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「真・北斗無双」レビュー&インタビュー
たくさんある名シーン、名言を再現! 圧倒的ボリュームの一端を体験!!
ディレクターの片岡宏氏にインタビュー!
(2012/12/28 00:00)
- 発売中(12月20日発売:PS3/Xbox 360版)
- 2013年1月31日 発売予定(Wii U版)
- 価格:8,190円(PS3/Xbox 360/Wii U版)
- 13,440円(PS3/Xbox 360版、TREASURE BOX)
- CEROレーティング:D(17才以上対象)
コーエーテクモゲームスは、プレイステーション 3/Xbox 360用アクション「真・北斗無双」を12月20日に発売した。価格は通常版が8,190円で、「TREASURE BOX」が13,440円。Wii U版は2013年1月31日の発売予定で、価格は8,190円。CEROレーティングはD(17才以上対象)。今回はPS3版ファーストインプレッションと、ディレクターを務めた片岡宏氏のインタビューをお届けする。
「真・北斗無双」は、1980年代に大ヒットを記録し今も圧倒的な知名度と人気を誇るコミック作品「北斗の拳」をモチーフにしたアクションゲーム「北斗無双」シリーズ最新作。2010年に発売された前作は、累計国内出荷60万本を超えるヒットを記録した。
本作では、原作ストーリーを再現した伝説編で、前作未収録エピソードを含め描きなおしているラオウ編のほか、天帝編、修羅の国編、そしてバット・リン編を新たに収録。オリジナルストーリーモードの幻闘編、倍増したプレイアブルキャラクター、オンライン協力&対戦プレイの実装など、すべてがパワーアップしたファン垂涎のタイトルとなっている。
発売前の12月某日、コーエーテクモゲームスにお邪魔した筆者。以前の完成発表会とPS3で配信された体験版を何度もプレイして、基本操作は習得済み。なによりも前作を舐め尽すようにプレイしていたので、この時点では「時間は限られているが、まぁ一通りはプレイできるだろう」とタカをくくっていたのだが、その甘い認識は数分後あっさりと覆されることになる。
誌遊用に用意された製品版は、DLC以外の全キャラクターが開放されたセーブデータを使用。幻闘編では、前作でDLC配信されていた「ハート」と「無法者」が登場。すでにDLCで3キャラクターの配信がアナウンスされていたため「そのうちふたりはハート様と無法者かなぁ」と思っていたので、これは嬉しい誤算。まずはアクションの手ごたえをたしかめるべく、迷わず無法者で幻闘編のシナリオをプレイ。
体験版をプレイされた方々はおわかりかと思うが、今作のプレイ感覚は従来の無双シリーズに極めて近い。前作が一般的な3Dアクション寄りで“一撃の重さ”を強調していた点から考えると「最初からこんなにド派手に暴れられていいの!?」と心配になるほど。個人的に感心したのは、爽快感が飛躍的にアップしている一方で“力強さ”はほぼ損なわれていないということ。このあたり、モーション調整は相当念入りに行なわれたことがうかがえる。
ちなみに「最初からフルパワーで動けるなら、先々パワーアップする楽しみがなくなるのでは?」と心配される方々もおられそうだが、そこは安心して欲しい。敵の出現パターンや数、地形などで有効な技は常に変化していくし、道中の宝箱から出現する巻物(経絡図)の組み合わせでキャラクターがさらにパワーアップ。ゲームを進めるにつれて覚えていく奥義もそれぞれ特徴がわかれており、これまた敵や状況による使い分けが重要となってくる。
経絡図は、後述のインタビューにもあるとおり付属効果はランダム。キャラクターレベル、シナリオ、ゲーム難易度が高いほどいいものが出現しやすくなる。経絡図は最大5つまで装着可能だが、同じマークのステータスを縦に並べると連結ボーナスが発生。5つのマークを縦に5つ、4つ、3つ、2つ、1つと綺麗に並べると「究極連結」となり、キャラクターの能力が飛躍的にアップする。最初から狙えるものではないが、後述のインタビューのアドバイスを元に、なるべく早い段階で達成を狙いたいところだ。
