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【特別企画】究極のゲーム録画環境「ShadowPlay」が遂にリリース!
事前情報に偽りなしの低負荷・高画質! さっそく試してみた
(2013/10/28 22:00)
10月22日、NVIDIAは「ShadowPlay」のβ版を一般公開した。これはKeplerアーキテクチャのGPUを搭載するGeForce GTXシリーズ(600番台以降)を使用しているユーザーなら誰でも利用できる、新たなゲーム録画・配信のソリューションだ。
ゲーマーにとって自分のプレイを動画で記録したり、あるいはリアルタイムに配信して友人やファンを巻き込んで楽しむスタイルがますます一般的になりつつある昨今。従来はCPUリソースをバカ食いするソフトウェアエンコードや高価な拡張ボード型のキャプチャーシステムを使用するしかなかったが、「ShadowPlay」はもっと手軽に利用でき、しかもPCに負荷をかけず1080/60p録画が可能という超高性能がウリだ。
これはPCゲームとビデオキャプチャーのありかたを変えるものになるかもしれないということで、一般公開に先立ち試用・検証してみたのでさっそくレポートをお届けしよう。
「GeForce Experience」に統合される「ShadowPlay」の正体
「ShadowPlay」は、NVIDIAがフリーで配布しているGeForceユーザー向けのゲーム最適化ユーティリティ「GeForce Experience(GXP)」の1機能となるフィーチャーだ。
「GXP」はもともと、GPUドライバを最新に維持し、PC性能に合わせたゲームの最適設定をサジェストしてくれるというツールだった。そこに「ShadowPlay」機能が加わることで録画・配信機能もカバーし、PCゲームのフロントエンドツールとしてより汎用的なものへと進化していくことになる。
「GXP」は自動アップデート機能を持っているので、すでに導入しているユーザーなら、次にPCを起動するときから「ShadowPlay」が使える。まだ「GXP」を導入していなければ、NVIDIAのサイトからインストールしよう。Kepler搭載PCは必要だが、無料で手に入れることができる。
さて、「ShadowPlay」とは何者なのか? PC負荷をかけずに1080/60p録画が可能な理由は? なぜKeplerアーキテクチャ搭載GPUが必須なのか?
技術的に言えば、「ShadowPlay」は、Keplerアーキテクチャ以降のGPUに搭載されているH.264ハードウェアエンコーダー「NVENC」を使用するビデオキャプチャーツールだ。だからKepler以降のGPUが必須となっているのだ。この「NVENC」の性能は凄まじく、NVIDIAによる技術者向けのSDKページによれば“1080/30p動画を8本同時にエンコードできる”というほど。1080/60pなら同時4本だ。
実はこれと同じものが業務用向けGPUのQuadroやサーバー向けのTeslaにも搭載されていて、例えばクラウドゲーミングシステム「NVIDIA GRID」で活用されていたりする。それらの実績を経てエンドユーザー向けに公開できるようになったテクノロジーが「ShadowPlay」というわけだ。
Geforce GTX 600シリーズの登場から2年、こんな凄いものをなぜ今まで使えなかったのかと怒りが湧いてきそうだが、ともかくようやくのβリリースだ。では気になる使い勝手や性能をチェックしてみよう。
常時バックグラウンドで録画!ワンキーで保存!しかも超高画質!
さて、「ShadowPlay」へのアクセスは簡単だ。「GXP」を開くと(通常はタスクバー右下の通知領域にあるNVIDIAアイコンをクリックすれば立ち上がる)、ウィンドウ右上に「ShadowPlay」ボタンがあるので、これをクリックすればいい。
現時点の「ShadowPlay」はβ版で、ライブ配信者にはゲーマー垂涎のTwitch配信機能が残念なことにまだ実装されていない。このため現時点で利用できる機能はローカル録画機能のみということになっている。まあ、それだけでも本機能は余りあるほどスゴいので、使い勝手を見ていこう。
まずは「ShadowPlay」設定ウィンドウの左端にあるトグルスイッチをクリックして機能を有効化しよう。デフォルトではバックグラウンド録画(シャドウ)がONになっており、このままゲームを始めればもう、録画機能が勝手に働くようになっている。
設定項目は以下のとおり。
・モード
シャドウ&手動:バックグラウンド録画に加えて手動での録画オンオフ
シャドウ:バックグラウンド録画のみ
手動:録画のオン/オフを手動のみで指定
・シャドウ時間
バックグラウンド録画時間を1~20分の間で設定
・クオリティ
低:およそ15Mbps
中:およそ20Mbps
高:およそ50Mbps
・オーディオ
ゲーム内:ゲームサウンドを録音
オフ:サウンド録音なし
