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史上最高のVRコンテンツとの遭遇! 「DRIVECLUB VR」インプレッション

レースゲームの限界を易々と突破する圧倒的なポテンシャル。ただしハンコンは必須

1月29日~2月2日開催



会場:台北世貿一館

 Taipei Game Showで、PlayStation VR(PSVR)ブースを展開し、40台のPSVR、16タイトルを出展したSCET。3月のGDCで、発売日や価格などそのすべてが明らかになることが予想されるPSVRだが、Taipei Game Showはその直前ということで、これまで発表されたすべての情報を惜しみなく出し尽くしていた。

連日大盛況だったPSVRブース
朝10時過ぎのPSVRの待ち行列の様子。整理券そのものは完売しており、キャンセル待ちの行列
SCEWWSプレジデント吉田修平氏のステージでは「DRIVECLUB VR」が紹介された
画面撮影は禁止! というわけで筆者もプレイ!

 今回、ステージイベントやインタビューの合間を縫って空き時間を見つけてはPSVRブースに通い詰め、未体験タイトルを中心にひとつずつプレイしていった。初体験タイトルを中心にいくつかのタイトルのインプレッションをお届けしたいと思う。まず取り上げたいのは、昨年12月のPlayStation Experienceで初公開された、VR初となる本格レースゲーム「DRIVECLUB VR」だ。

 結論から書くと、筆者はこの2年間、「初音ミク」から「RIGS」まで硬軟様々なVRコンテンツに振れてきたが、初めて何十時間でも遊び込んでみたい、やりこんでみたいと思わせてくれたタイトルだった。これは別に他のタイトルがダメだと言いたいのではなく、レースゲームというジャンルを完全に塗り替えるインパクトを備えているという点で、「DRIVECLUB VR」が突出して素晴らしいだけの話だ。

 当然、すでに体験したであろう「グランツーリスモ」プロデューサーの山内一典氏がいま何を考えているのか、その噂を聞いた「Forza Motorsport」クリエイティブディレクターのDan Greenawalt氏が何をMicrosoftに働きかけているのか、2016年以降、レースゲームはどう進化するのか。こういったことを想像するだけでレースゲームファンとしてワクワクしてしまう。

 さて、そろそろ本題に入ろう。「DRIVECLUB VR」は、Evolution StudiosのPS4専用レースゲーム「DRIVECLUB」をモチーフにしたPSVR専用タイトルだ。ハンドルコントローラーとフットペダルが設置されたコクピットに座り、PSVRを被ってプレイする。ゲームの内容は、プレーヤーはフォーミュラカーに搭乗し、コックピットビューで7台のライバルカーと共に森のコースを2周する。

 ちなみに筆者は3D酔い、VR酔いが激しいタイプだ。Oculus DK2で数多く作られ、今も何故か作られ続けているライドものや右スティックで視点操作を行なうものは全滅で、想像するだけで即座に吐き気を催す。ゲームショウで試遊する機会は、例外なく疲労がたまっており、かつ寝不足で疲れているので、さらに酔いやすい。このため、筆者が試遊で酔うタイトルは、他の人でも酔う可能性が高く、そんな筆者が酔わないタイトルは、まず大丈夫と言える。

 それで「DRIVECLUB VR」はどうだったかというと、酔わなかった。吉田氏がイベントで明言していたように、リプロジェクション処理で120fpsを実現しており、ヌルヌル描画が心地よい。繰り返しプレイして、あらゆる可能性を試しているとさすがに酔ってしまったが、通常のドライビング操作で酔うことはなかった。プレイ前はハンドルを切るだけでベロベロに酔ってしまうのではないかという恐怖感があったが、現実の車のように、自然に視点をカーブの先に向けて曲がれるため、むしろ“普通のレースゲームより酔わない”とさえ言える。ただ、詳しくは後述するが、クラッシュシーンは酔う。これはクラッシュに伴う映像表現に、頭が追いついていかないことによる酔いという感じで、これはある意味、現実世界と同じという感じだろうか。