各シナリオの基本ルールは、特殊なものを除きマップ内の拠点を落としていくという無双シリーズらしいものになっている。面白いのは、拠点間がラインでつなげられていること。拠点の旗マークに記された数値は“その拠点の強さ”を示しており、拠点を落とすと、その隣接する他拠点のレベルが1ずつ減っていく。強い拠点をいきなり落とすか、あるいは周辺から少しずつ切り崩していくか。このあたりはプレーヤーの状況判断次第といえる。
戦闘中、幻闘編では拠点を制圧する際に提示される「強攻撃で撃破しろ」などの“制圧ボーナス”を満たして敵を倒すと、クエスト中の総合点“救世主ポイント”にボーナスポイントが加算される。一定値を超えるごとに“パワーアップ効果”が得られる制圧ボーナスは拠点が変わる度に変更されるため、意識しておくとゲームを有利に進められる。
さて……いの1番でチョイスしたキャラクター・無法者は、原作に登場したザコ敵の総集編ともいうべき多彩なアクションでプレーヤーを楽しませてくれる。コンボはわりと大雑把だが、強攻撃のボウガンがとても使いやすい。奥義も、相手を踏みつけつつ種モミを食って体力回復したり、いきなり出てきた相棒とナイフを投げあう例のシーンを再現しり、ふたりで巨大な剣を振り回したり、金属バットでホームラン、ハンマースルーの要領で鎖につないだ敵を遠くに投げ捨てる「あっ、新記録……」など原作リスペクトの超ハイクオリティな抱腹絶倒アクションが満載だ。
続けてプレイした伝説編は、実機イベントもさることながら“コミック演出”のつなぎが秀逸のひとこと。原作を隅々まで覚えている人は、各エピソードのつなぎを意識しながらゲームを進めていくと「なるほど、うまく編集しているなぁ」と感心させられるはず。つなぎが上手いので、一応の区切りとなるリザルト画面が表示される瞬間まで、本当に止め時が見つからない。体験版でもプレイできる村の牢屋から広場へのルートなど、原作の各パートを補完するアクションシーンがふんだんに盛り込まれているのもポイントが高い。
えげつない手法で村を占領しにくるジャッカルの、悪魔のような笑顔。その右腕(だったけど捨てられる)フォックス。ゴッドランドで中ボスとして登場するマッドサージなど、印象的なキャラクターはほぼ網羅されている。特筆すべきはそうしたキャラクターの完璧なまでのモデリングで、マッドサージの凛々しい(?)姿を見たときは思わず感動で声をあげてしまった。完成発表会で鯉沼プロデューサーは「(『北斗の拳』の再現を)やりきる!」と表現したが、こうした細部へのこだわりはその最たる例といっていいだろう。
冒頭で「一通りプレイできるだろう」とタカをくくっていた筆者。2人協力プレイや最大8人が参加可能なオンライン要素は発売前につき試遊できなかったが、それでも倍増したプレイアブルキャラクター、前作の倍以上のエピソードを収録しボリュームアップした伝説編、シリアス、ギャグなどすべてを網羅したファン必見の幻闘編、「えっ、これいいんですか!?」と目を疑うようなおまけも入ったギャラリーなど、その氷山の一角の表面数ミリになんとか触れてくるという、なんともいえない結果に終わってしまった。それだけ圧倒的なボリュームを誇っているということだ。
ぶっちゃけると1秒を惜しむように2時間みっちりと触ってきたのだが、「真・北斗無双」の超絶ボリュームを前にして、そんな短時間(!)で一通り触れるなんてことは物理的に不可能であった。にも関わらず、本当に表面をなぞっただけなのに、40歳過ぎの筆者が聖帝十字陵の崩壊シーンに目を奪われ、原作補完パートで嬉々とし、無法者で暴れまわる愉悦感に嬌声をあげる始末。
ほんのサワリでこれなのだから、ゲームを進めていったらどうなってしまうのか……。この日の筆者は「2時間食べ放題の巨大ケーキにかぶりついたと思ったら、実は表面のクリームをちょっと舐めただけだった」というか、そんな気分でコーエーテクモゲームスをあとにした。
「真・北斗無双」恐るべし! 個人的には、年末年始の時間でなんとか完食してやりたいと思っている。
片岡ディレクターにインタビュー! ~全体をざっと見るだけでも4~50時間超の大ボリューム!!~
――購入された皆さんがまず最初に驚かれるのは“ボリューム”ですよね。ちなみにイベントシーンの尺ですが、以前の発表会では「8時間くらい」とざっくりとした表現をされていましたが、実際にはもっとありますよね?
