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「Wargaming.net League APAC シーズン2 グランドファイナル」DAY 2レポート

アジア最強を掛けた勝負のゆくえは!? 日本“Charlotte Tiger”に密着!

【Wargaming.net League APAC シーズン 2 グランドファイナル】

10月24日~10月25日開催

会場:Yongsan eSports Stadium / BlueSquare SamsungCard Hall

決勝の会場はBlueSquare SamsungCard Hall

 10月25日、Wargaming.netが展開するオンラインタンクバトルゲーム「World of Tanks」のアジアパシフィック地域チャンピオンを決める大会、「Wargaming League APAC シーズン2 グランドファイナル」の決勝戦が行なわれた。

 会場はソウル市内の真新しいシアター施設、BlueSquare。劇場型の大ホールは1階席だけで500人収容という大きさなのだが、その会場がさっくりと満員になるあたり、Wargaming.net Asiaが本大会の第1、第2回開催地に韓国を選んだ理由がよくわかる。

 この日の試合はノックアウトトーナメント方式。前日に開催された総当り戦にて、3位、2位となった日本のアマチュアチーム“Charlotte Tiger”と、中国のプロチーム“Elong”が、決勝進出をかけて対決。その勝者が韓国のセミプロチーム“Arete”と決勝戦を行なう、という図式だ。

 出場3チームともに前日の総当り戦でいちどは対戦済みであるだけに、各チームが前日の試合と同じ戦法でいくのか、それとも違うスタイルを出していくのかという判断が注目される。日本から参加の“Charlotte Tiger”は、前日のインタビューにて“話し合いで良いアイディアが出てきたら、決勝では面白いものが見れるかも”と語っていたが、さてどうなることやら。

約500人収容の会場
日本の“Charlotte Tiger”
中国の“Elong”
韓国の“Arete”も入場して全員集合

“Charlotte Tiger”に大きな声援が送られた準決勝。勝者の条件とは……?

準決勝:Charlotte Tiger 対 Elong

先取ブースは間仕切りのないタイプ。ボイスチャットの連携はどうか
守りの姿勢に徹し、1両づつ粘る方法でドローを狙う

 準決勝のルールは24日の総当り戦と同じく、3ラウンド先取制。満場の「WoT」ファンが見守る中、さっそく“Charlotte Tiger”と“Elong”による決勝戦がスタートした。

 ラウンド1。マップは「ヒメルズドルフ」。重戦車5両という編成を選んだ“Charlotte Tiger”は、スタート地点から東西に広がって防衛線を張る格好だ。前日の積極攻勢スタイルとは真逆のスタイルだが、対する“Elong”の押し上げが慎重なため、接敵前に時間だけが過ぎていく展開に。残り2分で“Elong”が戦力を集中し攻勢に出てきたが、“Charlotte Tiger”はこれに耐え、おそらく狙い通りのドロー発進。ラウンド取得数を1-1とし、残る2戦での連勝を狙う。

 ラウンド2。マップは「ルインベルグ」。前日の総当り戦では同じ“Elong”を相手に東側大外の突破で勝利したマップだが、“Charlotte Tiger”はこの日も同じ作戦を採用。主力を東側の集落に回らせ、防戦に来た“Elong”の車両を数的優位を活かして各個撃破。履帯を切る連携や、編成に1両だけ交えた「T49」の高火力HE弾をことごとく命中させたこともあり、“Elong”の防衛戦をあっという間に破壊。完全に勝ちパターンだ。会場を大いに沸かせ、ラウンド取得数を2-1としてリード。あと1ラウンドで決勝進出に手が届く。

「ルインベルグ」東側に両軍の戦力が集中。しかしここでの立ち回りは“Charlotte Tiger”が上。薄い中央も早期に突破して各個撃破に成功した
“Elong”の展開が速い。良い形を作る前にダメージがかさばる“Charlotte Tiger”
ラッシュを避け引きこもる相手に、うまく攻撃のタイミングを合わせられない

 ラウンド3。マップは「崖」。両チームともリボルバー砲塔の軽戦車・中戦車で編成し、速攻を企図。マップ中央の丘陵を挟んでの激突が展開したが、“Elong”は素早く東側の山上に展開。主力を中央に集めた“Charlotte Tiger”は2両が山上を抑えて包囲を狙うが、布陣が整う前に中央の主力に砲撃が集中し、崩壊。逆に分断される形となり、相手5両健在という大差でラウンドを落としてしまった。これでラウンド取得数2-2。ラウンド4の勝敗で決着がつく。

