Taipei Game Show 2010現地レポート

台湾ホビーショップ特別レポート Ver.2010
バンダイ台湾に聞いた台湾ホビー市場
新旧の商品が混じり合う独得の玩具空間が台湾風

2月5日~9日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人 150台湾ドル
    子供 100台湾ドル


 台湾では「日本の玩具・グッズ」が大人気だ。ホビーショップや書店には日本のコンテンツが店の面積の多数を占めている。台湾で日本のコンテンツはどういった人気を博しているのか、またどういったお店でグッズを購入しているのか。本稿では「ホビー」にフォーカスを当てたレポートをしたい。

 今回は2008年の台湾ホビーショップレポートに続く第2弾として、台湾でバンダイの商品を展開するバンダイ台湾の担当者から台湾のホビー事情を取材し、さらに前回も訪れた店舗に追加取材を行なった。

 台湾の玩具や模型、フィギュアなどは正規輸入品、並行輸入品が混じり合い、さらに日本だけでなく、中国、米国など様々な国から商品が入ってくる独特の商品ラインナップとなっている。台湾バンダイの取り組みと合わせて、高年齢層のユーザーをメインターゲットにした“台湾オタク文化”の2面から台湾のホビー事情をレポートしたい。



■ 日・米・中各国のコンテンツが届く台湾。次の鍵は中国キャラクターのグッズ展開

ディレクター兼ゼネラルマネージャー中村真也氏。上海や香港でも勤務し、今年から台湾に来たという
マネージャーの広理真一氏は3年前からバンダイ台湾に勤務しているとのこと

 バンダイ台湾はバンダイナムコグループの玩具や模型などをアジアで販売するバンダイ香港の子会社であり、台湾地域での玩具・模型を中心に販売とマーケティングを行なっている。バンダイ台湾として設立されたのが2003年で、現在の社員は8人である。今回は、バンダイ台湾の日本人スタッフであるディレクター兼ゼネラルマネージャー中村真也氏とマネージャーの広理真一氏に話を聞いた。

 バンダイ台湾では代理店・問屋を通じた一般的な流通だけでなくコンビニなどのチャネルでも商品を展開している。バンダイ台湾の年間売り上げは日本円上代で換算して約30億円。市場規模としては、台湾のおもちゃ市場は並行輸入や海賊版などもあり推定であるが年間150億円の市場となっており、数字上の売り上げでは5分の1を占める。

 台湾の玩具店の最近の流れとしては、中国のおもちゃも増えてきたという。中国の子供向け番組が台湾でも放映されるようになり、これらの商品が店頭に並ぶようになっている。現在は「ゴールデンヒーロー」、「アーマーヒーロー」といったヒーローが戦う、“戦隊もの”のような特撮番組の商品が、玩具売り場に並んでいる。ベルトや武器などヒーローと同じ装備品を販売する「なりきり玩具」をメインにしており、日本の戦隊ものとよく似た商品展開だ。

 こういった中国コンテンツの進出の流れを受けて、バンダイ台湾では「喜羊羊(シーヤンヤン)」という中国製アニメ番組の商品展開を行なっている。今後は中国発キャラクターの商品も増やしていく方針だ。

 ちなみに、台湾でバンダイのおもちゃが販売されているのは主にデパートである。さらに文房具とおもちゃを販売する小さな玩具店の「文玩店」が多く、玩具模型店と合わせると台湾全体で、約1,300店舗あるという。ガンダムのプラモデル(ガンプラ)・コレクショントイのような高年齢層をターゲットにした専門店は小規模なものが多いが台北だけでなく、台中、高雄にもある。一方、「トイザらス」のような大型の玩具店は台湾ではまだ少ない。

 バンダイ台湾での商品の発売スケジュールは、日本と比べると商品によってまちまちである。ガンプラはアニメ番組の放送などに左右されない形で日本とほぼ変わらないタイミングで発売される。ある程度高年齢層をターゲットにしている商品であることと、展開スピードを重視するため、日本語の説明書と日本語のパッケージをそのまま使い販売している。

 低年齢層向けの商品は、TV放送と連動して商品が販売される。「仮面ライダー」シリーズや「戦隊もの」は日本から2年遅れで中国語版が放映されるスケジュールになっており、このスケジュールに合わせて中国語版のパッケージ、説明書を付けた形で販売する。女児向けのアニメ番組「プリキュア」シリーズは日本からは3年遅れのスケジュールとなっており、こちらも中国語版で発売される。

 ガンプラ、TV番組連動商品以外で人気を集めているのが、「聖闘士星矢」の商品だ。日本と比べて商品を陳列する玩具店も多いという。日本でも4月からアニメ化される三国志演義をモチーフとした低年齢向けのガンプラ「BB戦士三国伝」シリーズが高い人気を集めている。日本と同じように「仮面ライダー」シリーズや「戦隊もの」の商品も好評だ。

