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MOアクション「ティアラ コンチェルト」開発・運営インタビュー

アクションと“アニメ文化”にこだわった音楽の魔法と機械の世界

2月6日 クローズドβテスト開催

 ガマニアがクローズドβテストを予定しているWindows用MOアクション「ティアラ コンチェルト」。1月29日にはティザーサイトにて特設ページを公開し、募集を受け付ける予定だ。テスト実施は2月6日から1週間程度の予定だ。

 「ティアラ コンチェルト」は香港Firedog Studioが開発しており、日本が最初のサービスとなる。2012年9月に限定されたユーザーでの「オフラインテスト」、さらに12月には2,000名を対象にしたデバッグテストを行ない、ユーザーの意見を受け開発を進めている。

 今回、クローズドベータテストに先駆け、Firedog Studio COO兼プロデューサーのGabriel Pang氏と、クリエイティブプランニングディレクターを努めるAki Li氏が来日。本作の日本運営を担当するガマニアオンライン事業本部オンライン運営部運営1課ディレクターの金子朋嗣氏の3人にインタビューを行なった。また「ティアラ コンチェルト」の序盤も触ることができたので、その感触もレポートしたい。

「ティアラ コンチェルト」インプレッション。戦闘中でも多彩なイベントが展開

キャラクター作成画面から開発者のこだわりが感じられる
装甲服に身を包んだ敵が空から襲いかかってくる。ロボットアニメ風の演出だ
キャラクターのエモーションは多数用意される

 「ティアラ コンチェルト」はキャラクターのかわいらしさと、開発者の強い思い入れが感じられる世界観が魅力のMOアクションである。プレーヤーはヒューマン、エルフ、ビーストの3種族から1つを選ぶ。職業は強力な近接武器を使う「ファイター」、銃を使う「レンジャー」、音楽により範囲攻撃や召喚魔法を使いこなす「チューナー」の3つが用意されている。

 「ティアラ コンチェルト」ではキャラクター作成画面で強い印象を与える。3種族、3職業の女性のキャラクターモデルはアニメ風のかわいらしいデザインで、装備も細かく作り込まれているのがわかる。人間は凛々しさも持っており、ビーストはセクシーさがあり、エルフは体の小さな少女風だ。男性はかっこうよさと、ワイルドさがある。装備や武器は作り込まれている。ファンタジー風を基調としながら独特のスチームパンク的な要素も追加されている。

 ゲームの序盤はチュートリアルとなっているが、ストーリーや演出もきちんと入っている。空を飛ぶ船とその中の船員であるプレーヤーキャラクター。密航者の青年との出会いと、突然の“敵”の襲撃、謎の美少女の登場といった様々な要素が盛り込まれている。NPCが戦闘に参加したり、会話シーンが入ったり、開発スタッフが様々なことに挑戦しているのも伝わってきた。敵が空飛ぶパワードスーツに身を包んでいたり、SF要素、ロボットアニメ的な雰囲気も感じられるのが面白かった。

 チュートリアルを終えると空に浮かぶ島の上での冒険が始まる。「ティアラ コンチェルト」はMMOである街とインスタンスダンジョンを行き来するというオーソドックスなMOアクションで、パーティは最大4人で組める。序盤の敵は攻撃をする際のモーションなどもわかりやすく、戦いの駆け引きが楽しめると感じた。

 インスタンスダンジョンでモンスターに襲われているNPCを助けたり、ボスが出る前にカットインの演出が入ったり、街道をふさぐ敵を倒したとき喜んで街道を通っていく商人を見送ったり、ストーリー要素がきちんとゲーム内に盛り込まれており今後にも期待させられた。

 音楽も非常にリッチで、聞き応えがあった。「ティアラ コンチェルト」の世界は音楽を基礎にした魔法技術で作られており、武器も楽器をモチーフにしたものがあるなど、「音楽」に大きくフォーカスしている。“耳”でも楽しめそうなゲームとなりそうである。

 今回はエルフのレンジャーでプレイしてみたのだが、ライフル状の武器は2つの銃を合体させた形で、戦闘用の服には背中にロケットノズルがついていたり、メカニックへのこだわりも感じさせられた。もう1つの装備も見ることができたが、こちらはかわいらしいセーラー服風のワンピースで、赤いランドセルにリコーダーがささっていた。かわいらしいものが好きな人にはグッとくるデザインでこういったユニークなアバター要素も期待できそうだ。

 全体的に開発者たちの強いこだわりを感じさせる作品だと感じた。キャラクターデザイン、世界観、アイテム、そして音楽と、魅力的なポイントが多い。最初のストーリー要素の強いチュートリアルや、ステージ感の演出などでも「新しいことをやろう」という想いが感じられた。注目して欲しいタイトルだ。

