「BEYOND: Two Souls」、「The Last of Us」開発者インタビュー

テーマを強く打ち出し、プレーヤーに問いかける“大人向け”の作品


9月24日収録

会場:ソニー本社特設会場



 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)は9月22日、ソニー本社の特設会場にて「BEYOND: Two Souls」、「The Last of Us」のプレミアムセッションを行なった。

 本稿では同時に行なわれた開発者インタビューを扱っていく。今回話を聞くことができたのは「BEYOND: Two Souls」の開発元仏Quantic DreamのCo-CEO Executive Producerのギョーム・ドゥ・フォンドミエル氏と、「The Last of Us」の開発元米Naughty Dog Community Strategistのアーニー・メイヤー氏氏だ。なおこのインタビューは、プレミアムセッションでのデモプレイを下敷きにしている。合わせてお読みいただきたい。





■ 強さと弱さを持つ主人公の15年の人生を丁寧に描く「BEYOND: Two Souls」

「BEYOND: Two Souls」の開発元quantic dreamのCo-CEO Executive Producerのギョーム・ドゥ・フォンドミエル氏
ジョディを演じるエレン・ペイジ氏
見事な蹴りを決めるジョディ。格闘技を習ったのは何故なのだろうか

 「BEYOND: Two Souls」のインタビューで、最初にフォンドミエル氏にあえて突っ込んだ質問をしてみた。「世の中には、“霊が見える”と本気で言う人がいる。彼らに対し、フォンドミエル氏はどう思うか?」。この質問にフォンドミエル氏はしばらく考えた後、「それは難しい質問だ。宗教にも繋がってしまう質問で、人間というのは、説明のつかないものを説明しようという生き物だし、その納得は人それぞれに違う。その価値観はひとくくりにはできない。私は霊が見えるという人を、否定するつもりはないですね」と応えた。

 「BEYOND: Two Souls」は、霊が実際に出てくる超常現象を扱ったゲームである。ただ、本作は超常現象は要素の1つであり、メインのテーマではないという。Quantic Dreamが手掛けた「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」はデビット刑事の個人的な体験を扱い、彼の感情に共感できる物語を展開した。一方の「BEYOND: Two Souls」では、デビット・ケイジが近しい肉親を亡くした時に、死について考えるようになり、物語はその時に彼が考え感じたことをテーマにしている。

 本作のメインのテーマとなるのは、1人の少女ジョディの成長物語である。他の人と異なるものをもった少女がいかに人生を歩み、そして死後の世界には何があるのか、というところに物語のウェイトを置いているという。

 フォンドミエル氏の説明から新たな疑問が浮かんできた。現在のところ、主人公「ジョディ」の側にいる謎の存在「エイデン」は全く正体不明だが、エイデンは“死の向こう側の存在”、つまり元は人間だったのだろうか? 物語が進む中で、エイデンの“正体”は明らかになるのだろうか。

 フォンドミエル氏は「プレーヤーの選択と決断に変わってくるが、Yesだ」と答えた。物語の展開によってエイデンという存在がなんなのかの謎は明らかにされるという。「BEYOND: Two Souls」ではジョディの人生が描かれていく。時には大きな決断を迫られ、そこで大きくストーリーは分岐する。本作では様々な選択肢があり、プレーヤーは自由度の高いゲームプレイを体験できるが、その後の運命を変える選択というものがあり、プレーヤーがその選択をしていくことで、物語が変化していくという。この手法は「HEAVY RAIN」と同じものだ。

 今回のデモプレイでは、ジョディは警官達と巧みに、格闘技経験者のような動きを見せ警官を撃退した。この時、タイミング良くボタンを押すと言うこともあって、筆者にはこれが、いかにも“ゲーム的”に感じた。リアリティがないように感じたし、ジョディという少女のキャラクターにそぐわない気がした。

 この違和感をぶつけてみたところ、フォンドミエル氏は、ジョディはそれまでの人生の中で、きちんと格闘技を覚える場面があると語った。ゲームの中で、ジョディは興味深い人物として描かれ、強さと弱さをきちんと描いていく。そして、強さと弱さ両方を表現できる女性として、エレン・ペイジ氏をジョディのアクトレスとして選んだという。