ゲームの起動後、画面端に“○”型のアイコンが表示されれば、ShadowPlayが効いている証拠だ。上記設定で“シャドウ&手動”もしくは“シャドウ”を選んでおけばすでにバックグラウンド録画が開始されている。ゲームをプレイして、良いプレイができたと思ったらAlt+F10で過去“シャドウ時間”ぶんの動画をHDDに記録だ。
Alt+F9を押せば手動録画のオン/オフができる。録画された動画は、“ゲーム名+タイムスタンプ”のフォーマットでファイル化されており、メディアプレーヤーで即再生が可能だ。動画の保存場所は「GXP」の基本設定画面の「ShadowPlay」項目にて指定できる。デフォルトではCドライブになっているので、それで困る場合は容量の大きいHDDを指定しておくといいだろう。
そして気になる画質だが、これが凄まじい高画質だ。画質設定“高”では、動画であることがわからないレベル。ここからの再編集を行なっても高画質な動画が作れそうだ。“中”でも動画特有のモスキートノイズ等はほぼ気にならないレベルで、“低”ですらそこらのハードウェアエンコーダーを遥かに超える画質である。以下に静止画を示す。これが60fpsでヌルヌル動く、凄いでしょう? なお、サンプルとして10秒の高画質設定の動画も用意した。ダウンロードはこちら。
次にパフォーマンス面をチェックしたい。下の画像は「ファンタシースターオンライン 2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」における、「ShadowPlay」オン/オフでのベンチマーク結果比較だ。
その差は5%程度……しかも実際には「ShadowPlay」オンにした際、最大フレームレートがやや下がるものの最低フレームレートはほぼ変化なしだった。280fps出るシーンが260fpsになり、150fpsしか出ないシーンでは148fpsになる、という感じである。
これは「ShadowPlay」の使用によって加わる負荷が固定値であることに由来する。より重いゲームであれば、「ShadowPlay」がゲームのフレームレートに与える影響はより低下する。ギリギリ120fpsをキープするような重めのゲームであれば1fps下がる程度だろう。VSYNCを入れて60Hzや120Hzでゲームをプレイするなら、事実上“負荷なし”といって差し支えない。凄いでしょう?
最強だ。しかし、できないこともある
“負荷なし”といって差し支えないほどの低負荷、そして動画とは思えないほどの高画質録画を実現する「ShadowPlay」。バックグラウンド録画を活用すればいいシーンの取り逃しもナシ。いいこと尽くしで既存の録画・配信ソリューションが壊滅しそうな感じもするが、それについてはそうでもない。
実は「ShadowPlay」ではできないことも多い。例えば、現在のところ「ShadowPlay」で録画できるのはOpenGLかDirectXを使用し、フルスクリーン・エクスクルーシブで動作するアプリケーションのみ。ウィンドウモードでの録画や、デスクトップ録画、任意領域の録画など、他のキャプチャツールではできることができない。
また、録画できる解像度・フレームレートは固定で1080/60pのみ。それ以下の解像度でゲームを実行した場合、自動的に1080pへ拡大される。ビットレートも3種類の設定で固定なので、“720pのそこそこ画質でいいので低ビットレートでコンパクトに録画を……”というニーズにはちょっと答えられないのが現状だ。
ゲーム画面を任意サイズにリサイズ・クロップしたり、別のメディア(画像やウェブカム映像など)をオーバーレイ配置するなども現時点では不可。この点では「XSplit」のようなプロユースもカバーする録画・配信ソフトに分がある。
また、実況動画を作る際のマイクからの音声入力は、サウンドミキサー経由での録音は可能だが、予めマイク音声をスピーカーから出す設定にしておく必要があり、自分の声のエコーに悩まされながら実況するはめになる。その手の設定が要らない「ロイロゲームレコーダー」に比べると面倒臭い。
という感じで「ShadowPlay」は録画・配信がらみの全てのニッチを埋めるわけではない。しかしGeForce GTX 600以上を使用する全てのユーザーが、低負荷・高画質のキャプチャ環境を手にするというのは非常に素晴らしいことだ。少なくとも中途半端な性能のハードウェアエンコードボードは完全に用なしである。
・最後にちょっと気になる点
筆者環境にて、「ShadowPlay」で録画した動画をコマ送りで細かくチェックしたところ、およそ24フレームごとに2フレーム、同じ画像が続く(エンコードのフレームドロップ)現象が見られた。これが些細ながら動画にコマ飛び感を与えている。
エンコーダーチップ「NVENC」の性能的にはあり得ない現象なので、ドライバか「ShadowPlay」のソフトウェア実装に何らかの瑕疵があるのかもしれない。こういった点の改善や、Twitch配信機能の対応も含め、将来の拡張・発展に大いに期待したい。