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Caren Tigerかく戦えり!「WoT」アジア頂上決定戦
「WGL APAC Season I Finals」、ベスト4の2試合をレポート
(2015/8/23 11:25)
8月22日と23日の両日、韓国・ソウルにて「World of Tanks」のアジア・パシフィック地域シーズン1王者決定戦「Wargaming.net League(WGL) APAC Season I Finals」が開催される。
大会初日となった22日、ソウル市内のe-Sports専用施設Yongsan e-Sports Stadiumにアジア・パシフィックのトップ4チームが集結。先日お伝えした大会前日レポートのとおり、そこには日本のチームCaren Tigerの姿もあった。
4チームによるノックアウトトーナメントの第1戦、アジアサーバー2位として出場したCaren Tigerが相対するのは、韓国サーバー最強チームのKONGDOO(旧Arete)。「奇策を用意している」と言うCaren Tigerだが、果たしてどのような戦いを見せてくれたのか。また、アジアサーバー1位のEL Gamingと、中国サーバー王者のReforn Gamingによる中国対決の結末は。本稿でレポートしよう。
驚きの秘策で臨むCaren Tiger。対するKONGDOOの手堅く正確な戦い
本大会ではWargaming.net Leagueの公式試合ルールに則り、全8ラウンド中の5ラウンド先取制で実施された。対決チームは攻守にわかれ、2ラウンドで攻守交代、4ラウンドでマップを変えて8ラウンドを戦い、ラウンド取得数4-4と並んだ場合は追加1ラウンドを戦って決着を付けるというフォーマットだ。
まずは日本から出場のCaren Tigerが韓国王者のKONGDOOに挑んだ試合を見てみよう。
KONGDOO、旧名Areteは、4月にワルシャワで開催されたWGL Grand Finalに出場後、正式にプロ化を果たしてチーム力を強化している。これに挑むCaren Tigerも、このシーズンに向けて新メンバーを獲得、練習量を増やし、連携を高めつつ様々な作戦を用意してきた。
ちなみに会場に集まった観客にはCaren Tigerのファンも多いようで、KONGDOOに対して良い展開を見せると大きな歓声が上がることもあった。聞くところによると、どうやら判官贔屓で応援している人が多いというが…‥もちろん、チームロゴとなっている萌えキャラが好きという人もいるようだ。
さて「Ruinberg」で戦われた前半戦、第1セットでCaren Tigerは防衛側としてスタートした。Caren Tigerは開幕から主力を前進させ、マップ東側中央部の稜線を使って前目で迎撃する構え。それと同時にmoudame選手が担当する軽戦車LTTBが南東の端まで一気に展開。Caren Tigerはこのように、軽戦車を使って相手を撹乱する戦法を好むという。
対するKONGDOOは、南側が固く防衛されていることに気づくと素早く北側の占領ポイントに主力を移動。これに合わせてCaren Tigerも重戦車を北側に移動させる。KONGDOOは北側に一瞬だけ顔を出すと今度は中央部に主力を移動。化かし合いだ。南方面でも無理押しはせず、互いにほとんどダメージ交換を行わないまま時間切れが迫り、マップ中央部での激突となった。
市街地の狭い街路から出てくるKONGDOOに対し、広い平原を使って「フタをする」ように戦えるCaren Tigerは有利な態勢だ。優勢にダメージ交換を行ないつつ、相手をうまく足止めすることに成功。時間切れが見えてきたため占領を諦めたKONGDOOは殲滅狙いに切り替えるも、序盤に南東の端でしぶとく生き残っていたmoudame選手が逃げの1手に切り替えることで時間切れ勝利が確定、Caren Tigerがファーストラウンドを勝利した。
第2ラウンドではKONGDOOが戦い方を変える。ラウンド開始早々に南側の占領ポイントに向かうことで、Caren Tigerが占領タイマーリセットのために顔を出さざるをえない状況を作る。顔を出せば、正確なフォーカス射撃が待っている。これに対してCaren Tigerは市街地側に向かった別働隊が裏とりを急ぐが、KONGDOOは予めこれを察知していたか、Caren Tigerが移動のため間延びしたタイミングで接的に成功。KONGDOOが非常に優勢な形となり、そのまま殲滅勝利。これでラウンド取得数は1-1。
攻守交代した第3ラウンド。Caren Tigerは奇策に出た。ティア8の重戦車はIS-3が1両だけ、AMX 50 100を3両、AMX 13 90を2両という大量オートローダーに加え、装甲の硬いM6を起用という奇抜な編成だ。その編成で狙ったのは南側占領ポイントへの速攻。AMX 13 90が2両素早く占領を開始し、遅れてきたM6が壁となる団子体型。これで占領を持続しつつ、タイマーを切りにくるKONGDOOをオートローダーの火力で蒸発させようという作戦だ。
