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【GDC 2014】1.3億ポリゴンのローマ将軍が躍動!「Ryse」キャラクター制作秘話
次世代水準を定義する映像品質。驚くべきディティールへのこだわりをチェック!
(2014/3/21 21:46)
国内では9月の発売が決定され、にわかに注目度の高まったXbox One。強力なローンチタイトルの数々をプレイするのが待ち遠しいところだが、GDC 2014では関連タイトルのポストモーテムセッションが開催されており、Xbox Oneタイトルを別の角度からも楽しむことができる。
中でもCrytekによるローンチタイトル「Ryse Son of Rome」は注目の1本だ。超リアルに描かれたローマ兵や蛮族戦士が躍動し、シネマティックとアクションが完全に融合した、次世代機ならではの迫力を楽しめる作品。本作のポストモーテムセッションでは、この映像美と説得力に溢れる演技を実現したキャラクター制作についてのトピックが披露されている。次世代機ならではの、驚愕のディティールへのこだわりに注目しよう。
カットシーンをプレイせよ! 超高スペックのキャラクターモデル制作
このセッション「Play the Cutscene: The Characters of Ryse」では、「Ryse」に登場するキャラクターのデザインとモデリング、アニメーションの実装などについて包括的な話題が展開した。講演を行なったのはCrytekのシニア・キャラクターアーティストのAbdennour Bahir氏と、アートテクニカルディレクターのChristopher Evans氏。
本作は主人公であるローマ将軍「マリウス」の視点で展開するシネマティックアクションで、映画並みの迫力と説得力が溢れるカットシーンと、剣と盾を駆使したバトルがシームレスに融合していることが最大の特徴だ。Xbox Oneの性能を活かし、まさに“カットシーンをプレイする”ことが実現されているタイトルなのである。
この手のゲームでは通常、カットシーンでは専用の高品質3Dモデルを使い、ゲームプレイ用には別途軽量化された3Dモデルを使うというふうにデータを切り分ける。それゆえカットシーンが始まるたびにシーンチェンジやローディングが始まるゲームが一般的なのだが、本作では両者は完全にシームレスだ。驚くべきことに、いわゆるカットシーン用モデルと、ゲームプレイ用モデルを分けていないのだ。
本作ではゲーム中を通じて、シネマティック水準の高品質モデルだけを使用。カットシーンにおける大写しにも耐えられる品質とするため、非常にディティールにこだわった制作が行なわれている。開発初期の参考資料収集にはじまり、ベースメッシュの制作では鎧の部品ひとつで最大400万ポリゴンという精度でモデリング。鎧表面の微細な凹凸やキズ、鎖帷子のリングなど、通常はテクスチャとして作るような細部までメッシュとして作りこむのだ。
この部品が数十も集まってモデルの1パーツとなり、十数のパーツが集まって1つのキャラクターモデルとなる。結果として各キャラクターのポリゴン数は膨大になる。主人公のマリウスに至っては1億3000万ポリゴンというから驚く。テクスチャーもパーツあたり4,096×4,096という高解像度だ。なおキャラクター全体では「144K texture resolution」になると言っていたが、額面通り受け取れば147,456×147,456というサイズ。もはや何が何だかわからないレベルである。
もちろんこれをそのままXbox Oneで描画することは不可能なので、ゲームで使うモデルは頂点のリダクションとテクスチャーの統合が行なわれている。それでもモブキャラクターでは1体4万ポリゴン、主要キャラクターは最大で1体16万ポリゴンという超スペックだ。PS3/Xbox 360世代ではカットシーン用モデルでも1万~2万ポリゴン程度が一般的である。本作では前世代機向けのゲームに比べてポリゴンメッシュだけで4~8倍のディティールを持つわけだ。
こうして作られた3Dモデルは、CryEngine 3による物理ベースレンダリングで生き生きと描かれる。大半のオブジェクトは万能シェーダーで描かれるが、人肌や眼球には特別なシェーダーが割り当てられている。スキンシェーダーはSSS(表面化散乱)のシミュレーションや、半透過表現などフォトリアルレンダリングの最新トレンドを余すことなくサポートする強力なものだ。
髪の毛は頭部に設定された制御点にそってリアルタイムに生やす仕組みで、物理シミュレーションによる自然な動きも実現。しかも、ただ生やすだけでなく、「毛の生えている方向」を示すテクスチャーが頭部に設定されており、つむじからの頭髪の流れもきっちり作り込めるシステムになっている。このシステムは毛皮のコートなどにも応用されていて、ゲームのあらゆるシーンで映像に説得力を加えている。
物理シミュレーションもキャラクターの様々な部位に使われている。コートやマント等などの“揺れもの”に使われるクロスシミュレーションはもちろん、鎧もパーツ単位に動き、太ったキャラクターなら胸や腹の脂肪の層がブルンと揺れる様子まで再現しているのは、各キャラクターに設定された膨大な数のジョイント数(アニメーションの制御点)によるものだ。主人公のマリウスでは、ジョイント数は815にも及ぶという。
それほどの情報量を持つ3D映像を60fpsで動作させられる次世代機の性能にも驚くが、真に偉大なのはCrytekによる非常なディティールへのこだわりと、それを実機に載せきった開発力だろう。
「Ryse」の制作チームは本作のために結成された新組織でもあり、今作の制作に当たってDCCツールをMayaに変更したこともチャレンジのひとつだったという。新ハードに新ツール、しかもローンチに間に合わせるという制限と戦いつつ、これほど高品質のコンテンツをつくり上げる。18カ月という開発期間で成し遂げた開発チームに拍手を送りたい。