G-Star 2009現地レポート

新作が続々発表されたMgameブースレポート
ポスト「アラド戦記」を狙うダンジョンRPG「VARIANT」、ハイブリッドRPG「ARGO」をプレイアブル出展

11月26日~29日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン)
学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)

 

 韓国Mgameは、ブース単位としては最大規模となる60コマのブースでG-Star初出展を果たし、ブラウザゲーム3タイトルを含む6本の新作タイトルを発表、内2タイトルをプレイアブル出展した。

 日本ではエムゲームジャパンとして、「ルナティア」、「ナイトオンライン」、「ロストオンライン」等の運営元として知られる同社だが、韓国では自社開発も行なっている韓国大手メーカーの1社だ。ここ数年は新規タイトルに恵まれず、G-Starへの出展も毎年見送っていたものの、今年は夏期に新規タイトル5本を電撃発表し、そのプレイアブルを用意する形でG-Starへの初出展を果たした。

 G-Star初日の26日は、ダンジョンRPG「VARIANT」とハイブリッドRPG「ARGO」の2タイトルの発表会を開催。翌27日にも独BigPointのブラウザゲーム3タイトルの韓国展開を発表したほか、カジュアルゲーム「Animal Warriors」のパブリッシング契約を発表するなど、積極的に発表会を開き、新作タイトルをアピールした。本稿では、Mgameが来期の主力タイトルとして位置づけている「VARIANT」と「ARGO」のインプレッションを中心にお届けしていきたい。

【Mgameブース】
Mgameブースは、宇宙船をイメージした「ARGO」出展コーナーと、ダンジョンをイメージした「VALIANT」出展コーナーにわかれ、連日盛況が続いている。ブースではコンパニオンが“開発者に特訓を受けたゲーム伝道師”として熱心に遊び方を教えてくれた。初出展とは思えない、クオリティの高いブースだった

【ブラウザゲーム記者発表会】
27日には、BEXCOセミナールームにて、Mgameと独BigPointが共同で記者発表会を開催した。Mgameが、BigPointのブラウザゲーム「Seafight」、「Dark Orbit」、「Deepolis」をローカライズして韓国展開するというもの。Mgame CEOのKweon Yi Hyung氏は、「オンラインゲームの宗主国は韓国だが、ブラウザゲームの宗主国はヨーロッパ。韓国のオンラインゲームとヨーロッパのブラウザゲームが出会うことによって、大きいなシナジーが生まれると思い、BigPointと契約することになりました」と挨拶。BigPointからはCCOのNils-Holger Heuning氏が来韓。Mgameはこれから自社でブラウザゲームの開発も行なっていくというが、G-Starでのブラウザゲーム関連の発表はほぼこれのみ。韓国のブラウザゲームはまだこれからといった印象だ



■ 独自開発の「X-Engine」を採用した新感覚ベルトスクロールアクション「VARIANT」

「VALIANT」出展コーナーでは“ダンジョン”の支柱を囲むように試遊台が設けられ、多くの来場者が集まっていた
インタビューに応じていただいたMgameの開発子会社LALA Entertainment室長のWon-Jae Lee氏
ベルトスクロールアクションゲームではお馴染みの溶岩トラップ。落下するとダメージを受け続ける
ゲームの醍醐味であるコンボシステム。コンボは1つの武器あたり5回繋げることができ、さらに3つの武器を切り替えてコンボを繋げられるため、理論上最大15コンボを決めることができるという。ボスに対しては、とどめの一撃を繰り出せる

 Mgameブースで、もっとも目を引いた存在だったのが「VARIANT」だ。「Dungeon & Fighter(邦題:『アラド戦記』)」のヒットで一気に開発熱が高まったベルトスクロールタイプのオンラインアクションゲームだ。開発元はMgameの開発子会社LALA Entertainmentで、2年半の年月を掛けて80人体制で開発が進められている。

