東京ゲームショウ 2011レポート

Take-Two、「Bioshock Infinite」開発者インタビュー
早くも日本語トレーラーを公開! 奥深いゲーム性も徐々に明らかに


9月15日~18日 開催(15日、16日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


「Bioshock Infinite」のポスター。時代設定である1912年の雰囲気が見事に再現されている

 今年の東京ゲームショウで意外なサプライズだったのがTake-Two Interactive Japanの「Bioshock Infinite」のデモンストレーションだ。発売時期は欧米で2012年中、日本では未定という状況のため、残念ながら会場ではSCEブースでの短いトレーラーの公開のみだったが、日本のメディアに向けては、特製の日本語版のビルドを使ったデモを行ない、さらにインタビューにも応じるなど、日本市場を重視する姿勢を示した。

 これはTake-Two Interactive傘下のRockstar Gamesはもちろんのこと、2K Gamesブランドの「Bioshock」シリーズでも未だかつてなかったことだ。日本で成功を収めた「Grand Theft Auto」シリーズに続いて、「Bioshock」も日本市場に根付かせようという意思を感じさせる出展だった。

 本稿では今回のデモの内容が丸々収録されたトレーラーと、日本語吹き替えが収録されたトレーラーの2本の紹介と、Irrational Gamesで「Bioshock Infinite」デザインディレクターを務めるBill Gardner氏のインタビューの模様をお届けしよう。




■ まずは日英2つのトレーラーで「Bioshock Infinite」の次世代アクションをチェック!

概要説明を行なうTake-Two Interactive Japanの森田氏
トレーラーのラストシーン。涙を流して別れを悲しむエリザベス
コロンビアにおいてスカイトレインは、物流インフラであると同時に、生活インフラともなっている。人々はスカイフックを手に着け、自由気ままに移動している

 今回出展されたデモは、内容的にはE3とまったく同じ内容で、主人公ブッカー・デュイットが、ヒロイン エリザベスと共に、彼女自身の特殊能力ティアーの謎を解くために、超愛国主義者の集団「The Founders(ファウンダー)」のリーダーComstockの家に赴くというもの。

 雑貨での楽しいひとときから、エリザベスの持つ不思議な力“ティアー”との遭遇、「The Founders」と「Vox Populi」との対立シーン、ティアーや新要素スカイラインを交えたハイスピードな空中戦、そしていざComstockの家へというところでエリザベスを15年幽閉している機械仕掛けの怪鳥“ソングバード”にインターセプトされ、ブッカーはぼこぼこに倒されて、エリザベスは再び囚われの身となり、涙の別れとなる、という展開。

 その解説については、E3レポートで1度まとめており、下記掲載のトレーラーで丸々公開されているので、ここではあえて繰り返さない。まずはそちらをご覧いただきたい。カスタム版「Unreal Engine 3.0」を採用したハイクオリティのグラフィックスと、ハイスピードなゲーム展開は必見である。

 若干補足しておくと、E3と比較して、ビジュアルやメニュー、そしてオブジェクトやAI、スクリプト等々、全体的なクオリティはしっかり向上していた。発表当初は視界が開けすぎていることから、パフォーマンスの点で懸念があったが、今回見たデモでは、スカイラインを使ったハイスピードバトルや、多くの敵がひしめく広場、あるいはエリザベスのティアーでオブジェクトを発生させ、そこにテレキネシスで浮かせた敵をぶち当てるといった複雑なアクションでも全編なめらかな動きを実現していて、初代「Bioshock」を凌ぐ快作に仕上がりそうだという確かな手応えを得ることができた。

 さらに、先日お知らせした日本語吹き替え版についても早くもトレーラーが公開されている。こちらはE3トレーラーのダイジェスト版となっており、吹き替えの内容もデモで聞いたものとは一部が異なっており、まさに試行錯誤を感じさせるが、やはりこのスピードバトルは吹き替えがマッチすることを実感させてくれる。ぜひ合わせてご参照いただきたい。


