【HANGAME EX 2011】3本の新作MMORPGを発表

「ラグナロクオンライン」のキム・ハッキュ氏が2DMMORPGを開発中


5月13日~14日 開催

会場:韓国・済州島 新羅ホテル



 韓国NHNとNHN Japan株式会社が開催している新作発表会「HANGAME EX 2011」において、韓国で今後展開予定の新作が6タイトル発表されている。本稿ではそのうち、MMORPGの3タイトルと、野球ゲーム1タイトルを紹介する。時期は未定ながら、いずれもNHN Japanが日本でのサービスを予定している。




■ 「グラナド・エスパダ」以来8年ぶりの新作!「Project R1」

IMC Games代表のキム・ハッキュ氏
3D化したものをまた2Dに戻してドット絵で作業するという職人気質な開発

 「Project R1」は、韓国IMC Gamesが開発中のMMORPG。まだ開発は初期段階で、サービス時期は未定としている。

 IMC GAMESは、「ラグナロクオンライン」の開発者として知られるキム・ハッキュ氏が率いるゲームデベロッパー。2003年に「グラナド・エスパダ」を開発して以降のタイトルがなく、「Project R1」は実に8年ぶりの新作となる。キム氏は「8年間、『グラナド・エスパダ』を作りながら、次をどうするかずっと考えては潰してというのを繰り返してきた」と、長い試行錯誤があったことを語った。

 「Project R1」の魅力は“かわいさ”。「キュートという単語では片付けられないものを含む、身近でディテールが生きている感じのもの」を目指しているという。ゲームは俯瞰視点で、キャラクターは2Dグラフィックスで描かれている。これは「ラグナロクオンライン」のデザインにとても近い。

 しかしながら制作手法は独特だ。キム氏は、「細かな表情は2Dでしか描けない。しかし表情も見えつつ、アクションもできてディテールもしっかりしたものを作るのは2Dでは難しい」という。そこで本作では、2Dで描かれたイラストを2Dキャラクターに描き起こし、それをいったん3Dでモデリング。それをふたたび2Dキャラクターにしてドット単位で描き直し、アニメーションを付けている。「みなさんに長く愛着を持ってもらい、1年以上楽しめる自分の分身を可愛く表現するには、従来の方法で表現できない。複雑な作業で、ドット絵職人が心血を注いで作った」とキム氏は述べている。

 またキム氏は本作のこだわりとして、「プリティーブランク」という言葉を挙げた。「MMORPGでは、シナリオやクエストをユーザーに体験させるため、ゲームの中にたくさんのものを詰め込んでいる。私はそれよりも、ゲームの中に何かブランク(空白)を残しておく。ユーザー同士がたくさんのインタラクションをし、関係を作っていけるか。それがMMORPGの制作者としての役割だと思っている」と語った。

 具体的なゲーム内容については、「開発は初期段階で、動画はまだ見せられない」とし、数点のゲーム画像を公開するに止まった。キム氏は会場のメディアとその先の読者に対し、「『Project R1』は、プリティーブランクを作るために、職人気質で開発しているということを覚えておいて欲しい」と呼びかけた。


まだ動画はなく、スクリーンショットが3点とロゴ、イラスト公開された。「ラグナロクオンライン」と似た雰囲気のある俯瞰視点のMMORPGになっている



■ 1人で行なう多対多の戦闘から、多人数での大規模RvRへ展開する「アケロン」

Barunson games取締役のパク・ジョンウン氏

 「アケロン」は、韓国Barunson gamesが開発するMMORPG。2011年下半期に非公開のデモンストレーションサービスを行なった後、2012年には韓国でサービスを開始したいとしている。

 Barunson gamesは、「エターナルカオス」や「ラストカオス」を開発したデベロッパー。機械と魔法が混在するファンタジー世界で、機械文明を重視する国と、魔法文明を重視する国の対立を描く。この設定は単なるビジュアルの違いに止まらず、ゲームシステムを含む全てのリソースにわたって影響するという。プレーヤーは各国に2種類ずつ用意された種族を選び、さらにクラスを選んでゲームを始める。

 取締役を務めるパク・ジョンウン氏は、本作を“集団戦略型MMORPG”と銘打ち、グループとグループが戦うという点を強調している。プレーヤーキャラクターは、メインとなるキャラクターのほかに、「Jinn」というキャラクターが存在する。メインキャラクターを補助する存在で、タンカー、ディーラー、バッファーといった役目を果たす。プレーヤーキャラクターのように経験値を得て成長するほか、アイテムを使って強化もできる。

 「Jinn」は「Jinnカード」として、モンスターを倒した報酬などで得られる。アイテムのように出し入れできるが、同時に呼び出せる数には制限があるので、状況やプレイスタイルに合わせてどの「Jinn」を使うかが重要になる。さらに「Jinn」には、攻城戦専用のものや、メインキャラクターと合体して一時的にパワーアップするものなども存在するという。

 そして“集団戦略型MMORPG”を銘打つもう1つのポイントとして、敵も集団で襲ってくる。モンスターは単体では存在せず、常に徒党を組んで現われる。またPvPでは、相手のクラスや「Jinn」が何かを考えてプレイすることが重要になる。1人でも多対多の戦いを、スピーディーに展開できるというのが本作の魅力だ。

