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【特別企画】バンダイ、「DX超合金 YF-30 クロノス」レビュー
従来と異なる変形プロセス! 巨大なミサイルコンテナを持つ新バルキリー
(2014/8/14 00:00)
「DX超合金 YF-30 クロノス」がついに発売された。本作は、「マクロス」シリーズに登場する“可変戦闘機バルキリー”をモチーフとしたバンダイの変形玩具「DX超合金 マクロスシリーズ」の最新作である。
弊誌では1度“【特別企画】アニメ文化と玩具文化の1つの到達点「YF-29 デュランダル」”として、「DX超合金 マクロスシリーズ」を紹介している。戦闘機形態のファイター、中間形態のガウォーク、人型形態のバトロイドの3形態に変形するバルキリーの魅力は、“変形”という荒唐無稽な設定を“リアルロボット”として劇中で説得力をもたらしているところにある。現実にありそうなデザインの戦闘機が、ロボット形態にきちんと変形するのだ。そして「DX超合金 マクロスシリーズ」は、その複雑な変形を、パーツの差し替えなしの“完全変形”で再現しているところに大きな価値があるのである。
設定と玩具としての面白さを両立できているその秘密は、歴代バルキリーをデザインしたメカデザイナーの河森正治氏が、常に玩具でも再現可能な説得力のある変形システムを模索していること、そしてバンダイの「DX超合金」のマクロスシリーズを手がけるスタッフが、いくつもの作品を通じて様々な試行錯誤をし、技術を磨いているからだ。原作ファンのアイテムとしてだけでなく、玩具技術の“結晶”としても注目のシリーズなのである。それでは、この魅力溢れるシリーズ最新作のYF-30をレポートしていきたい。
ゲームの主役機、時空を超える最新バルキリー「YF-30」
まずはモチーフとなったYF-30を紹介したい。YF-30 クロノスはアニメではなくバンダイナムコゲームスが2013年2月に発売したPS3向けアクション「マクロス30 銀河を繋ぐ歌声」に登場する最新鋭機だ。「マクロス30 銀河を繋ぐ歌声」は「マクロス」作品の歴代キャラクターが時空を超えて集結し、惑星ウロボロスの謎に挑むという、マクロス30周年を記念する作品であり、オリジナルヒロインと、彼女の歌う“歌”まで新たに書き起こされた豪華な作品だった。
YF-30もゲームの目玉となる機体で、設定的にはゲーム内のヒロインの1人、アイシャが様々なパーツをゼントラーディの“全自動兵器工廠”に持ち込み完成させたもの。プロトカルチャーのものと思われる遺跡から得た高純度のフォールド・クォーツを使用し通常のフォールド(ワープ)では突破できない「フォールド断層」を航行できる能力を持つ。
デザイン面のYF-30は、現実の戦闘機F-22を思わせる翼の大きな固定翼機で、カラーリングは白をベースに赤、黒のラインが入る歴代の主人公メカ“一条輝機”や、“早乙女アルト機”を思わせるものになっている。最大の特徴は機体中央に大型の“ミサイルコンテナ”を搭載していること。コンテナは3形態どれでも展開可能で自由な方向に旋回させることも可能。
このコンテナは設定上では「大型ビーム砲」、「電子戦ユニット」、「兵員輸送コンテナ」などにも換装可能だが、残念ながらゲーム内で換装ギミックは再現されなかった。とはいえ攻撃力や耐久力など基本性能はゲームに登場する全機体ナンバー1で、ゲーム後半では“主役機”として大活躍してくれる。特にミサイルを乱射して攻撃する姿がカッコイイ。
YF-29が真っ赤な前進翼機で回転式の砲塔をつけているというかなり未来的なコンセプトだったのに比べると、YF-30は機体そのものは落ち着いたデザインだが、機体上部に現われる巨大なミサイルコンテナが無骨な陸戦兵器のようで、面白いアクセントとなっている。魂ウェブの河森氏のインタビューでは、変形システムでも様々な試みをしているという。それではいよいよ「DX超合金 YF-30 クロノス」を、これまでのシリーズとも比較しつつ、各形態と変形システムを見ていきたい。
