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「クロックタワー」の遺伝子を持つ「Project Scissors」、その一端を明かす!

コアなホラー映画談義に……その果てに見え隠れする「Project Scissors」

コアなホラー映画談義に……その果てに見え隠れする「Project Scissors」

ハサミを巡って色々と話しながら、サービス精神旺盛にポーズをとっていただいた

――ゲーム制作に参考にされている映像作品はあるのでしょうか?

河野氏: 今回はピンポイントではないですよね。やはりもう、前に作ったときよりも映像作品をさらに色々と観てきて、蓄積は増えてるわけで。それでもやっぱり根底はイタリア……前は完全にダリオ・アルジェント一択だったんですけど、最近ではテイストとしてルチオ・フルチも入ってます。私のソウルのなかに。

――それは、ルチオ・フルチの精神性みたいなところですか?

河野氏: あのね、なんでしょうね? 昔は全然好きでは無かったのに、10年くらい前にスポッ! と入ってきた。

清水氏: 虫とか腐るとか?

河野氏: 「ビヨンド(1981年イタリア公開のホラー映画)」が素晴らしい名作に見えてきましたね。たしかに「墓地裏の家(1981年イタリア公開のホラー映画)」とかお話しは結構酷いですけど。「ビヨンド」とか「地獄の門(1980年イタリア公開のホラー映画)」とか、やっぱりいいなと思いますよね。

清水氏:  実は元々「サンゲリア(1979年イタリア公開のホラー映画)」とかも、ジョージ・A・ロメロが「ゾンビ(1978年イタリア公開のホラー映画)」を撮って「おっ、これいくぞ!?」というのを見計らって「俺もゾンビ!」とやってるじゃないですか。マネとかパクリのように言われがちなんですけど、でもいきなり海中にゾンビが出てきてサメと格闘させたりとか、ただただゆっくり尖った木に女性の目が……。

河野氏: あれいいですよねぇ! あのシーン!

清水氏: もう好き勝手に自分のやりたいことをぶちこんでいるんですよね。だから良いんだと思う。「サンゲリア」でラストに、ニューヨークの大きい橋をゾンビが歩いていくシーンとか、やっぱり素晴らしいですね。あれで終わらせるっていう。なんとなく、ルチオ・フルチの色っていうのがあるんですよね。たしかに「そこ、そんなに手を抜く!?」みたいな所もあるし、色々あるんですけど。あの人の持ち味と、あの人しかできないテイストが確実にある。

河野氏: なんとなくですけど、ダリオ・アルジェントと仲が悪いみたいな噂がありましたけど。ルチオ・フルチが亡くなったあとですが、アルジェントの撮った「サスペリア・テルザ(2007年イタリア公開のホラー映画)」だとか、結構フルチが入ってますよね? やたら内臓がでてきたりとか。

清水氏: 実はどこかでマネしたかったんじゃないんですかね。

河野氏: 亡くなってようやく喧嘩の感情も薄れて、素直に「リスペクトもあったんだぜ?」っていう感じがでてきているのかなぁ? とか思いましたね。そういうふうに見ると感動的な映画に……。

――では「Project Scissors」ではルチオ・フルチ感が前面に出た作りになるのでしょうか?

河野氏: 許されるなら内臓グチュグチュやりたいですよねぇ!(笑)。単純に「ゾンビでグチャグチャ」とかではなくて。やっぱりフルチの内臓グチュグチュって、きったないけど美しいですよねぇ、アレ。ずっとクチから内臓ゴボゴボ吐いていくシーンとか、すげぇなぁ! と思いますものね。

清水氏: イタリア系……アルジェントもそうだけど、残虐なのに美しく感じさせてしまう世界観があるのかもしれません。マカロニ・ホラーというか。

河野氏: そうですね。特にグラフィックス面で見ても……試行錯誤中なのでうまくいくかわかりませんが、やはりホラーというと、どうしても単一の色調になってしまい、彩度を落として、モヤがかかって、暗くて……といったようにある程度もうフォーマットが決まっているんですね。特にそれに加えて懐中電灯なんて「サイレント・ヒル」が原型を作ったと思うんですよね。彩度を落として、色調もずーっと下がっていて。

 あれは素晴らしいんですけど、素晴らしいからこそ「サイレント・ヒル」1個でいいじゃないかと思うんです。いまインディーでちょこちょこあるゲーム、どうもなんか、あのへんのフォロワーっぽい感じの画面デザインのタイトルが見受けられる。それだけあの画作りが合理的な証拠なんですが、私としては、「『サイレント・ヒル』のオレ版を作って、何が嬉しいんだ?」と思ってしまいます。

