GDC 2011レポート

GDC Smartphone Summitレポート その1

焦点はプラットフォームから具体的なアプリ事例へと変化


2月28日~3月4日(現地時間) 開催

会場:サンフランシスコ Moscone Center



 「GDC 2011」の初日と2日目に、スマートフォン関連の話題を扱う「GDC Smartphone Summit」が開催されている。携帯電話関連のセッションは、2009年までは「GDC Mobile」として開催されていたが、2010年には「GDC Mobile/Handheld」と名前を変え、今年はついにスマートフォン専門枠となった。フィーチャーフォンの枠は完全になくなっており、変化の早さを感じさせる。

 今回は同時に最大3つのセッションが並行して行なわれており、2日間で23のセッションが開かれている。Googleなどのプラットフォーマーを始め、iPhone向けアプリケーションで成功を収めた様々なゲームアプリメーカーが講演を行なっている。ちなみにGoogleは2日目に「Android Developers Day」と称したスポンサーセッションを別枠で開催しており、GDCにかなりの力を入れてきている。




■ プラットフォームの選定は終わり、アプリ開発・販売のアイデアが焦点に

 今年のセッションの内容は、昨年と比べてずいぶんと様変わりした。これまでは、携帯電話やスマートフォンの販売動向を見るようなチュートリアルセッションがいくつかあり、特に昨年はAndroidを始めとした「対iPhoneプラットフォーム」の解説が多く見られた。

 しかし今年はそういったセッションもなく、ヒットしたアプリケーションの開発話や、位置情報ゲームやARゲームの作り方といった、具体的なゲーム開発の話題が最初から展開されている。ゲーム業界としても、iPhoneかAndroidかというプラットフォームの見極めのような段階は終わり、「スマートフォンでどんなコンテンツをどう提供すべきか」というところに関心が移ったようだ。

 しかし、課題もある。GDCの開催は1年に1回で、講演者の応募は約半年前に締め切られている。昨今のスマートフォン業界は、日本でもAndroid端末が急激に増えてきたことでもわかるとおり、半年も経てばまるで事情が変わっている。アプリケーションの開発期間も短いだけに、最新の話を聞くのは難しい。

 また、大ヒットしたタイトルの講演も、かなり広い会場が取られてはいるが、せいぜい半分程度の席が埋まる程度にしか人が集まっていない。一昨年にあったような、iPhone関連のセッションはほぼ満席、といったような熱狂的な雰囲気は、今はもう感じられない。iPhoneやiPadに関してはかなり研究が進んでいるし、Androidは不正コピー問題などプラットフォームに課題を抱えていて提供に踏み切りづらい、というのが熱の入らない理由としてあるようだ。

 また別枠で「Social&Online Games Summit」が開かれている点も影響していると思われる。スマートフォン向けのゲームにおいて、ソーシャルゲームは今もっとも注目を集めている分野であり、そちらにかなり人を取られている印象がある。開発者としても、画期的なアイデアで爆発的ヒットのアプリを生み出すことよりも、比較的マネタイズしやすいソーシャルゲームやオンラインゲームに目が向き始めている、ということなのかもしれない。

 とはいえ、開発者全員がスマートフォン向けアプリケーションの開発に飽き飽きしている、なんていうこともない。ここからは初日に行なわれた講演の中から、いくつかを紹介しておく。




【Tapping Into Innovation - Strategies for Developing Successful Apps】
SmuleのGe Wang氏が、これまでに同社がApp Storeで発売したアプリケーションを紹介。配信後7日間で世界中に広がった、iPhone上にライターの火を灯す「Sonic Lighter」を始め、Smuleを一躍有名にしたiPhoneに息を吹きかけて演奏する「Ocarina」、T-PAIN氏のオートチューンを使った声をiPhoneでリアルタイムに実現する「I am T-PAIN」、ヴァイオリン風の演奏をiPad上で実現する「Magic Fiddle」などが、実演を交えながら紹介された

【The ngmoco:) Live Team Playbook: Life After Launch】
ngmocoのCaryl Shaw氏による講演。バージョン1.0として最初に配信されるアプリを「アーリーローンチ」と呼び、エリアを限定して配信。その後、全世界で公開して、アップデートを行なう「ライブフェーズ」へと移行するという、スマートフォンならではの開発スタイルを紹介。またセールを使った売り上げの伸ばし方や、ユーザーをひきつける手法なども語られた

【Replica Island: Building a Successful Android Game】
GoogleのChris Pruett氏による、オープンソースのAndroidアプリ「Replica Island(邦題: ワンダのレプリカ島)」の紹介。Pruett氏による自主開発アプリながら、ローンチ後103日で100万インストールを突破したというヒット作である。ゲーム開発のポイントに加え、解像度やチップ性能、インターフェイスの異なる端末での対応を説明したほか、評価が極端に割れたり、コメント内容と評価点にギャップがあったりするユーザーからのユニークな声も紹介した

【Angry Birds - An Entertainment Franchise in the Making】
RovioのPeter Vesterbacka氏による、「Angry Birds」の講演。鳥をパチンコのようなもので打ち出すカジュアルなゲームながら、全世界で5,000万回以上ダウンロードされた記録的なヒット作となっている。本作において、ぬいぐるみを作ったり、20世紀フォックスとのタイアップでスーパーボウルにまで登場したりと、アプリケーションの成功だけに留まらないフランチャイズ展開について語られた

【Creating a Social, Location-based Smartphone Game in 5 Weeks】
GoogleのJennie Lees氏。当初、ウォーキングツアーやフラッシュモブ(呼びかけに応じた多数の人が1カ所に集まり、決められた行動を取る)といったアプリを企画したが、Fail fast(失敗と判断したらすぐ断念する)でたたみ、位置情報ゲームを新たに企画。その後も旅行ゲームなどを考えたが、最終的には1つのミニゲームに絞った位置情報ゲームを開発した、という流れが紹介された

(2011年 3月 1日)

[Reported by 石田賀津男]