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【特別企画】米国ポートランドゲームショップレポート
伝説級のゲームショップとゲームセンターを「全米で住みたい街No.1」の街で発見!
(2015/9/9 00:00)
GAME Watchでは、様々な機会を利用して、世界中のゲームショップの風景をレポートしてきているが、米国については1度も記事にしていない。理由は、日本と同様、ゲームマーケットが成熟しているため、ゲームショップもごくごく普通の内容で、面白みに欠けるからだ。もうひとつの理由はそもそもショップの選択肢もないことだ。かつてはもう少し選択の幅があったように思うが、現在、米国でゲームショップといえばほぼほぼGameStopのことを指し、残る選択肢はBestBuyやTarget、Walmartなど量販店のゲームコーナーとなる。これはおもしろくない。
今回Logitechの発表会に参加するために初めて訪れたポートランドという街は、レストラン、カフェ、スーパー、レザーショップ、ブティック、シューズショップ、ブルワリー、ホテルなど、あらゆる業態においていわゆる“大手資本”の波に呑み込まれることなく、質の高い独立系のショップが至る所に存在し、街歩きが非常に楽しい都市となっている。“全米で住みたい街No1”の常連都市という触れ込みだが、実際に肌で感じてみると然もありなんという印象である。
そんなクールな街に、我々ゲームファンが目を引くような奇抜なゲームショップなんてあるわけないだろうと思いきや、あったあった、それも伝説級の奴が! というわけで、今回はポートランドで見つけた個性的なゲームショップをお届けしたい。
まずはGameStopでウォーミングアップ
最初に訪れたのはGameStopだ。GameStopは全米の各都市、とりわけショッピングモールには必ず入っているといっても過言ではないほど、米国のゲームファンにとってポピュラーなゲームショップだ。店員はもれなく親切で、よほど混雑していない限り、5分以内に声を掛けられ、入店の目的や探しているゲームを立て続けに聞かれることだろう。日本人の感覚からすると凄まじくうっとうしいが、探す手間が省けるぐらいの感覚で入るようにすればちょうどいい。
今回訪れたのは、本当にゲームを買うためだ。ポートランドのGameStopは、同地最大のショッピングモールLloyd Center Mallの2Fにあった。今回のターゲットは「Gears of War Ultimate Edition」と「Until Dawn」。「GoW」は既報の通り、日本での発売が見送られたため。「Until Dawn」は世界各地のゲームショウで何度か試遊する機会があって、Mature仕様のままプレイしたいと思っていたからだ。今回はタイミング良く、いずれも発売直後で、それぞれ特設コーナーが設けられていて、すぐに見つけることができた。
Matureレーティングのゲームは購入時にフォトIDのチェックがある。最近は海外からの客が増えているのか、買う前にあらかじめリージョンロックが掛かっていないかどうか店員が調べてくれる。PS4もXbox Oneも、パッケージやマニュアルがどんどん簡素化され、パッケージに挿入するシート以外は、マニュアルすら付いていないということも珍しくない。背面の表記も、収録言語や字幕表示の有無などは書かれない。このため店員自身も調べないとわからないということが多いようだ。専用のiPadでてきぱきと調べてくれたが、この点、多言語対応が当たり前のヨーロッパやアジアのほうがよっぽど親切でわかりやすい。
ちなみにGameStopは、Amazonをはじめとしたオンライン販売や、デジタルダウンロードの影響で、全盛期の頃に比べると、ずいぶん来客が減った印象がある。新品はハード、ソフトを問わず、ほぼ定価売りのため、それほど数がはけるとは思えない。収益源は、徐々に販売領域を広げつつある中古ソフトと、販売チャネルとして活用しているゲーム雑誌gameinformerなどのようだが、それだけで回るのだろうか。全米ゲームショップ最後の牙城だけに頑張って欲しいところだ。
Guardian Gamesは大人のゲームファンのための聖地だった!