片岡宏氏(以下:片岡氏):はい。伝説編のイベントは、コミック演出も含めると9時間近くになります。幻闘編も同じくらいあります。ムービーも1本が非常に長いので……合計すると25分以上の尺があります。
――25分! 長いムービーは何分あるんですか?
片岡氏:1番長いのは最後のほうですが、「修羅の国」ですね。ムービー中に回想シーンが入るので、1本で9~10分くらいあったかと思います。
――それはもうアクションゲームのイベント尺じゃないですよね。RPGならわかりますが。
片岡氏:開発途中でも、アクションゲームとイベントシーンのバランスは色々話が出ました。様々な角度から検討した結果として、冗長さを感じさせなければある程度長くても「テンポは悪くならない」というところと、あとは、何だかんだ言ってもイベントを見ていると見入っちゃうので、やっぱりこれは必要な要素であると考えて、しっかりとムービーを入れることにしました。
――先ほど私もプレイしたのですが、途中で“止めようがない”んですよね! コミック演出のインターバルがよくできていて、一つのエピソードをクリアしても、物語の前後がしっかりつながっていくから、止め時がない。リザルトが出ても、その後の原作展開が脳内再生されているので、勢いで続けてプレイしちゃう。「あれ、これご飯とかトイレタイムがないぞ?」って。よくある質問で「1話あたり何分くらいですか?」というのがありますが、その表現が難しいですね。
片岡氏:そうなんですよね。エピソードによっても長さが相当違いますし、一言で説明するのは難しいです。
――発表会で仰っていた「やりきる!」という強い意志を感じました。
片岡氏:本当にすべてを! というのは難しいのですが、「北斗の拳」を読んだことがない方にも最低限、話が全部わかるようにはしたいという思いがありました。そこで、その形で脚本に落とし込んでいった結果この長さになりました。ちょっと、この量は大丈夫かな? という危惧もあったのですが、でもやっぱり「ここをやっておかないと、次のここで感動が得られない」とか、必要な前振りがあるんですよね。
――ダイジェスト風とは思えない仕上がりです。原作を知っているから「あ、ここはちょっと削ってあるんだな」と気づきますが、初見の人はわからないですよね。
片岡氏:話のつなぎかたも、よく見ていると原作のコミックとは順番が変わっているところがあるんです。特に操作キャラクターが変わるところとか、そこも感情移入が途切れないよう違和感なく遊べるようにしてあります。
――具体的には、どのあたりにそうした配慮がなされているんでしょうか?
片岡氏:1番わかりやすいところでは、シャチとの出会いが変わっています。視点の問題で、最初にシャチが登場したときは悪者なんです。でも、プレーヤーが操作する段階では悪者でいて欲しくないと言う思いがあって、その後に語られるシャチの話を前にもってきました。レイも最初に操作できるようになるのは「あっ、こいつは悪者じゃないのか」とわかってからです。
――そういった事柄は、原 哲夫先生やノーススターズ・ピクチャーズさんと相談されたりしたのですか?
片岡氏:もちろんです。「ここは変えてもいいですか」などという話は、逐一相談して開発しました。
――その辺の作りとか、作品の世界観を膨らませる要素がやっていて凄く楽しかったです。たとえば、1巻でケンシロウが牢屋に入れられているシーンで、広場に出るまでのパートがプレイできる。これは原作になかったシーンですよね。
片岡氏:原作にはないけれど、こういうシーンがあったほうがプレーヤーの臨場感が出るとか、もっと感情移入ができるみたいなところは、意図的に入れ込みました。テンポを良くするためにはさんでいる戦闘もありますが、その戦闘も長すぎず、短すぎずというように気を遣いました。
――「ゴッドランド」もニヤニヤしながら遊んでしまいました。原作ではカーネルの元にすぐたどり着きますが、本作はその過程がプレイできる。あ、ゴッドランドってこんな場所なのか、とか。
片岡氏:そもそも(ゲーム開始直後の)1番最初も“架空の戦い”なんです。水を持ったおじいさんを助けるシーンは、最初にやられているモヒカンたちとの戦いをチュートリアルでプレイしていただこうかなと考えました。架空ですが違和感なく「北斗の拳」の世界に入っていけると思います。
――総プレイ時間はどれくらいになるんでしょう?