コクピットが水平位置に、VF-25とは大きく異なるバトロイド形態
では、最初に「DX超合金 YF-30 クロノス」の人型形態、「バトロイド」から見ていきたい。YF-30のバトロイドは、正面から見るとかなりスリムな印象を受ける。特に腰が細く、手足が長い。ところが横から見ると印象が一変する。戦闘機の機首からコクピットブロックまでが折り重なって胴体を形成しており、戦闘機からの複雑な変形を感じさせるものとなっている。この変形システムはこれまでのバルキリーとは全く異なるもので、ファンは「YF-30はこれまでのバルキリーと全く違う変形システムを持っているぞ!」と一気に引き込まれるだろう。
実は、これまで発売された「VF-25」、「VF-27」、「VF-29」は変形システムの基本は同じものだったのだ。これは「VF-24」という機体を元に発展しているという設定のためだ。一方のYF-30も設定上はVF-24からの発展機であるが、河森氏のチャレンジにより、パーツに共通部分はあるものの、新しい変形システムを採用しているのである。
VF-25系統の従来のバルキリーは、コクピット部分が垂直になりバトロイドの背中を形成していた。このため設定上はシートが回転し、パイロットはファイター時には床になっていた部分を向く形となっていた。しかし玩具ではパイロットシートの回転までは再現されなかったので、バトロイド時、パイロットフィギュアは上を向く形になっていた。YF-30のバトロイド形態では、コクピット部分は地面と水平になっており、変形時のパイロットの位置がより自然になっている。
また、今回の変形システムで筆者が特に気に入ってるのが“肩”の部分だ。VF-25系の従来のバルキリーは肩部分が華奢で、長時間飾っていると肩のジョイント部分が腕や武器の重さに負けて“なで肩”になりやすかった。YF-30の肩はパーツ数が減りシンプルなデザインとすることで、重くても肩が落ちない構造になっている。この他、腰ブロックのフレキシブルさも独特で、従来のバルキリー以上に自由度が高い設計になっているのも新しい試みだ。腰をひねった大胆なポーズが取りやすくなっているのだ。
もう1つ「DX超合金 YF-30 クロノス」の大きなポイントが、「サポートパーツ」の存在である。バトロイド時と、ガウォーク時、それぞれサポートパーツをつけることで各形態を安定させることができるのだ。原作にないパーツの存在は“完全変形”という視点から賛否両論あるかもしれないが、“長時間飾る”という場合、各ブロックが安定するのはとても助かる。実際、複雑な変形システムを持つ「DX超合金 マクロスシリーズ」では、ひっきりなしに変形させるというよりも、筆者のようにお気に入りの形態でずっと飾るという遊び方をしている人が多いと思う。「DX超合金 YF-30 クロノス」は“実際にシリーズはどう遊ばれているか”をきちんと考え、フィードバックしていると感じた。
そしてYF-30の最大の特徴である「大型ミサイルコンテナ」だが、これにはなんと片側18個、合計で36個ものミサイルハッチがついており、1個1個手動で開けることができる。これは「手描きのアニメ時代では面倒くさくて、とても描けない機構」という、アニメーターである河森氏の“夢”を託したものだという。ハッチのフタは細く、壊してしまいそうで恐い部分もあるが、パチンパチンと1個づつ開けるのは楽しい。中の弾頭もきちんと塗装してある。
「どこに積んでいるかわからない大量のミサイル」というのは、「エースコンバット」や「アフターバーナー」などゲームの戦闘機での“お約束”であり、ミサイルコンテナはその無茶な設定に説得力を持たせたガジェットといえる。“ゲーム用バルキリー”向けにミサイルコンテナという武装を出してきた河森氏のセンスはニヤリとさせられるものがある。