ニュース
VR技術のアップデートもあり! NVIDIA、「GeForce GTX 980 Ti」を正式発表
G-Sync対応75Hzモニター搭載のゲーミングノートも新たにラインナップ
(2015/6/1 07:00)
NVIDIAは6月1日午前7時、新GPU「GeForce GTX 980 Ti」を発表した。本GPUを搭載したビデオカードは、同時刻から各ベンダーより発売される。北米向けの価格は649ドルで、国内では9~10万円程度の価格帯になると見られる。
980 Tiは昨年末より相次いで発売されてきた第2世代Maxwell(GM204)搭載GPU(960/970/980/960M/965M/970M/980M/Titan X)の最新モデルで、性能的には980とTitan Xの中間に位置する。Kepler世代の680と比較するとパフォーマンスは3倍、780 Tiと比較しても1.8倍の性能とされ、電力効率は2倍以上。また第2世代Maxwell搭載GPUの例にもれず、最先端のDirectX 12フィーチャレベル1に完全対応する。
NVIDIAではこの発表に合わせ、第2世代Maxwell搭載GPUがサポートするDirectX 12フィーチャレベル1の詳細や、NVIDIA独自のVR支援最新機能、また、NVIDIA独自の適応型リフレッシュレート技術「G-Sync」についての技術アップデートを紹介している。これらの新技術はドライバーアップデートを通じて随時実装されていくほか、今回新たにG-Sync搭載のゲーミングノートPCラインアップが明らかにされている。
盛りだくさんなNVIDIAの発表を、本稿でご紹介しよう。
第2世代MaxwellはDirectX 12フィーチャーレベル1をフルサポート
発表に先立って行なわれたプレス向けの説明会では、NVIDIAのGeForceノートブック/Tegra担当プロダクトマネージャーのGaurav Agarwal氏が登壇。第2世代Maxwellの技術アップデートをはじめ、GeForceファミリが提供する3つの新トピックを披露した。
ひとつめのポイントとなるのは、第2世代Maxwell搭載GPUによるDirectX 12フィーチャレベル1のフルサポートが名言されたことだ。
DirectX 12は今夏リリース予定のWindows 10に搭載されるグラフィックスAPIで、コンソールゲーム機並みの緻密なCPU/GPU制御が可能になることがウリ。これはゲームソフトの大幅なパフォーマンスアップに貢献すると見られているが、第2世代Maxwell搭載GPUではその基本機能はもちろん、オプション的な追加機能仕様であるフィーチャーレベル0、フィーチャーレベル1をフルサポートする。
DX12フィーチャーレベル1として提供される機能は「Volume Tiled Resouces」、「Conservative Raster」、「Raster Order Views」など。このうち「Volume Tiled Resources」はボクセル的なテクスチャリソースのGPU制御を可能にするもので、リアルな流体シミュレーションの効率的な実装に寄与する。「Conservative Raster」はレイトレーシング法によるライティングやシャドウ処理に効果を発揮するラスタライザーの仕様で、どちらもNVIDIAのビジュアルエフェクトエンジンであるGAME WORKSで活用されているのが特徴だ。
このように、同じDirectX 12対応GPUでも、フィーチャーレベルの違いによりエフェクトのリッチさや実行効率が変わってくることが見込まれるが、大規模な流体シミュレーションやレイトレーシングベースのレンダリングは非常にGPUヘビーな処理となるため、今回発表されたGTX 980 TiやTitan Xといった上位モデルでこそ違いが実感しやすくなりそうだ。
VRレンダリングを大幅に効率化する「Multi-Res Shading」
第2世代Maxwell搭載GPUでは、今回新たに披露されたMulti-Res Shading機能によりVR向けのレンダリングも大幅に効率化される模様だ。
この機能のコンセプトはとてもシンプルだ。VRでは通常よりも高い視野角・高い解像度でシーンをレンダリングする必要があるため、基本的にシェーダーヘビーである。ただし、平面にレンダリングした後、レンズに合わせて映像を歪ませる際、視野の端付近は大幅に“潰れ”てしまい、多くの画素が無駄になる。であれば、最初から映像の端部分を少し低い解像度で描画すれば、映像品質を落とさずに負荷を下げられるのではないか、というのが基本アイデアとなる。
これを実現するためには、視野の中央部分を高い解像度、端部分を低い解像度と、異なる解像度からなる複数のビューポート(レンダリングターゲット)に分割してレンダリングする必要があるが、第2世代Maxwellでは、これを1パスで実行できる(Maxwell multi-projection)。つまり、描画対象のビューポートを変えながら何度もレンダリングする……という必要がないため、大幅な効率アップが期待できるというわけだ。
NVIDIAでは、このMulti-Res Shading機能によって、VRレンダリングに関わるシェーダーを1.3倍から2倍に高速化できるとしている。また本機能はNVIDIAのビジュアルエフェクトライブラリであるGame Worksの機能として実装されるそうだ。
G-Syncは低フレームレートでも有効に。対応ノートPCはVRにも最適か?
これに合わせ、NVIDIAの適応型リフレッシュレート技術である「G-Sync」の新機能も披露された。
従来の実装では、ゲームのフレームレートが対象モニターの最低リフレッシュレート(だいたい30-40Hz)を下回ると、G-Syncによるリフレッシュレート制御ができなくなるという問題があったが、今回、ドライバ側のアップデートによりこの問題を解消する。
具体的には、“ゲームのフレームレート<モニターの最低リフレッシュレート”となった場合に、モニターのリフレッシュレートを倍増させ、2回のリフレッシュに渡って1フレーム分のゲーム画面を表示する、というあるゴリズムだ。例えば、ゲーム側が20fpsまで低下した場合、モニターを40Hzで駆動させて同期する。これにより、従来よりも幅広い条件でG-Syncのウリであるティアリングなし、最大パフォーマンス、最小遅延のメリットが享受できるようになった。
本機能はドライバレベルで実装される模様で、従来のG-Syncモニタ上でも有効となる。また、これに加えてNVIDIAでは、ノートPC向けのG-Sync対応モニターを認定するプログラムをスタートさせており、G-Sync対応のゲーミングノートを4モデル紹介した。
今回認定されたG-Sync対応モニターは、最大リフレッシュレート75Hz、フルHD解像度のモデル。これを搭載したゲーミングノートPCがGIGABYTE、MSI、ASUS、CLEVOの4メーカーから登場する模様だ。
これらのノートPCではG-Sync対応がもちろんウリのひとつだが、最大のポイントは、VR用途にも問題なく使えることが見込まれることだ。どういうことかというと、これらのノートPCではNVIDIA独自のG-SyncをサポートするためにCPU統合グラフィックス機能がカットされており、ディスクリートGPU・統合GPUを切り替えてワットパワーを最適化するOptimus機能も非搭載となっているのだ。
Optimus機能を搭載してきた従来のゲーミングノートPCでは、ディスクリートGPUで描画した映像も統合GPU側から出力される仕組みであるため、VRヘッドセットの代表格であるOculus Rift DK2がうまく動作しないケースが多発していた。それを避けるためにデスクトップGPUを無理やり詰め込んだ「VR対応ノートPC」まで登場する始末であったが、G-Sync対応ゲーミングノートPCであれば、最初から統合GPUが使われていないため、この問題が解決される。
というわけで色々とVR向けに舵を切っているNVIDIA。今回発表されたGTX 980 Tiはハイエンド志向のゲーマーにとって非常に有効な選択肢になっていきそうだ。