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キャラホビ、大河原氏のぶっちゃけ炸裂の「クリエイターズトークサミット」
「リアルロボット」について、メカデザイナーやモデラーが熱く語る
(2013/9/2 00:00)
キャラホビ2013の「リアルロボットミュージアム」では、メカニカルデザイナーなど“リアルロボット”に関わるクリエイター達による「クリエイターズトークサミット」が行なわれた。
トークサミットでは、「機動戦士ガンダム」シリーズを始め、サンライズ作品やタツノコ作品など無数のロボットを生み出したメカニカルデザイナーの代表者と言える大河原邦男氏をはじめ、ニトロプラス作品のメカや、アニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」などのロボをデザインした石渡マコト氏、「スーパーロボット大戦」シリーズのプロデューサーを務める寺田貴信氏、「ヴァルヴレイヴ」で様々なアイデアを盛り込んだりコンセプトを提示したメカニカルコーディネーターの関西リョウジ氏、プロモデラーのNAOKI氏が登壇した。司会を務めたのはバンダイホビー事業部の川口克己氏。
40年以上もメカデザインの現場に立ち続けている大河原氏、大河原氏の作品を見ながら成長し、“リアルロボット”、“スーパーロボット”という概念を提示した寺田氏、そして若手クリエイター達のトークは非常に“濃く”、大河原氏が「実はあの作品は……」とぶっちゃけトークを炸裂させたりと、楽しいイベントとなった。
リアルロボットって何? 現役クリエイターのロボットへのアプローチ
「クリエイターズトークサミット」の司会を務めたバンダイの川口氏は、“川口名人”と呼ばれ、ホビージャパンなどでモデラーとして活躍、バンダイ入社後はガンプラの開発に深く関わっている。イベントで川口氏はプラモデル開発者としての知識を交えながら進行していった。
最初の議題は「リアルロボットの定義」。もともと、リアルロボットというのは何なのか? と言うのは様々な意見があるところではあるが、「リアルロボット」と「スーパーロボット」という“分類”をはっきりと提示したのは、「スーパーロボット大戦」シリーズであると言えるだろう。
寺田氏は、「昔は説明できるエネルギー、核融合エンジンや電力で動いているのをリアルロボット、光子力やゲッター線など不思議なエネルギーで動いているのをスーパーロボットと分けていたが、最近はリアル路線のロボットも謎のエネルギーで動いていたり、動力源では判断できなくなっています。定義が難しくなっていますね」と語った。
関西氏は動力源などを設定するメカニカルコーディネーターだが、「スーパーとリアルは曖昧ですが、ビジュアルで分けられるかなと。ロボットの携行武器、シールドやライフルといった、人が戦いに使う武器をメインウェポンにしているのがリアルロボットかも、と言う感覚があります」と語った。
石渡氏はデザイナーとして注文される時点で設定は決まっているので、リアルロボットというものを意識はしていないが、「整備しているシーン」が入ると、ロボットのリアルな感覚が強まるという。NAOKI氏もプラモデルを作るとき、演出としてリアルさを強めることはするが、そのロボットそのもののリアル感というイメージは意識していないという。操縦方法など物語の演出で意識するとのこと。
大河原氏は、「こういう作品で、こんな活躍をするロボットを作って欲しい」という要望に応えていっただけであり、リアルやスーパーという判断は視聴者のものだと語った。あくまで作品が要求するロボットを考えるというスタンスである。では発注側はどうかというと、寺田氏はスーパーロボットを意識してデザイナーに発注する場合は、大きく、強く、謎のエネルギーで、必殺技は乗り手が絶叫する、顔がついている、といったポイントを意識するという。
「装甲騎兵ボトムズ」の高橋良輔監督や、「銀河漂流バイファム」の神田武幸監督が手がける作品はリアル志向が強かったという。大河原氏は彼らは戦中から戦後の「鉄がもつリアリティ」といえる確固たる価値観として持っているため、仕事としてやりやすかったという。世代によって素材に関しての感覚も変わり、定義の方向性も変わっていくとのことだ。
