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【ChinaJoy 2013】Aiming CEO椎葉忠志氏インタビュー

中国市場は苦戦中も日本向けに新たに4タイトルを準備中。「トワノツルギ」は開発終了

7月25日~28日開催(現地時間)

会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)

 日本のゲームメーカーのAimingは、今年もBtoBホールにブース出展していた。ほとんどの日本メーカーがBtoCはおろか、BtoBへの出展を見合わせているにもかかわらず、粘り腰で中国進出を目指している数少ないメーカーの1社だ。

 なぜそこまで中国にこだわるのか、中国進出の現状はどのようなものなのかを聞くために、Aiming CEOの椎葉忠志氏を取材した。椎葉氏に直接取材するのは昨年のChinaJoy 2012以来1年ぶり。この1年で、同社の中国ビジネスはどのように進展したのか、今回は中国方面を中心に話を聞いてみた。

SNS & Social Game Forumで質問に答える椎葉忠志氏
「ChinaJoy 2013」でのブースの様子
新作オンラインアクション「ヴァリアント レギオン」

 まず、昨日の國光氏のカードゲームやWebゲームは死んだ発言についての感想を尋ねたところ、「これは5年も6年も前から言ってる話だけど、ブラウザもカードも、所詮僕らは“オンラインゲーム”という釈迦の手の上で踊っているだけで、何を言ってるんだと(笑)。死ぬとか終わるとかどうでもよくて、僕らはあくまでおもしろいオンラインゲームを作るだけの話です」と即答。

 中国展開については、若干渋い顔になり、「わかってはいたがなかなか難しい。中国市場は簡単ではない。翻訳をして出せば人が集まるという時代ではなくなっている」とコメント。

 Aimingの中国展開はまだiOS版「Lord of Knights(LOK)」のみで、次のタイトルどころか、まだ「LOK」のAndroid版もサービスできていないという。Android版が未展開の理由は良いパートナーが見つからないためということで、「彼らにとってはいくらでも選択肢があるので我々は常にワンオブゼムの戦いを強いられてしまうため、なかなか契約合意できない」と、その胸中を語ってくれた。

 ご存知のように中国ではGoogle Playが実質的に機能していないため、Android上に日本のDeNAやGREEに相当するモバイルプラットフォーマーが乱立している。できればその中の大手と組みたいと考えているというが、大手は大手同士組むケースが多く、交渉に予想以上に時間が掛かっているという。

 そんなわけで、今回の出展の目的も実は売り込みではなくオンラインゲームのファインディングだという。「他国のオンラインゲームの配信は今後もありです。良いゲームがあればどんどん日本でもやりたい。PC、スマホ、全部。でも良いタイトルになかなか遭遇できないのよね」と、こちらもなかなか苦戦している様子だった。

 椎葉氏によれば、ここ数年でモバイルゲームは一気にMG(ミニマムギャランティー)がつり上がり、オンラインゲームで1億円を超えるMGはありえない世界になってきたが、スマホソーシャルの分野ではごく普通になってきたという。つまり、お金の上で言えば、PC向けのオンラインゲームより、スマホ向けのオンラインゲームの方が、規模感が大きくなっているわけだ。Aiming自身も5000万で契約が決まりそうだった案件が、他国のメーカーがより高い金額を提示したため、獲得に失敗したという。「完全にバブル。我々はちょっとやそっとじゃ手を出せなくなってきている」。

 ちなみに、中国で展開しているiOS版「LoK」は会員10万人を集めているという。数字としては悪くなく、課金転換率は低いものの、ARPはすこぶる高いという。売上にして月に200万円前後で、これからAppleへのロイヤリティやサーバーコスト、人件費を含めると赤字になるという。中国で成功するにはもっとユーザーを集め、売上を高めなければならないが、人集め自体のコストが跳ね上がっており、簡単ではないようだ。

 中国展開については、Android版「LoK」の準備を進めながら、次に「幻塔戦記グリフォン」を年内までに出したいと考えているという。ただ、「幻塔戦記グリフォン」については、日本のアップデート計画がまだ途中の状態で、開発チームに余裕がないため難しいようだ。「ここまで作り込んだモバイルゲームはあまりないし、ビジュアルの評価が高いので、早くやりたい」と期待を寄せていた。

 一方、日本については、現在4タイトルを準備中だという。ラインナップは以下の通り。

・「ヴァリアント レギオン」(旧称「ミラーズ」)
・「剣と魔法のログレス」スマートフォン版
・「Sword of Knights(仮)」
・「Eagle」

 「ヴァリアント レギオン」は、これまで「ミラーズ」と呼んでいた、ハック&スラッシュ系の「Diablo」スタイルのオンラインアクションRPG。7月26日よりAndroid版のクローズドβテストを実施している。正式サービスは9月を予定

 スマートフォン版「剣と魔法のログレス」は、マーベラスAQLからリリースされているブラウザゲーム版「剣と魔法のログレス」のアプリ版。こちらは8月の投入予定だったものの若干遅れており、秋口になるとのことだ。

 「Eagle」は椎葉氏イチオシのタイトルで、「スカッとゴルフ パンヤ」を彷彿とさせるシンプルなグラフィックスと可愛らしいキャラクターが特徴のオンラインゴルフゲーム。非同期のマッチングシステムがウリで、スマートフォンでサクサクコースをラウンドすることができる。

 なお、配信が遅れているセガとの協業第1弾タイトル「トワノツルギ」は、プロジェクトの中止が確定した。スマホ向けのゲームとしては破格の予算を投入して作られた弾幕系アクションだったが、リリースを延期して再開発を行なったものの、ゲームの基本仕様やゲームバランス、ゲームの継続性のクオリティが上がらず、各所の不具合も多く、このまま無理にサービスするより、プロジェクトそのものを閉じるのが会社として1番ダメージが小さい方法だと判断したという。

 「スマホアプリは、新作という看板が1番大事で、このタイミングでクオリティの高いものを提供できなければ一生浮かび上がれない。アップデートが必須な状態で出すぐらいなら出さない方がマシぐらいの考えです」。

 椎葉氏は今後の方針について、「実はこれらのタイトルは去年から作っていたタイトルで、今年着工した新作というのはまだない。ゲームのアイデアはいくらでもあるので、この辺が落ち着いてきたら次のタイトルを準備していきたい。中国もまだぜんぜん諦めてません。引き続きAimingにご期待いただければと思います!」とコメントしてくれた。

 「トワノツルギ」の開発終了は残念なニュースだが、スマートフォンの分野でチャレンジを続ける同社に今後も引き続き注目していきたいところだ。

【「ヴァリアント レギオン」スクリーンショット】

(中村聖司)