さて、お次に向かったのは、今回のメインターゲットであるゲームショップGuardian Gamesだ。再開発が行なわれているサウスイースト地区にあり、ダウンタウンからライトレイルやバスで簡単に行くことができる。
筆者が訪れた際、ちょうど20代から30代と思しきアメリカ人6人と一緒になった。歩道一杯に広がって歩きながら楽しそうに大声でお喋りをしており、筆者が信号待ちしていると「楽しみだよな」、「Magicやろうぜ」、「写真ばっかり取るなよ」、「くそったれ、信号赤かよ」、「早く信号を変えるボタン押せよ、この尻の穴野郎」といったスラングたっぷりのお喋りが嫌でも耳に入ってきた。リーダー格の若者と目が合うと、「うるさくてごめんな、でもみんな楽しみなんだ、あんたもか?」と声を掛けられた。いい年した大人をこれほどまで童心に返らせるGuardian Gamesとは一体どういう店なのか。思わず筆者も入る前からワクワクしてしまった。
入ってみて驚いたのはその広さだ。ざっくり1000㎡ほどはあるだろうか。何かの工場もしくは大規模なショウルームを改装したと思われるが、単体のゲームショップとしては、過去に類例のない途方もない広さだ。さらに驚いたのは、その半分以上をプレイエリアに割り当てていることだ。奥は時間貸しの大小の個室、そして未成年立ち入り禁止のアルコールゾーンがあり、ビールを片手にテーブルゲームに興じることができる。これをゲームの楽園と言わずして何と言おうか。
メインの商材は、「Magic The Gathering」を筆頭とした各種カードゲームで、そのほかにもボードゲーム、テーブルトーク、ミニチュアゲーム、プラモデル、LEGO、そしてデジタルゲームと、古今東西のあらゆるテーブル型ゲームやホビーアイテムが集められている。
店内に入るとすぐに目に入るのは、各ジャンルの新製品が扇状に並べられた棚だ。そこから左右の壁側にはジャンル毎に各種製品がうずたかく積み上げられており、中央にはカードゲームなど小物を陳列販売しているガラスケース、そしてキャッシャーがある。そして奥半分はすべてプレイエリアだ。
訪れた時は、数百人は座れそうなプレイエリアはほぼ満席になっており、「Magic The Gathering」の予選大会が行なわれていたこともあって、過半数の来場者が「Magic The Gathering」に興じていた。客層は10代後半から50代。メインは30代、40代のおっさんだが、女性客も2~3割はいただろうか。
フォトIDチェック必須のアルコールエリアは、カードゲームに加えて、「Warhammer」のようなミニチュアゲームや「Dungeon & Dragons」や「Pathfinder」のようなテーブルトーク、そしてボードゲームなどが展開され、その分心なしか年齢層も高い。そのさらに奥には貸し切りエリアとなっている2階に上がる階段もあり、上にも沢山人がいた。それにしても皆思い思いのゲームに興じており、非常に楽しそうだ。
そして肝心のビデオゲームはというと、NES(ファミリーコンピュータ)からXbox Oneまでひととおりあったが、ショップ全体の割合からするとごくごくわずかで、その周囲にはプレイ用のゲーム用モニターも複数用意されていたものの、ビデオゲーム目当てで来ている人は少数派のようだった。そのビデオゲームも、NESから在庫があることから想像が付くように、新品、新製品は扱っておらず、中古というより、骨董品に近いオールドゲームばかり。ファミコン、メガドライブ、プレイステーションなど懐かしのハードが並んでおり、コレクターにはたまらないショップだろう。
Guardian Gamesの人気の秘密は、各種ゲーム大会がほぼ毎日実施されているところだ。常に1カ月先の予定までびっしり決められ、10ドル程度の参加料で、たっぷり遊ぶことができる。1人やオンラインで手軽に遊べるデジタルゲームと違って、カードゲームやテーブルトークは、相手がいなければ遊べない。カレンダーの予定に従ってお好みのゲームの日に参加料を払って参加することで、未知の人と対戦する事ができるわけだ。
