インタビュー
Android/iOS「幻塔戦記グリフォン」 Aiming・椎葉社長&開発スタッフインタビュー!
ゲーム性、ビジュアル、サウンド、あらゆる面にこだわった本作。イチオシである4対4の対戦にあった同期ズレの問題は9月12日のアップデートで改修
(2013/9/12 17:10)
ゲーム性、ビジュアル、サウンド、あらゆる面にこだわった本作。
イチオシである4対4の対戦にあった同期ズレの問題は9月12日のアップデートで改修
――まずはビジュアル面についてお伺いします。コンセプトデザインは、PS2「ラジアータ ストーリーズ」、ニンテンドーDS「ラジアントヒストリア」などで知られる こにしひろし氏ですが、同氏に依頼した経緯をお願いします。
高屋敷氏:これまで、こにしさんとは「ラジアータ ストーリーズ」、「ラジアントヒストリア」などで一緒にお仕事をさせていただきました。コンシューマーユーザー、ゲーマーを狙っていたこともあり、本格的なゲームをイメージできるビジュアルということから、こにしさんにお願いしました。
椎葉氏:将来、海外でも展開したいと考えています。海外のサイトにあった日本のやるべきJRPG20という記事の中に「ラジアントヒストリア」が入っていたこともあり、こにしさんにお願いできて良かったと考えています。
高屋敷氏:こにしさんの思うまま絵を描いてくれるので、仕事がすごく楽なんです(笑)。「ラジアータ ストーリーズ」の頃からそのスタイルなんです。
――こにしさんの絵から何かが決まったりとかもあるんですか?
高屋敷氏:絵があがってきて、じゃあこのキャラクターを主人公にしようとか。僕が適当なので助かっています(笑)。
椎葉氏:コンセプトやキャラクターデザインはこにしさんですが、メインイラストは「GRAVITY DAZE」や「ファイナルファンタジーIX アルタナの神兵」、「ファイナルファンタジーXIV」のコンセプトアートなどを担当された緒賀岳志さんに描いてもらっています。2人共、日本のRPGらしい、良い世界観が感じられる絵を描いてくれますね。
――キャラクターやステージは3Dですが、何故3Dを選んだのでしょうか?
椎葉氏:前身のプロジェクトは2Dだったのですが、表現の豊かさを考えて3Dにしました。家庭用ゲーム機のように一定のスペックではないですし、PCゲームのように無理してもPC側がなんとかしてくれることもなく、制限が多いので大変さはあるんですけどね。
――スマホは機種も多いし、かなり大変そうですね。
椎葉氏:全部チェックするのは不可能だなと思いました(笑)。主要機種だけでも大変なんですよ。
――サウンドもファンタジーRPGらしくていい仕上がりですよね。
椎葉氏:プロジェクトメンバーから、日本のRPGに合う音楽として提案されてきたのがベイシスケイプさんです。1番最初に「スマートフォンっていろんな所で遊ぶので音を出して遊ぶか?」って疑問があったんです。実際多くの方は音を出していないでしょうし、イヤホンをしてずっと遊ぶのも中々大変かなと。そのため、元々は音をそれほど重視してなかったんです。容量を削らないといけない事もありますし。
――音のデータは大きいですからね。
椎葉氏:最初のダウンロード量が多いと離脱が多くなるなので、僕は軽視していたんですよ。でも実際やってみたら、「音が良いとゲームの格が上がる」と思いましたね。
――ユーザーからもBGMへの反応があったりするんですか?
椎葉氏:スマホのゲームなのであまり聴かないだろうと思っていたんですが、結構皆さん聴いていて、「曲がいい!」という反応が多くあるんです。僕が間違っていたんだなと強く反省しています(笑)。
――BGMが何かの方法で販売される可能性はあるのでしょうか?
椎葉氏:今はひたすらゲームを良くすることに注力していますが、機会があればサントラCDなどの形でリリースできたらいいですね。
――本格的なアクション、スキル制、多彩な職業など、様々なゲームシステムが搭載されていますが、やはり目玉はオンライン要素にあると思います。リアルタイム通信でのオンラインプレイを実装するのにはかなり苦労があったのではないでしょうか?
