「Asia Game Show 2011」SCEHレポート パート2

香港のPS VitaはSIMロックフリーに。SCE Asia安田哲彦氏のミニインタビューも収録


12月23日~26日開催

会場:香港會議展覽中心(Hong Kong Convention & Exhibition Centre)

入場料:28香港ドル



 香港最大級のゲームイベント「Asia Game Show」は26日を以って無事終了した。先日のレポートではSCEHブースのゲームやイベントを中心にお伝えしたが、今回はSCE Asiaへの取材によって判明したPS Vitaの香港における3Gサービスに関する細かい情報と、SCE Asiaが積極的に進めているアジア地域での開発支援活動についてのレポート、そしてSCE Asia代表の安田氏のミニインタビューをお送りする。



■ 香港の3Gサービスは“one2free”が担当。プリペイド、ポストぺイドともにデータ従量制を採用

SCEHブース内にはone2freeのコーナーも用意され、PS Vita購入者向けの接続サポートなども行なわれていた

 PS Vitaの香港における3Gサービスプロパイダーは、CSLの“one2free”を採用したことが開催前日の12月22日に発表された。アメリカでは6月、日本では9月にサービスプロパイダーが発表されているが、香港ではまだ発表されていなかった。

 今回の提携発表の遅さは、香港にはPS Vitaが使用できるW-CDMAのサービスプロバイダーが多く存在するため、どのキャリアを選ぶか交渉に時間が掛かったことと、ハードウェアの通信テストに手間取ったためとみられる。発表の遅さからSIMロックフリーにして3Gプロパイダーは自由に選べるのではないか、という推測も流れたこともあったが、結果はプロバイダーはone2freeとなったが、SIMロックフリーでの販売となっている。

 SIMロックフリー端末であるため、動作保証対象外となるが、one2free以外の他社のSIMや、日本を含む香港以外の地域のSIMでも利用できるようだ。なお、SCE Asiaの展開エリアのひとつである台湾では、PS Vitaのアジア発売当日の12月23日に中華電信との提携が発表され、3G/Wi-Fiモデルの発売が2012年2月17日に延期されている。

 香港ではSCEHとone2freeの間でジョイントプロモーションを行なっており、3G/Wi-Fiモデルには50香港ドル分(約500円分)のチャージ入りのプリペイドSIMが同梱される。プリペイドは30日有効で、データ従量制となっている。価格帯は4種類あり、50香港ドルで200MBまで。128香港ドルで1GBまで。178香港ドルで3GBまで。そして328香港ドルで無制限となる。また、クレジットカード決済等のポストペイド契約も可能で、この場合は、87香港ドルで1GBまで、137ドルで3.5GBまで。さらにone2freeが提供している無料のWi-Fi接続も使用できる。速度についてはプリペイド、ポストペイドともにフルスピードのサービスを提供しており、動画再生にも無制限で対応している。




■ 台湾・シンガポールで行なわれている開発支援プロジェクトの成果が発表

 SCE Asiaでは、アジア各国で開発支援プロジェクトを進めている。過去の実績としては、台湾XPECとの共同プロジェクトで開発された麻雀ゲーム「東方雀神」や、シンガポールのRatloop Asiaが開発した「Rocketbirds: Hardboiled Chicken」などがある。2012年には中国・広州での人材育成プロジェクトも開始される予定だ。

 Asia Game ShowのSCEHブースでは、開発支援プロジェクトのタイトルを来場者にプレイしてもらい、その結果を開発にフィードバックする、いわゆるアーケードゲームにおけるロケテストのようなことを行なっていた。ゲームシステムに関してかなり踏み込んだ設問が用意されたゲームもあり、このプロジェクトに関する本気度が伺えた。

【開発支援プロジェクトコーナー】
プレイアンケートに並ぶ来場者。プレイした来場者はトロのキーチェーンがもらえた。アンケートの中にはトロとクロの認知度アンケートも含まれていたシンガポールの大学“Nanyang Polytechnic”もブースを構えていた。この学校はSCE Asiaと提携して“NYP Games Resource Centre”というゲーム開発支援施設を運営している。ちなみに「Phase Shift」開発元のDark Potato Studiosは本学校の卒業生が立ち上げたスタジオだ

「Invinsible Knights」(台湾、Keystone Studios)
台北ゲームショウ2011の記事でも紹介したハイスピード横スクロールアクション。神速の騎士を操作し、障害を排除して時間内にゴールを目指す。ブーストボタンを離すタイミングで最高速度の維持時間が異なるなどゲーム性も追求されている。今回展示されていた4タイトルの中ではもっとも完成度が高いようで、アンケートでは価格帯についての設問も用意されていたため、発売もかなり近そうだ
「VT」(シンガポール)
4つの“タレット”と呼ばれるオプション兵器を設置し、迫り来る敵を打ち倒す縦スクロールシューティング。設置方法は○×△□ボタンに割り当てられたマニュアル操作と特定のフォーメーションをワンプッシュで設定できるセミオート操作が用意されている。現時点では敵がワンパターンな攻撃しかしてこないため、設置というゲームシステムが活きていないのが残念