 そうではないグラフィックスの感じというと、イタリアンホラー系の、なんだろう? RGBの彩度が高くて、研ぎ澄まされた美しさと恐ろしさの同居というのを、なんとか実現できないかなと思っているところです。後々画面を出したとき、「実現できた!」のか「う~ん残念だったね!」と思われるのかは、乞うご期待というところです。

 あとはやっぱり、フランスホラーも最近流行ってますよね。フランスホラーって、Jホラーと結構通じるところがある。特にこう「屋敷女(2007年フランス公開のホラー映画)」とか「ハイテンション(2003年フランス公開のホラー映画)」とか、あのへんの一連のやつは結構いいのが多いですね。それにスパニッシュ・ホラーも熱いですよね。

清水氏: スパニッシュは熱いですよ。フランスってホラーに対して、国とか政情的に理解度が低いんですよ、まだ。だからあまりお金も集められなかったり。でも「屋敷女」にしても何にしても、聞いたら何億もかけて撮影していて、「いやいや、(お金)かけてんじゃん、十分!」って思ったんですけど。

 作る監督は監督で、想いは強いんですよね。フランスでホラー自体が少ないから。何人か監督にお会いして話をしたら熱くて。ただ痛めつけるにも、色々お金だけじゃなく工夫してアイディアを持ち込んでいる。「痛いのは苦手だから」とだけは言えなくなってくるくらい、話が面白いんです。

河野氏: 最近、僕が面白いと思ったのがフランスホラーがやたら多かったから「(世に出る数が)すごく多いのかな?」と思ったら、そんなに制作されていないのかな……?。

清水氏: 実はそうみたいですね。数としては。スパニッシュのほうがまだ数も多いし、ホラーのなかで種類も色々ありますね。

河野氏: あそこは粗製乱造感も程よくありますよね。

清水氏: 「完全に『あの作品』を見て作ったよね?」みたいなのも多いんですけど(笑)、そういうなかで「なるほど、これはイケる」というのも増えてきてます。

 河野氏: 「REC/レック(2007年スペイン公開のホラー映画)」とかもスパニッシュですよね?

清水氏: そうですね。

――やはりヨーロッパ全般のほうがアイディアが盛り込まれてるタイトルが多い気がしますね? アメリカはわりとゾンビ一辺倒かな? というところがありますよね。

 河野氏: ゾンビばっかりですよねぇ。たしかに「パラノーマル・アクティビティ(2007年アメリカ公開のホラー映画)」みたいなのも出てきたけど……「ゾンビ・ストリッパーズ(2008年アメリカ公開のホラーコメディ映画)」くらいいけば逆に面白いと思うのですが。

――「Project Scissors」では、アイディアを盛り込みつつ、そういった映画に影響を受けつつ作られているということですね。

河野氏: 逆にいえば、僕は昔はホラーに対して結構狭い了見で臨んでたんですよね。今は「色々な国のホラー、全部素晴らしいなぁ!」みたいな(笑)。

清水氏: 少し大人になった?(笑)。

河野氏: なりました、なりました(笑)。

――狭い了見というのは、どのような?

河野氏: 「ダリオ・アルジェント以外のホラー作品は、しょーもない! B級! アルジェントとか美しい、こういうモノを目指さなきゃダメだね! 高尚な感じで!」みたいな。実際、いま考えると高尚かどうかなんてエンターテイメントにはどうでもいいんですけどね(笑)。

――最後にお2人から「Project Scissors」への意気込みをうかがいたいと思います。

清水氏: インディーでクリエイター発信というところに賛同したというのはあるんですけれども、現状やっぱりゲームありきで、河野さんの発想とか基盤があって、その上に乗っからせてもらっているところがあります。そこに自分がどれだけ協力させてもらって、自分だけではできない相乗効果を生めるか、というのを楽しみにしています。ゲームの好きな方もそうですし、ボクの映画のファンでいてくれる人もそうですし、色々な方に楽しみにしてもらえればと思っています。

河野氏: 今回、すべての環境を自分達で何とかしなければならないのは初めての経験なんです。クリエイティブだけをやっているわけにいかないということもあるんですけど、逆にいうと、「プロジェクトとしてこんなに面白いことを俺らは今やってるな!」と思っています。面白いことをやっていると思える機会って人生でそうそうない。とにかく、最後、倒れて死ぬのか完走できるのかわからないですけど、とにかくいけるところまで突っ走ってみようと思うので、ファンの方々は暖かく見守っていただければと思います。

――私も楽しみにしています。本日はお忙しいところをありがとうございました。

(船津稔)