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SCESHプレイステーションカンファレンス詳報

中国に配慮したタイトル戦略と、戦略的な価格設定にSCEの本気を見た

12月11日開催



会場:中国上海Mercedes-Benz Arena

 速報でもお伝えしたとおり、SCEグループの中国法人 索尼電脳娯楽上海(Sony Computer Entertainment Shanghai、SCESH)は12月11日、中国上海において発表会を開催し、プレイステーション 4およびPlayStation Vitaを2015年1月11日より、中国市場で発売することを明らかにした。

 SCEグループとしては実に11年振り、今世代機としては9月のXbox Oneに続く2番手での中国ローンチとなる。2時間にわたる発表会は、良い意味で予想を覆してくれる驚きの内容ばかりだった。本稿では詳報として発表内容を細かく見ていきたい。

【オープニングセレモニー】
左より順にSCESH総裁の添田武人氏、SCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)織田博之氏、東方明珠グループの総裁 徐輝氏

祝辞を述べる上海市文化広播影視管理局の貝兆健氏
SCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)の織田博之氏

 発表会では中国政府を代表して上海市文化広播影視管理局の貝兆健氏による祝辞、SCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)の織田博之氏、中国での合弁先である東方明珠グループの総裁 徐輝氏、そしてSCESH総裁の添田武人氏の3人によるオープニングセレモニーに始まり、添田氏より怒濤のタイトルラインナップが紹介された。

 ウェルカムスピーチを行なった織田氏は、孟子の“天地人”を引き合いに出し、中国のコンソールゲーム市場の開放と、PS4のグローバルローンチのタイミングが重なったことを“天の時”、経済発展と共に健全なゲーム市場を育み、豊富な人材に恵まれている中国でビジネスが展開できることを“地の利”、そして東方明珠とのパートナーシップを“人の和”とし、これらの要素により「成功を確実なものにする」と抱負を述べた。

 中国市場に対するコミットメントとしては、世界から良い技術を持ち込み最高の製品とサービスを提供すること、ゲーム開発者と手を携えて、政府の指導のもと、豊富多彩なコンテンツを提供すること、中国の業界関係者と手を携えて市場を作り上げ、新たな成長市場を生み出すことの3点を挙げた。これをワンフレーズで表現すると発表会のスローガンにも使われている「一切為了玩家(すべてはゲーマーのために)」となり、これが中国展開でのSCESHとしてのメインスローガンとなるようだ。実際、今回の発表会では、ゲームに関する発表しか行なわれず、これはMicrosoftがXbox Oneで映像配信サービス「BesTV」や各種アプリの標準搭載をアピールしていたのとは対照的だ。

【天地人】

【中国市場に対するコミットメント】

流ちょうな北京語でプレゼンテーションを進めるSCESH総裁の添田武人氏
中国全土にサポートセンターを設置
中国参入メーカーの一覧。中国26社、海外46社の計71社が参入を表明している
SCEWWスタジオからは5タイトルを紹介

 織田氏からバトンタッチした添田氏は、さっそくPS4とPS Vitaを紹介。とりわけ印象的だったのはサポート体制だ。中国で販売されるPS4とPS Vitaにはもれなく2年間の保証を付け、中国全土に75都市、90カ所に修理センターを設け、ハードウェアのメンテナンスサービスを提供していく。中国では長らく正規市場がなく、業者による修理が中心となっていただけに、中国全土での正規サポートは、SCESHが取り扱う正規品の大きなアドバンテージのひとつとなりそうだ。

 続いて添田氏は次々に中国内外のデベロッパーをステージに招き、PS4およびPS Vitaのタイトルラインナップを紹介していった。SCEWWSのファーストパーティータイトルを皮切りに、数十タイトルが紹介され、タイトルラインナップの充実振りをアピールしていた。

 ファーストパーティーからは、「KNACK'S」「DRIVECLUB」「Little Big Planet 3」など5タイトルを披露。いずれも中国政府が好む、“健康的”なタイトルばかりだ。その上でさらに添田氏は「政府の許認可を受けた上で展開していく」と、中国政府に対して二重三重に配慮を示し、細心の注意を払っていた。このため、今回の発表会では、発売が確定しているタイトルは1つもなく、ローンチタイトルが何になるのかもわからなかった。実際にはすでにセンサーシップを終えているタイトルもかなりあるようだが、ここは中国のゲームファンに対するリップサービスより、中国政府への配慮を優先させた格好だ。