プレイエリアを観察していてなるほどと思ったのは、店員が即席のジャッジになっているところだ。カードの説明やルールの解釈でお互いに齟齬が生じた場合、ふたりが手と声を挙げてジャッジを依頼することで、店員がてきぱきと裁定していく。これにより、アナログゲームにありがちな、ローカルルールや恣意的な判定を防ぐことができるわけだ。アナログゲームファンにとって、Guardian Gameはひとつの理想郷と言えそうだ。
タイムスリップしたかのような感覚に陥る伝説級のゲームセンターGROUND KONTROL
もうひとつ「ここも凄い!」と思ったのがGROUND KONTROLだ。ここはポートランドに到着した日に偶然前を通りかかり、あとで時間を見つけて行こうと思っていたお店だ。日中はゲームセンター、17時以降はゲームバーになり、今回は17時以降を狙って訪れてみた。場所はダウンタウンの北側、オールドタウンと呼ばれるエリアにある。ここはかつて日本人街があり、当時をしのぶミュージアムも作られている。戦後はチャイナタウンとなり、その後寂れ、現在再開発が進められている新旧入り交じるエリアだ。
今回、17時少し前に訪れると、お酒を求めて訪れる人が多いためか、あるいは単純にゲーム目当ての人が多いのか、早くも入場規制が行なわれていた。入り口前で待つこと10分、フォトIDチェックを経てようやく入店することができた。
入ってみて最初に驚かされたのは、置かれているアーケードマシンの古さだ。数年前、10年前とかそういうレベルではなく、「アステロイド」(1979)を筆頭に、「フロッガー」(1981)、「ドンキーコング」(1981)、「マリオブラザーズ」(1983)、「バブルボブル」(1986)、「ペーパーボーイ」(1984)、などなど、1970年台後半から1980年代前半頃に登場したアーケードゲーム、つまり北米のアーケードゲーム全盛期の頃のスタンディング筐体が当時のままの状態で置かれているのだ。しかも、いずれも現役稼働しており、25セントコインを入れて気軽に遊ぶことができる。その風景はまるで30年前にタイムスリップしたかのようだ。
2階はピンボールエリアとなっており、20台以上の新旧のピンボール台が所狭しと並べられていた。「アダムスファミリー」や「ドラキュラ」、「アラビアンナイト」、「トワイライトゾーン」など、筆者が青年の頃に日本で見た懐かしの台もある一方で、「The Walking Dead」(2014)をモチーフにした最新鋭の台もあり、歴史を隔てた新旧のピンボール台をまとめて楽しむことができる。
新旧の台がまとめて置かれることによって判明したのは、ピンボール台は、この30年以上にわたって技術的にはほとんど進化していないことだ。筐体のギミックはすべてアナログのままであり、パドルを動かすインターフェイスも、台を揺するという奥の手の存在も、正面パネルの電光掲示も、すべて変わっていない。パチンコ台やメダルゲーム、クレーンゲームなどは、この30年でめざましい進化を遂げているが、ピンボールはまさに進化の刻が止まっているかのようだ。とはいえ、アルコールを片手に遊ぶにはこれぐらいが丁度良いのかもしれず、ピンボールマシンの意外な歴史を垣間見た気がした。
プレイ料金は、1プレイ25セントから75セントほど。この時代のアーケードゲームは、最初から遊び手を殺しに掛かるため、プレイ時間はおおむね5分足らずといったところだが、皆さん悔しいのか、25セントコインをたっぷりポケットに入れ、連コインが当たり前。コインを片手に後ろで行儀良く順番を待つという日本的な遊び方より、アルコールを片手に、筐体エリアをゆったりクロールしながら、空いたところに25セントコインをぶち込むという遊び方が粋でいいかもしれない。往年のアーケードゲームファン、あるいは30年前のゲームセンターがどのようなものだったのか肌で感じたいという奇特なゲームファンは、ぜひぜひ1度足を運んで貰いたい、まさに伝説級のゲームセンターだ。