 中でも特徴的なのはグラフィックスである。Mgame独自の自社開発エンジン「X-Engine」を採用し、大型MMORPG向けとしても十分通用しそうなほどのハイクオリティかつ高精細のグラフィックスを実現している。ベルトスクロールアクションとしてはオーバースペックにも感じられるほどだが、企画当時に話題を集めていた「アラド戦記」をターゲットに、ベルトスクロールアクションを、ハイクオリティの3Dグラフィックスと最高のアクション性で実現することを考えたという。

 基本的なゲームデザインは、いわゆるダンジョンRPGスタイルを採用しており、MMOエリアの街と、MOエリアのダンジョンを行き来して、最大4人のパーティーを組んでクエストやレベル上げを行なっていく。Lee氏は、ダンジョン探索を単なる繰り返し作業にしたくないということで、「VALIANT」のダンジョンは、行く手を阻むモンスター以外に、岩石や鉄の門が落ちてきたり、ダメージを受ける溶岩エリアを2段ジャンプで渡らせたり、橋から落ちるとモンスターの巣だったりなど、さまざまなトラップが仕掛けられている。これらのトラップは、ダンジョンの行き先によっても変わるほか、同じダンジョンでもプレーヤーのレベルによってトラップの難易度が変わるという。

 ダンジョンの最深部にはボスが待ち構え、ボスを撃破するとダンジョンクリアとなるが、ポスト「アラド戦記」を意識したゲームらしく、ダンジョンクリア時は、プレイ内容によってクリア等級が判定される。「VALIANT」の場合、イージー、ノーマル、ハードの3つの難易度それぞれに対してFからSまでの7つの等級で判定されるようになっており、S判定が出ると真の意味でのクリアとなる。ダンジョンをS判定でクリアすると、ゲーム全体の達成率が上がり、この達成率が一定以上になると、今まで行けなかった新しい地域に行けるようになったり、特別な武器を得ることができる権利を獲得できるという。「VALIANT」ではこのシステムを「ダンジョンマスターシステム」と呼んでおり、ダンジョンRPGの名にふさわしい奥行きを備えたゲームデザインとなっている。

 キャラクターに関しても非常にユニークだ。「VALIANT」には職業の概念がなく、転職や上位職といった要素もない。すべてのキャラクターはすべての武器と防具を装備できるようになっており、任意の3種類の武器を装備してそれらを使い分けて育てていくことで、バトルスタイルやコンボの部分で個性を出していくというシステムになっている。

 このシステムで重要なのがコンボで、これこそが同作の最大のウリとなる。「VALIANT」では、特定の武器によるコンボ攻撃を、コンボの終わりのところで武器を切り替えることで、コンボを切らさずに繋げていくことができる。キャラクターは3種類の武器を装備できるため最大の3つのコンボを繋げられるということになる。

 このため武器の組み合わせにより、多彩なコンボバリエーションが生まれる。どの武器とどの武器が相性が良く、効率よくコンボを繋げることができるのか、それを編み出すのも「VALIANT」の醍醐味のひとつということだ。なお、ボス戦限定の要素として、格好良くとどめを刺してくれる「フィニッシュコンボ」システムも用意されている。キャラクターのアップデートも、ジョブや上位職の追加ではなく、武器のバリエーションを増やしていくことを予定しているという。

 筆者も列に並んで実際にプレイしてみた。ボス戦まで5分足らずの短いダンジョンだったが、側面から鋭い杭が飛び出してきて行く手をふさいできたり、吊り橋の途中に穴が空いてたりと、飽きさせない工夫が随所に凝らされていたのが印象的だった。キャラクターアクションに関しては、グラフィックスやアニメーションが良くできている反面、動きがもったりとしており、多少のチューニングが必要だと感じた。また、ダメージトラップが多く、ジャンプアクションを多用する割に、オブジェクトやモンスターとの当たり判定が曖昧で、ストレスのたまる場面が目立った。

