Aiming、「グリフォン」、「プロジェクトL」など大量の新作スマホタイトルを公開
椎葉社長「これからが本当の正念場、点ではなく面を取りに行く」
株式会社Aimingが設立2年目に入った。同社代表取締役社長椎葉忠志氏はAiming創業時のインタビューで「2012年12月までに世の中を驚かせるようなタイトルとその成功を見せたい」と語ったが、そのタイトルはまだ世の中に姿を見せていない。また、数カ月に1度のサイクルでラインナップを増やしていくとも語っていたが、それも実現できていない。Aimingの新規タイトルプロジェクトは果たして一体どうなっているのだろうか?
そこで今回は、ChinaJoyのBtoBホールにブースを出展していたAimingを訪問し、商談に訪れていた椎葉氏と、取締役COOの萩原和之氏に新作タイトルについて話を伺ってきた。いずれも正式発表前ということで、コードネームのものが多いが、実に7本にも及ぶ大量のスマホソーシャルタイトルが飛び出してきて驚かされた。画面素材が当日見せてもらったトレーラーの直撮りしかないのが残念だが、椎葉氏の解説を織り込みながらたっぷりご紹介していこう。
■ Aimingが日本の次に重視する市場は中国。ターゲットプラットフォームもPCからスマホへ完全シフト
ChinaJoyのBtoBコーナーに出展していたAiming |
デモを見せてくれた椎葉氏(左)と萩原氏(右) |
AimingがChinaJoyに出展した理由は、主催者に誘われたためと、Aiming単独では展開が難しいAndroid版の商談のためだという。創業からわずか1年あまりであるため、ChinaJoyへの出展は今回が初めてとなる。
“つかみ”として最初に話してくれたのは「Lord of Knights」の中文版。海外市場として今後中国を重視していく方針で、日本の次の展開先は基本的に中国だという。その第1弾タイトルとして準備しているのが「Lord of Knights」の中文版で、中文簡体字に対応したものを中国のApp Storeに自社で展開を行なっていくという。展開時期は9月を予定。また、「Lord of Knights」の英語版の準備も進めており、トライアルで8月からオーストラリアで展開していくという。
Aimingが中国市場を重視する理由は、iOS版には中国特有の規制が存在しないからだという。AndroidはそもそもGoogle Playがないため、中国メーカーがいわば勝手に自社プラットフォームを立ち上げており、その結果、海外メーカーが中国メーカーを通じて中国展開を行なう場合は、オンラインゲームと同様の許認可のプロセスが必要となるが、iOSの場合はAppleがアメリカで展開しているサービスとなるため、それが不要だという。このため現時点では、海外のメーカーが中国のApp Storeに自由に中文版のアプリを配信することができるようだ。将来的には同じように規制がかかる可能性は極めて高いが、やれるうちにやってしまうのがAimingの基本方針だという。もし規制が掛からなければ、同じアプローチで、今後サービスされるすべてのAimingタイトルを中国で展開していく。
また、現地カルチャライズという点で、現在中国向けに準備しているのが「Lord of Knights」のエンジンを使った三国志版、社内で「三LOK(Lord of Knights)」と呼ばれているタイトルとなる。こちらは年内の提供開始予定。
海外展開の本格化に向けて現在取り組んでいるのがユニバーサルアプリ化。つまり、単一のアプリで、スマートフォンとタブレットの両方に対応した状態でリリースすることを意味するが、ここに力を入れる理由は、海外ではiPadでゲームをプレイするユーザーが多いからだという。
椎葉氏「我々が持っているデータでは、スマホとタブレットの比率は日本では6対1ぐらいだが、海外ではこれが3対1から2対1ぐらいまで縮まる。日本はホントにタブレットでゲームをやらないので、スマホだけ対応していれば良かったが、海外ではそういうわけにはいかないどころか、タブレット対応は必須です。だからいま『Lord of Knights』を苦労してユニバーサルアプリに改良しています(笑)。今後出るタイトルはすべてユニバーサル対応です。
ところでAimingは、ChinaJoy開幕直前の7月24日、第三者割当増資を実施したことを発表した。総額6億円で、過去の調達資金と合わせると総額21億円にも上る。なぜこの時期に増資が必要になったのだろうか。
椎葉氏「お金がないわけではなく、実際、他社さんからの受注の仕事もあるし、『ログレス』も『Lord of Knights』も今なお売り上げが伸びていて、収益を上げつつあるのですが、資金に余裕があるとないとでは選択肢が変わってくるので、その自由度を確保したかったらからです」
萩原氏「付け加えると、我々は海外の展開も目指しているので、その分の投資もあります。日本で稼げるようになってから行こうという考え方ではなく、ほぼ同時に出していこうという動き方なのでどうしてもお金が掛かってしまいますね」
前回2月に台湾で取材した際は、今後スマホ向けの新規タイトルが続々登場するという勢いを感じたが、なぜ出なかったのか?
