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【特別企画】アニメ文化と玩具文化の1つの到達点「YF-29 デュランダル」

スマートなフォルムに“全部のせ”を実現。可変戦闘機の進化の歴史を凝縮

「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」

2011年6月発売

価格:17,850円

ホビーショーで出展されたプラモデル「1/72 VF-1 A/S バルキリー 一条輝機」。これまでの技術を集結したプラモデルとなるという

 5月に開催された静岡ホビーショーでは、バンダイのプラモデル「1/72 VF-1 A/S バルキリー 一条輝機」が注目を集めた。30年前に登場したメカを現代の技術で表現するというのは、“バルキリー”という素材の面白さ、日本の玩具業界の独特の進化を示している一例だと思う。この盛り上がりに合わせて、“アニメの設定と玩具の進化”というテーマでどうしても取り上げたい素材がある。それが、2011年に発売された「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」だ。

 アニメの中にあるキャラクターを、手に触れられるものにする。近年このこだわりがどんどん進化している。そしてその模型化・玩具化で生まれたノウハウが、よりリアルなメカデザインをもたらし、アニメ作品の“説得力”に繋がっていく。特に「ロボットアニメ」というジャンルにおいては、玩具・模型と深い繋がりがある。

 玩具とロボットという視点において、世界中で見てもこれほど充実した文化を持つ国はない。日本のロボットアニメと、ロボット玩具はキャラクター設定を見事に立体化している。変形や合体などの、アニメの中のギミックを玩具が忠実に再現しているのだ。

 その進化の1つの到達点じゃないか、というものが、今回紹介する「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」である。飛行機がロボットに変形する“バルキリー”というジャンル、そして「アニメに出てきたロボットを立体物にする」という視点において、見逃すことのできないアイテムだ。

 この製品は2年前といういささか古いものであるが、記念碑的な作品であり、またカラーリングを「ロイ・フォッカー機」をイメージした「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(30周年記念カラー)」が2013年3月に再販されたことからもわかるように、ホビーとしてはまだまだ現役のものである。また、「バルキリー玩具」の歴史の中でも見逃せないものであり、6月に発売されたプラモデル「1/72 VF-1 A/S バルキリー 一条輝機」と合わせて、ぜひこちらもチェックしてもらいたいのだ。

 日本のロボットアニメの多くはいつしか立体化を前提にデザインされるようになり、そして玩具は技術の進歩で設定に近いギミックを実現させてきた。「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」はアニメ側、玩具側双方に達成感をもたらした、究極の変形ロボット玩具だと、僕は思う。

玩具業界に革命をもたらし、最新技術を投入され続ける可変戦闘機「バルキリー」

「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」。コンセプト、デザイン、変形ギミックを含め、“バルキリー玩具”の頂点ともいえる作品だ
1982年に発売されたタカトクトイスの「VF-1 バルキリー」はバンダイで「オリジン・オブ・バルキリー バルキリーVF-1J (一条輝機)」として再販されている。現在でも魅力は失っていない
劇中の拡張パーツをきちんと装備でき、そのまま変形できる。玩具での実現を念頭に置いたデザインだ
「1/72 VF-1 A/S バルキリー 一条輝機」では最新プラモデルならではの複雑な変形機構が取り入れられる

 「YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」は、映画「劇場版 マクロスF 恋離飛翼 サヨナラノツバサ」に登場した機体だ。主人公早乙女アルトがクライマックスで乗る劇場版オリジナルの機体で、それまで出ていた様々なバルキリーを大きく凌駕する性能を発揮する、劇中最強の機体だ。

 僕は、劇中での活躍を見る前から、「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」を「1番新しいバルキリーの超合金」という所に魅力を感じ、購入を決定していた。アニメでの活躍の情報を全く知らず、“最新バルキリー玩具”というところで、定価17,850円という出費を決意したのである。これが「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」と僕の出会いである。

 この「DX超合金 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」について語る前に、まず、バルキリーと玩具の深い繋がりを解説したいと思う。

 バルキリーは、1982年から始まる「マクロス」シリーズに登場する可変戦闘機の総称である。戦闘機形態のファイター、人型形態のバトロイド、中間形態のガウォークに変形できるバルキリーをいかに立体化するか、玩具メーカーは様々な作品に登場する何種類ものバルキリーを、色々なアプローチで立体化してきた。大きいものから小さいもの、各形態のみを再現したもの、変形を再現したものは部品をどこまで交換するか、というところでも手法が様々だ。

 「VF-1 バルキリー」はその後のアニメメカに大きな衝撃を与えた。それまでなかった“実在の戦闘機そのままの飛行機”がロボットに変形するのだ。放映する前、番組宣伝の資料には戦闘機とロボットのイラストが描かれていたいたのだが、多くの人が同一の機体だと思わなかったし、たとえ変形したとしても、従来のアニメで見られた、現実の物理法則を無視したグニャグニャと形を変える変形だと思われていたのだ。

 ところが、その変形を“実現”させた玩具があった。タカトクトイスというメーカーが、アニメ放映と同時期に発売した「VF-1 バルキリー」の変形玩具だ。当時の玩具は変形を優先してプロポーションが崩れるものも多かったが、この玩具はそれぞれの形態が実に格好良く、そして部品の耐久力も高かった。

 この玩具は大ヒットとなった。後にバトロイド形態で装着する「アーマーパーツ」や、宇宙戦闘用の追加装備「スーパーパーツ」も発売された。現在タカトクトイスというメーカーはなくなってしまったが、この玩具そのものはバンダイから復刻版が発売された。今でもファンの多い、玩具の歴史に残る「名作」となった。

 「VF-1」は河森正治氏というメカデザイナーなしには語れない。彼は「VF-1」を実際の戦闘機のような形に変形できるシステムを考え、自作の模型でタカトクを説得し、玩具化を実現させたという。この「VF-1」以降凝った変形システムと、それをきちんと再現した玩具という流れができていくことになる。

 その中で、「マクロス」シリーズ、そして河森氏がデザインする「バルキリー」は別格だった。その後も「YF-19 エクスカリバー」や「VF-25 メサイア」など様々なバルキリーが「マクロス」シリーズで登場する。そしてファンは、玩具メーカーがいかに河森氏がデザインするバルキリーを“再現するか”に注目してきた。

 バルキリーは常に実現できる変形を念頭にデザインされ、特にバンダイとやまとはそのデザインを再現させるべく、様々な商品に最新技術を投入し、立体化を行なってきたのだ。どのように変形するか、そしてどう玩具として実現させるか? バルキリーは常に最先端の造形技術を要求される素材であり、バルキリーの玩具は多くのファンから注目され続ける存在なのである。

 30年の時を経て、プラモデルとして発売される「1/72 VF-1 A/S バルキリー 一条輝機」では、戦闘機形態時には本体に接続されている足ブロックが、アクチュエーターにより移動し、機首ブロックに接続される。この機構の再現はこのプラモデルが初めてで、機首ブロックに接続されることで、腰の回転が可能になっている。

 タカトクのバルキリーは腰の回転はできないものの、足ブロックの接続部分に頑丈な金属パーツを使っており、低年齢の子でも変形をしやすくしている。作品ごとの変形部分の解釈を比べるというのが、バルキリー玩具の楽しみ方のポイントだ。

【オリジン・オブ・バルキリー バルキリーVF-1J (一条輝機)】
ファイター形態とガウォーク形態

【オリジン・オブ・バルキリー スーパーバルキリーVF-1A(一条輝機)】
こちらは劇場版に登場したVF-1A

(勝田哲也)