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E3 2015で彗星のごとく現われた「Cuphead」とは一体何者なのか?
E3ベストゲームか、はたまた稀代のク○ゲーか。その魅力を探る
(2015/6/20 07:03)
「Xbox Media Briefing」で、「アレは何だ?」と人々の注目を集めたタイトルがある。独立系のデベロッパーSTUDIO MDHRがID@Xboxプログラムを利用して開発しているシューティングゲーム「Cuphead」だ。1930年代の古き良きカートゥーンタッチのグラフィックス、キャッチーなジャズサウンド、そして魅力的なキャラクター達。リリース時期はなんと1936年(+80年)というからイカしている! トレーラーでこれだけ人々を魅了するゲームもないだろう。Xboxブースでは試遊台が出展されていたので、さっそく試してきた。
「Cuphead」は、北米で「RUN & GUN」と呼ばれているジャンルのシューティングゲームだ。日本で言えば、「ロックマン」や「魔界村」、現在は絶滅の危機に瀕しているベルトスクロールアクションに相当する。1画面で2人で遊ぶことができ、2人で力を合わせて敵に立ち向かっていく。
主人公はCupheadおよびMagmanという2人のカップ型のキャラクターで、彼らは悪魔とのダイス勝負に破れ、命を助けて貰うためにモンスターと戦っていくというストーリー。若干情けないストーリーだが、タイトル画面のお腹を突き出すようにして自信満々に腰を振る2人は可愛らしく、“デューデュー……”と独特のコーラスBGMとも相まってゲームを始める前から非常に愉しい気分にさせられる。
しかし、愉快な雰囲気は、実際にプレイしてみたら、どこかに吹き飛んでしまった。このゲーム、バトルのすべてがボス戦だけになっており、それが非常に高難易度なのだ。
バトルでは、彼らの指から放たれるビームのような攻撃を基本に、攻撃を繰り返すことにより貯まるゲージを使って撃てるスペシャル攻撃の2種類の攻撃手段を使って、ジャガイモやニンジン、幽霊、巨大なカエル、大鳥、海賊など画面を覆うほどの巨大な敵を相手に戦っていくことになる。
これがどれぐらい難しいかというと、シューティングに慣れていない人が最初にプレイすると10秒も掛からずにゲームオーバーになってしまうほど。ボスが放つ攻撃は、予備行動を察知してあらかじめ回避行動をはじめないと避けきれないものも多く、数も多ければ、当たり判定もデカい。しかも、何度か形態を変え、その都度攻撃パターンも変化する。こちらはか弱いカップキャラクターで、2~3度攻撃を受けただけで成仏してしまう(ホトケのビジュアルに変わり、空へ成仏していくアニメーションがまた可愛い)。シューティングゲームはある程度経験している筆者でも、何度プレイしてもアッサリゲームオーバーになるため、最初の印象は、「ゲームバランスのおかしいクソゲーじゃないの、これ?」だった。
しかし、このゲーム、どうにも抗しがたい魅力があるのだ。トムとジェリーやポパイ、初期のディズニーといった日本でも著名なアメリカンスタイルのカートゥーンアニメの雰囲気がそのままゲーム化されている。フィルム再生によるキャラクターやオブジェクトの微妙なズレや、フィルム映像ならではのノイズまで意図的に盛り込んであり、モンスター化したキャラクター達も非常にユーモラスな造形で、それが実に豊かなアニメーションでグリグリ動く。とりわけボスの無様なやられっぷりには、子供ならケタケタ笑い出すだろう。
実はこのゲーム、発表そのものは2013年で、幾度かの作り直しを経て今回のE3でリスタートしている。つまりこの難易度は確信犯ということだ。思えば「ロックマン」にしても「魔界村」にしても、昔のゲームはすこぶる難しかったし、プレーヤーをまったくもてなさず、最初から殺しに来ていた。「Cuphead」のゲームデザインはまさにそれだ。
筆者は、ゲームオーバーを連発して精神的に打ちのめされ、後ろで待つ人に苦笑しながらコントローラーを手渡した後も、どうしてもクソゲーだと切って捨てる気にならなかった。そこで後ろで試遊している様子を見て、敵の攻撃パターンを学び、回避アクションや、スペシャル攻撃の効果的な使い方を学んだ上で再チャレンジしてみた。
すると、序盤のジャガイモやニンジン、カエル、ガイコツぐらいまでは相棒が死んだ状態でも1人で倒せるようになってきた。こうなるとレトロなBGMの共に、このカートゥーンの世界に浸るのが俄然愉しくなってくる。こうして筆者も無事、このゲームの虜になることができた。
もちろんツッコミどころは色々ある。基本的な難易度がおかしいことに加え、ボスにダメージが通っているのかどうかわからないことや、ボスの残りヒットポイントがわからないこと、1人が死んでもコンティニューできず、残り1人でじり貧になってしまうことなど、細かいことを挙げれば切りがない。しかし、個人的には「Cuphead」における、1930年代のカートゥーンの世界を、丸ごとゲームとして再現するという主題は、それら欠点をカバーしてあまりある魅力があると思う。
「Cuphead」は、ID@Xboxプログラムを利用したことで、「Xbox Media Briefing」で取り上げられ、トレーラー公開と共に一躍時のゲームとなった。Microsoftはそうなることをあらかじめ見越していたかのように、ID@Xboxタイトルとしては最多の4台の試遊台を設置し、人々の高い関心に見事に答えていた。例によって日本で発売されるかどうかはわからないが、Xbox Oneに加えて、PC版のリリースも予定されているため、なんらかの形で日本でもプレイする事はできそうだ。発売時期は来年1936年(+80年)とまだ少し先だが、発売が待ち遠しいタイトルだ。