椎葉氏:そりゃもちろんありますよね(笑)。そもそも「3G回線でこんなことできるのか?」って所から始まっていますし、PCよりも遥かに不安定なネットワーク環境にありますから。多くの方は本気でプレイする際にはWi-Fiでプレイされていると思うのですが、それでも有線よりは不安定になってしまいます。PCのオンラインゲームでも通信は信頼できない前提にして作っているのですが、全く信用ならない前提で作らないといけないので、こういうリアルタイムのゲーム性について多少議論はあったのですが、そういうゲームではないものをつくろうよというコンセプトだったのであまりぶれずに進められました。
最初から対戦を入れたいというのがプロジェクトの初期から強くあったんです。多くのオンラインゲームではゲームが出来て、後から対戦が入ったりするのですが、最初から対戦があることをかなり重視したんです。リリース後、問題は起きてしまいましたが。
高屋敷氏:通信関連の問題はいくつかあるのですが、切断/タイムアウトが発生していまして、この対応には2カ月ほどかかりました。切断しなくなるわけではないですが、ほぼ改修できています。もう1つ大きな問題として、同期ズレがありました。想定していなかった問題があって、1度ズレるとズレたままになっていました。これはユーザーの方々に大きな不満を募らせてしまったと反省しています。
椎葉氏:私たちとしてもウリとして対戦を推していきたいし、ゲームの中心である対戦を1番楽しんでもらいたいんですが、不安定な所があって、多くのお客さんに不満を持たれたと痛感しています。
――問題への対応状況はいかがでしょうか?
高屋敷氏:継続的に対応しています。毎回アップデートの度に1つ1つ問題を解決しています。遊んでいるユーザーにも大分安定してきたと感じていただけているはずです。次回のアップデートで同期ズレの問題が解決されるので、通信に不満があってやめてしまった方々にももう1度プレイしてもらいたいです。
――対戦がウリとのことですが、本作ではキャラクター同士がただ戦うのではなく、4対4で、相手の本拠地を落としたら勝利というシステムにしたのは何故なのでしょうか?
椎葉氏:色々なゲームのいい所を取りながらやっていったら今の形になったというところですかね。
國井氏:通信の心配があったので、直接キャラクター同士が殴り合うだけだと、ラグなど細かいことがより気になると思ったんです。また、プレーヤースキルが極端に感じられると格闘ゲームのようになってしまいます。そのため、破壊する対象を人ではないものに持っていき、あまりうまくない人でも楽しめるようにしたかったのです。結構挑戦だと思うのですが、開発中に流行っていたDotA系ゲームを取り入れました。
※対戦ではギルド別に2つの陣営に別れ、相手の本拠地を攻撃し、制限時間内に陥落させた側が勝利となる。制限時間内に本拠地が陥落しなかった場合には、相手のキャラクターや敵NPCなどを撃破した際に入るポイントで勝敗が決まる。
※「DotA」:「Defense of the Ancients」の略称。「Warcraft III」から生まれたチームRTS。「DotA」系ゲームの中でも「League of Legends」(LoL)は世界的なヒットとなり、現在世界で最もプレーヤーの多いオンラインゲームと言われている。
――レベル差のあるキャラクター同士でもマッチングされますよね。
國井氏:極端なレベル差ではないですが、ある程度レベルに差があってもマッチングされます。レベル差がある場合、直接殴り合うと負けてしまいますが、うまく防御を使っていけば拠点を守るタワーを破壊することができ、勝利することもできます。
――これから始める人でも対戦で活躍する場があるということですね。
國井氏:はい。対戦のルールやシステムを理解するのは少し難しいとは思うのですが、活躍できます。理解してもらえば、課金して装備を固めている人にでも勝てるようになっています。
高屋敷氏:対戦を理解してもらいやすいように、チュートリアルやNPC戦も今後追加していく予定です。
椎葉氏:対戦に取り入れた「LoL」に関しては僕らも相当やっていますね。
――ゲーム開発者でプレイしている方はすごく多いようですね。
椎葉氏:ただ、うちに勝てる会社はないでしょうね(笑)。僕は元々RTSが好きで遊んできたのですが、RTSは難しいんですね。とっつきの悪さが半端ない。そんな中で「DotA」系はとっつきやすいです。とりあえずモンスターや敵を殴っていればある程度ゲームになりますし。「LoL」を参考にしているところが強いのはそういう理由からですね。従来のRTSだと、内政だとか複雑でシステムがあり、理解できていないとゲームにならずに負けてしまったりするので。
例えば「LoL」だと、1番のハードルは日本だとリアルで一緒に遊ぶ人がいないことです。1人で始めて、教えてくれる人、一緒に遊ぶがいないと辛いんです。私たちが作っている「ブラウザ三国志」系、今だと「Lord of Knights」もそうですが、内政してみんなで協力している内にコミュニティができて、最後には本当にヘヴイな戦争をします。めちゃくちゃ面倒なのですが、コミュニティがあれば、それは楽しさになる。本作でもユーザー同士が仲良くなってコミュニティを作ってくれれば、対戦もより楽しくなるだろうと意識して作っています。
――自動でギルドに入る仕組みもその意識から生まれたものなのでしょうか?
