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「BEYOND: Two Souls」はここまでスゴイ! 開発者によるデモプレイ
カメラ外の役者の“瞬き”まで収録、圧倒的な表現力が生むゲーム空間に注目!
(2013/9/2 00:00)
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは8月30日、東京・港区にあるSSJ品川ビルで、10月17日に発売を予定しているプレイステーション 3用アドベンチャー「BEYOND: Two Souls」のデモプレイを行なった。実際のプレイに加え、デバックモードでのゲームの解説も行なわれ、さらに本作のボーナス映像の1つである「DARK SORCERER」を見ることもできた。
デモを行なったのは開発元のQuantic Dreamで本作のチーフプログラマーを務めるDamien Castelltort氏。Castelltort氏にはシーンの詳細やスタッフが込めた想いを聞くことができた。
「BEYOND: Two Souls」は謎の存在エイデンと共に生きなくてはならない少女ジョディの半生が語られる。ジョディの人生は波乱と悲しみに満ちており、ジョディはもがきながらも前進していく。ゲームをプレイしているとグッと彼女に引き込まれるが、今回はゲームでの“表現”にこだわった解説がなされた。一瞬一瞬でのシーンのこだわりや、そこに込められた技術を実感することができた。
役者の血管まで再現するテクスチャー、実写ムービーのようなリアルタイム描画
「BEYOND: Two Souls」は少女ジョディとエイデンの“2人”を描く。エイデンは幽霊のような存在で、様々なものを目に見えない力で動かしたり、人に乗り移ったりできる。ジョディのことを守ってくれるが、ジョディの想像を超えて暴走することも多い。その力は時には凶暴さや、禍々しさを感じさせる。
ジョディはエイデンに協力を求めることはできるが、自由自在に操れるわけではない。時にエイデンの力は暴走し、思わぬ惨劇を巻き起こしてしまう。ジョディはエイデンの力のために、CIAから目をつけられ追われる羽目になってしまう。
本作ではジョディの8才から23才までの15年間の成長が描かれるが、今回は20歳すぎの「逃亡」というシーンが紹介された。列車で逃亡するジョディに執拗に警察やCIAの追っ手が掛かり、ジョディはエイデンの力を使いながら逃げていくという内容だ。展開そのものは、昨年のE3のデモや、日本でのプレミアムセッションと同じものだったが、今回は日本語版でのデモプレイが行なわれた。
「逃亡」は列車内で居眠りしているジョディの姿から始まる。描かれるジョディの人生の中盤であるが、ゲームとしては序盤だという。本作では物語は時間軸に沿って進行するのではなく、展開によって様々なジョディの人生の断片が描かれていくようだ。列車内のジョディは20歳前後で、CIAや政府機関に追われ逃亡生活を余儀なくされている。長距離列車のようで外は嵐の夜であり、窓ガラスを風雨が叩く中、ジョディはうたた寝をしてしまう。
この時、プレーヤーの視点はエイデンのものとなっている。エイデンは実体を持っていない幽霊のような存在で、その動きは物体に遮られない。スティックでエイデンの視点を動かすと電車のイスを貫通してしまったりする。エイデンからは青白く輝く光の帯が伸びており、ジョディと繋がっている。オブジェクトへの通過表現は不自然にならないように注意したとCastelltort氏は語った。
エイデンの姿は他の人には見えない。ここでプレーヤーはエイデンを電車内で動かし、様々な“いたずら”をすることができる。雑誌を読んでいる人の本をはじき飛ばしたり、ジョディの荷物を落として目を覚まさせることもできた。
ここでカメラが変わり、電車の到着を待つ警官達が描かれるムービーが挿入された。待ち構える警官達の前で列車は停車した。Castelltort氏はここでデバッグモードを作動させ画面を止めた。そしてカメラを操作し、視界外だった数台のパトカーを映し出した。パトカーのライトは夜の闇の中で、輝いている。光のスジの表現や、周りを照らす空気感など、光の表現は本作で特にこだわった部分だという。
