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【特別企画】1枚の食パンがトーストになる“食パン”バカゲー「I am Bread」をプレイ!
操作難易度超弩級! キミは1人前のトーストになれるか?!
(2014/12/10 00:00)
今年も12月に入り2014年も残すところ僅かとなってきた。今年も多くのゲームが発売され、熱心なゲームファンの皆様も様々なゲームをプレイされてきたことだと思う。
今年発売のめぼしいタイトルの多くは既に発売されたし、今年から始まったゲーム産業を祝う祭典「The Game Awards 2014」で今年のGame of The Yearが「ドラゴンエイジ:インクイジション」であることも発表され、ゲーマーの2014年は終わり、2015年を迎える……と思っていたところ、とんだ伏兵が潜んでいた。
といってもそれは大手デベロッパーの隠し玉AAAタイトルではない、1枚の食パンが美味しいトーストになるために旅(?)をするゲーム、「I am Bread」だ。本作の製品版発売は2015年早期が予定されているが、現在アーリーアクセス版がSteamにて発売されており、ゲームに触れることができる。早速紹介していこう。
1枚の食パンが旅をする姿が最高にシュール!
開発したのはイギリスのBossa Studiosというデベロッパー。正直あまりメジャーではないが、「Surgeon Simulator 2013」のデベロッパーと言えばピンと来る読者もいることと思う。「Surgeon Simulator 2013」は、直訳すると「外科手術シミュレーター2013」だが、以前おバカシミュレーターとして取り上げた通り、「真面目にシミュレートをする気がないだろう」と思わず突っ込みたくなる作品だった。
この作品ではA、W、E、F、スペースキーがそれぞれ左手の各指を折り曲げるという動作に割り当てられており、手術どころかメスを掴むのも一苦労。しかも手術の内容が大雑把で、心臓移植なら肋骨を砕き、血管を切断し、心臓を引きちぎって、代わりに新しい心臓をぶち込めばクリア、縫合など面倒な作業は一切なし! というハチャメチャなものだった。
「I am Bread」は、そんなBossa Studiosが「Surgeon Simulator」の次にリリースするタイトルであり、1枚の食パンが立派なトーストになるまでの美しい物語が描かれる……と開発元は説明している。
実際のゲーム内容というと、プレーヤーが操作するのはスライスされた1枚の食パン。普通の食パンと違うところは食パンの4隅で何かを掴むことができること、そして自分自身の力で動くことができるという2点だ。
なんらかの方法で自力でトースターのところまで向かい、両面をこんがりとトーストすればステージクリアとなる。だが食パン(プレーヤー)の旅はそう容易なものではない。なぜか食パンがある場所からトースターの場所が離れており、基本的に自分自身の力で移動しなければならない。
キーを押すだけでもジリジリと進んでいくのだが、効率良く移動するポイントは4隅のグリップを上手く使うことだ。グリップ可能時間という制限はあるものの、ステージにあるほとんどのオブジェクトを掴むことができ、上手くグリップすればニンジャの様に壁を登ったり、天井に張り付くことも可能だ。
他にも隣合うパンの隅をグリップして力を加えれば、ドミノがパタンと倒れるように自力で移動できる。これを繰り返していけばパタンパタンと、平坦な場所なら普通に移動するよりもスピーディに移動できる。
こういった移動方法を使ってトースターまでいけば良いのだが、さすがはBossa Studiosというべきか、4つあるグリップの切り替えと移動を流れるように行なわないと思った方向には動かないため、そんなに簡単に目的地まで行かせてくれない。「Surgeon Simulator 2013」をプレイした時にも思ったが、開発者は「思ったように動かさせない」というポリシーでゲームを作っているようにすら思える。
さらに食パンには汚い物に触れると減少していく「Edibility(可食性)」というパラメーターがあり、これが0になってしまうとゲームオーバーになってしまう。例えば床の上やカーペットに接しているとジリジリと減っていくし、シンクに貯まった水の中に落ちたら一瞬で0になる。