椎葉氏:PCのオンラインゲームですと、1人で遊んでいたら同じ狩場でよく会う人がいて、フレンドになって、ギルドクエストがあるから一緒にギルドを作ろうという流れになるんですね。自動でギルドに入る仕組みは、モバイルのソーシャルゲームが先だと思うのですが、うまくやれば決して悪くない仕組みだと理解しています。従来のPCオンラインゲームのコミュニティのでき方を当然と捕らえた我々が間違っていたと思うくらいです。実際、様々なモバイルのソーシャルゲームを自分たちでプレイしてみても問題ないんですね。悪い点もありますが、それはどっちのシステムもあることなので。モバイルで細切れの時間でプレイする以上、最初からギルドに入れて、色んなものを共有していくのがいいなと思ったのです。
――対NPCのクエストはオートマッチングシステムがあり、4人揃わなくても不足した分をCPUが補ってくれますが、対戦は4人+4人の計8人が揃わなくてはプレイできません。さらに開催時間も限られています。全体のプレーヤーにおける参加率はどの程度になっているのでしょうか?
椎葉氏:参加率はかなり高いです。デイリーで言えばアクティブユーザーの50%を越えています。2~3日で言うならアクティブユーザーのほぼ100%が対戦に参加しています。だからこそ対戦で起きている問題は大きいんです。自慢料理として出しているのにまずいみたいな。お客さんが熱中すればするほど不満がたまる。開発チームを含めて、会社全体としてこの点は大きな問題であり、お客様に1番申し訳ないと思う所です。
※クエストを選択すると、マッチング画面になる。4人揃うのを待たずにスタートすることもでき、その場合にはNPCが補ってくれる。クエスト選択画面ではメンバー募集があるクエストがわかるようにもなっている。
――プレイ制限についても特徴的ですね。SPクエストなどを除けば、制限なく、いくらでも遊ぶことができます。スタミナ、エナジーシステムとのハイブリッドとでも言えばいいのでしょうか。
椎葉氏:エナジー制は決して悪くないですが、モバイルのゲームに、ストレスを与えて開放させた時の満足感にお金をかけてもらうという考え方があります。「北風の太陽」における北風のような考え方ですね。僕は太陽の方がいいという理論で、北風は好きじゃないんです。お金を払わないと辛い、払わせよう払わせようというのが強く見えてしまう。そんなことをしなくても楽しく長く遊んでもらえれば、自ずからからお金を払っていただけるので、それほど気にすることはないんじゃないというのが根本的な考え方ですね。
※通常のクエストは何の制限もなく、いくらでもプレイ可能。ただし、SPクエストは時間やアイテムで回復するスタミナを消費する。その分、SPクエストは通常のクエストよりも良い報酬が用意されている。
國井氏:スタミナはキャラクター別なので複数キャラクターを使い分けて遊んでもらいたいです。スタミナ回復アイテムはありますが、そこでお金を取ったり、苦しい制限をかけようという気はありません。スタミナ制を導入したことには、色んなキャラクターを作って遊んで欲しいという意図があります。
椎葉氏:キャラクタースロットは9つあります。全て無課金で使えます。キャラクタースロットで課金しようという考えはないんです。何キャラクターも作って、また同じコンテンツを遊んでくれようとしているお客さんに対して、キャラクタースロットで課金するのは申し訳ないと思うんですよ。
高屋敷氏:他キャラクターを育てているユーザーが想定より多くなくて、愛着もって1体を育てている人が多いんです。何体かは持っていたとしても、平行して育てくれていないんです。
椎葉氏:アップデートを重ね、色んなクラス構成で戦う必要性が出てくれば育ててくれるとは思いますが、まだオープンして2カ月程度ですし、1キャラクターを育てきっていない人も多いんです。
高屋敷氏:レベルを上げるのはそれほど難しくないので、最大レベルまで上げている人も結構いるんですが、武器や防具が20個分つけれるのですが、全箇所カンストまでもっていくのはすごく大変です。上げ切った人には色々なキャラクターを試してもらいたいです。