PS3ゲームレビュー

BEYOND: Two Souls

プレーヤーが垣間見るジョディの半生。彼女とエイデンが向かう先は……

プレーヤーが垣間見るジョディの半生。彼女とエイデンが向かう先は……

赤いオーラの人間は窒息させることができるが……
エイデンには人間のモラルはない。しかしジョディは?
反抗期のジョディ

 ゲーム内では常に選択肢が提示される。物語はジョディの半生を完成させていき、クライマックスへ向かっていくのだが、プレーヤーは選択を迫られる場合がある。最も顕著なのが、“エイデンの行動”だろう。

 エイデンは常に暴走の危険をはらんでいるのだ。ジョディが理不尽にいじめられる「パーティ」ではとことんまで仕返しができるが「そこまでは」とブレーキをかけたくなってしまう。「訓練」でもおびえる中年の女性のオーラがエイデンがアクセスできる色に変わった時は思わず必死にエイデンを離してしまった。

 今回のプレイではエイデンを極力抑えるようにプレイした。ホームレスとなるシーンでは、エイデンはATMを壊してジョディの前にお金を落としたりするが、今回はあえて手を出さなかった。「BEYOND」はチャプターごとの再プレイが可能なため、これからやり込むにあたりエイデンを“悪用”するプレイも試してみたいところだ。

 物語は様々なポイントで分岐し、攻略のしがいがあるしシーンを集めるプレイも可能だが、まず最初は例え失敗してもエンディングまで振り返らず進むことをオススメしたい。選択肢や幅を感じるのは全ての物語を見てからの方が、伏線にも気づくところもあり一層楽しめると感じた。

 ジョディの物語は進んでいくことで様々な“幅”を見せていく。「みんなみたいに」のシーンのジョディはプレーヤーの多くが驚かされるだろう。パンクファッションにきついメイク……なんとジョディが“グレて”いるのだ。わかりやすすぎる反抗期でちょっと笑みが浮かんでしまう。ジョディのいるのは研究所の一角でプレーヤーも見慣れた子供の頃からいる部屋なのだが一生懸命パンク風に飾り立てているのが楽しい。

 「コンデンサー」ではネイサン達が何を研究しているかがわかる。ネイサン達は超能力を研究しているのではなく、“霊体”を研究しているのだ。そしてコンデンサーの暴走で“扉”が開いてしまうのである。ここは思いっきりホラーテイストで、扉を閉じようとするジョディに霊体達が死体を操って攻撃してくるのだ。

 ネイサンはジョディを見守るジョディにとって父親のような存在だ。ネイサンとジョディの関係はとても丁寧に描かれる。不幸なジョディにとって、彼の存在は大きな救いだ。コンデンサーではネイサンの研究を救うために、ジョディは恐怖に立ち向かっていくのである。

 「BEYOND」に関して東京ゲームショウでディレクターを務めるQuantic Dreamのデヴィット・ケイジ氏にインタビューしたのだが規制に関して「暴力には寛容なのに、セックスや人間関係などが厳しい」という答えが印象的だった。たしかに恋愛や男女の関係での過程はジョディの人生を丹念に描く本作ならば必須の要素だ。映画ならば普通にあるシーンが、ゲームではNGというところは考えさせられる。今作は規制による表現の制限や海外版との違いはないようにしたということだが、ゲームの表現に関しては改めて考えさせられた。

 「BEYOND」はこれまでに無い、丁寧に1人のキャラクターを描く作品だ。ゲームをあまりやったことがない人にも楽しめるし、プレイしているのを友人に見せる、という楽しみ方でも作品の魅力を伝えることができる。多くの人に「BEYOND」に触れて欲しいと思う。

【様々な表情を見せるジョディ】
幼い頃、父親は彼女につらく当たる
「みんなみたいに」のシーンでは反抗期のジョディが描かれる。見事なギターテクを見せる場面も
「コンデンサー」では一気にホラーテイストに
ジョディはそのシーンごとに様々な表情を見せる
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(勝田哲也)