片岡氏:幻闘編まで全部含めると、お話を見るだけでも4~50時間くらいはかかると思います。そこから育てたり、経絡図を集めていくと、しっかりと遊んでいただけるお客様でしたら100時間は軽く超えていくんじゃないかと思います。
――経絡図はやりこみ要素のひとつですよね。
片岡氏:パズル要素が結構ありますから、単純なようで奥が深いですよ。
――パネルの並びとかはランダムなんでしょうか?
片岡氏:ランダムです。
――ということは、運がよければ早い段階で究極連結も狙えますか?
片岡氏:ラッキーな人は狙えます。ただ、早い段階だとレベル、スキルがあまりよくないですね。
――いい経絡図が出現しやすい条件がありましたら是非教えてください!
片岡氏:レベルが高いキャラでクリアするほど、良い経絡図が獲得できます。ただ、ステータスが3つ有る経絡図が出るまでは自分を強化するために練習がてらやって、3つ有る経絡図が出るようになってからが本格的なスタート。やはり究極連結を目指して欲しいですね。
――究極連結ですが、5、4、3、2、1の順番や並びはどれでもいいのでしょうか?
片岡氏:好きなものでいいです。そこにスキルもついてきますので、組み合わせ的に本当にいいものを取ろうと思ったらかなり悩ましいです。
――集めやすい方法などはあるのでしょうか?
片岡氏:それはなかなか難しいですけど、あえて言うならば自分がまず1番プラスしたいものをキープしていくこと。あとはそれにあわせて拾っていく流れですね。毎回頑張ってイチから組みなおしていくと厳しいと思います。
――でも捨てるのが惜しい経絡図も出てきますよね。
片岡氏:その場合は、「どちらのステータスを中心に進めようか」という選択が必要ですね。もったいないと思ったものは、女人像に奉納して他のキャラに渡すのも手です。
――女人像のシステムがうまいのは「1回だけ」の受け渡ししかできないということですよね。いったん預けて全キャラで回して使う、みたいなことができない。
片岡氏:それだと面白さも緊張感もなくなってしまいますので、その分究極連結ができたときの感動は大きいと思います。途中の宝箱をちゃんと拾っておけば、レベルが低くても、伝説編中に完成する人もいると思います。究極連結の効果だけでも十分強くなれますよ。
――経絡図のレベル最高値はいくつなんでしょう?
片岡氏:レベル7です。キャラクターレベルを上げて、高い難易度のクエストをプレイしていただければ。あとはゲームの難易度も関係してきます。
――育てたキャラクターをマルチプレイに持ち込むことは可能ですか?
片岡氏:タッグマッチでは可能です。チームマッチは同条件じゃないとまずいので……そのかわり、いい成績を残すとよりいい経絡図が手に入ります。オフラインよりいいものが手に入りやすいようになっています。ただ、オフラインではとれない、というものではありません。
前作DLC「ハート様」と「無法者」をデフォルト収録!
――ハート様と無法者ですが……まさかDLCではなくデフォルトで入っているとは予想しませんでした。素晴らしい奥義の数々、堪能させていただきました。
片岡氏:幻闘編で最初に使えるキャラクターって、実は無法者なんです。
――えっ! 全キャラクターを出したあとでボーナスで使えるようになるキャラクターじゃないんですか!?
片岡氏:最初から使えます。ストーリーフリーなので、最初からプレイできるクエストは限られているんですけど。いきなり幻闘編をプレイされた人は驚かれるかもしれませんね(笑)。幻闘編は、伝説編で表舞台から去ったキャラクターが使えるようになっていくんです。
――では、最初に使えるようになるのはシン?
片岡氏:最初にシンが使えるようになって、レイ、ユダ、マミヤ……マミヤはバット・リン編でも登場しますが、さすがにここでマミヤはプレイしないだろうと。
――私はダメな北斗マニアなので、やはりジャッカルとか、あの辺がプレイアブルだったらいいなぁと思ったのですが……まぁキリがない話ですよね。
片岡氏:色々使いたいですよね(笑)。今回はモデルも綺麗に作っているので、なおさら使いたいと思われるかなと。ただ、原作に細かい設定が存在しなく、ストーリーとして描けないキャラクターについては、やはり深くは追えないので限界はありました。
――マッドサージは本当に感動しました。思わず見入っちゃいました。これが自分で動かせないなんて!って。ちなみにハートと無法者の人選に関してはいかがでしょうか。他も検討されたとか?