【「Bioshock Infinite」 E3 2011 Gameplay Trailer】
E3で公開されたものと同じレベルを収録したトレーラー。15分の大作となっているのでたっぷり楽しんでほしい

【「Bioshock Infinite」 TGS Gameplay Trailer (Japanese)】

ブッカー・デュイット役の藤原啓治さん、ヒロイン エリザベス役の沢城みゆきさんの声が収録されている。



■ エリザベス、ビガー、スカイライン、ストーリーなどなど気になる要素を聞いた

インタビューに応じていただいた「Bioshock Infinite」デザインディレクターBill Gardner氏
「Bioshock」シリーズは、アメリカ独自のエクセプショナリズム(アメリカ例外主義)が根底にあり、今回もカムストック率いる「The Founders」に濃厚に感じられる。それに反発するのが「Vox Populi」で力を持って制圧しようとしている
エリザベスの特殊能力ティア。イベントシーンでは自らをテレポートしていたが、基本は無から有を生み出す特殊技能となっている

――今回見たデモは、E3の時と比べてかなりブラッシュアップされていましたね。現在開発はどのぐらいまで来ているのですか?

Gardner氏: 2012年の発売までにまだまだ変更、改善していくつもりです。エリザベスがティアやツールを使うことでどう世界が変化するか、インタラクションまわりが進化する予定です。

――「Bioshock」と変わったところ、変わっていないところは?

Gardner氏: 北米でも同じような質問をよく受けますが、いつも「Same but Different(同じだけど違う)」と答えています。全体的なフィーリングは似ているが、エリザベスの取り巻くコロンビアの環境は、ラプチャーよりもずっと大規模なものになっている。より多くのツールがあったり、武器の種類があったり、ビガーもある。ラプチャーは閉ざされた世界だったが、コロンビアはもっともっと広い空間が舞台となります。コロンビアには、スカイラインもありますし、一緒に旅をする友達であるエリザベスという存在もあります、よりエキサイティングで、より大規模なものになっています。

――デモでは主人公のブッカーがテレキネシスを使っていましたが、今回はラプチャーが舞台ではないのでプラスミドは使えないはずですよね。これはどういう設定で使えるのですか?

Gardner氏: ビガーがプラスミドと同じ扱いになっていて、前作と同じ感覚で、前作同様に武器と同時に使えるシステムになっている。ビガーは、何をするものなのか、目的が特定のものになっているという点でより重要になっている。プラスミドは攻撃手段として汎用的に利用できたが、ビガーはより多くの局面で特定の目的のために使用するようになっている点が大きな違いです。

 機能面でいうと、プラスミドは注射したが、ビガーはドリンクになっている。デモでもバッキングブロンコという瓶を拾っていたと思うがあれを飲むことによってビガーを使うことができます。バッキングブロンコでオブジェクトを持ち上げることができますが、単独で使うだけでなく、組み合わせて使えるようになっている。たとえばエリザベスのティアで、カーゴ(貨物)を取り出して、そこに敵を当てて倒すなど。より幅広い使い方ができるようになっています。

――エリザベスのティアはどのようなシステムになっていますか? デモの途中でブッカーがロケット砲を要求して、エリザベスが拒否するシーンがありましたが。

Gardner氏: 基本的にエリザベスは主人公と行動を共にするわけですが、エリザベスは常にどうやったらブッカーを助けられるかを考えています。主人公はエリザベスに対してあれを出してほしいとかこの武器を使いたいと要望を出すことができますが、一度にいくつも出したり、連続して使ったりということはできません。一度ティアの力を使った後はクールダウンする必要があります。ですので、プレーヤーには多くの選択肢が与えられるが、同時にその使い方には注意しなければなりません。

――「Bioshock Infinite」の世界コロンビアの生活インフラになっている“スカイライン”はどういう原理で高速移動を実現しているのですか?

