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SCEJAデピュティプレジデント織田博之氏独占インタビュー
「ゲームこそクールジャパンそのもの」。台湾をはじめとしたアジア戦略を聞く
(2015/1/30 21:29)
10年以上前のPS2/PSPの時代から出展を開始し、今やすっかりTaipei Game Showの顔となったSCET。今年も会場の中央にブースを構え、過去最大規模での出展を行ない、100代以上の試遊台やステージイベントで台湾のゲームファンを喜ばせていた。本稿では、SCEJAでアジア部門を統括するSCEJAデピュティプレジデントの織田博之氏と、台湾市場を担当するSCET総経理の江口達雄氏への単独インタビューの模様をお届けしたい。
SCEJAのアジアビジネスでは、年明け早々、中国でのPS4/PS Vitaの発売延期という残念な発表が行なわれたが、関係各社やゲームファンに余計な刺激を与えたくないため質問は控えて欲しいという要請があったため、中国に関する質問はしていない。中国展開については第三者として見守るほかないが、早期の展開を期待したいところだ。
今年のテーマは“史上最強遊園地”。日本産のタイトルが充実
――織田さん、江口さんの体制になってから3度目のTaipei Game Showになりますが、まずは出展の感想から聞かせて下さい。
織田氏:今年もブース規模が過去最大です。感想としてはPS4がビジネスとして、すごくいい上昇気流にある中で確実にファンも増えてきたので、どうやって楽しんでいただくかが今回の1番の課題で、“史上最強遊園地”というテーマを付けさせていただきましたが、日本のあれだけの有名プロデューサーさんに来ていただけて、台湾のお客さんにも喜んでいただけるのかなと、非常にうれしく思っています。
――今回、SCETブースは“史上最強遊園地”というテーマですが、これはどういう狙いがあるのですか?
江口氏:それ言うのちょっと恥ずかしいんですよね(笑)。まずやはりブースの規模が過去最大ということです。試遊台の数も増えていまして、PS4、PS3、PS Vitaの試遊台が100台以上あります。ほとんどが発売前のタイトルということで、ゲームファンにとってみればこれ以上楽しいことはないのではないかと思っていて、そういう意味でも遊園地かなと。
それと今回そうそうたるクリエイターの方々や、声優さん、アーティストの方など、豪華なゲストが来ていただけるということで、スペースを割いてステージを作りました。さっそく昨日の「ソードアートオンライン」のイベントでは1,000人以上のファンに集まっていただきましたが、そちらも遊園地なのかなということでベタな名前にさせていただきました。
――今回、ブースの周囲は、「ドラゴンクエスト」や、「ファイナルファンタジー」、「モンスターハンター」など、日本のタイトルばかりを意図的に集めている感じがしました。これは何か狙いがあるのですか?
織田氏:それはこのタイミングで日系ライセンシーさんの大作が次々に発表されていて、実際ラインアップ自体は日系のほうが多いのです。なので意図的にというわけではないのですが、台湾のゲーマーさんって日本のゲームが大好きで、“待ちに待った”というタイミングでもあります。今回はタイミングもちょうど合いましたし、みんなが待っていたということもあって、かなり日系のタイトルが前面に出た作りになっています。
――ブースで面白いなと思ったことがいくつかあるのですが、クールジャパンの看板が目に付きました。私は初めて見ましたが、あれはどういう試みなのでしょうか?
江口氏:個人的にはこのゲームの世界というのは、日本が誇るコンテンツ産業だと思いますし、まさに僕らがやっている活動こそクールジャパンそのものではないかという想いがずっとあります。
期間中たくさんの来場者がいらっしゃいますが、その方々に日本を感じていただいて、日本にいってみようかなと、そこまで思っていただけたらいいかなと考えていて、スタンプラリーをやっています。例えばここは秋葉原、ここはお台場みたいなエリアを作って、それを全部回ればスタンプラリーの景品がもらえるよというのをやっています。それもちゃんとゲームにまつわるような土地と関連付けてますので。総合的に日本というものを感じて楽しんでもらえればいいかなと。
――今回隣にバンダイナムコさんが独立してブースを構えましたが、ずっとSCEさんとアジア市場で二人三脚で来たメーカーが大きく成長してブースを構えるのは、SCEさんとしては嬉しいのではないですか?
