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【BFG 2013】ベセスダ、「Wolfenstein: The New Order」プレビュー

銃二丁持ちでナチスの野望を打ち砕く「Wolfenstein 3D」の“精神的な後継作”

5月17日開催(現地時間)

会場:Loews Santa Monica Beach Hotel

 米ZeniMaxグループのゲーム部門Bethesda Softworksは、米国サンタモニカにてプライベートショウ「BFG」を開催し、初披露となる新規タイトル「Wolfenstein: The New Order」をはじめ、日本で開発されているサバイバルホラー「Psycho Break」、そして「Elder Scrolls」シリーズの世界観を採用したMMORPG「Elder Scrolls Online」の3タイトルを披露した。本稿では、5月に発表されたばかりの「Wolfenstein: The New Order」のプレゼンテーションの模様をお届けしたい。開発者インタビューも行なわれたのでその模様は別途お届けしたい。

 「Wolfenstein The New Order」の発売時期は2013年を予定し、発売プラットフォームはPS3/Xbox 360/PC/および次世代機としている。先日正式発表されたように日本でも完全日本語版による取り扱いが決定している。価格は未定。

世界を支配するナチスドイツの野望を打ち砕け!

「BFG 2013」で出展された3タイトル
ハーケンクロイツが堂々と描かれたロボット兵器。ハーケンクロイツはゲーム内の至る所で見ることができる。ドイツ圏では法律に違反する表現だが、修正した上でドイツ圏でも販売するという

 「BFG」は、翌月の6月に開催を控えたE3に先駆けて北米と欧州の2箇所に世界中のゲームメディアを集めて実施されるプライベートショウ。昨年はラインナップが揃わず、「Dishonored」のプライベートイベントのみだったため、「BFG」の名前を冠したイベントは、「Skyrim」ほか4タイトルを披露した2011年以来、2年ぶりの開催となる。

 今回はジャンルの異なる粒ぞろいのラインナップが出そろったが、「Wolfenstein The New Order」は、グループ子会社のid Softwareが1992年にリリースしたFPS界の古典的名作「Wolfenstein 3D」の精神的後継作。“精神的後継作”とわざわざ持って回った言い回しをしているのは、直接的な続編では無く、デベロッパーもid Softwareではなく、MachineGamesという2010年にZeniMaxグループに加盟したスウェーデンのメーカーであるためだ。

 「Wolfenstein」シリーズはこれまでに無数の派生タイトルが生まれており、もっとも人口に膾炙された代表作と言えるのが「Wolfenstein 3D」で、もうひとつがその元となった「Castle Wolfenstein」(1981)という2つの系統が存在する。

 「Castle Wolfenstein」の派生タイトルには、リメイクである「Return to Castle Wolfenstein」(2001)、「Return to Castle Wolfenstein」をベースにマルチプレイに特化した「Wolfenstein: Enemy Territory」(2003)、「Castle Wolfenstein」の再リメイクである「Wolfenstein」(2009年)などがある。これらの派生タイトルの特徴は、タイトルによって解釈が異なるため一言で説明するのは難しいが、マルチプレイ重視であり、オカルト寄りのストーリー設定などが挙げられる。

 これに対して、今回発表された「Wolfenstein The New Order」は、マルチプレイFPSの金字塔である「Wolfenstein 3D」の精神的な後継作でありながら、シングルプレイ専用のFPSということで、世界設定やストーリーを重視した作品であるところが最大の特徴だ。

 そのストーリー設定がまた良い。舞台設定は、1960年のヨーロッパで、「Wolfenstein 3D」におけるヒトラーの野望が成就して第二次世界大戦に勝利し、なんとナチスが世界を制覇してしまったというIF世界が舞台となる。この世界では、高度に機械化、サイボーグ化、ロボット化が進んだナチスドイツ軍が完全な支配を実現している。

 こうした中、「Wolfenstein 3D」の主人公William "B.J." Blazkowiczが、ヨーロッパ中のナチスの拠点に単身乗り込み、彼らの高度なテクノロジーを逆用する形で、次々に拠点を壊滅させていくという単純明快なストーリーだ。

【高度に機械化された“戦勝国”ナチスドイツの軍隊】
圧倒的なパワーと物量で襲いかかってくるナチスドイツの兵士達

コーヒーの描写やNPCの表情にもid Tech 5のパワフルな演出を実感

 今回は、「Wolfenstein The New Order」のプレゼンテーションに加えてPC版の実機でプレイすることもでき、その魅力を存分に体験することができた。

 プレゼンテーションでは、ベルリンに向かう軍用列車のシーンと、ロンドンの中心部にあるという、ナチスの宇宙事業展示場兼軍事研究拠点の「London Nautica」に侵攻するシーンの2つを見ることができた。

 軍用列車シーンの内容は、主人公が偽の許可証を使って列車に乗り込むも、コーヒーを運ぶ途中で女性将校に誰何され、偽物であることがバレそうになって危うく殺されそうになるというスパイ映画のようなヒヤッとするシーン。列車は食堂車で、将校用らしく内装はかなり豪華。その食堂車に“老婆”と呼んでも差し支えなさそうな女性将校と、愛人らしい優男風の男性将校、そして2人を護衛するロボット兵がいる。

 印象的だったのは、手元のトレイにある2つのコーヒー。特殊なシェーダーで中の液体までリアルに表現され、ぬらぬらと液体特有の煌めきを放ちながら、電車の揺れに合わせて左右に波打っている。id Tech 5のパワーを見せつけるワンシーンだ。

 女性将校が誰何するシーンでは、向かいの席に座らされ、質問に答えさせられる。女性将校が出した質問に対して、彼女が提示したカードの図柄を選ぶことで答える。これに間違えると偽物であることがバレてしまい、窮地を迎えることになる。ちなみにカードの横にはこれ見よがしに彼女の拳銃も置かれ、これを選ぶこともできるというが、選んだ瞬間、後ろに控えるロボット兵に蜂の巣にされるようだ。

 このシーンのポイントは、質問に答え損なったら殺されてしまうという緊迫のシーンをカード選びによって実現するというシーケンスのユニークさもさることながら、人の命を遊びに変えて弄ぶ女性将校のクズっぷりと、それに輪を掛けて、女性将校に追従笑いしたり、主人公に蔑みのまなざしを向ける男性将校の豊かな表情の変化だ。id Tech 5搭載の「Rage」でもキャラクターの表情が豊かだったが、「Wolfenstein The New Order」はそれに輪を掛けて素晴らしくなっている。必見である。

 その後、無事女性将校の誰何をくぐり抜けると、一緒に潜入していた女性キャラクターと合流し、カットシーンに切り替わる。カットシーンはプリレンダーで表現される。カットシーンがプリレンダーなのは、Bethesdaのタイトルとしては珍しい。カットシーンにも期待したいところだ。

【女性将校の誰何シーン】
軍用列車のワンシーン。拳銃を抜く女性将校の豊かな表情の変化には驚かされた

(中村聖司)