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ハンターたちの明日はどっちだ!? 「Evolve」Big Alphaプレイレポート
高度な連携が必須のゲーム性。“大傑作”になるための課題も見えてきた
(2014/11/7 00:00)
テイクツー・インタラクティブ・ジャパンが2015年春に発売を予定しているチームプレイFPS「Evolve」のBig Alphaテストが本日終了した。日本時間の11月1日1時より数日間にわたって実施された本テストではPC、Xbox One、そして技術上の問題で開始が遅れたPS4版の3プラットフォームで本作の遊びごたえを確認することができた。
Xbox One版ではトラブル無しにテストが行われた一方で、PS4版については開始当初からトラブルに見まわれ、テスト再開から実質1日しかプレイできず、PC版もテスト開始から1時間後にマッチングサーバーが不調に陥り、翌朝までプレイできない状況が続いた。このあたりは単純なサーバーキャパシティや技術上の問題として、製品版までに解決されていくはずだ。
そのあたりが問題なく改善されることを前提に、本稿では本作のゲーム性そのものにフォーカスしてインプレッションをお届けしていこう。なお、ゲームの基本的な情報についてはこれまでのプレイレポートでまとめているのでそちらも合わせて参照頂きたい。
強いぞモンスター!ハンターは超絶連携で対抗するしかない!!
4人のハンターと、1匹の超絶モンスターがすべてプレーヤー操作にて対決するというコンセプトの本作。このBig Alphaテストではハンター、モンスターともにアンロック可能コンテンツがそれぞれ1種類づつ用意され、2つのマップも含めてE3やプレスイベント等で公開されてきた全コンテンツがゲームに実装されていた。
4人のハンターは常に4クラス構成だ。ダメージディーラーのアサルト、支援役のサポート、モンスター追跡特化型のトラッパー、回復特化型のメディック。対するモンスター側はケモノ型の「ゴリアテ」か、アンロックすればイカ型の「クラーケン」で参戦する。
というわけでゲームは常に4対1の構成。そして、4人がかりのハンターにひとりで対抗しなければならないモンスターは非常に強力だ。モンスターはマップ中に生息する野生のクリーチャーを殺して食うことによりゲージを貯め、最大になるとEvolve(進化)して2ステージの強化を行なえる。
実際にモンスターをプレイしてみた感覚でいうと、生まれたばかりのステージ1でハンターたちに捕まるとほぼ絶体絶命である。ひたすら逃げの一手。幸い、ゴリアテ/クラーケンの双方とも、全力で逃げれば簡単には捕まらない程度の機動力はある。逃げまくってスキを見つけて餌を食べ、進化を目指す。
ステージ2になれば、あまり連携が上手ではないハンターなら返り討ちにできる。上手なハンターが相手でも、きちんと逃げ道を確保しておけば捕まっても1人、2人をダウンさせての逃走は可能。満を持してステージ3へ進化だ。
ステージ3ともなれば、プレーヤー1体なら数秒でダウンさせることが可能。そこそこ上手なハンター4人組が相手でも、無理なゴリ押しをしなければ対応は容易だ。連携のまずいハンターなら一方的に殺戮して終わりである。ステージ3のモンスターはそれほど強い。プレイする側としては爽快、痛快、完全にご褒美タイムである。
ただしモンスターは体力回復ができないため(PERKにリジェネはあるが、それも効果が薄い)、ステージ3までに体力がどれだけ削れているかが勝負の分かれ目になることが多い。ほぼ満タンでステージ3に進化すればほぼモンスターの勝ち。体力が半分で五分五分。体力が1/3を切っていれば、ようやくハンターの勝利が見えてくる。
ハンターに求められるプレイスキルと連携
一方、ハンター側としては、モンスターが進化しきるまえにどれだけダメージを与えられるかが(可能ならそのまま倒してしまってもいいが)、勝負の分かれ目だ。
まずはラウンド開始時、モンスターが残す足あとを頼りに最高速で追跡。しかし足あとを追跡しているだけではほとんど追いつけない。ある程度近づくとズンズンという足音や、唸り声が聞こえてくるので今度はそれをよく聴いて、モンスターの移動方向を予測しながら先回りする。この動きをチームメンバー全員でキチンとできないと、早くもハンターの勝利は危うい。
うまく進化前のモンスターに接触できたら、トラッパーの装備(例えば「マギー」の持つモバイルアリーナ)で捕まえて、4人全員でタコ殴りだ。それでもモンスターが逃げの1手で回避に専念していると有効打は与えにくい。4人が連携し、常に先回りしてダメージを蓄積させる必要がある。すべてが理想的に運べば、進化前に致命傷を与えることが可能だ。