 中でも印象的だったのは、中国メーカーの積極的な参入と、タイトルの供給姿勢だ。ChinaJoyでは影も形もなかった中国タイトルが、参入メーカーは中国だけで26社、タイトルは見られただけでも10タイトル以上発表され、ステージで発表される度にゲストとして招かれていた中国のゲームファンからは歓声が上がっていた。

 最初に紹介されたのは、Suzhou Snailの3DMOBAタイトル「King of Wushu」。もともと10月にNVIDIAと共同開発しているPCゲームとして発表された現在開発中のタイトルだが、これが早くもPS4で発売される。ゲーム性的には「League of Legends」に代表されるMOBAをCry Engineを採用した最新のフル3Dグラフィックスで実現したタイトルとなる。「LoL」などクォータービューのMOBAを“2.5D MOBA”と呼び、常時TPS視点でゲームが展開される「King of Wushu」を初の“3D MOBA”と差別化し、新世代MOBAであることをアピール。武侠をモチーフにしていることもあり、中国市場で期待度の高いタイトルとなる。

 PS4版のビジネスモデルはPC版と同じF2Pを採用し、クライアントも無料で、完全に無料でゲームを始められる。ゲームには15体のヒーローが登場するが、うち2人はPS4版独占コンテンツとなる。欧米日では、プラットフォーム間で独占コンテンツの奪い合いが日常茶飯事になっているが、それと似たような扱いで、「King of Wushu」はPC版よりPS4版を優遇するタイトルというわけだ。

【「King of Wushu」トレーラー】

【King of Wushu】

【2体のヒーローはPS4独占】
15体のヒーロー中2体はPS4版独占となる

 続いてUnity Gamesが紹介され、ゲームエンジンUnity 3Dを使ったPS4タイトルの可能性について担当者から語られた。2015年にはUnityのアプリコンテストにPS部門を設ける構想も発表。

 インディータイトルとして、PS Vita向けアクションゲーム「Mr Pumpkin Adventure」(Shanghai Youju Information Technology)や「One Tap Hero」(Shanghai Kena Information Technology)、「千姫変」などが紹介された。インディータイトルとはいえ、すでにこれだけのパートナーが参入し、PS向けにタイトルを開発していることに驚かされた。ちなみに今回発表された中国タイトルは、中国限定ではなく、その多くはグローバル展開していくという。中国メーカーがPS向けの開発に積極的なのはそういった要因もあるようだ。

【Unity Games/インディータイトル】
Unity Games
千姫変
「Mr. Pumpkin Adventure」。中国のPS Vita購入特典としてクーポンコードが同梱される
中国大手パブリッシャーの完美世界は、「Warframe」の中国展開を行なう
2Dアクション「影刃-蜃楼-」
パズルアクション「One Tap Hero」

発表会でもっとも盛り上がったのはこの瞬間。やはり「FF」は強い

 中国メーカーの紹介の後、ようやく中国以外のサードパーティーが紹介された。今回はスクウェア・エニックス、Ubisoft、コーエーテクモゲームスが紹介され、欧米アジアで計46社が参入に名乗りを挙げていることも発表された。

 ちなみに今回会場が1番盛り上がったのは、スクウェア・エニックスだった。クリスタルが回転する映像が流れながら「ファイナルファンタジー」のプレリュードが再生されると、会場がヒートアップし、橋本真司氏が登場して、PS4/PS Vita向けに「ファイナルファンタジーX HDリマスター」および「ファイナルファンタジーX-2 HDリマスター」の中文簡体字版を中国で発売することをアナウンスした。PS4版「ファイナルファンタジーX HDリマスター」および「ファイナルファンタジーX-2 HDリマスター」は世界初公開のサプライズ発表で、中国展開のプラットフォームが、PS3ではなくPS4となったため、中国でも据え置き型ゲーム機で「FF」が楽しめるように急遽用意した格好となったようだ。