江口氏:嬉しいですね。宿願が叶いました。
織田氏:バンダイナムコさんは初めてなのですよね。台北ゲームショウに出展されるのが。ロケーション的にもちょうど近いところにとって、バンナムさんのステージでもいろいろと彼らの作品を紹介されていましたし、相乗効果があるのではないかと。
――SCETオリジナルとしては、かわいらしいヘッドフォンをブースで販売していましたね。あれはポップでカラフルなデザインで良いなと思いました。
江口氏:よく気づきましたね。SCEにはプレイステーションオフィシャルライセンスドプロダクトというものがありまして、日本だとHORIさんなどから出していただいていますが、台湾にもああいった周辺機器を作っているメーカーさんがたくさんありますので、ぜひ台湾発のOLPを作っていこうということで、その第1号があのヘッドフォンなんです。
――なるほど。
江口氏:台湾のBrightさんという、この道30年のヘッドフォンメーカーなのですが、彼らがカラフルでクオリティの高いヘッドフォンを作ってますので、ぜひ一緒にやりましょうということで、SCEIの承認を経て、PSロゴをつけて、まさにゲームショウから発売したのです。
――このBrightのヘッドフォンは、台湾発ということで今後OLP製品としてグローバルで売る可能性もあるのですか?
織田氏:グローバルは一筋縄ではいかないと思います。まずは台湾で販売して、反応が良かったら次はほかのアジアの地域で売っていくという流れになると思います。
――それから今年のSCETブースには萌えキャラがいましたね。あれはどういう経緯で生まれたのですか?
江口氏:AI(あい)ちゃんという名前なのです。彼女はプレイステーションを代表するキャラクターではなく、SCETでアルバイトをしている女子大生という設定です。年齢は20歳、誕生日は12月3日。日本人と台湾人のハーフ。
彼女は、プレイステーションの楽しさをファンの皆さんに伝えるという役割を担ってくれていて、いま我々のオフィシャルFacebookページには20万人のファンがいるのですが、そこに頻繁に彼女が登場して次の新作こういうのが発売されるわよとか、来週こんなイベントがあるわよとかいう形で我々の代わりにメッセージを出してくれています。
――会場ではPS Plusの小冊子みたいなものを配ってましたね。
江口氏:漫画ですね。PS Plusの会員はどんどん伸びていますけれど、まだまだPS Plusベネフィットってなんなんだろう?という声がありますので、もっと分かりやすく伝えたいと考えました。そういうことは僕らが堅苦しいカタログみたいなもので伝えるよりも、かわいいAIちゃんが漫画でわかりやすく伝えるほうがアリかなと思いまして。
――彼女は、モデルや担当声優さんがいるリアルな存在ではなく、あくまでイラストだけの存在ですか?
江口氏:イラストだけです。
――今後人気次第では、リアルな存在にパワーアップする可能性はありますか?
江口氏:やっていきたいですね。
――そういえば、Microsoft Taiwanさんにも製品PRキャラクターに萌えキャラがいますよね。萌えキャラを好む国民性なんでしょうか(笑)。
江口氏:そうなんですね。すごい反応が良くてAIちゃんのスクリーンセーバーを配信すると沢山ダウンロードしてくれて、たまにイベントの時に「使ってますよ」とスマホの画面を私に見せてくれたり。ごく一部の間で話題沸騰中です(笑)。
――ところで昨年は円安がぐっと進みましたが、台湾市場で全体を通して影響はありましたか?
江口氏:台湾に限ってはないですね。プレイステーションに関しては並行輸入の影響は全く感じてないので、円高、円安は我々には影響ないです。
――これだけ円安になれば、並行輸入品が活発化しそうですが、ないですか?
江口氏:まったくないですね。ありがたい話です。
――そこはやはり、単純な値段だけではなく、ローカライズやイベントなど、SCETの取り組みが評価された結果ということですか?