椎葉氏「単純に新規タイトルの開発が遅れてるから(笑)。もちろん開発には出せといってるけど、出せと言って出るものじゃない。こればかりはいかんともしがたいし、我々のゲームは新規性が高いので、想定してなかった開発工数漏れもいくつかあった。ゲーム開発とはそんなものですね(笑)」
と、屈託のない笑顔で釈明し、「ホントにかなりできてきてるんだから」と言いながら、次々に新作タイトルのトレーラーを見せながら、各タイトルの概略を説明してくれた。
以下のタイトルの共通点としては、iOS/Android向けのユニバーサルアプリで、スマートフォンとタブレットの両方に対応。驚いたことにブラウザゲームは一切開発していないという。
椎葉氏「正直、ブラゲはもう作ってません。ブラゲは、スマホともっとも食い合う分野で、ライトでカジュアルなのにPCの前という時点で、どうやったってスマホに勝てない。そういう傾向も出ているので、ブラゲ開発はせっかくの得意分野のひとつなんですが、そのノウハウはスマホにもそのまま活かせるし、サーバーサイドはほぼそのまま使い回せるので特に影響はありません」
なお、Androidタブレットは解像度が千差万別ですべてに対応しきれないため、タブレットはiPad推奨という形になる。日本ではすべて自社開発、自社パブリッシングで、海外ではiOS版は自社、Android版はパートナーを通じての展開を模索しているという。ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金制となる。
・コードネーム「グリフォン」
コードネーム「グリフォン」は、「アラド戦記」スタイルの横スクロールMOアクション。日本では11月頃のサービスインを予定し、実機でもすでに動くということだが、まだ最適化前ということでトレーラーのみ見ることができた。
椎葉氏「要するに『アラド戦記』です。横スクアクションでリアルタイムの同時対戦も実現します」
最大の特徴はスマホタイトルでありながら、3人による協力プレイと3対3の同時対戦に対応しているところ。3G回線でも3人プレイを実現するという。トレーラーでもまだ若干もっさりとした印象だったが、これ以上スピードを上げるとサーバーとの同期が取れなくなってラグがストレスになるということで、技術的なチューニングの腕の見せ所だということだ。
【コードネーム「グリフォン」】 | |
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・コードネーム「プロジェクトL」
コードネーム「プロジェクトL」は、台湾台中に本拠を置くオンラインゲームメーカーFunYoursとの共同プロジェクト。スマホ向けの王道的なMMORPG。「プロジェクトL」の“L”は、Fun Yoursの代表作である「ル・シエル・ブルー」から採っただけで特に意味はないという。日本では10月か11月頃のサービスインを見込む。
椎葉氏「狙っているのは、スマホソーシャルにおける『ラグナロク(オンライン)』。『ラグナロク』はPCMMO初期にリリースされて、世界中でヒットした成功事例のひとつ。同じようなことがスマホの世界でもあっていいはず。もともとPCオンラインゲームとして開発していたアセットを使い回しているので、ボリュームが桁違い。600~700MBぐらいあるので、世界最大規模のスマホ向けのオンラインゲームになるかもしれない。ただ、スマホにPC向けのMMORPGを入れただけじゃなくて、スマホ的な遊び方ができるように、5分刻み、10分刻みで1コンテンツが遊べるようにというところは意識して作っています。ウチのゲームはダラダラ走ったりしません(笑)
【コードネーム「プロジェクトL」】 | |
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・「TOWA」
「TOWA」は、クォータービュースタイルの3Dアクションと見せかけたMOシューティングゲーム。和風の世界観を採用し、BGMも和風で統一しているという。攻撃は敵が射程内に入った時点で自動で行なわれ、プレーヤーはキャラクターの操作と攻撃/回復スキルの使用のタイミングを計るだけと、スマホ向けらしいカジュアルなインターフェイスを採用している。日本でのリリースは10月を予定。
こちらは実機でも見ることができたが、Unityで描かれた3Dグラフィックスは非常に美しく、派手なライティングエフェクトと、シューティングゲームならではの大量の弾幕に包まれたゲーム画面は、今回見た中ではもっとも見栄えのするグラフィックスだった。
椎葉氏「『Diablo』タイプのMOシューティング。シューティングなんだけど弾は撃たない。射程に入ったら自動で撃つというXbox LIVEアーケードタイトルの洋ゲーとかで良くあるパターンです。ボスも巨大で、マルチもできる、グラも綺麗。レベルが上がると弾の射程が伸びたり、強くなったり、実はやっぱりシューティングゲームです(笑)
【「TOWA」】 | |
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・「Mirrors」