【PS4/PS Vita「ファイナルファンタジーX/X-2】
サプライズでPS4版「FFX/FFX-2」が発表された

 Ubisoftは、残念ながらフラッグシップタイトルである「ASSASSIN'S CREED」や「Watch Dogs」などを見ることはできなかったが、PS4「Trials Evolution」とPS Vita「レイマン レジェンド」をそれぞれ中文簡体字で中国展開していくことを発表。Ubisoftは1997年から上海に開発子会社を設置し、現地スタッフも含め、中国ユーザーの好みを知悉しているということで、今後上海オフィスから中国向けのゲーム開発を行なうことも視野に入れているようだ。

 デベロッパーとしては最後に紹介されたコーエーテクモゲームスは、PS Vita「討鬼伝 極」と、PS4「真・三國無双7 猛将伝 完全版」を中文簡体字にローカライズして中国展開していくことを発表した。登壇した「討鬼伝 極」プロデューサー森中隆氏がPS Vitaならではの4人での協力マルチプレイバトルをアピールすると、「真・三國無双7 猛将伝 完全版」プロデューサーの鈴木亮浩氏は、PS4のマシンパワーによるパワーアップしたわらわら感と、キャラクターやステージの表現をアピール。コーエーテクモゲームスはアジア市場に強いメーカーだが、中国市場でも積極参入していく構えだ。

【討鬼伝 極】

【真・三國無双7 猛将伝 完全版】

【発表タイトルリスト】
今回発表されたタイトル一覧、左がPS4で右がPS Vita

【その他の発表】
発表会ではそのほかにもミドルウェアやゲームエンジン、クラウドファンディングなど、あらゆる形でのタイトル制作支援も合わせて発表された。詳細については翌日に予定されているデベロッパー向けのカンファレンスで発表されるようだ

中国市場でのハードウェアラインナップ
コンパニオンが手に持っているのが、中国発売記念限定PS4

 そして発表会の最後に、気になるハードの価格と発売日が発表された。価格についてはPS Vitaが1,299元(約25,000円)で、PS4が通常版が2,899元(約55,500円)、PlayStation Camera同梱版が3,299元(約63,000円)。円安の影響もあって、日本の値段と比較すると割高感があるが、実際はそうではなく、中国の法律上、合弁企業を作らなければ中国でゲームコンソールの販売ができないこと、ソフトウェアのパブリッシングに関しては中国企業を通して行なう必要があることなどから、グローバルよりどうしても高コストになる。そこから逆算するとかなり戦略的な価格設定をしていることがわかる。

 わかりやすい例でいうと、9月に発売されたXbox Oneの3,699元(通常版)、4,299元(Kinect同梱版)と比較すると、どれだけ安いかがわかる。会場では良い意味で予想を裏切りすぎたためか、歓声というよりどよめきが上がり、極めてポジティブに捉えられていた。Xbox Oneはグローバルに続いて、中国市場においても価格改定を迫られることになりそうだ。

 そして発売日は2015年1月12日。2015年の旧正月は2月19日と例年より若干遅めで、このため2月上旬頃が予定されていたが、予想より1カ月ほど早い。旧正月商戦を先取りする格好となる。

 そして最後にサプライズとして「King of Wushu」同梱PS4と、中国発売記念PS4およびPS Vitaがアナウンスされた。いずれも中国市場限定、数量限定で1月11日発売。予約受付は12月12日0時よりスタートしている。

 今回の発表会で感じたのはSCESHの本気度だ。26社の中国メーカーの参入、数十タイトルにも及ぶ中国産タイトルの開発、戦略的な価格設定、中国政府に対する細心の配慮、そして「King of Wushu」におけるエクスクルーシブコンテンツの獲得等々、SCESHは中国市場においてPSフランチャイズを“垂直立ち上げ”しようとしていることを強く感じた。懸念点としてはローンチタイトルのセンサーシップが終わっていないところだ。これがどう転ぶかによって、ローンチタイトルの数が変わり、プラットフォームとしての勢いが決まってくる。

 SCESHでは今回あえて発表を見送ったタイトルラインナップやオンラインサービスやペイメントなどを2015年1月11日の発売に向けて順次発表していくとしている。こちらの発表にも引き続き注目したいところだ。

【価格発表】
PS Vita
PS4
PS4限定モデル
予約開始日時
発売日

(中村聖司)