片岡氏:ハートと無法者は前作のDLCで出していたので、前作をプレイしていないお客様にもぜひ使っていただきたいと思いました。
――念のためおうかがいしますが、無法者の奥義も原作者監修済みなんですよね?
片岡氏:ひととおりの技名に至るまで「こんな感じでやります」と見てもらっています。
――これを実現させるとは版権元さんもよくわかっていらっしゃる……。
片岡氏:無法者たちは“華麗なるやられ役”ですから、だいたい許していただけました。
――片岡さん1番のお気に入りの技は?
片岡氏:“馬乗り(無法者の投げ攻撃)”は楽しいですねぇ。奥義では武器をバットに持ち替えて敵を吹っ飛ばす技が好きです。
――ハートは、全キャラクターで1番サイズが大きいですよね?
片岡氏:前作よりも大きくなっています。今作でイベントを作っていくとき、前作のサイズだと迫力が足りないのではという話になったんです。そこでちょっと……というか結構大きくしました(笑)。アクションは当然そのままなので、プレイしていてより楽しくなりましたね。
――スケジュール的なことは別として、開発している皆さんが心底楽しんで作っているのが伝わってくるようでした。
片岡氏:それはもう、スタッフも皆原作が好きですから!コミックを 読んでいなかった若いスタッフもいましたけど、何度も読んでいくうちに「面白いッスね!」って「このシーンが好き!」とか「このセリフ、いいですね!」というのを持ってくるんです。それだけ引きの強い作品で、やっぱり凄いな! と感じましたね。
――プロデューサーの鯉沼さんはサウザーの最終シーンが1番のお気に入りとうかがいましたが、片岡さんはいかがでしょう?
片岡氏:私はバット・リン編でケンシロウが記憶を取り戻した後、バットを助けて「お前は俺の弟だ」という場面が昔から凄く好きですね。実家にコミックスが全巻あるんですけれど、帰省すると毎回全部読み返しています。途中のストーリーでもウルっと来る箇所はたくさんありますが、あのシーンは最後に涙して終わる、みたいな美しさがありますよね。なので、あのシーンは「真・北斗無双」でも絶対に入れたかったんです。
――そこはムービーですか?
片岡氏:そこはイベントになっています。
――サウザーのシーンはプリレンダのムービーでしたよね?
片岡氏:はい。聖帝十字陵はイベントで表現するには凄く難しかったんですよ。今回はできればすべてイベントでやりたかったんですけど、聖帝十時陵が崩れて行く演出など、どうしても表現的に難しいところがあって、そういうものはプリレンダにしています。
――原作のお師さんは黒い斜線でよく見えないのに、モデリングで再現されるのはこれが初ですよね?
片岡氏:その他に子供時代のキャラクターも、映像ではあったかもしれませんが、モデルとして作られたことはあまりないと思います。やはり、どうしても子供時代の話がなくて大人の話だけだと「昔、何があったの?」ということになってしまう。ナレーションでは済ませたくなかったので、結構贅沢ではありますけど「作らせて欲しい」と周囲を説得しました。
――まさかモデリングで再現してくるとは思わなかったので、意表を突かれました。
片岡氏:あとは鯉沼も凄く気に入っていますが、アインの最期も……あそこも泣きポジションですよね。私も大好きなシーンの一つです。
――発表会で「やりきる」といわれていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。
片岡氏:作っている側としても、原作があるものは「やりきる」とは言いにくいところがあるんです。全部をコピーのように再現できているわけではないんですが、「北斗の拳」のコアファンの方にも納得してもらえるくらいはやれたかな、と思います。シナリオだけでなく、アクションやあらゆる方向で要素を追加したので、それを説明するプロモーションビデオも長くなってしまいましたね。本作では2本作ったんですけれど、どちらも4分半もあって通常の作品の倍あります。それでもやはり「まだあのシーンも入れたかったなぁ」というのが一杯あるんです。本当に、名シーン、名言が一杯あって……あらためて「北斗の拳」は凄い作品だと実感します。
今度のケンシロウは最初から全開! ~経絡図と奥義でさらにパワーアップ!~
――私は前作の段階を経てパワーアップしていくアクションシステムは好きだったんですが、今回は最初からフルアクションですよね。 前作からどういったことでシステム変更をしようと考えられたのでしょうか?