チュートリアルも兼ねた序盤の展開から、NPCの共闘や、個性的なキャラクターなど、ストーリーテリングへの注力を感じさせられる
空に浮かぶ島を舞台とした冒険が始まる
MOダンジョンではアクション性の高い戦闘の駆け引きが楽しめる。序盤は敵の動作も見切りやすい

間口は広く、爽快に。冒険はやがて異世界までも広がっていく

香港Firedog Studio COO兼プロデューサーのGabriel Pang氏
クリエイティブプランニングディレクターを努めるAki Li氏
本作の日本運営を担当するガマニアオンライン事業本部オンライン運営部運営1課ディレクターの金子朋嗣氏

 今回インタビューを行なったのは、今回、クローズドベータテストに先駆け、開発元の香港Firedog Studio COO兼プロデューサーのGabriel Pang氏と、クリエイティブプランニングディレクターを努めるAki Li氏。「ティアラ コンチェルト」の今後の展開や、開発のこだわりといったところを質問してみた。

 気になった部分は、やはりボリューム部分だ。MOコンテンツはステージを作り込むが、ユーザーはあっという間にプレイしつくしてしまう。「ティアラ コンチェルト」はどのくらいのユーザーのプレイを意識してコンテンツを作っているのだろうか。

 Pang氏は、「ティアラ コンチェルト」のクローズドβテストを2月に予定しているが、正式サービスを100%として、クローズドβテストでは80%の内容が実装されると答えた。正式サービス時にはキャラクターのレベルキャップをレベル40、1日2~3時間プレイするる人で2カ月くらいは遊べる内容を正式サービスまでに準備するという。アップデートは1カ月ごとに行なっていく予定で、2カ月に1度は大型アップデートを行なっていければと考えている。

 「『ティアラ コンチェルト』のゲームの方向性としてはやはりアクションにこだわっていきたい。コンソールゲームのようなプレイ感、アクションの駆け引きが楽しめるオンラインゲームにしていきたいです。私たちは大規模なオンラインゲームは本作が最初ですが、爽快感と楽しさを追求し、アクション部分はこれからも改善していければと思っています」とPang氏は語った。

 台湾・香港のディベロッパーでアクション性の高いオンラインゲームを作る会社はまだ多くない。このため「ティアラ コンチェルト」開発には様々な試行錯誤があったという。アクションに関しては、コンシューマーのアクションゲームを意識し、モンスターとの戦いはできるだけスピード感のあるものにしていきたい。敵の動きを研究したり、キャラクターの攻撃の能力を使いこなすなど、プレーヤーが戦い方を学びながら成長していくようにしていきたいという。

 ファイターは近距離攻撃が強く、レンジャーは遠距離からの攻撃が得意、といったキャラクターごとの戦いを活かすため、現在力を入れて調整している部分が「カメラの角度」の調整だ。モンスターとプレーヤーの位置関係をどうとり、攻撃が当たっているときわかりやすい角度はどこか、現在この部分でのベストな位置を考え調整している。敵の姿をきちんと見えるようにしていく。

 ただし、アクションがそれほど得意ではない人のために、戦闘がきつければレベルを上げ、キャラクターの能力を上げることで力押しでも進めるバランスにしていく。また時間をかけることで倒せるようにする。アクションのうまさ、スキルの有効範囲などを見切った上での戦い方といった、コアな要素は今後実装されるPvPや高難易度ダンジョンなどで活かしていく方向性だ。

NPCが戦闘に参加してきたり、敵の攻撃のモーションを強調したり戦闘に対して様々なチャレンジをしているのが確認できた

西洋や南米の文化、SF要素まで盛りこんで作る世界観

ワールドマップ。まず半分が実装されるという
背中のブースターや、2つに分かれる銃など、メカニックへのこだわりが感じられる
こちらはセーラー服風の衣装。ランドセルにはリコーダーが刺さっている

 世界に関しては、現在見ることができるワールドマップは、正式サービス時は半分ほどが実装される。それ以降のマップは半年から9カ月ほどで実装していく。「ティアラ コンチェルト」は“3部曲”という3つのパートを現在予定しており、1部が正式サービスで予定している世界の半分、2部で残りの世界を実装し、3部では新たな世界での冒険となる。

 アクションともう1つ、「ティアラ コンチェルト」でこだわっているのが世界観だ。まず“音楽”をテーマに世界観を構築すること、そしてデザイン面では西洋風の要素を盛り込み、服のデザインなどを進めていった。クリエイティブプランニングディレクターを努めるAki Li氏は西洋的な要素の方が、自分の知識やセンスを発揮できると考え、特にヒューマンの世界を西洋的な雰囲気を持たせてデザインした。

 “空に浮く島”というコンセプトはPang氏が以前から持っていたイメージで、これらを合わせて「ティアラ コンチェルト」の基本的な世界観が作られた。3部曲である「ティアラ コンチェルト」は最終的にはよりファンタジー要素が濃くなる予定で、現在の西洋的な雰囲気や、スチームパンクを思わせるところから、さらにファンタジー・SF要素を強めていくとのことだ。