「Page Technica」(シンガポール、Red Hare Studios)
ファンタジックな世界で魔法使いが敵を倒しながら進む横スクロールアクション、と書くと一見普通のゲームのようだが、本作の特徴はゲーム画面内に浮遊している文字。この文字を集めて言葉を作ることでさまざまな魔法を使うことができる。文字数の長い単語を作ることで強力な魔法を使えるがそのためには短い文字列の魔法を使って熟練度を貯める必要がある
「Phase Shift」(シンガポール、Dark Potato Studios)
インベーダー風のシューティングゲームだが、本作では天井と地上を自由に行き来し、敵の弱点となる部分を突いて攻撃することがセオリーのゲームとなっている。前面から攻撃してくる敵は背面から攻撃、逆に背面からの攻撃を防ぐ敵は敵弾をかわして前面から攻撃するなどの独自の戦略性がある。なお本作のみPSP用



■ SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏ミニインタビュー

AGS初日に行なわれたセレモニーで笑顔を見せるSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏

 Asia Game Showレポートの締めくくりとして、アジア取材ではおなじみのSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏のミニインタビューをお届けしたい。安田氏は初日のAGSのセレモニーに出席した後、そのまま台湾のローンチイベントに参加するために空港へという過密スケジュールだった。そうしたタイトなスケジュールの中、安田氏はミニインタビューに応じてくれた。

――12月23日、PlayStation Vitaがアジアでも無事に発売されたわけですが、11月に行なわれた予約も即日完売と伺っています。手ごたえのほどはいかがでしょうか?

安田哲彦氏: ご存知のようにタイでの水害があったものですから、数が揃うかが不安だったので、本当は100の予約を取りたいところを50にして対応しました。予約してもお渡しできないとお客様ががっかりしちゃうので。そういうことをしながらの時期だったのですから、予約活動も順調というよりはセーブしながらやらせていただいたのが本当のところです。

――12月22日には、PS Vitaの3Gサービスに関して、CSL(one2free)との提携を発表されましたが、複数ある香港の携帯電話会社の中からなぜCSLを選択したのでしょうか。

安田氏: やっぱり、1番前向きにうちと組んでやって頂きたい、ということで、リアクションもすばらしく速かったですし、我々の細かなサービスに対してお答えを頂いたものですから、1番これから組むにふさわしい会社なのかな、ということで決定しました。

――3Gの料金体系は日本と同じ従量制ですが、日本が時間制なのに対して、香港ではデータ量で制限する形になっているんですね。

安田氏: そうですね。まずは今スタートするわけなのでお客様のリクエストを見ながら変えるところは変えていきたいな、と思っています。ただ、すべてを変える、ということではありませんが。

――今回、PS Vitaと同時発売の中文版タイトルは「Uncharted: Golden Abiss」のみでしたが、今後PS Vitaの中文化についてはどのように考えていますか?

安田氏: 同時発売タイトルはそうですね。ただ、みんな一生懸命徹夜でやってるからすぐ出てくると思いますよ(笑)。ただ、発表させていただくには確実という言葉がないといけないので。
(筆者注:インタビュー後のステージイベント等で、「GRAVITY DAZE」は欧米版タイトルの「GRAVITY RUSH」として中文版を発売。また、「みんなのGOLF6」の欧州版「EVERYBODY'S GOLF 6」が中文化されることが発表された)

――PS3のほうでも10月に「ファイナルファンタジーXIII-2」、11月に「ストリートファイター X 鉄拳」の中国語ローカライズが発表されていますが、今後もサードパーティさんと連携してのローカライズ活動は加速していく予定ですか。

安田氏: もちろん、アジア地区はそういうことが大事だと思いますので、サードパーティさんと一緒に組んでマーケットを徐々に広げていくということをしたいなと思います。

――最後にメッセージをお願いします。

安田氏:日本で人気の商品はアジアでも当然人気が出るものです。日本にもSCEJという会社がありまして、私は昔、そこの前身を作った者ですから、これからも日本と連携してやっていくつもりです。日本は携帯ゲーム、我々のPSPなどが凄く人気でいまだに右肩上がりで売れていた商品ですから、これからも期待が持てると思っています。

――ありがとうございました。

【SCEHブース】
SCEHブースではFacebookを利用したキャンペーンを行なっていた。スマートフォンで左写真のトロフィーの埋まったQRコードを集めてFacebookに接続するとPSグッズがもらえる権利が得られる。ただし、USBメモリ(500香港ドル相当)がもらえるゴールドトロフィーの発見は相当の難関だった。また、右写真の記念写真ブースでは、「ストクロ」や「リトルビッグプラネット」の画面をバックに記念撮影ができる。ただし写真はFacebookのSCEH公式ページのアルバムに保存される

3Dディスプレイの試遊台も2台用意されていた。通常展示の中では「アンチャーテッド 砂漠に消えたアトランティス」では展示されている中の1台が3D対応だったPS3、Xbox 360、Windowsに対応した体感型ゲーミングチェアー「GYROXUS」。対応ゲームも幅広く、「H.A.W.X」、「グランツーリスモ5」、「HALO」シリーズ、「アンチャーテッド」シリーズなどに対応。お値段はAGS特別価格で3,000香港ドル

Amazonで購入

(2011年 12月 28日)

[Reported by 岩井省吾]