しかしこの作戦は上手く行かなかった。KONGDOOは正確な射撃で占領タイマーを切りつつ、Caren Tiger側にほとんど反撃機会を与えない。Caren Tigerは狙いを機動戦に切り替えるも、要所要所の射撃の不正確さ(AMX 50 100は特に遠距離の精度が低い)がアダとなり、ほぼ一方的に狩られる展開となってしまった。
ラウンド4でも同様の作戦に出たCaren Tigerだが、KONGDOOはまたも落ち着いてこれに対処。ラウンド取得数は1-3と大きく開いての2マップ目となった。
2マップ目は「Lake Ville」。攻撃側のルートが非常に限られ、防衛側がかなり有利と見られるマップだ。ここでCaren Tigerは先攻となったのが痛かった。手堅く、正確な射撃で守るKONGDOOに対し、Caren Tigerは微妙な連携の乱れもあり、有効な攻撃を行えない。結局うまい手立てを見いだせないまま、じわじわと撃ち減らされ、2ラウンド連続で敗北を喫してしまった。
こうして2マップ目の攻守交代が行われることなく、ラウンド取得数は1-5となり、KONGDOOが勝利。Caren Tigerにとっては、1マップ目で見せた奇策がうまく機能しなかったことがその後の流れを失う原因になったといえるだろう。
手堅い戦いを見せるKONGDOOに対し、大差で敗北したCaren Tiger。細かい部分のスキル差があったことも確かだが、作戦の歯車がもう少し噛み合えば、勝利の可能性が見えたのではという印象もあった。いずれにしても、この試合結果を受けてKONGDOOは翌日の決勝戦へ、Caren Tigerは3位決定戦に回ることになった。
中国対決はがっぷり4つ。互いに知り尽くした戦いはディテールの違いで決まる
EL GamingとReforn Gamingの間で戦われた中国対決は、互いによく知り合う同士らしい、非常に緊張感のある接戦となった。
「Steppes」で戦われた前半戦では、攻撃側でスタートしたEL Gamingが得意の戦力集中戦法で一歩リード。Reforn Gamingの前進防御を読みきった動きで全車両をぶつけ、一時的な数的優位を永続化させる見事なフォーカス射撃でもって攻撃側2ラウンドの勝利を手にした。
攻守交代した第3ラウンドでは、EL Gamingはマップ北東部でキャンプするというオーソドックスな戦法から、機を見て軽戦車T-54ltwt4両で大きく迂回、一気に裏を取る戦法を採用。初撃は見事に決まったもの、Reforn Gamingがこれを包み込むように迎え撃ち、逆に包囲される形に。EL Gamingは仕切り直し狙うが、北側を抑えていたT-32が早々に撃破されたこともあって劣勢となる。ここからはReforn Gamingが優位にダメージ交換を進めて殲滅勝利。
続く第4ラウンドでは時間切れ狙いの消極防衛に徹したEL Gamingが、ギリギリの接戦を制して勝利。こうして各ラウンドとも異なる展開にて勝敗がついていった。
マップを「Ghost Town」に変えた第5ラウンド移行は一進一退の攻防。攻撃側のEL Gamingに対し、マップ中央部の高所に展開したReforn Gamingが優勢に撃ち合いを進めて1ラウンドを取り戻す。続くラウンドはEL Gamingが中央の高台を確保して競り勝つ。
攻守交代した第7ラウンド、攻撃側となったReform Gamingの華麗な作戦が決まった。北側の占領ポイントに直行し、相手を誘ってからの各個撃破。これに対してEL Gamingは別のイメージを持っていたのか、対応に遅れが目立つ形に。こうしてラウンド取得数は4-3となり、戦いは8ラウンド目に突入。
しかし最終的に強さを見せたのはEL Gaming。マップ中央部でReforn Gamingの主力を足止めしつつ泥試合に持ち込み、正確な射撃でもって効果的に敵を打ち減らしていく。ほとんど基本スキルの僅かな差だけで決まるような形で、EL Gamingが接戦をモノにした。
がっぷり4つで戦われた全8ラウンド、EL Gamingは特段変わった作戦を用いることもなく、じつに手堅く戦っての勝利となった。作戦通として知られるチームであるだけに、まだまだ手の内を隠しているか。そこに不気味さを残したままの決勝進出である。
こうして大会初日の試合は完了。翌日の決勝戦ではKONGDOOとEL Gamingが対決。Caren TigerはReforn Gamingとの3位決定戦に挑む。
果たしてEL Gamingは、昨年のシーズンで2度連続で敗れたKONGDOOに対して初の勝利をおさめることができるだろうか。また、Caren Tigerはせめて一勝をもぎとって帰国することができるだろうか。日を改めて、引き続き大会の模様をお伝えしていこう。