 日本の商品展開と異なる傾向として「BEN10」というキャラクター商品の好調が挙げられる。「BEN10」は米国のカートゥーンネットワークで放映されていた番組で、主人公の少年BENが10種類のエイリアンヒーローに変身できる腕時計を手に入れ、宇宙から攻めてくる侵略者や地球の悪人と戦うというストーリーだ。なりきり玩具である腕時計には、エイリアンのアクションフィギュアを乗せると、腕時計が発光しサウンドを発するギミックがある。「BEN10」のグッズはアジア地域ではオーストラリアが最も好調だが、台湾や香港でも人気商品となっている。

 この他、玩具販売をサポートする形で行なっているイベント活動としては、台北中心にデパートの前でのアクションと握手会という構成のヒーローショウがある。また、バンダイ台湾主催の「ガンプラEXPO」と呼ばれるガンプライベントも毎年行なっている。キャンペーン関連では昨年はお台場に登場した「1/1のガンダム見学ツアー」も全日空と協力して開催したという。また、コンビニエンスストアでの小さなフィギュア商品の販売も積極的に行なっている

 バンダイ台湾のディレクター兼ゼネラルマネージャーを務める中村氏は香港や上海にも勤務した経験から「台湾は日本、米国、中国と他の国以上に様々なコンテンツを受け入れる傾向がある」と分析する。近年の傾向として中国産コンテンツが増えており、番組のキャラクターをバンダイの商品として展開できればと考えている。アジア地域を見ると、積極的に文化を受け入れる台湾は、これからのアジア地域でのキャラクター展開を占うことができる地域だという。

 台湾市場の面白さとしてバンダイ台湾マネージャーの広理氏は「特に高年齢層の台湾のユーザーは“日本の商品が本物”という視点がある」と語る。中国工場で生産する商品の場合は中国語のパッケージで販売することもできるが、あえて日本語版パッケージで販売する方が台湾のファンは喜ぶ。コレクション性の高い商品などは「日本ブランド」が重視される傾向にある。

 台湾では大規模なコスプレイベントが毎年開催されるなど「マニア」的な活動をするファンも多く、他国と比べてみても日本のような熱心なファンが多いとのことだ。中村氏は「他国でもキャラクターが好きという熱意は感じられるが、台湾ではそこからさらに『日本が好き』という想いも強く感じられます」と語る。

 今回、台湾バンダイを取材してみて、日本のコンテンツを積極的に受け容れる台湾という市場を感じることができた。中国産コンテンツへの商品展開は今年から本格始動ということでこちらも注目していきたいところだ。


左が北米・アジアで人気の「BEN10」のグッズ。中央が中国のアニメ作品「喜羊羊(シーヤンヤン)」のグッズだ。バンダイ台湾のスタッフは現在8人だという
バンダイ台湾ではたくさんのバンダイの商品が展示されている。大きなガンダムなどイベント用のアイテムも展示されていた



■ 抱き枕から20年前のおもちゃまで。混沌として魅力的な台湾ホビー事情

「TAMASHII NATION CABINAT」が設置された「普雷伊(プレイ)」。店内にも大きなガラスケースに商品が陳列されていた
「GUNDAM BASE TAIPEI」。巨大なガンダムエクシアが来場者を迎える
創業30年という愛瑜模王

 今回はバンダイ台湾の取材と共に、2008年の台湾ホビーショップレポートの続報として台北のホビーショップをまわってみた。今回も専門店が中心だが、台湾のホビー市場の一面を見ることができた。

 台北では、熱心なファン向けの店舗が建ち並ぶ場所として、台北駅の地下街が名高い。ここには台北でゲームを中心に展開するチェーン店「普雷伊(プレイ)」の玩具専門店があり、店頭に「TAMASHII NATION CABINAT」と名付けられた、バンダイコレクターズ事業部が展開する商品を展示するスペースが用意されている。2008年にスタートしたバンダイコレクターズ事業部の企画商品は、「ガンダムOO(ダブルオー)」など最新の作品から、「コンバトラーV」、「ゲッターロボ」など1970年代のロボットアニメまで幅広く、濃いラインナップで商品を展開している。「TAMASHII」という言葉は、「超合金魂」、「ROBOT魂」など、メーカーのこだわりを象徴するキーワードとして使用されている。

 普雷伊の前に設置された「TAMASHII NATION CABINAT」で目をひくのが「聖闘士星矢」のフィギュアシリーズ「聖闘士聖衣神話」の商品だ。限定商品なども展示され、日本の専門店でもなかなか見られない濃いラインナップを実現している。普雷伊では店内でも1コーナーがまるまる「聖闘士聖衣神話」で、改めて台湾での人気を実感させられた。店内には日本で入手できるコレクター商品、プラモデル、そして食玩が所狭しと展示されており、日本の専門店でもここまで充実しているところはあまりないだろう。