 酔う酔わない話はこれぐらいでいいだろう。「DRIVECLUB VR」は走っているだけで感動できるゲームだ。ライバルカーがすぐ近くに感じられる迫力、路面の細かいアップダウンやコース上を舞い飛ぶ蝶々や小鳥すら頭が動いてしまう臨場感、先述したように上下左右に視界を向けるだけでコースの先々まで見通せる360度空間、そのすべてがレース体験を新しい境地に押し上げている。

【現実世界と同じ、自由な視点移動】
連続で見るとわかるが、ごく自然に視点を動かして走っている。これまでのレースゲームのコクピットビューはこの簡単なことが自然にできなかった

 クラッシュした際、少々くたびれたのでシートに頭を預けるようにして真上を見上げたら、晴天の広々とした空が見えた。気を取り直して、クルマをバックする際、試しに後ろに振り返り、頭を右側に突き出すようにしてみたら、現実世界と同じように後方を確認しながらバックできた。今まで何十年もプレイしてきたレースゲームとは何だったのか、今遊んでいるこれは一体何なのか。もう普通のレースゲームには戻れないのではないかという恐怖感すら覚える体験だった。

 こうなると「PSVRのローンチには絶対に間に合わせて欲しい!!」と言いたいところだが、おそらくローンチは無理だと思う。なぜなら商用化には実はまだまだ多くのハードルが残っているからだ。

 1つはグラフィックスだ。今回「DRIVECLUB VR」は、まだ満足できるグラフィックスクオリティではないという理由から、外側から観戦できない2階に1台のみ出展されていた。実際にミラーモードでモニターに出している映像は720p程度を引き延ばしたような荒さで、PSVRの映像はさらに荒い。

 まずはVRゲームとしてVR酔いを避けるために、限られたリソースをひとまずフレームレートの維持に全振りした感じで、現状がどの程度のクオリティと説明するのは難しいが、ポップアップ表示されるリザルト画面の周囲の文字が潰れて読みにくいレベル、あるいはレースゲームをプレイする際に、視点を置く地平線の境界線がにじんで見えにくいレベルで、グラフィックスに関してはもう数段のブラッシュアップが必要不可欠だと感じた。

 もう1つは、レース展開上どうしても避けられないVR酔いポイントをどう潰すか。何度か体験して判明した「DRIVECLUB VR」のVR酔いポイントは、クラッシュシーンとバックするシーン。これらはほぼワンセットとなるため、一度派手にクラッシュすると、1位を諦めるだけでなく、コースに戻るまでの操作でやや激しいVR酔いが避けられない。

 しかし、本質的にレースゲームにおいてクラッシュは避けられないし、それに付随してバック操作も避けられない。VRレースゲームではこれをどう解決するかはまさに避けられない課題だ。カジュアルなレースゲームのようにクラッシュシーンでは、物理的にクラッシュが確定した時点で画面を暗転させて、その後、点滅状態でコースに戻すぐらいの対応が必要かもしれない。

 そして最後に、実はこれこそは1番深刻だと思うのだが、現状ではコントローラーだと激しいVR酔いが発生してしまうことだ。SCEWWSプレジデントの吉田修平氏が“右スティック問題”と呼んでいる問題にモロに引っかかっている感じで、レースゲームの場合は“左スティック問題”となるが、ハンドル操作では感じなかった違和感が、左スティックでハンドル操作を行なうと大きな違和感、つまりVR酔いとなって現われる。筆者はハンコンでは完走できたのに、DUALSHOCK4では完走することができなかった。この事実は正直ショックだ。

 つまり、「DRIVECLUB VR」は、現状実質的にハンドルコントローラー専用タイトルとなっている。ハンコン実質専用のままリリースするのか、それともコントローラーでも遊べる解決策を見いだすのか。先行者である「DRIVECLUB VR」がこの問題にどう対処するのかによってVRレースゲームの未来が決まるといっても過言ではない。ポテンシャルは数あるVRゲームの中でも突出しているだけに、急がず焦らずじっくり作り込んで欲しいところだ。

(中村聖司)