 気になるサービススケジュールは、12月にクローズドβテスト、2010年上半期中のサービスインを予定。日本サービスは正式発表は後日になるが、来年度の最初のタイトルとして展開を予定しているという。韓国のサービスインから半年以内の展開を予定しているため、開発が予定通り行けば、日本での展開時期は2010年末ということになりそうだ。まだ発表したてのタイトルということもあり、ゲームコンセプトは素晴らしいものを持っているだけに、今後の開発に期待していきたいところだ。


【「VALIANT」プロモーションムービー】

【スクリーンショット】
あえて「横スクロールアクション」と呼ばないのは、縦方向や斜め方向への移動を行なうダンジョンもあるため。3Dグラフィックスの利点を活かした柔軟なステージデザインだ

【キャラクター成長システム】
「VALIANT」には職業の概念がない。お好みの3種類の武器のスキルを上げて、自分だけのコンボを作り上げていく。非常に個性的なキャラクタ成長システムだ



■ RPG+RTSのハイブリッドで攻めるPvP主体のMMO「ARGO」

「ARGO」コーナーは、若い層を中心に客足が絶えなかった
取材に応じていただいたGforest CEOのJi-young Chae氏(右)とSong-qwu Lim氏
試遊台では、くねくねと曲がった長い1本道のフィールドを舞台に、その中間地点の開けたエリアで集団戦をプレイすることができた

 「ARGO」は、韓国産MMORPGでは定番のテーマである異種族間抗争を扱ったMMORPG。異種族を撃破するという同種族共通の目的を達成するために、ユニットを生産したり、乗り物に同乗したり、共に戦ったり、資源を集めたりなどリアルタイムストラテジー的要素も兼ね備えていることからハイブリッドRPGと呼んでいる。開発元は、Mgameの開発子会社であるGforest。

 ゲームでは、「Earthdium(アースデューム)」と呼ばれる鉱物資源を巡って、「ノブリアン」と「フロレスラ」の間で戦いが繰り広げられる。世界設定は、“22世紀から数百年後”という超未来の地球で、人類の繁栄に寄与してきたEarthdiumが枯渇気味に陥ってしまったことから世界中で争奪戦が起こりつつある。この世界ではすでに“ウォームホール”による時空間移動が実現されており、両種族は現代のみならず、過去や未来でもEarthdiumを巡って戦いを繰り広げることになると言う。

 Earthdiumは、国家を維持するエネルギーとして消費されるだけでなく、プレーヤー個人でもあらゆるケースで消費されることになる。たとえば、複数人が搭乗して戦車として利用できる乗り物を動かす動力源や、キャラクターの性能を底上げしてくれるバックパックを稼働させるため、あるいは武器や防具の強化にも活用できるという。「ARGO」は、Earthdiumの勢力的、個人的な蓄積および消費が大きなモチベーションになるようだ。

 実際にプレイしてみたところ、戦闘システムそのものは、広大なフィールドマップ上で多対多がリアルタイムで激突するというオーソドックスな攻城戦スタイルとなっているが、乗り物による複数人の同時輸送や、バックパックによる高速移動などSFらしいギミックがそこかしこに感じられて新鮮だった。ただ、多対多の戦いが前提となっているためか、キャラクターの個性が埋没気味で、そこをどう表現していくかがポイントになりそうだ。

 韓国ではすでに第1次クローズドβテストを6,000人規模で実施しており、12月29日に第2次クローズドβテスト、1月にプレオープンテストを予定している。日本展開については未定となっている。PvPが好きなアジア地域向けのコンテンツといえそうだ。


【「ARGO」プロモーションムービー】

【イメージイラスト】
「ARGO」のイメージイラストは、作品の特徴をよく表している。「ノブリアン」は機械を操る人間種族、「フロレスラ」は自然の力を活用するファンタジー系の種族となっており、同じ職業でも見た目がずいぶん異なる

【スクリーンショット】
バックパックによる空中浮遊や、乗り物の利用などにはすべてEarthdiumが必要となる。Earthdiumを獲得するために、Earthdiumを消費するという壮絶な消耗戦争となるようだ

(2009年 11月 28日)

[Reported by 中村聖司 ]