 そしてジョディの“強さ”としてエイデンの存在がある。エイデンは時には彼女自身が持つ力のように見え、彼女自身を人知を越えた強力な存在としてみせる。しかし一方で、エイデンはジョディの“呪い”となって、彼女の人生に影をもたらしている。この運命を背負うということでも、ジョディの強さと弱さを表現しているとのことだ。

 今回のデモでは、ペイジ氏の演技を重点的に紹介していて、ペイジ氏を描くためにドラマ作りをしているのかという錯覚すら生まれた。ここまでキャラクターの感情を表現するドラマ作りをするのならば、映画や、TVドラマでもいいのではないか。モーションキャプチャーという極めて手間のかかる方法をとり、ゲームとして表現したいと思う理由は何なのだろうか。

 フォンドミエル氏ははっきりと、「ゲームでなくては、インタラクティブ性、ユーザーが選択する楽しさを表現できないからだ」と答えた。これはQuantic Dreamが「HEAVY RAIN」から続けていることであり、ユーザーの選択でストーリーそのものが変化するというドラマは、ゲームでなくては実現することができないからだという。

 ゲームという部分では、今回のバージョンでは少し操作がわかりにくいかな、とも感じた。特にエイデンの時の視点移動は、ふわふわとしすぎて酔ってしまいそうだった。フォンドミエル氏は現在のインターフェイスは開発中のものであり、今後さらに作り込むのでそのバージョンを見てから判断して欲しいと語った。インターフェイスを感じさせないような操作性を目指しているという。視点移動に関しては、実際に自分で操作すると違和感は少ないとのこと。今回に関しては、色々なものを見せようとして、わざと激しく視点を動かしたとのことだ。

 ジョディには過酷な運命が待ち受けている。特に海外ドラマの長いシリーズを見ていると感じるのだが、「ここまで不幸なことが続かなくても良いんじゃないか」と思ってしまう。こういった、1人のキャラクターにドラマを背負わせると言うことに関して、本作はどのような“バランス感覚”を持っているのだろうか。

 フォンドミエル氏は「BEYOND: Two Souls」は、いかにもビデオゲームというような、“ステージクリア型”のようなストーリー展開はしないと語った。ジョディの15年もの人生を丁寧に描く。プレイしていて、「またこういう展開か」とプレーヤーに思わせるようなことはしない。気をつけたことは、ストーリーを進めると言うことにあたり同じ手法を使い回さないということだという。

 最後にフォンドミエル氏は日本のファンに向かって、「開発は非常にハードですが、我々は頑張ってゲームを開発しています。他のゲームとは異なるユニークな作品となります。ぜひ楽しんでいただければと思います」と語った。


ジョディには過酷な運命が待ち受けている。ポルターガイスト現象など、従来の超常現象を独特の手法で表現するところも面白い




■ 対照的な2人の交流から人間とは何かを問いかける「The Last of Us」

「The Last of Us」の開発元米Naughty Dog Community Strategistのアーニー・メイヤー氏氏
本作の“人間”を問うテーマは、2人の関係により描かれる
崩壊した文明を覆い尽くしていく植物

 メイヤー氏にも極端な質問をしてみた。「欧米の開発者は、何故そんなにゾンビが好きなのか?」。正直、Naughty Dogが他の多くのゲーム会社と同じように、ゾンビをテーマにした作品を作っていることに違和感を覚えたのだ。

 メイヤー氏は、「まず最初にいっておきたいのは、『The Last of Us』で出てくるのは、ゾンビではないということです。しかし、私が思うには、“人でない存在”、“人間が他のものに変わる恐怖”というものは、欧米に限らず、普遍的なものではないでしょうか」と語った。その上でNaughty Dogは、“人でなくなった存在”と“人間”を配置することで、「人間とは何なのか」というテーマを描いていこうとしているという。

