントロールし、重い車体をサイドブレーキで揺すり、コーナーをくぐるように抜けた時の快感。

 “コースとドライバーの格闘”のようなもの。次々に迫ってくるコーナーとの戦い。車体が跳ね、コントロールもままらないような難問を、押さえつけるように制していく。手強い道だからこそ、それに勝った時の気持ち良さが大きくなる。ラリーならではの魅力がここにある。

 ……とまぁ、そんな風に語っても、まだ本インプレッションのためにプレイし始めたばかりな筆者が、そんなに上手く走れるわけもなく。全長5kmほどのルートを走るだけでも、派手なクラッシュを繰り返し車体はボロボロだ。いわゆるダメージ表現も、手強いコースに挑むラリーには欠かせないと思うが、そこも良く再現されている。フロントガラスのひびから始まり、樹にぶつかった衝撃でアライメントが狂ったのか、蛇行運転まで起こり、ゴールしたときには右前輪のタイヤが無くなっていた始末。

 ライブ感溢れるアクシデントとの格闘もまた、ラリーならではの醍醐味というイメージがあるが、本作ではそこもしっかりと味わえる。


世界各国のラリーコースを収録

Australia
Los_Angeles
Sweden
MonteCarlo
Finland
Sanremo
Trois Rivieres
Wales

「セバスチャン・ローブ・エクスペリエンス」で伝説とシンクロし追体験していく

ラリードライバーのレジェンド「セバスチャン・ローブ」のキャリアを追体験していく

 続いてプレイしたのは、本作ならではのモード。生ける伝説とされるラリードライバー、セバスチャン・ローブのキャリアを追体験できる「セバスチャン・ローブ・エクスペリエンス」だ。

 このモードでは、1998年のキャリアの始まりから、2013年のPIKES PEAK(パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム)までを収録。セバスチャン・ローブ氏へのインタビュー映像が豊富に収録されており、その話題に上がったターニングポイントと言える各種のレースやシチュエーションに、プレーヤーが実際に挑んでいくという形式になっている。

 これが良く出来ている。セバスチャン・ローブ氏の吹き替えはカーマニアとして知られる声優の三木眞一郎氏が行なっているのだが、その話の内容は濃密。セバスチャン・ローブ氏が過去に挑んだレース、取り巻くシチュエーション、それに対して彼がどのように考え、実践して勝利したのかが、たっぷりと聞ける。専門の映像コンテンツ顔負けのクオリティだ。

 そして、それを聞いた上で、プレーヤーは自分の手でセバスチャン・ローブ氏が挑んだコースにチャレンジする。そこにはセバスチャン・ローブ氏とシンクロできるものがある。

 例えば、筆者は2013年のパイクス・ピークへの挑戦をプレイしてみたが、通称“雲へ向かうレース”とされるもので、このコースに対してセバスチャン・ローブ氏は映像で「登っていくなか、先が見えなくなったら、その先には何かがある」というように語っている。その視聴後に自分が走れば、「あぁ、このことか!」と感じ取れる、深く理解できるというわけだ。

 もちろんセバスチャン・ローブ氏は、そのコースの特徴に対してどのように意識するべきか、走るべきか、という話もしてくれる。それを自分の手で実践していくというモードになっており、まさに“追体験”を楽しめるものになっている。

ここにだけあるもの。ドライバー体験重視に優れたラリー体験を味わえるタイトル

 収録されている全長30km近いパイクス・ピークをはじめ、各国の主要コース、ラリークロスもあって、コースの全長は300km以上に及ぶという。コース脇で観戦するオーディエンス、走るほどに移り変わっていく自然の景色、その壮大さ、広さ、過酷さ、爽快感。自然の中に設けられたダイナミックなルートは、走る時間帯によってその姿を変貌させる。

 いずれもクオリティが高く、そのハイクオリティなデータの積み重ねが、ラリーの醍醐味を作り出しているのだが、なにより感じたのは“その手触りの良さ”だ。いわゆる体験、ユーザーエクスペリエンスであり、ラリーが持つ“コースとの格闘”に気持ちよく挑める。

 “ドライバーの実体験を追求した”としている本作のフィーリングの良さは、なかなか文章でお伝えするのが難しいのだが、プレイすれば“心地よさ”や“挑み続けたくなる没入感”として感じ取れるはず。

 なお、今回はプレイできていないものの、本作には最大16人参加のオンラインモードもあるほか、予約特典をはじめとしたDLCの提供も予定されている。レーシングファンの方にとっては期待の1作だろう。

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(山村智美)