Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート
今年もユニークな出展が並んだGDC Expo レポート
PS3+有機ELでの立体視を出展。巨大体感アトラクションも登場
GDCは開発者の生の声が聞ける多数のセッションが中心となるイベントだが、もう1つ重要な顔を持っている。世界中のゲーム業界関係者が集うのだから、商談や職探しの場としても最適なのだ。そもそものGDCの規模が非常に大きく、意欲的な開発者が集まる場所だけに、ミドルウェアベンダーを始めとしたゲーム関連企業が売り込むにはこれ以上ない場所といえる。
GDC Expoは、メインセッションが開かれる11日から13日までの3日間のみのオープンとなる。ここには大きく分けて3つのコーナーがあり、1つはオープンなブースに製品を置いて紹介する一般的な出展ブース。2つ目は商談専用のスペースとして確保したクローズドなブースを集めた“Business Center”。3つ目は各社が求人を行なう専門ブースを集めた“Carrer Pavilion”である。
一般ブースには、Sony Computer Entertainment Americaと任天堂がブースを出展し、それぞれゲームの試遊台を置いて自由にプレイできるようになっている。Microsoftは3大ハードホルダーの中では唯一、ここ数年は一般ブースを出していない(ただしBusiness CenterとCarrer Pavilionには出展し、ホールのロビーで試遊台を置いている)。ほかにも、少数ながら日本から出展してきている企業や、全く見たこともないユニークな商品を持ち込んでいるブースもあるので、紹介していこう。
ちなみに今年はGDCでMoscone Center Westが使われていないため、例年はWestの1階で開かれているGDC ExpoもSouthの1階に移動した。全体としての広さは例年とさほど変わっていない。
■ 有機ELでの立体視や「PlayStation Move」を見せたSCEA
SCEAブースでは、先日発表されたプレイステーション 3用モーションコントローラー「PlayStation Move」を体験できる試遊台が数台設置された。デバイスの目を引く形状とあいまって、多くの来場者が取り囲むようにプレイの様子を見ていた。「PlayStation Move」の使用感などについては、先日掲載したファーストインプレッション記事をご覧いただきたい。
ほかにも人気タイトルの試遊台を並べたSCEAだが、ブース端にはPS3を使った立体視システムが2台置かれていた。片方は昨年から時々公開されている液晶テレビを使ったものだったが、もう1つは有機ELディスプレイを使って立体視を実現していた。まだ技術デモながら、実際にPS3を接続して3Dゲームを立体視でプレイできた。専用の3Dグラスが必要なのは液晶でのものと同じで、使用感もほぼ変わらない。画面サイズは液晶よりもかなり小さめながら、綺麗な立体視を実現していた。
ブースで一番人気はやはり「PlayStation Move」 | あまり目立たない置き方だったが、有機ELを使ったPS3の立体視デモも行なわれていた |
「PlayStation Home」やその他の最新ゲームの試遊台も置かれていた |
■ 「モンスターハンター3」などをシンプルに並べた任天堂
対する任天堂は、特に新しいデバイスを置くようなこともなく、WiiとニンテンドーDSの新作を体験できるコーナーを設けた。最も大きく場所を使っていたのは株式会社カプコンの「モンスターハンター3」で、周囲を囲って暗くしたコーナーにソファーを置いてプレイできるようになっていた。他には株式会社トレジャーが開発した「Sin & Punishment: Star Successor(罪と罰2 ~宇宙の後継者~)」も出展していた。
DS用では、GDC会場のあちこちに広告が出ている「WarioWare D.I.Y.(メイドイン俺)」を試遊でき、来場者の人気を集めていた。
任天堂のメイン展示は「モンスターハンター3」 | |
「罪と罰2 ~宇宙の後継者~」の試遊台も設置 | 「メイドイン俺」もかなりの人気だった |
■ 日本からの出展企業など注目ブースを紹介
DropWave代表取締役社長の本城嘉太郎氏 |
2つのハードホルダーを始め、多数のゲーム関連会社を持つ日本だが、GDC Expoでその姿を見ることはそれほど多くない。その中で、株式会社DropWaveが今年初めてGDC Expoに出展していた。同社は「リヴリーアイランド コル」や「NikQ」といったオンラインゲームの開発を手がけるデベロッパーで、最近ではMixiアプリ「わんこのお部屋」を自社タイトルとして配信し、15万ユーザー登録を記録している。