 ラウンド4。マップ「プロホロフカ」が表示され、会場から歓声が上がった。先日の総当り戦で、“Charlotte Tiger”がこのマップで2回のラッシュを大成功させたことを皆覚えていたのだ。今回もラッシュで勝負を決めてくれるか、と思われたが“Elong”は装甲の厚い重戦車を編成に交え、全力で線路を挟んだ集落へ移動。これに対して“Charlotte Tiger”はチームの足並みが揃わず、突入のタイミングが合わない。1両づつ突出したところを着実に叩かれ、火線を集中させることができないまま全滅の憂き目に遭ってしまった。

 得意マップで敗北を喫した“Charlotte Tiger”はここでノックアウト。会場から大きなため息が漏れるなか、“Elong”の決勝進出が決定した。ちなみに会場では“Charlotte Tiger”を応援するファンが意外なほど多かった。チームロゴの“KAWAII”キャラクターが韓国の「WoT」ファンにもウケていたようで、“Charlotte Tiger”の面々は来場者からたくさんの応援イラストをプレゼントされていた。

 それだけに、十分に可能性がある中で決勝進出を逃してしまったのは痛恨だったと言えよう。例えば「プロホロフカ」では相手が引きこもった時点で引き分け狙いに切り替え、第5ラウンドでもう1度勝負するという手段もあったはずだ。試合後に聞いてみたところ、これはチームリーダーのplateaux選手も認めるところであったが、結果としては「見て面白い戦い方」を選択し、砕け散ったということだ。勝ちへのこだわりが足りなかったか、練習の不足だったか。ここにプロチームとの差が見えるような気がする。

強引に突入を開始するも、準備万端の相手に各個撃破されてしまう
厳しい表情で指示を飛ばす“Elong”リーダー
対するplateaux選手は作戦の不発で意気消沈気味

決勝戦:Arete 対 Elong

王者“Arete”と“Elong”が対決
“Elong”の徹底したキャンプ作戦
陣形を崩させ、逆に包囲状態に持ち込む“Arete”

 前大会王者にしてアジア最強を誇る韓国“Arete”は、やはり格が違った。4ラウンド先取ルールで行なわれた“Elong”との決勝戦は各ラウンドとも激しい読み合いと陣地の再転換が繰り返され、最終的な勝負どころはいつも意外な地点、タイミングで発生。「WoT」が作戦のゲームであるという事実を再確認できる試合内容であった。

 特に印象的だったのは2-1で“Elong”がリードして迎えた第3ラウンド。マップ「ヒメルズドルフ」で北スタートの“Elong”は、陣地近くに砲列を綺麗に並べての徹底したキャンプ戦術をとった。じわじわと前進する“Arete”は、敵が見えるまえにどうやらこれを察知。“Elong”が迎撃を企図する方面とは逆の、東側の丘に1両の重戦車を派遣、そこから背後をつつくことで隊列を乱し、そのタイミングを待っていた主力の4両が揃って中央の街路から突出、完璧なタイミングで囲い込み、キャンプ戦術を無効化した。

 その後は入り乱れて乱戦になるかと思いきや、“Arete”は一斉に後退。障害物を使って時間を稼ぎつつ別ルートに戦力を分け、改めて包囲する形を作ってから2回目の攻勢へ。完全優位な形で“Elong”の残る戦力を撃破したのだ。優位な状況を作るということをどこまでも徹底し、それを全員が完璧に実行しているわけである。

 こうしてラウンド3以降、“Arete”が全勝。最後の第5ラウンドも柔軟な配置転換で“Elong”を完全に型に嵌め、側面攻撃からの乱戦突入で危なげなく勝利を収めた。これはちょっと格が違う。10回やって10回、“Arete”が勝ちそうな勢いだった。文句なしの試合内容で“Arete”が優勝である。

長い距離を挟んで細かく陣地転換を繰り返し、最善の形を模索する
引き分けが許されない相手の事情を利用し、有利な位置で待ち伏せる“Arete”
側面から素早く包囲し、“Elong”の車列を撃破
勝利の瞬間ガッツポーズをする“Arete”メンバー

課題は練習の質と量……。シーズン3へ望みをつなぐ“Charlotte Tiger”

2連続で優勝した“Arete”は、世界大会への出場権を確実にした
戦い終わって控室で反省会
チーム応援イラストをもってかけつけた台湾のファンと一緒に。韓国のファンからもたくさんのイラスト色紙をもらったようだ

 こうして「Wargaming League APAC シーズン2 グランドファイナル」の全日程が終了。優勝“Arete”、準優勝“Elong”、3位“Charlotte Tiger”という結果で幕を閉じた。

