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【E3 2014】Wargaming.netブランドを育て上げたキーマン、Alister King氏に直撃

「Let's Battle」元ネタは何とあのブランド。「WoT」グローバル展開成功の秘訣とは?

6月10日〜6月12日開催(現地時間)



会場:Los Angeles Convention Center

Wargaming.netブース

 F2Pのオンラインタンクバトルゲーム「World of Tanks」の世界的・爆発的なヒットで快進撃を続けるゲームメーカー、Wargaming.net。E3 2014の会場では大手パブリッシャーに引けをとらない巨大ブースを出展、もちろんPC向けオンラインゲームメーカーとしては最大規模だ。

 Wargaming.netはベラルーシに本拠を置くゲームデベロッパーで、1998年創業。わずか数年前まではほとんど無名の存在だった。それが昨年9月には「World of Tanks」日本リージョンへの展開を成功させてのち、空の戦いを描く「World of Warplanes」、海の戦いを描く「World of Warships」を開発、そしてモバイルやコンソールマシン(Xbox 360)への展開を実現するまでに至っている。

 その躍進を実現する上で、欠かすことのできない役割を果たした人物がいる。Wargaming.netにてグローバル・ブランディング・ディレクターを勤め、世界各国へのブランド展開戦略を手がけるAlister King氏だ。Wargaming.netが世界的ブランドに成長したその秘訣はどこか、E3 2014の会場で様々な質問をぶつけてみた。

「WoT」世界展開を支えた、徹底した市場分析と現地特性を重視した戦略

Wargaming.net、グローバル・ブランディング・ディレクター Alister King氏
King氏の最も象徴的な仕事は、Wargaming.net自体のブランドデザインだ

 Alister King氏は、Wargaming.net製品のブランドを確立し、それを世界各地に適切な形で広げていくことをミッションとしている。現在世界数十カ国に展開しているWargaming.netの運営・PR部門の総元締め的な役割といったところだ。

 そんなKing氏の最も象徴的な仕事は、“Let's Battle”というキャッチフレーズを冠したWargaming.netロゴのデザイン。実はこれ、とあるゲームブランドのロゴ&キャッチフレーズを元に発想されている。「FIFA」シリーズなどでお馴染みの、“EA Sports, It's in the game”だ。

 King氏がWargaming.netに参加したのは、「WoT」がまだ今ほど有名でなく、ロシア・欧州から北米に展開するかしないかという段階にあった2011年のこと。それ以前、King氏は93年から2004年までElectronic Artsに在籍していた経緯がある。

 King氏は新たにWargaming.netのブランドイメージを打ち立てる際、ユーザーに対してわかりやすく作品のメッセージを伝えることを重視。そこで「EA Sports」のロゴとわかりやすいモットーを併記するスタイルから強いインスピレーションを受けたのだという。

 Wargaming.netのタイトルはF2Pであり、Play to Winであり、チームベースのゲームで、グローバルなオンラインバトルというイメージを持つ。それが“Let's Battle”というシンプルなフレーズに集約された。

 同様の、一言でモットーを伝えるフレーズはWargaming.netの開発する各タイトルにもそれぞれKing氏によって考案され、ゲームロゴとともに使われている。「WoT」の“ROLLOUT”、「World of Warplanes」の“GET AIRBORNE”、「World of Warships」の“ACTION STATIONS”、モバイル版「World of Tanks: BLITZ」の“MOBILIZE”。全部が全部、ミリタリー系の用語でまとめられているのが面白い。

 King氏が担うもうひとつの重要な仕事は、市場を調査し、顧客への理解を進めること。そのための1つの取組みとしてWargaming.netでは、King氏の参加以降、毎年1万人程度のユーザーを抽出して、各30分ほどのアンケート調査を実施しているという。

 その積み重ねを経て現在、Wargaming.netではユーザー/潜在ユーザーを6種類に分類して市場を研究している。まず、比較的訴求しやすい対象となるのがコアゲーマー、ライトゲーマー層、ミリタリー愛好家層の3つだ。

 さらなる訴求対象として、日本市場では、King氏らが“ヤングガンナー”と呼んでいる層に注目しているという。対戦ゲームが好きで、主にコンソール機でアクションベースのゲームをプレイしているタイプのユーザーだ。次に重視しているのは、戦史や戦略・戦術にアカデミックな関心を持つ壮年の“シニアヒストリアン”層、そして汎アジア的に有望な層とされるのが、裕福で充実したリアルライフを送る壮年層“ソーシャルシニア”。この層は基本的にゲームから縁遠い人たちだが、いったん趣味にのめり込めば大量の消費を行なう層、という認識だ。