Gardner氏: スカイラインは戦いの幅を広げる要素です。スカイフックを使って上下左右に自由に滑っていくことができ、移動中に白い丸が表示されるポイントがあるので、そこに飛び移ることができます。スカイフックの入手方法はまだ明かせませんが、重要なアイテムなので比較的初期の段階で入手できると思います。

――「Bioshock Infinite」は「The Founders」と「Vox Populi」が争うコロンビアという世界で、エリザベスを救出するというのが基本設定になっていますが、どちらかに肩入れしたり、住人たちを殺したりすることはできるのですか?

Gardner氏: 殺せます。街にはいずれかに所属するメンバーもいれば、一般の住人たちもいます。彼らにいきなり襲いかかられることはないですが、こちらから襲いかかることはできます。しかし、もし無辜の住人を殺すと、後々に何かの機会が失われてしまったり、影響があります。デモでもエリザベスを冷やかす住人がいましたが、今回は何もしませんでしたが、彼を攻撃することもできます。プレーヤーの選択によってゲーム展開が変わっていくのです。

――「Bioshock Infinite」は「Bioshock」のようにマルチエンディングになるのでしょうか?

Gardner氏: それはまだ決定していません。「Bioshock」ではプレーヤーの行動により複数のエンディングを用意することが適切ではないかと考えましたが、「Bioshock Infinite」では2つの派閥があって、全体のストーリーもありますので、それらに対して複数のエンディングが適切かどうかはまだ判断しかねています。

――私は初代「Bioshock」のメインテーマは“人間愛”だと理解しています。今回もブッカーとエリザベス、エリザベスとソングバードというリレーションの中で、そうした重いテーマに正面から取り組んでいくことになるのでしょうか?

Gardner氏: その視点は興味深いですね。1つのテーマを挙げろというと難しいですが、ブッカーとエリザベスの関係性がストーリーの上で重要になってくるのは間違いないと思います。思想の異なる派閥同士の戦い。方や、アメリカ伝統のエクセプショナリズムを全面に振りかざし、もう片方はそれに反対する。異なる理想やイデオロギーが存在し、「Bioshock」でもそうだったが、そうした中でプレーヤーはいかにしてロールするか、ゲームに結びついていくかが重要になってくると思います。

――「Bioshock」では武器の使いこなしがひとつの魅力になっていたが、「Bioshock Infinite」では武器のバリエーション、カスタマイズ、弾薬などはどうなるのか?

Gardner氏: 基本的には「Bioshock」で実現していた武器の使いこなしをさらに広げて、おもしろいものにしていきます。ビガーもありますし、ノストラムと呼ばれるアイテムによってプレーヤーの状態を変えたりすることができます。RPGとして前作より深みのあるものになっている。

 武器の種類については、海から空へと環境が大きく変わったことでそれによって使える武器も大きく変わっています。たとえば今回はロケットランチャーなどの強力な武器もあります。ビガーの種類も多いです。武器と、ビガー、ティア、スカイラインを組み合わせることで新たなバトルの世界が開けます。

――「Bioshock」シリーズのPlayStation Vitaへの展開についてはどのように考えていますか?

Gardner氏: 現時点で明確な回答はできないが、PS Vitaは非常にエキサイティングなプラットフォームだと思いますし、「Bioshock」を提供する機会が得られることを私も期待しています。

――日本のユーザーに対してメッセージをお願いします。

Gardner氏: 今回、「Bioshock Infinite」が日本でもリリースされることが決まって非常にエキサイティングなことだと感じています。今まで以上の努力をしている。日本のマーケットに対して力を入れていることを示すために、今回、お見せした 日本語吹き替え版に加えて、英語音声で日本語字幕という選択も可能になっています。日本のユーザーにも気に入ってもらえる作品になると信じています。ぜひ日本の皆さん、ゲームに対する感想をお聞かせください。よろしくお願いします。

――ありがとうございました。


【インゲームポスター】
「Bioshock」シリーズの魅力であるレトロポスター。ビガーのポスターが2枚に、武器、そしてソングバード。このポスターによればソングバードは「The Founders」サイドのキャラクターのようだ

【スクリーンショット】

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(2011年 9月 19日)

[Reported by 中村聖司]