 ちなみに来年開催予定の世界大会への出場権は、アジア・パシフィック地域の2枠を各シーズンの勝利ポイントで決定する仕組みが取られている。シーズン1、シーズン2で連続優勝を果たした“Arete”はこれで世界大会への出場が確定。残る1枠を韓国・アジアサーバーの200あまりのチームで争う形になるが、今回3位に入賞した“Charlotte Tiger”も、次のシーズン3で好成績を収めることができれば世界大会出場の可能性がある。

 そのあたりも含め、“Charlotte Tiger”の今後はどうだろうか。チームリーダーplateaux選手へのインタビューで本稿を終わりにしよう。

── まず今日の試合を振り返って、1ラウンド目のドローは狙っていたんでしょうか?

plateaux選手:間違いなく狙いました。そこで1-1にしておいて、3戦目のクリフ(崖)は僕らが結構得意としているマップでしたので、あとは2、3ラウンドを取れば勝ちだと思っていました。でもそこで負けてしまったのが、最大の敗因になってしまったかなと。

── 2マップ目の「ルインベルグ」では、先日と同じ作戦がうまくハマったようですね。

plateaux選手:予想通りでしね。わりと練習しましたし、この形になれば絶対に勝つぞと思っていました。相手があの編成をしてきた限りは、どのチームだろうと絶対に勝てます。“Elong”が対策できていないというよりは、彼らが持っているパターンはそんなに多くないですね。1つか2つのパターンに絞った中からどういう対応をしていくのか、その次の段階が上手いチームなんですが、あれは“詰んでる”形に等しいので、次はまた同じような条件で戦ったらパターンを変えてくるかもしれませんね。

── 3ラウンド目を落として4ラウンド目の「プロホロフカ」、先日2回のラッシュを成功させていましたが、“Elong”が乗って来ませんでしたね。

plateaux選手:相手の編成を見た時点で、線路を渡るのは予想していました。彼らの編成だとまともに打ち合えばリロードが間に合わないんですね、つまり正面からぶつからない場所を絶対に選んでくると。ただ、ボイスチャットが聞こえづらいという環境上の問題もあって、意思の伝達がうまくできなくてですね。作戦の変更を指示したんですけども、行くか行かないかで別れてしまって。ただ、うまくやってても、難しいですね。あの状況では。

── その時点でラッシュをやめ、引き分けに持ち込む狙う考えはありませんでしたか?

plateaux選手:引き分けにして次のマップで勝負しても面白いかなとは思ったんですが、やっぱりドローはつまんないかなと。線路を挟んでにらみ合いってのは、見てて面白く無いですよね。だからこれは突っ込んだ方が面白いやろと思って。もう少し作戦が綺麗に行ってればもっと接戦になって面白い試合になったと思うんですけども、そうならなかったのが残念ですね。このあたりは練習量がすべての原因だと思います。

── 3位賞金8,500ドルで満足でしたか?

plateaux選手:それは出場時点で決まっていたので、もらって当たり前というか(笑)。どうせやるからには優勝の6万ドルのほうがよかったですね。でも正直なところ“Arete”が優勝するんだろうと思っていました。やっぱり実力が違うのを知っていましたから。決勝の3ラウンド目で“Elong”がやった作戦も凄かったんですよ。普通のチームじゃ考えられないような発明級の凄い作戦ですよ。でも“Arete”のほうがさらに上手を行きましたよね。そこが彼らの強さだと思っています。

── 今後数名のメンバーが抜けてしまうとのことですが、シーズン3に向けてチームとして続けていきますか?

plateaux選手:シーズン3には参加したいと思っていますけれども、これ以上メンバーがいなくなるならどうしますかね。というわけでメンバー募集中です。やる気があって、俺は上手いんだって自信のあるプレーヤーは歓迎です。いろんな作戦のパターンを試したり、それを崩す練習も質を高める必要があって、練習に協力してくれるチームも募集中です。

── これから「WoT」を始めたり、チーム戦にデビューして強くなりたいと思っているプレーヤーの皆さんに何かアドバイスをお願いします。

plateaux選手:“Charlotte Tiger”に入りましょう(一同笑)。入れば、僕らが100%上手くしますよ。上手くしますが、入る前にある程度上手ければ、それが僕らにとっては望ましいです。でも、上手くなるのってそんなに難しいですかね? 前に来た敵を、そのまま撃てば、それなりになるんですよ。敵が来た、撃った、下がった、というのを反復するゲームなんです。だからその反復を繰り返して経験を積むことが1つ。うまい人の配信を見て真似することが1つ。それから、うまくなりたいというモチベーションを持ち続けることが1つ。この3つだと思います。

── ありがとうございました。

(佐藤カフジ)