江口氏:だと思いますね。SCETでは実体験、ユーザーさんとのリアルなコミュニケーションを推進しているのですね。去年も「閃の軌跡」で日本ファルコムjdk BANDのライブコンサートを実際やったりとか、ゲームをローカライズして販売して台湾のゲーマーさんに喜んでもらうだけではなくて、実際リアルなFace to Faceのコミュニケーションがあって、そこでファンと共に楽しむイベントをよくやっているのですね。
“史上最強の遊園地”ってまた言うのも恥ずかしいのですが(笑)、今回のTaipei Game Showもまさにその代表だと思いますし、去年のコンサートもそうですし、プレイステーション20周年を祝うユーザーに無料開放した展示会もやったのですが、5日間で5万人の方に来ていただいて。そういったリアル体験のアクティビティをやっているということをファンの方がそれを感じてくれていて、並行輸入品を買うよりもSCETの商品を応援しなきゃと思ってくれていたら嬉しいです。
――ちなみに織田さんが着用されているベストは、20周年記念用に作ったのですか?
織田氏:そうです。これは台湾で20周年記念をやった時にこれを作って、ちょうどこの時期はこれがいいかなと。
――これはユーザーにプレゼントしたのですか?
江口氏:いえ、これは本当に限られた身内の、20年以上ゲームショップをやってくれているお父さんとか、ずっと担当してくれている古いメディア会社さんとかごく少数の方に配りました。
織田氏:イベント自体は2日間に分けて、初日はそういう関係者でビジネスをサポートいただいている方に来ていただいて、2日目からは一般のお客さんに来ていただきました。
――会場は古いレンガ作りの工場を改装した華山文化センターだと伺いましたが、あの中で何をやったのですか?
江口氏:一言で言うと、「20周年をみんなで振り返ろう」みたいなイベントなのですが、エントランスを入るとこれまで発売したすべてのプレイステーション、PlayStation MoveからPSP GOからスペシャルデザインまで実機がずらっと並んでいる壁があり、なおかつ安田さん(安田哲彦SCE Asiaプレジデント)の時代からずっとやってきたイベントの写真をべたべたと壁一面に張りました。
そのあと中に入っていくと日本で作った久多良木さんの全世界のファンに向けたビデオメッセージが流れていて、そこから歩を進めると、何年に何を発売したという年表がずっとあって、その次の壁には、タイトルウォールと呼んでいたのですが、裏からLEDのバックライトを当てて、浮き出すような形を利用して壁一面に。
――それは壮観ですね。
江口氏:あとは奥にいくと、各世代のプレイステーション、PS1、PS2、PS3、PS4のそれぞれ流行っていた時代の若者の部屋を再現して、PS1の部屋はもちろんブラウン管のテレビが置いてあって、当時の雑誌とかグッズがレトロな感じで。しかもそこのコーナーでは当時の代表的なゲームが試遊できる。世代が変わると、年代がちょっとずつ新しくなって。で、PS3があり、PS4があり、だんだん今風のインテリアになっていくという小部屋を作ったんですね。
――日本以上に派手なイベントですよね。
織田氏:派手というか、やっていることは地味でしたけどね(笑)。
江口氏:20周年を皆さんにじっくりとお伝えした感じです。
――台湾では20周年記念モデルのPS4も売ったのですか?
織田氏:売りましたが、現場ではなく、予約抽選でいっぱいになってしまいました。
江口氏:PS Plusの会員の方のみ参加できる抽選で購入していただきました。
台湾でのXbox One発売開始の影響はなし。今後はPS Plus会員の拡充に努める
――CESではソニーの平井社長がPS4のセールスが1,850万台達成という大きな数字を出しましたけれども、現在アジアの規模感はどのくらいなのでしょうか?
織田氏:リージョン全体のことは言えないのですが、普及速度はダントツで過去の中で1番早いです。これからも期待できるかなと思っています。
――それはPS3よりも断然いいということですか?
織田氏:そうです。過去の中ではPS4が1番早いですね。
――昨年の台湾メディアからはPS4の数が足りないという話もありましたが、そういった状況はどうなっているのですか?