次の議題が「リアルロボットを創造するときに気をつけること」。石渡氏は「人がどう乗り込み、動かすか」という“乗り物感”がリアル感を生むと語った。コクピットを開け、搭乗する。そのシークエンスがロボットの実在感を生む。「ボトムズ」のスコープドッグはまさに“人がどう乗るか”にこだわったデザインだと感じたという。
大河原氏はスコープドックについて語った。前作に当たる「太陽の牙ダグラム」は10mの身長があり、乗り込むシーンなどが書きにくかった。スコープドッグはその反省点で、全長は4m、乗り込むためにコクピットが下がってくる「降着ポーズ」を設定している上に、すねの所に足がかりになるバーなども設定されている。
川口氏は一方で「合体」や「変形」というリアルからかけ離れたギミックをどうリアルロボットに盛り込むかというのも面白い部分だとクリエイターに意見を求める。石渡氏は、「ヴァルヴレイヴ」は武器の変形ギミックは、1アクション足すことでリアルさを意識したという。ギミックを入れるのはデザインも難しくなり、リアル感は減るが、「受け手としてうれしい所もある」と大河原氏は語った。
「そもそもリアルって、バンダイのプラモデルからじゃないかな?」と言ったのは寺田氏。ガンプラ初期には「リアルタイプモデル」として、緑の成型色に細かいデカールを貼り付けるプラモデルが発売された。寺田氏は何がリアルかはわからなかったが、それでも「これがリアルか」と“納得”したという。この頃は「ガンダム」の映画のポスターもアニメの設定とは全然違う色や、ディテールの異なるMSが描かれていた。「あの頃は、そういうのも許されたんですよ」と大河原氏は語った。
原作にミリタリーテイストを加えていった「リアルな描写」をしたプラモデルが、リアルロボットを形作っていった。プラモデルで補完されたり、強調されたディテールがリアルロボットの世界を深めていった1面もあると川口氏が語った。
「リアルを感じた作品は?」という議題で、NAOKI氏は「ダグラム」にリアルを感じたという。顔がキャノピーで運用の仕方もリアルを感じたという。大河原氏は「タカラがプラモが売りたかったので、タカラの要望で頭をキャノピーにして、内骨格もきちんと設定したんだよね」と語った。関西氏は、ギャグテイストの強かった「超力ロボ ガラット」にリアルを感じたという。ガラットは“通学用のロボット”で、何かがあると巨大化して変形して戦う。設定はファンタジーだが、主人公が通学にロボットに乗るという所にリアル感を感じたとのこと。
大河原氏は「ガラットは主人公ロボが3体いて、変形するから6つも顔を考えなくてはいけなかった。顔の設定は『ガンダムSEED』の福田己津央監督なんだよね。変形ギミックはモックアップ(模型)も作って設定したんだ」と語った。石渡氏は「機甲戦記ドラグナー」だという。大河原氏は「あれ売れなかったんだよね」とバッサリ。石渡氏は「でも自分は大好きでしたよ」と答えた。ドラグナーがナイフを持っていたため、ヴァルブレイブもナイフを持っているとのことだ。
寺田氏にとって子供の頃に見た「ガンダム」はスーパーロボットだったと語った。戦闘員のザクを倒すガンダムは格好良かったし、鞭を使うグフが大好きになった。鎌を持ったザクレロを知ったときは「これだ!」と喜んだ。Gファイターも大好きだったという。リアルロボットの元祖であるガンダムだが、少年の寺田氏にとってはスーパーロボットそのままだったとのことだ。
リアル、と言う意味では「きちんとできる変形」を大河原氏は常に意識し、モックアップを作ってデザインに望むことが多かったという。実現できる変形プロセスを考えるのは本当に楽しかったと大河原氏は語った。大河原氏の提示した“リアル”は間違いなく現在のロボットデザイン、玩具デザインに大きな影響を与えている。
NAOKI氏はモデラーだけでなく、メカデザインなどもやっているが、自分で作りながら、デザインを行なう。この際、作ることとデザインすることを交互に行なうという。作る側だけ、書く側だけのデザインではなく、並行して進めることでより面白いデザインができると語った。
登壇者今後の活躍に関しては、「革命機ヴァルヴレイヴ」のアニメの2期が始まる予定で、NAOKI氏も「電撃ホビーマガジン」で「スーパーロボット大戦」の外伝の連載が始まるとのこと。「スーパーロボット大戦」の最新作プレイステーション 3用対戦アクション「スーパーロボット大戦OG INFINITE BATTLE」が11月に発売を予定している。また大河原氏がデザインした玩具以外の様々な製品も近々発表されるとのことだ。