片岡氏:「ケンシロウの強さを知って欲しい」ということから、今回はこのシステムを採用しました。
――最初から全開でやれる一方、攻撃の発展性は経絡図などで伸ばしいていくイメージでよろしいんでしょうか?
片岡氏:あとは奥義が増えていきます。成長していくと有効な技が自分のなかで変わってくるでしょうから、ずっと同じプレイスタイルにはならないかと思います。敵によってもザコとボスでは違いますから使い分けはでてきますし、後半になると中ボスも強くなってきますので、奥義の選択は重要です。逆に、序盤のうちは、強攻撃の3や4を使っていれば気にせず進めるようにしています。今回、敵の攻撃を食らって自分がひるむことはあまりないんですが、ダメージを受けすぎるとリザルトの評価が下がります。技が増えていくというよりは、技をどう使うか。奥義の使いわけとか、自分が成長していくのを楽しんでいただくイメージですね。
あと、今回は敵の攻撃をかわす“回避”が入っています。これは後半になるほど重要性が増していきます。ただし、使うと奥義ゲージが減ってしまうので、やりくりが悩みどころになると思います。
細部まで徹底したこだわりが光る逸品 ~「北斗の拳」ファンはチェック必須!~
――今回はザコとか細かいところも本当に凝っていますよね。ゴッドランドの兵士はちゃんと軍服を着用していますし。小さな発見が一杯あって楽しいです。
片岡氏:ザコの種類もかなり増えています。たとえば拳王親衛隊も出てきますよ! 原作を追求するとどこまで作れるかという話にはなるんですけど「ここは、この人が出てきてくれないと!」という思い入れはそれぞれあると思うんですよ。本作では、印象的なシーンや倒されかたをしているザコについては、できる限り反映しています。
――そもそも、コミック演出だけでも膨大な量ですよね。
片岡氏:モーションをつけて並べて描いて……。あの形にもっていくまで、実は色々なパターンがあったんです。
――最初はコミック風ではなかった?
片岡氏:コミックにしようというのは最初から決めていたのですが「どういうふうに見せるのがいいのか」ということについては、かなりパターンを作りました。今回もDLCコスチュームがあるんですけど、衣装の変化もコミック演出に反映したいという思いがありました。そうなると実機モデルで出さないといけない。2Dだと絵になっちゃいますので。
――たしかに実機なら反映しますけど、手間も大変ですよね……。
片岡氏:ひととおりチェックもしなくてはいけないので大変でした。コミック風の演出を色々やりながら、テンポ感を損なわないように。演出上、画面が動かないのもきついし、動きすぎても「実機イベントにかぶせただけじゃん」となってしまう。しっかりとした漫画表現を取り入れつつ、というところに試行錯誤しました。
――編集も素晴らしいと思います。たとえば地上波向けに編集された映画などは「あっ、あそこカットされてる!」と憤慨することも珍しくありませんが、本作はそういった不満は感じられませんでした。繰り返しになりますが、初見の人でもまったく問題ないのは凄いと思います。
片岡氏:最初に脚本を決めるときから、版権元さんとも相談しています。幻闘編も、本作のオリジナルストーリーとして認めていただきました。前作は「なさそうだけど、この組み合わせが楽しい」というシナリオが多かったと思うんですが、今回はより原作の世界観に近い感じになっています。
――シリアスが多いのでしょうか? それともギャグのほうが多いのでしょうか?
片岡氏:原作もそうですが、全般的にそんなにシリアス寄りではないですね。真面目にキャラクターを描いているという面はありますが。
――原作で描かれなかった部分などもありますか?
片岡氏:伝説編のあのシーンにつながっていくんだな、というようなエピソードもありますね。あとは、やはり要望の多い「夢の対決」ができるシナリオも入っています。ボリュームも増えていますし、前作でプレーヤーの皆さんから寄せられた要望は、かなり満たされていると思います。
――それでは最後に、既に購入されたユーザーや購入を検討されている方々にメッセージをお願いします。
片岡氏:すべての「北斗の拳」ファンの方々、原作をまだ読んだことのない方々も楽しめるように仕上がっていると思います。多くの方にぜひ楽しんでいただけたらと思います。何度も言うようですが、名シーン・名セリフが一杯ある作品なので、そこも堪能していただけるとありがたいです。
――本日はお忙しいところを本当にありがとうございました。
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