織田氏:現在はひっ迫感はないです。やっとデマンドに対して供給が安定してできるようになってきました。時々、強いタイトルが発売されて牽引する力が強いと品薄になりますが、基本的には店頭から在庫がなくなるという当初のようなひっ迫感は解消しています。
――SCETというのはアジア全体の中でどういう位置づけにある会社ですか?
織田氏:ビジネス面では、中文化ローカライズのファンクションが台湾にありますが、中文版タイトルは台湾のマーケットだけではなく、香港や中国からのツーリストマーケットでも非常に支持をされています。ゲームのことをわかりつくしていて、どういう風にトランスレーションすればお客さんに受けるのかということに、こだわり過ぎるくらいこだわってやっていますが、これはアジア全体でもすごく大きなポイントになってますので、大事にしていきたいです。
あとはさきほどFalcom jdk BANDの話がありましたけれど、台湾ではアンテナマーケティングができます。日本のアニメ、それからその主題歌を歌っている歌手とか声優さん、それにゲーム。そういうものに慣れ親しんでいるお客さんが非常に多いので、コンサートとか今日みたいな藍井エイルさんのステージショウとか、これからもいろいろアイデアを出していきたいと思っていますが、それをこの規模でやるとうまくいくかいかないかがよくわかるのです。
あまり大きなイベントとしてやりすぎると投資効果が……、というところがありますが、台湾くらいの規模でメディアミックスのイベントをやると非常に反応がビビットに感じられるので、次はそれをアジア全体のマーケティングにどうやって拡大していこうかという良い意味での“モルモット”をやってくれていると思います。
――台湾のユーザーが日本のゲームが好きというのはよく理解していますが、アニメや映画なども反応がいいのですか?
織田氏:非常に良いです。
江口氏:アニメイトさんが台湾でも展開されていますが、あちらも台湾の方にも人気です。
――確かにそうですね。品揃えも日本と変わらない充実振りですものね。
江口氏:そうなのですよね。コスプレイヤーも台湾には相当数いらっしゃいますし、みなさん日本のアニメ、漫画は相当詳しいですね。
――そういえば今回バンダイナムコさんは「ソードアートオンライン」のアニメもアピールされてしましたね。
江口氏:台湾でも昨年アニメが放送されたのですが、相当な反響がありました。藍井エイルさんもアニメの主題歌の方で認知度が一気に高まって、昨日発表されましたけれども今度はゲームの主題歌を歌うということで、ファンが大喜びしていましたが、すごくうまく連携していると思います。
――台湾市場では、2014年のヒットタイトルはどのようなものがありましたか?
江口氏:プラットフォーム別に行きますと、まずPS Vitaでは「英雄伝説 閃の軌跡」のI、IIが大ヒットしました。特に「I」の方は日本で発売されて中文版が発売されるまで6カ月空いたのですね。あのタイトルってすごく熱狂的なファンがついているのですが、さらにもっとファン層を広げたいということで中文化を決めたのですが、準備や翻訳に時間が掛かってしまったので、僕らもちょっと心配したのですね。これだけ間が空くともうみんな日本語版で遊びつくしているし、中文版のニーズがないのではないかと思っていたのですが、それがフタをあければ、中文版がその数倍売れたんですね。みなさんきっと2枚買ってくれたんでしょうね(笑)。
――それはアップグレードとかではなく、それぞれ定価でですか?
江口氏:もちろん定価で。廉価版みたいな形にはせずに。「II」も同じく売れました。PS4でいきますと「The Last of Us Remastered」。これが発売からいまだに安定的に出ていますね。あのタイトルもPS3版が先に出て、間が空いてPS4版という形じゃないですか。それでもまだ売れているということは、ストーリーの良さがすごく伝わっているのかなと。あれは本当にロングランヒットです。
サードパーティの話でいきますと、もちろん「Grand Theft Auto V」です。こちらも安定して売れています。「GTAV」もPS3版が出てから間が空いてのPS4版だったじゃないですか。それも心配ではあったのですが、高画質化と1人称視点での遊びができるような画期的な変化があればこれだけ売れるのだなということがよくわかりました。
――ちなみに昨年9月でしたかね。Xbox Oneが台湾でもローンチされましたけれど、それによって何か影響はありましたか?