 Wargaming.netでは新たな地域にサービスを展開する際、これら6つの層から地域特性に応じて最低3つのカテゴリーに集中してユーザーの獲得を目指すという戦略を採っている。その中で、King氏は各地域それぞれの特殊性を重視。これについて、「ブランド全体として守らなければならないルールもあるが、文化的な違いについては現地のスタッフが1番よく知っているはずだから、かなりの柔軟性をもって彼らの判断を尊重している」と語る。

 日本版サービスのローンチとともに展開された「ガールズ&パンツァー」コラボキャンペーンは、まさに、そういった現地事情を尊重する姿勢から実現したものだ。Kings氏はこれについて「かなり酔狂だなあとは思いましたが」と、それなりに悩んだ上での決断だったことを匂わせている。逆手に見れば、「ガルパン」コラボの実現は、ウォーゲーミングジャパンのスタッフへの信任の篤さを感じさせるエピソードとも言える。

日本市場の伸びに一定の評価。謎の新作情報もチラリ?

昨年、「WoT」のEスポーツ的な側面の重要性に開眼したというKing氏
世界規模で展開し始めたWargaming.net League

 次いで、ローンチからおよそ9カ月を経た「WoT」日本版サービスの推移について。Kings氏は「最終的な判断をするにはまだ時期尚早」としながらも、悪くない数字が出ているとの認識を示した。その中で、そもそも「WoT」は現在1番の盛り上がりを見せているロシアでも、始めはかなりのスロースタートだった経緯を指摘。今後はアジア全域での伸びも手伝い、日本でもさらにじわじわと、いずれはロシアのように広がっていくことを期待しているという。

 その日本を含むアジア圏での展開上、カギとなるもののひとつが、Wargaming.net作品のe-Sports的な側面だろう。2013年には公式大会の頂点となるリーグ、Wargaming.net Leagueの設立がアナウンスされ、今年5月に正式にシーズン1がスタート。アジア圏ではWargaming.net League Asiaとして、日本も含めた巨大なトーナメントシステムが動きはじめている。1シーズン毎に行なわれる決勝大会の優勝賞金は6万ドルにも及ぶという、極めて大規模なものだ。

 当のKing氏は、去年までEスポーツに関わったことがなかったというから驚きである。Eスポーツ的な展開を重視する切っ掛けとなったのは昨年、ソウルのショッピングモールで行なわれたローカル大会を視察したことだ。そこでプロフェッショナルな選手、同様にプロフェッショナルな司会、実況、運営を支える裏方、諸々の体制と会場の盛り上がりを見、「ゲームというエンターテイメントがひとつ上の何かになっている」ことを実感したという。

 それを反映し、Wargaming.netでは「WoT」のEスポーツ的な側面をさらに重視するようになったようだ。King氏によれば、各地域にEスポーツを担当するチームを配置し、割り当てる予算も増額中。大会賞金も引き上げて、今後さらにWargaming.net Leagueを大きなものにしていきたいと語っていた。

 これに関連して、最後に意外な情報が飛び出した。Wargaming.netは昨年、クリス・テイラー氏が率いる北米のゲームスタジオGas Powered Games(「Dungeon Siege」シリーズや「Supreme Commander」シリーズ、近年では「Demigod」、「Age of Empires Online」などのストラテジックな作品で知られている)を買収しているが、いままさにそこで、Wargaming.netブランドのe-Sports的な作品を開発中であるという。

 クリス・テイラー氏の作風でe-Sports的なものというと、「Dota」、「League of Legends」的なMOBAジャンルになるのではないかと想像されるが、そのあたりは今は全く開かせないとのこと。正式な発表は来年のE3になりそうだ、との情報を経たところでKing氏への取材を終えた。

 高品質のゲームをF2Pで、Play to Winのコンセプトを頑なにまもり、良質のサービスを提供することで大きな成功を収めたWargaming.net。戦車、戦闘機、戦艦の世界を越えて、さらに地平線を広げていくことになりそうだ。この勢いは当分止まりそうにない。

(佐藤カフジ)