驚かされたのは、カメラが切り替わったとき、列車を待ち受ける警官達のシーンはてっきりプリレンダのムービーかと思ったが、デバッグモードでそれがリアルタイムの描画だとわかったことだ。ムービーのように美しく、自然な描写を実現しており、なおかつカメラのフレームの外もしっかりと作り込まれているのが確認できた。
このように、「BEYOND: Two Souls」ではジョディの過去を回想する1部のフラッシュバックをのぞき、ムービーシーンも全てリアルタイムに描画されている。また、キャラクターは役者の演技を全てモーションキャプチャーで取り込んでおり、カメラに写っていないところでも役者の演技を再現している。瞬きや他のキャラクターの会話にうなずく仕草までも収録されているとのこと。
解説を終えたCastelltort氏はゲームを再開した。列車は警官が乗り込んだところで再び発車した。ここで画面は再びエイデンの視点に切り替わった。警官達の声にジョディは目を覚ます。前から警官達が座席をチェックしながらやってくるのが見える。Castelltort氏は再びゲームを止めた。カメラをジョディのすぐそばまで近づけ、肌の細部、皮膚の下の血管がわかるほどに細かく描写されていることを説明した。
本作ではこのように、全てのキャラクターが肌の細部までテクスチャーデータを持っているという。キャラクターの距離によって描写の密度は変わる。その切り替えはデバッグモードでもきちんと変わっていて、切り替えを感じさせないなめらかなタイミングで変化するのが確認できた。各キャラクターは膨大なデータ量を持っており、これをリアルタイムに描画するために、データの圧縮と展開にかなりの力をかけたという。
ゲームが再開され、ジョディは迫ってくる警官から逃れるため列車内を逃げる。警官を突き飛ばし車内を走る。エイデンの力でトイレの上のドアを吹き飛ばし、列車の天井に出るジョディ。外は大粒の雨が降っており、ジョディはたちまちびしょ濡れとなる。Castelltort氏はここでもゲームを止めた。雨粒が静止し、1つ1つが描写されているのがわかった。服や肌は状況に合わせ自動的にテクスチャーが変わるという。雨の中にいるという状況のために、肌や服が濡れ、髪の毛は肌に張り付いているのが確認できた。雨の中時間が制止し、カメラを動かして周囲を見れたのは、映画「マトリックス」の1シーンのようだった。
Castelltort氏はゲームを再開した。揺れる列車の上を、ジョディは歩いて行く。警官達と戦うシーンもある。か弱く見えるジョディだが、実は19歳の頃に格闘技を習っており、見事な技で警官達と渡り合っていく。しかし操作をミスしてしまうとダメージを受けてしまう。ここでダメージを受けすぎると、警官達に捕まり、その後のストーリーが大きく変わるという。「BEYOND: Two Souls」はこのように、プレーヤーの操作でゲームのストーリー展開が大きく変わっていく。ゲームオーバーはなく、行動の結果の積み重ねがいくつかの用意された結末へと繋がっていくという。この構成はQuantic Dreamが手がけた「ヘビーレイン」と同様だ。
警官達に追い詰められるジョディ。ここでジョディはエイデンに声をかけ、列車から飛び下りる。コントローラーの指示が出て、その通りにボタンを押すとジョディの周りの空間がゆがんだようになり、エイデンの力がバリアのようにジョディを包み込み、落下の衝撃から守る。こうして怪我もせず、ジョディは走っている列車から脱出することができた。
シーンが変わり、ジョディが奪ったバイクで夜の道を走っているシーンとなった。ここでもCastelltort氏はジョディのアップで画面を止めた。ジョディのほほには傷がついており、唇からも血を流しているのが確認できた。ジョディの肌の状況は“プレイの結果”だという。警官達に殴られていれば、さらに傷が増え、うまくいけば傷は少なくなるとのことだ。
警官達はパトカーでバリケードを作りジョディを止めようとする。ジョディはエイデンに声をかけアクセルを引き絞る。バイクの前方にエイデンの力場が形成され、撃ってくる警官達の銃弾を防ぎ、さらにエイデンの力はバリケードを吹き飛ばす。木の葉のように吹っ飛ぶパトカー。この時吹き飛ばされる警官やパトカーなどは全て描写されている。ゆがんだ車、驚愕する警官の表情など、すさまじい情報量を確認できた。この情報量がシーンのリアリティを生むのである。