「Mirrors」は、オンラインゲームとしては王道のハック&スラッシュ系のオンラインアクションRPG。横持ちで左右の端に表示されるインターフェイスを使ってキャラクタを操り、向かい来る敵を蹴散らしていく。メニューやUIなどはまだ仮のもので、まさにプロトタイプといった印象だったが、基本的なゲームデザインは米Runic Gamesの「Torchlight」の影響が強く、日本のみならず欧米市場でもアピールできそうな作品だ。こちらに関しては開発にもうしばらく時間が掛かるということで2013年2月頃のサービスインを見込む。
椎葉氏「これ見ての通り『Diablo』ですよ。大阪の開発スタジオが開発を担当していて、2.5Dクォータービューのハクスラ系。最大4人パーティーで戦えます。一見もう出来てる風なんだけど、実はまだまだで、動きももっさりしてるし、開発にもう少し時間が掛かります。開発陣は『Tourchlight』をライバル視していて、世界観や背景を意識するのはいいのだけど、その影響を受けすぎているかも(笑)。もうちょっと敵も自キャラも格好良くて派手な方がいいよねって開発にいってるところです」
【「Mirrors」】 | |
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・「ログレスタクティカルバトル」
「ログレスタクティカルバトル」は、ブラウザゲーム「剣と魔法のログレス」の世界観を活かしたストラテジーゲーム。左右に敵と味方が布陣するバトル画面で、ユニットを掴んで敵に落とすと攻撃するというリアルタイムストラテジーのようなバトルが特徴的。リアルタイム処理でヘイトの概念があり、MMORPGのようなリッチなパーティーバトルが楽しめる。これは9月から11月頃のサービスインを見込む。
椎葉氏「『ログレス』はとても良い素材なので、この素材を使ってカジュアルゲームを作ってみたかったんです。ステージクリア型で、新しいステージに行くと、マップ、敵、攻撃パターンなどが変わっていくのでパズルゲーム的な楽しさもあります。『ログレス』はもともとMMOとして作っているので、素材に多額の開発コストを掛けているし、カジュアルゲームとして使うと凄く見栄えがする。これを使わない手はないと思ったんです」
【「Mirrors」】 | |
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「武神大戦」 |
・「武神大戦」
椎葉氏が語っているとおり、「Lord of Knights」のエンジンを使った新作カードRPG。システムやガチャなどはまったく同じシステムを採用し、カードには戦国時代と三国志の武将達が登場するという。9月サービス開始の予定。こちらはユニーバーサル対応の予定は無く、スマホのみの対応となるようだ。
椎葉氏「これは日本市場に向けて開発している『Lord of Knights』のガワ替え版です。聞いたことあるようなタイトルでしょ? 狙い通りです(笑)。僕らは既知感のあるタイトルを付けるのが大好きだから。
これらのタイトルをほぼすべて今年9月以降に集中投入するという。なぜここまでタイトルを集中するのか?
椎葉「集中させたわけではなくて、みんな遅れて集まっちゃっただけ(笑)。いきなり開発を広げすぎたという反省はなくはないけど、もともと僕らは複数タイトルを一気に出して、“点”ではなく“面”を取りに行く戦略だから、予定通りといえば予定通り。今回6億を足して21億にしたので、これで失敗したら、どういう意味においても伝説になるでしょう(笑)」
増資をしたからといってさすがにこれ以上引き延ばすつもりはないようで、ほとんどのタイトルは年内に必ずリリースするという。今後本格進出を目指している中国市場については、
椎葉氏「中国ではGoogle Playが機能していないので、各メーカーが勝手サイトを立ち上げて、自社の課金決済手段でビジネスをしている。Google Playの課金決済手段よりも断然使いやすく、個人的にはAndroidは中国で大ブレイクする可能性があると思ってます。自社で展開するためには許認可が必要になるので、自社単独展開は難しいんですが、中国で良い取り組みをしているDeNA Chinaといったパートナーと組んでしっかりやっていきたいですね。ただ、どこと組むにしても独占はないですし、契約時にこれだけ取れなかったら契約を解除するという契約解除条項を盛り込むのも当然ですよね。ダラダラやっても共倒れになるだけですから」
と明快に展開戦略を語ってくれた。最後に日本のユーザーに向けてコメントを頂いた。
椎葉氏「iPhoneでゲームやりましょう。やっぱり日本のゲーム市場を見ていると、みなさん、まだおもしろいゲームを探すところまでいっていない。Mobage、GREEみたいにみんながやってるタイトルはやるけど、自分で面白いゲームがないかなと探してる人は少ないですよね。ゲームのモチベーションがそれほど高くない人は、はなからスマホでゲームなんかおもしろくないと思っている人も多いし、そうした中でこんなゲームもあるんだよというところを見せていきたい。パッドとかなくてもiPhoneでも十分しっかりしたゲームが楽しめるねというところを出していきたい。そうしたマーケットをもう一段大きくする取り組みは、我々の使命だと考えていて、それはそうしたゲームは我々にしか作れないからです。その一方で、『俺たち、先行き過ぎてんじゃね?』という不安感がなくもないのですが、これからが本当の正念場です。ぜひ今後のAimingにご期待下さい」
(2012年 7月 28日)