 メインキャラクターにも特徴がある。各クラスは使用する武器を変えることで、2種類の役割を果たせるようになっている。例えば「ファイター」は、片手武器を盾を持てばタンクに、両手武器を持てば近距離ダメージディーラーになれる。

 ゲームの目的は、ギルドがさらに集まってできた「ユニオン」が、莫大な利益をもたらす「空中都市」を奪い合うRvR。本作では「空中都市」そのものを奪い合う主戦場のほかに、補給路となる副戦場があり、それら全ての戦場を管理する戦略が求められる。また「空中都市」を他のユニオンの攻撃から守りぬくとポイントが得られ、「空中都市」の機能が拡張されるという特典も用意されている。このほかRvR要素として、中・低レベルプレーヤー向けのRvRゾーンを用意。高レベル向けになりがちなRvRを早くから楽しんでもらい、「空中都市」を奪い合う高レベルプレーヤー向けのRvRに繋げたいという狙いだ。

 こちらもまだ開発中だが、もう少しで動画を見せられる段階まで来ているという。Unreal Engine 3を採用しており、映像には注目が集まりそうだ。パク氏は本作について、「『エターナルカオス』や『ラストカオス』は韓国では失敗したが、欧米やロシアなど海外では成功している。『アケロン』はもちろん韓国でも成功したいが、海外ローカライズ展開もしていきたい」と語った。


海外展開も意識して開発されているMMORPG。見た目は「グラナド・エスパダ」に似ているが、あくまで補助的な存在である「Jinn」とメインのキャラクターという存在に違いがあるという



■ 当初からモバイル連動を掲げる“アクティブMMO”「EOS」

NVIUS代表のキム・ジュンソン氏

 「EOS(Echo of Soul)」は、韓国NVIUSが開発中のMMORPG。2012年第1四半期のクローズドβテスト実施を目指して開発が進められている。

 NVIUSは、オンラインゲームをPC以外のプラットフォームでも楽しめるようにしたいという思いから、ゲーム開発やインターネットサービスに経験豊富な人材が集まって、2009年6月に設立されたデベロッパー。設立から2年も経たない若い会社だが、2010年12月にモバイルアクションRPG「Exceed Soul」をリリースし、技術力の高さを見せ付けている。

 「EOS」はまだ開発初期で、公開できる画面も1枚だけ。同社代表のキム・ジュンソン氏は「夏以降にどんなゲームか公開できる予定」と語った。開発においては、当初からPCとモバイルと連携させたコンテンツとして企画されており、オンライン・オフラインをカバーするモバイルゲーム環境を提供し、ゲームの密度が濃い「アクティブプレイライフ」の実現を目指すとしている。


公開されたスクリーンショットはこの1点のみ。モバイル連動がどう図られ、生活に入り込んでくるかが見所だ



■ 試合結果をリアルタイムにゲームデータへと反映!「プロ野球ザ・ファン」

Wisecat取締役のキム・ジョンヒョン氏

 今回唯一のスポーツゲーム「プロ野球ザ・ファン」は、「スラッガー」を開発した韓国Wisecatが手がける、新たな野球ゲーム。現在は2012年のサービス開始を目指して開発が進められている。「スラッガー」は韓国でも人気の野球ゲームだが、同社取締役のキム・ジョンヒョン氏は「前作の成功に満足せず、より完成度の高いものを追求する」と述べた。

 「プロ野球ザ・ファン」の特徴は、韓国のプロ野球選手のデータをリアルタイムにゲームに反映させた点。打率などの基本的なデータはもちろん、プロ野球の試合結果が、ゲームでの能力やコンディションに反映される仕組みになっており、実際の試合で好調だった選手はゲームでの能力やコンディションが上昇する。さらには投手と打者の選手間の相性までもが、実際のデータに基づいて再現される。

 データの分析機能も搭載。プロ野球のあらゆる記録の中から好みのデータを抜き出せる編集ツールが用意され、独自のチャートを作れる。ユーザーはそれをもって自分の試合を振り返ったり、保有する選手を確認して弱点を分析したりできる。キム氏は「野球の隠れた楽しさも引き出す。野球は好きだがゲームは好きでなかった人にも、これならば関心を持ってもらえるのでは」と語った。

 ゲームは実際に選手を操作するモードのほか、主にチームマネージメントを楽しむため、操作をAIに任せるモードも搭載。選手交代の際には、得点圏打率や得点圏被安打率などのデータも表示されるなど、ここでもデータをフル活用したゲームプレイを提供している。

 グラフィックスにもこだわっており、選手は動きだけでなく顔の表情までも再現。スタジアムからは応援歌も響き、自然なカメラワークでテレビ中継から感じられるダイナミックな動作を再現するという。


実際のプロ野球の結果をリアルタイムにゲームに反映するという、オンラインゲームらしい試み。野球ゲームファンだけではなく、野球ファンを取り込んでいく狙いがある

(2011年 5月 14日)

[Reported by 石田賀津男]