 「The Last of Us」はある菌に感染した人間は人ではなくなってしまう。しかしゾンビと呼ばれる、自らの身体の損壊に無関心な不死の存在ではなく、あくまで自我を失った人間であり、ダメージを受ければ激しい痛みを訴える。“感染者”達は怪物ではなく生物であり、増殖を目指しており、その方法もゲーム内で描かれる。彼らの生物学的な表現も本作の大きな見所だという。

 本作のデモンストレーションからは「人間を描きたい」という想いを強く感じた。極限状態に置かれた人間、人と人との繋がりが試される世界を設定し、主人公と他の人間の交流が描かれる。そのテーマを象徴するのが守るべき存在である少女“Ellie”ではないだろうか。

 メイヤー氏は「Ellieは守られるだけの存在ではなく、Joelと助け合う心強いパートナーだ」と語った。JoelとEllieの2人が主人公であり、彼らの交流こそが本作で力を込めて描いているところだ。彼らは性別、年齢などいくつもの点で対照的な人物で、Joelはパンデミックの前に家族を失い、ダークな世界に自らを堕としてしまう生き方をしていた。一方のEllieはパンデミック前の世界を知らない。その正反対の2人が様々な経験を経てどのように変化していくかを描いていくという。

 ただ、デモプレイで気になった部分があった。「ひょっとしたらアクションシーンではEllieは敵から撃たれないのではないか」というところだ。表現として難しく、ゲームとして制限されてしまう部分でもある。しかしリアリティがスポイルされかれないところでもある。ここに関して、本作はどのようになっているのだろうか。

 メイヤー氏は「Ellieは基本的に自分を守れる」と答えた。現段階でのアクションシーンでのEllieの動作・判定に関しては調整中の部分もあるが、この世界は危険に満ちており、Ellieも命の危険は常にある。彼女は不自然に守られた存在であると感じさせない、リアリティをきちんと持たせるストーリー、演出を心がけているという。キャラクターのモーションなど、細部まで力を込めて作り込んでいるという。

 一方、ゲームに関して興味を持ったところは「アイテムの組み合わせ」だ。実はデモプレイで敵が投げてきた火炎瓶は、この組み合わせで作れるものだという。ものを見つけ、広い、組み合わせるというのはこのゲームでの重要な要素で、現在バランス調整中で、できるだけ多くの組み合わせができるようにしているという。

 技術的な部分では、「ライティング」に力を入れているという。この世界は電気が行き渡っているわけではなく、夜は真っ暗になる。人工的な明かりはほとんどなく、その上でどのように世界を表現していくかには苦労したとのこと。また、AIの作り込みにも自信を持っており、賢く手強いAIとどう戦い、生き残るかを楽しんで欲しいという。

 Naughty Dogは「アンチャーテッド」シリーズで、明るい冒険活劇を描いた。しかし今作ではグッとシリアスに、“人間とは何か”という重いテーマを投げかけている。この“変化”はどんな想いがあってのことなのだろうか。メイヤー氏は「今作で我々は“大人向け”の作品が作りたかった」と語った。人間の感情を描き、大人のプレーヤーに共感してもらい、そして考えてもらえるようにしたかったという。

 ゲームの中で、プレーヤーは様々な選択を迫られる。極限の状況の中、その選択は重いものになる。「人間としての正しい選択は何か」を考えていく作品として欲しいという。メイヤー氏は「プレーヤーに忘れて欲しくないのは、感染者も元々は人間だということです。犠牲者である彼らと対峙したとき、どう考え、どう行動すべきか、考えて欲しいと思います」と語った。

 ユーザーへのメッセージとしてメイヤー氏は「いままでNaughty Dogは幅広いユーザーに向けたアクションゲームを作っていましたが、今回あえて新しい挑戦を行なっています。楽しんでもらえればと思います」と語った。


極限の状況の中、時には助け合いながら進んでいく2人。現在のところ、“2人が何故旅を続けるか”は明らかにされていない。彼らの旅路の果てには、どんな運命が待ち受けているのだろうか

(C)Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.
(C)Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc.

(2012年 9月 25日)

[Reported by 勝田哲也]