織田氏:アジアのどこの地域でもXbox Oneのローンチで我々のビジネスに何か大きな影響があったかというと、わからないといいますね。逆にコンソールゲームって家庭用ゲームを正式導入しているのはMSさんと我々だけなので、もっとある程度競争があったほうがいろいろな意味で皆さんの関心も集まるのですが。
江口氏:ユーザーってどっちのプラットフォームに乗るかよく見てますよね。どっちの電車に乗るか、どっちのチケットを買うか、どっちの電車に乗ったほうが楽しいんだろうというところを常にシビアに見ているということですね。
織田氏:中国についてはXboxは我々よりも先に入ってます。我々1社だけでは力不足ですから、中国でコンソールゲームを普及させるためにも一緒に頑張っていきたいところです。アプローチの仕方は違うと思いますが、競争の中で一緒に頑張っていきたいなと思っています。
――中国でのPS4のローンチ発表会の後、マーケットの状況を視察してきましたが、現状ではちょっと厳しいなという印象を受けました。PS4が中国でどういう展開をするのか、気になるところですね。
織田氏:中国ではやはりソフトウェアをどうやって売るかということがビジネスのキモです。コンソールゲームの存在は知っているけど、実際どんなゲームなのかというのを伝えるところはまだまだ手つかずですので、今の中国のゲーム市場だけを見て判断するのは難しいと思うのです。中国には新たにアプローチできるお客さんがたくさんいらっしゃると思うので、それに向けた施策をちょっと考えていきたいなと思っています。
――新たな施策という点では、昨年、台湾でPSNカードをコンビニで売り始めましたが、昨夜コンビニに行ったら、Xbox OneのXbox Liveカードも販売していましたね。
江口氏:MSさんが始めたのは我々から遅れること半年くらいでしょうかね。我々としてはコンビニでゲームカードを買うというライフスタイルを定着させたいという思いがあってやった施策です。そこにXboxものっかっていただいて、その分また売り場の面積が広がって、みんながゲームをもっと身近に感じてくれたらいいなと思って始めたことですので、参入はウェルカムです。
――今回SCETブースでもPS Plusに加入しませんかというキャンペーンをやっていますが、いまグローバルでもPS Plusが全体に占める収益の割合は無視できない規模になっていますよね。アジアではどうなのですか?
織田氏:同じです。アジアでもPS Plusの会員さんは増えてますし、それに応じてアジアのPS Plusのオプションサービスももちろん充実させていかないといけません。今はどちらかというとお客様に近いところで、PS Plusの中にこういうサービスもあるよ、ああいう特典もあるよとということをやっています。例えば今回はPS Plus会員には、ステージイベントを優等席で観られるという特典を付けています。
――へー、そうなんですね。
江口氏:今回も最前列の50名様はPS Plus会員限定なのです。
織田氏:いいサービスだとお金を払ってちゃんと会員になってくれる。逆に言えば、せっかく会員になっていただいたのにゲームを楽しんでいただくこと以外にできることがあれば、こうやって楽しんでいただきたいなと思います。
――私みたいな古いゲーマーからすると、PS Plus会員は「こんなに遊べるのか!」というくらい様々なゲームが遊べますよね。PS Plusのサービス内容はグローバルとアジアとは同じなのですか? それとも違いがあるのですか?
織田氏:多少の地域性はありますが、グローバルな情報を共有しながらアジアはアジアはなにをやるのが一番良いのかを常に考えて編成しています。
2015年は台湾はユーザーイベントを強化、アジア規模では東南アジア展開を強化
――織田さんが管轄しているアジア市場というのは、一昨年にシンガポールオフィスを立ち上げて東南アジアへの本格展開を表明しましたが、今はどのような状況なのでしょうか?
織田氏:東南アジアのビジネスは非常に伸びていまして、この1年間の伸び率が全アジア地域の中で1番高いマーケットになっています。
――それはやはり母数が小さいからというところもあるわけですか?