ブースに同社代表取締役社長の本城嘉太郎氏がいらっしゃったので、少しお話を伺った。GDCへの出展理由は、「わんこのお部屋」を海外展開してくれるパートナー探しだという。ブラウザゲームならば自社でFacebookに展開することも可能ではあるが、マーケティングやプロモーションなどに難しい部分があるため、他社と組んでやりたいそうだ。こちらは出展の甲斐あり、好感触を得ているという。
さらに同社は、逆に海外デベロッパーのタイトルを日本に持ち込むビジネスも考えているという。会場に持ち込んだパンフレットにその旨を記述しておいたところ、早速提案があったそうだ。
もう1社、筆者が以前から追いかけているNeuroSkyという企業のブースを紹介したい。同社はヘッドセット型の機器で脳波を読み取り、集中度やリラックス度を数値化した上、PCやゲーム機にデータを出力する「MindSet」というデバイスを開発・販売している。東京ゲームショウにも出展しており、常に人垣ができているほど人気がある。
今年は「MindSet」を使ったソフトウェアがかなり増えていた。例えば、男女2人が装着して、脳波のシンクロ度合いから2人の相性を見るソフトや、脳トレ系ソフトに「MindSet」を組み込み、あまり集中力しすぎずリラックスした状態でゲームが続けられるようゲームのレベルを調整するもの、さらには音楽や映画などを見ている時の脳波データを得てマーケティングに活用する研究など、多岐にわたる内容を複数のパートナーと組んで進めている。
「MindSet」そのものも新型を開発しているという。現在の製品は、ヘッドフォンから額に向けて伸びるセンサーがあり、耳の部分にもう1つのセンサーがある。ここからヘッドフォン部分をなくし、耳のセンサーをクリップ型にすることで、センサーに特化して簡略化・軽量化を図っている。価格も現在200ドル(約18,000円)するものが50ドル(約4,500円)程度まで下げられるのではないかという。ここまで価格が下がれば、企業や研究者だけでなく、コンシューマーゲームにも持ち込める範囲になってきそうだ。
ちなみにこの脳波センサーを応用した玩具はこれまでにもいくつか発売されている。昨年、米国で発売された「MindFlex」というゲームは、初期生産分が完売して再生産がかけられるほどの人気で、まもなく日本でも発売される予定だという。脳波を使って土台にある空気穴を操作し、風で浮かんでいるボールをうまく運んでいくという玩具で、価格は約100ドル。
男女の脳波が合うと、紫と黄色で表されているブロックの色が両方赤くなる | iPhoneとも連携する。「MindSet」はBluetoothで通信するが、iPhone連携はまだ実験中なので、外部にアダプタをつけている |
新型「MindSet」のプロトタイプ。軽量化され価格も大幅に下がるため、今後の展開が期待される | 米国では売り切れるほどの人気となった「MindFlex」。日本にもまもなく上陸予定 |
■ 究極のバーチャルリアリティアトラクション? などユニークな出展
会場を回っていると、時々ユニークなものに出会うことが多いGDC Expo。今年も例年に勝るとも劣らない珍品があった。
Virtusphereという企業が出展したのは、高さ3mはある巨大な球体だ。この中に人が入れるようになっており、中で歩くと球体が回転して前後左右に動ける。球体の動きはFPSのゲームに送られ、ヘッドマウントディスプレイに映る画面は自分が歩いた方向へと動く。球体が回転してくれるので、仮想世界をどこまでも(ゲームが許す限り)歩いていけるというわけだ。銃もセットになっており、登場する敵を撃って倒せる。
このシステムは「Unreal Engine 3」や「Quake 4」などのいくつかの3Dエンジンに対応しており、技術的にはどんな3Dアプリケーションにも対応できるとしている。価格は45,000ドル(約410万円)で、アミューズメント施設や、軍での訓練用などに販売するという。
この球体部分が動いて、中で歩ける。イメージはハムスターっぽいが…… | 中でヘッドマウントディスプレイをつけると、体感型のFPSをプレイできる |
Parrotの「AR.Drone」という製品は、iPhone/iPod touchでヘリのようなものを操作できるもの。4枚のプロペラが付いたマシンを、iPhone/iPod touchの加速度センサーで前後左右に動かせる。高さ調節や回転、前後移動はタッチパネルで行なう。マシン側にはカメラが内蔵されており、その映像がiPhone/iPod touchのスクリーンに映し出され、映像を見ながら操作できるのもユニークだ。
さらにアプリ側には、カメラ映像に仮想の飛行機やロボットなどが表示され、機銃やミサイルを撃って戦える。いわゆる拡張現実を使ったゲームで、実際に空を飛んでいるマシンから送られてきた映像をベースにしているところが面白い。複数の「AR.Drone」があれば、対戦プレイも可能だという。価格はまだ未定だそうだ。
右の写真で右側に浮いている平たい物体が「AR.Drone」。左にいる人がiPhoneで遠隔操作している |
■ その他のブース
(2010年 3月 15日)