操作の難しさも相まって、床に落ちてまごまごしていればあっという間にゲームオーバーを迎えてしまう。できるだけキレイなところを通りつつ、汚いところを通る時はできるだけスピーディに通過しないといけない。それが本作をゲームらしくしている要素の1つでもある。
基本的には先程紹介した移動方法で移動するのだが、本作のオブジェクトは物理エンジンで動き、ところどころに“いかにも”というものが配置されている。
例えば最初のステージでは、スタート地点となる机の下にはスケートボードがこれみよがしに置いてある。本作ではスケートボードの上は「キレイな場所」と設定されているので、スケートボードをコントロールしてトースターに近づけば高い「Edibility」を保ちつつトースターに近づく事ができるという仕組みだ。またオブジェクトを倒したり動かすことで道が開けることもあるので、色々と体当りしてみるのも面白い。
ちなみに本作はその複雑な操作のためゲームパッドによるプレイが開発元より推奨されているが、手持ちのコントローラーが動かない場合もある。開発者によればXbox 360コントローラーとDUALSHOCK 4が動作することを確認しているそうなので、コントローラーを使う際は注意していただきたい。
発想は最高にクレイジー! ワイワイと楽しむ実況&大人数プレイ向き
あまりの操作の難しさに、自分でやっているとフラストレーションが溜まるため何度もコントローラーを投げたくなったが、その一方で他の人がプレイしているのを見るのを冷静に見るのはかなり笑える。
実際にYouTubeやニコニコ動画といった動画サイトで検索すると、多くのプレーヤーが動画を投稿しており、思い通りに動かない食パンにイライラしながらプレイしている動画を見ることができる。1人で根を詰めてプレイするより、動画サイトに投稿するなり、友だちと交代しながらプレイする方がストレスを溜めずに笑いながら楽しめるだろう。
その上で、プレイしていて気になった点もいくつかある。その1つが絵面の地味さだ。今年2014年はバカゲー、奇ゲーが豊作な年で、弊誌でも紹介したヤギが街の中を暴れまわる「Goat Simulator」などは発想の奇想天外さから大きなムーブメントを生み出した。
まだ発売されていないタイトルも多いが、筆者がパッと思いつくだけでも、岩シミュレーター「Rock Simulator 2014」、草シミュレーター「Grass Simulator 2014」、ただ山を眺めるだけのゲーム「Mountain」など発想の勝利……いやゲームの未来を感じさせる様々な作品が発表されており、それらと比較すると本作はずば抜けて奇抜な作品というわけではない。
不自由な動きを楽しむというゲーム性は「Octodad: Dadliest Catch」思い起こさせ、「I am Bread」もステージ上の物を破壊することもできるのだが、「Octodad」の方が色々なオブジェクトを巻き込んでより派手にグシャグシャになる分、カオス度合いで秀でている。
また本作のウリでもあるのだが、難易度の高さも気になった。特にリビングから始まる2ステージ目は目的地がまったくわからない上、試行錯誤して苦労して高い壁を登ったり、棚に登ったりしても、ちょっとした操作ミスですぐにカーペットに落下し、あっという間に「Edibility」が0になって最初からやり直しとなってしまう。難しいを通り越して理不尽にすら感じる難易度だったので、セーブ/ロードとまでは言わないが、せめてコンティニューやチェックポイントのような救済措置が欲しい。
と、気になるところも何点かあったが、本作はまだ「アーリーアクセス」という状態で、完成バージョンではない。これからコミュニティからのフィードバックを反映しつつ、新たなステージの追加やデバックが行なわれる予定となっている。
今年は「Goat Simulator」を筆頭としたバカゲー、奇ゲーラッシュだったのでその中の1つの作品として見てしまうのだが、単体で見ればクレイジーなゲームであることは間違いない。特に完成版ではまだ実装されていない“壮大で感動的なストーリー”が描かれるそうなので、気になった方は今のうちから練習しておいて完成版に備えておいて欲しい。