織田氏:そうでもありません。コンソールの販売という面ではもともとそんなに小さいマーケットではありません。東南アジア地域ではやはりチャネル開拓が1番大事です。マーケティングを含め、お客さんにちゃんと話とかができてなかったのが理由で我々はオフィスを作ったので、国別によって伸び率のスピードの差はあるのですが、非常にリテーラーさんやエンドユーザーさんと我々が近くなったので、それがたぶん高い成長率につながっていると思います。
――伸び率の高い国は具体的にどこなのですか?
織田氏:おしなべて高いです。スポーツゲームを例に取ると、フィリピンではバスケットボールタイトルを、シンガポールやタイではサッカータイトルをプロモートするなど、国による嗜好性の違いを理解した上で、そこにあったマーケティングをやるとうまくハマってビジネスが伸びるというケースを経験できましたので、そこをちょっと今年頑張っていきたいなと考えています。
――以前に安田さんがやられていた頃も、すでに東南アジアのいくつかの国にブランチがありましたが、当時は関税の問題が大きくて、なかなか数が出せないという話をされていました。その辺は今はどうなのですか?
織田氏:関税は今なお高いのですが、ユーザーと丁寧にコミュニケーションしたり、いろいろな特典を付けるとか、そういう草の根のタイプのマーケティングを続けていれば、説得力が出てくると考えています。単に価格の差だけでこっちがいい、あっちがいいというところから、こういう付加価値がありますよというふうに切り替えていくと、関税による価格差をうまく乗り越えていけるのかなと。
――今後たとえばミャンマーとか、ベトナムのようなまだ未開拓の地域に展開することはあり得ますか?
織田氏:その可能性は十分ありますね。すでにベトナムではPS Vita TVは売っています。次にどのマーケットを攻めていくかということも大事ですが、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポールの5カ国で、ちゃんとやってまだ1年ちょっとなので、まずはここをしっかりやって成功事例を作ってから次という流れになっていくと思います。
――台湾についてですが、今年の目標は?
江口氏:先ほど申し上げた通り、いよいよ日系のAAAタイトルがPS4でどんどん出てきます。PS3ユーザーでPS4へのスイッチをまだ待っているお客様がたくさんいらっしゃいますから、皆さんの背中をぽんと押してあげたいなというのが1つ目の目標ですね。
それと先ほど申し上げた実体験でのお客様との交流というか、感動をどうやってお届けするかということ。これもまた新たな発想でいろいろなファンに楽しんでいただけるような仕掛けをいろいろと考えていますけれど、そういったことを着実に1つ1つやっていって、プレイステーションって楽しいブランドだね、プレイステーションっておしゃれだねとか、いろいろな新しいイメージを作っていきたいと考えています。
――日本だとプレコミュのオフラインイベントが人気ですが、同じようにSCETの大会議室を使って、ユーザーを招いてイベントをやったりはしないのですか?
江口氏:定期的にはやってはいないのですが、タイトルによっては行なっています。それこそPS Plusの会員様を対象に抽選で先行試遊会をやったりしています。
――ディーラーではなくユーザーですか。
織田氏:ユーザーです。ディーラー向け勉強会は毎月やっているのですが、これというタイトルに関してはユーザーにも試遊していただいて、アンケートに答えていただき、我々もマーケティング戦略の参考にしたりとか、先行試遊したお客さんがどんどんご自身のフェイスブックだとかブログで発信していただいて、口コミを広げていく活動も具体的にやっております。
――2015年アジアの戦略についてお伺いします。
織田氏:まずは今ビジネスが着実に成長していっているので、やっていることをそれぞれ力強くやっていきたいと思います。中国展開も含めてウルトラCはないと思います。
――最後にアジアのファンにメッセージをお願いします。
織田氏:とにかく皆さんに楽しんでいただくことを目標にいろいろなことをやっていきますので、ぜひ一緒にプレイステーションを楽しんでいただければと思います。
江口氏:新しいプレイステーションの楽しみ方というものを私も考えますので、皆さんもいろんなイベント会場やFacebookを通じていろんなアイデアを聞かせて欲しいと思います。
――ありがとうございました。