だがこの段階で有効打を与えられずに取り逃すと、試合はモンスターのペースで進行することになる。この段階での対応手段のひとつとしては、無理に倒しきることを目指さずに地味にダメージを蓄積させる作戦にシフトすることだ。その上でステージ3になったモンスターが満を持してジェネレーターを破壊しに来ることを見越して、全員で待ちぶせする。ジェネレーターを殴ろうとするモンスターをひたすら邪魔しながら倒すか、時間切れを待つ。筆者の体験した範囲では、おおむねこういったシナリオになる。
ハンター側の4人が本当に1つになって戦う必要があるというのがこのゲームのキモだ。特にモンスターを捕まえるトラッパーと、味方の体力回復や蘇生を受け持つメディックの立ち回りは重要。この2クラスのうちどちらかでもまともに機能しないチームは100戦100敗必至である。同時にアサルトやサポートも上手でないと、上手なモンスターには勝てない。本作はそれほどガッチガチなゲームバランスなのだ。
αテストを通じて感じられたゲームバランス上の問題と、製品版に向けての展望
αテストでは、4人のハンターに密接な連携が求められるという、期待通りのゲーム性が味わえた。とはいえ、50戦以上プレイしてみて「このゲーム、このバランスで本当に楽しいか?」という疑問が湧いてきたのも正直なところである。
筆者の場合、モンスター側ではほぼ常勝だった。ゴリアテで勝率8割程度、空を飛べるクラーケンでは敵に見つからずにEvolve(進化)し放題なこともあって勝率10割。対するハンター側での勝率は3割程度。フレンドを集めた4人チームでは5割に近いが、ランダムマッチで野良チームに混ざるとほとんど勝てない。
内容にしても、ハンター側として勝ったゲームは、モンスター側がどう見てもまだ不慣れで、下手な場合が多い。酷いゲームでは開始1分でモンスター死亡、というのもあった。そういう一方的なゲームを除いて考えると、モンスターがステージ3にまで成長し、ジェネレーター周辺で死闘が展開、ぎりぎりでハンターが競り勝つ、といった面白いゲームは10に1つもなかった。
つまり、ハンター側全員と、モンスターのスキルレベルが奇跡的に噛み合うことによってのみ、本作では面白い試合ができる。これは明らかに本作が抱えるゲーム構造上の問題だ。
例えば本作を開発しているTurtle Rock Studiosの出世作「Left 4 Dead」では、ゲームの流れを監督するAI Directorによって、プレーヤーが上手くても下手でも、ぎりぎりで面白いゲーム展開が演出されていたし、生存者VS感染者の対戦モードでも地味にAI Directorの仕事が効いていて、予想外の展開、大笑いできる状況などが次々現われ、勝っても負けても展開そのものがドラマチックで楽しかった。
ところが本作では敵役もプレーヤーが操作する上、AI Directorのようなバランス調整機構がそもそもないか、あったとしても不完全で、基本的にモンスターが有利である。ゲーム展開としても、ハンター側は捕まらないモンスターをひたすら追い続けるという時間帯が長く、戦闘になっても非常にセオリーがカッチリしているというか、「L4D」のような“遊び”が少なくて、ひたすら硬派な印象が強い。
製品版に向けては、少なくとも各プレーヤーのスキルに応じて自動的になんらかの調整を加えるなどの仕組みは必要になりそうだ。幸い、本作にはマップ中に生息する野生のクリーチャーという中立的な陣営が存在する。ゲームシステム的にそれをうまく使えれば、もう少し一方的な勝負を減らす方向のバランス調整や、よりドラマチックな展開の演出は可能だろう。3分おきの再出撃という設定の基礎になっている、ドロップシップ飛来のタイミングを調整してもいいかもしれない。
それから基本的なキャラクター操作があまり爽快でないことや、HUDの見にくさという問題点もある。モンスターの追撃やバトル時の多彩な攻撃パターンを生み出すためにジェットパックはもう少し贅沢に使えていいのではないだろうか。UIはライフ、スキル、スタミナ、その他の情報が画面全体に散らばっていて瞬間的な情報把握がしにくいので、UIを大型化する、画面中央に寄せるなどの工夫も必要だと感じている。
本作は4対1の非対称チームプレイFPS、という奇抜な発想で作られているゲームであるだけに、その作り込み方によって大傑作にも、大駄作にもなりうる。今回、Big Alphaテストによって何万人ものプレーヤーが本作をプレイし、問題点を浮かび上がらせたことが大いに吉と出ることを期待して、αテストレポートの結びとしたい。