 台北駅の地下街には並行輸入による玩具店も多数ある。店頭にカプセル式自動販売機を並べる店や、同人誌やグッズなどマニアックな商品を扱う店も多い。ある店には「抱き枕カバー」を1コーナーとしてまとめて展示していた。並行輸入品を扱う店では商品の供給量、在庫が不安定なためか、数年前のフィギュアが最新の商品と一緒に並んでおり、ラインナップの混沌ぶりが独特の雰囲気を生み出していた。

 次に訪れたのが「GUNDAM BASE TAIPEI」だ。バンダイの直営ショップで、「マスターグレード」や「BB戦士」などのガンプラ、「モビルスーツ イン アクション」や「ROBOT TAMASII」などのアクションフィギュア、さらには「HY2M エアショックバトル 1/12 ビームサーベル」といったグッズまで所狭しと並べられている。巨大なガンダムの模型や、ジオラマも展示されており、ガンダムファンならば興奮必至の空間となっている。ちなみに、「GUNDAM BASE」は全世界に日本と韓国、台湾の3カ所しかない。これほど充実した店舗は世界でも少ない。

 筆者は「GUNDAM BASE TAIPEI」で目をひいたのがユーザーが改造を施した「オリジナルガンプラ」だ。作品の横には制作者の名前と年齢が展示されたプレートが置いてある。きれいに彩色され、オリジナルの武器を持っていたり、各部を改造したり技術の高さが感じられる。詳細を確認できなかったが、これらの展示作品は世界的に開催された「ガンプラ改造コンテスト」の応募作だという。台湾からは60才~8才まで、200点の応募があったという。

 「GUNDAM BASE TAIPEI」で最も売れているのが高年齢層をターゲットにしたガンプラ「マスターグレード」シリーズ。「BB戦士三国伝」はそれに次ぐ人気を獲得しているという。「GUNDAM BASE TAIPEI」では玩具の他、ムックやDVDも入手できる。こちらは輸入代理店を通じて販売しているという。ここに来れば「ガンダム」の様々な関連商品を手にすることができるのだ。

 最後に向かったのが台湾ホビーの最もディープな空間といえる台湾の繁華街、西門町にある「萬年商業大楼」である。萬年商業大楼はいくつものテナントが営業しているビジネスビルだか4Fにはホビーショップが集中しており、“台湾でのオタクの聖地”と呼ばれているのだ。

 今回、この区画で最初期から営業しているという「愛瑜模王」というホビーショップで話を聞くことができた。この店は30年前から営業しており、様々な国の玩具を輸入販売しているという。古いおもちゃを販売しているところが大きなセールスポイントで台湾各地からユーザーが訪れるとのことだ。

 最も古い商品は、店の奥のガラスケースに展示しており、20年以上前のものだ。見せてもらうことができたが、「ダグラム」、「バクシンガー」といったアニメ作品から、タカラのオリジナル玩具シリーズ「ミクロマン」など、筆者が子供の頃に発売されていたようなキャラクターのグッズが展示されていた。むき出しのものが多かったが、中には箱までもちゃんととってあるものもあった。カタログ的な楽しさよりも昔を思い出させるグッズが多く、思わず細かくチェックしてしまう。店ではこれらの商品をプレミアム価格で販売しているという。

 愛瑜模王をはじめとして、萬年商業大楼の店舗は台北地下街の店舗をさらに濃縮したような雰囲気が魅力だ。通路は人1人がやっと通れるような狭さで、天井近くまで商品が積み上げられている。最新の商品のすぐ下に10年前のプラモデルの箱があったりと商品を探すのには向かないかもしれないが、偶然の出会いが楽しい場所だ。子供の頃に入手できなかったおもちゃが店の奥に眠っているような幻想を抱かせる、「おもちゃ好き」にはたまらない空間になっている。秋葉原や大阪日本橋など日本でもマニアックなホビーショップは多いが、日本のホビーファンにぜひ訪れてもらいたい空間である。


TAMASHI NATION CABINATでは限定商品も展示されていた。「超合金魂」シリーズの最新作や、「プリキュア」のフィギュアなどここ最近発売された商品が中心で、各キャラクターの雰囲気よりもラインナップの多彩さを強調した展示だ
台北駅の地下街はカプセルトイの自販機を多数おいていたり、並行輸入商品中心の店が多かった。右はある店舗の抱き枕コーナーだ
「GUNDAM BASE TAIPEI」ではたくさんのプラモデルの他、日本語そのままの設定資料集などのムック、さらに中文版のアニメDVDなども販売していた
「GUNDAM BASE TAIPEI」ではコンテストに出展した改造プラモデルも展示されていた
ホビーショップが集中している「萬年商業大楼」。どこのショップもあふれるほどグッズが販売されている
愛瑜模王では特別に一番古い時代の玩具を撮影させてもらった。「トライダーG7」、「ゴーディアン」など商品の質以上に懐かしさが魅力のおもちゃが展示されていた

(2010年 2月 10日)

[Reported by 勝田哲也 ]