 また、日本のユーザーにも共感できる「日本のアニメ作品でのファンタジー」というべき要素にも注目して欲しいとPang氏は語った。ゲームのチュートリアル部分は、空を飛ぶ船が他の船に襲われるというところで、宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」の冒頭シーンを思わせる。また、敵の船から発進するパワードスーツや、迎え撃つ対空砲火はロボットアニメ的演出だ。

 Firedog Studioはほぼ全員が日本のアニメやコミックが大好きだという。このため、自分の好きな要素につよい影響を受けて作品に活かしている。チュートリアルのカットシーンは社内でも「これはラピュタそっくりではないか?」という意見があり、現在のバージョンはかなり修正したが、それでも「空に浮く島」や、空を飛ぶ船が行き交う世界といった要素などで「ラピュタ」を思わせるところはどうしても出てきてしまうという。

 デザイナーは様々な“自分の好きなもの”を追求してアイデアを出してくる。Li氏はそれらを「ティアラ コンチェルト」の世界観に合うように調整していく。この世界には人間、エルフ、ビーストの3種族が暮らしているが、人間は西洋風、ビーストはマヤ文明など南米風の雰囲気を取り入れている。エルフはスチームパンクの要素を濃くしている。

 「ティアラ コンチェルト」の世界は、かつて先進的な科学文明を持った人々が、ある災厄から逃れるために住んでいる大地を空に浮き上がらせた。プレーヤーキャラクターたちは空に逃れた人々の子孫である。エルフは滅びる前の科学技術を細々と受け継ぐものたちであり、空を飛ぶ船や銃、装甲服に取り付けられたブースターなどSF的な要素はエルフがもたらしているとのこと。

 本作ではわざとオリエンタル要素を排除しているとLi氏は語った。オリエンタルな要素は今後特別に、凝縮した形での実装を考えているという。Li氏は個人的に西洋的要素が大好きで、アバターなどは様々な時代の西洋で実際に使用されていた服装を取り入れている。また、ビーストは“タトゥー”に注目して欲しいという。タトゥーに国の意味を込めたり、様々な資料での知識が活かされている。

 メカニック好きなスタッフも様々なアイディアを詰め込んでいる。メカ要素に深く関わるエルフには現時点ではまだ語られていない秘密があり今後さらにメカ要素もパワーアップしていく予定だ。エルフは過去と現在をつなぐ存在でもある。「機動戦士ガンダム」などメカアニメが好きなスタッフがこだわりを込めて企画中だ。

 またLi氏も最初気がつかなかったのだが、街には壊すことができるオブジェクトなどが置いてあり、プレーヤーのアクションに反応するものを置いてある。これは開発スタッフがこっそり入れたもので、ぜひ探して欲しいとのこと。

 日本のユーザーに向け、日本のアニメコンテンツが好きな開発者が自分の作品をサービスできるということで、Firedog Studioのスタッフはかなり意欲を持って開発を行なっている。日本の声優などにも詳しく、日本のガマニアを通じてゲームの声優の要望を出しているが、ガマニアスタッフ側のアニメファンの視点からもキャスティングには納得で、改めてFiredog Studioの日本のコンテンツへの愛に驚かされたとのこと。ガマニア側も声優要素は強化していく予定で、現在は各種族男女ごとに1人づつしかキャスティングしていないが、今後は声優を増やしていく予定だ。

MOアクションへの挑戦。意識の高いユーザーに答えるための試行錯誤

日本のコンテンツに対して、深い愛情を持っているという。女性のLi氏がロボットアニメ大好き、というのはちょっと意外で面白い
世界の様々なところに、開発者のこだわりが込められている

 「ティアラ コンチェルト」は他国でサービスされているゲームを日本に持ってくるという形ではなく、日本が最初のサービスとなる。ガマニアは「一緒に開発していく」という姿勢をもち、2012年12月に行なわれた2,000名を対象にしたデバッグテストに関してはゲームで寄せられた意見を公式ページで紹介するなど、「ユーザーの声を開発に届ける」方針を強く打ち出した。

 ユーザーの意見としては他のオンラインゲームのタイトルや、コンシューマーゲームと比べての差異、操作性に関する要望が大きかった。「スピード感」という部分では、スキル発動前のモーションや、タイミングでの要望が多かったという。キャラクターのモーションや、ダウンでの回復速度など、非常に細かい指摘も多く、こういった要素の積み重ねで「スピード感」を上げていくというのが課題になっている。

 また操作方法に関しては、現在の仕様では一端キャラクターを敵の方向に向けてから攻撃するようになっているが、カメラを回転させ敵を捕らえていれば、その方向にキャラクターが攻撃するという仕様を入れるべきか検討している。Firedog Studioはこれらの要望に応えていくために研究を行なっている。「きつい批判は結構傷つくこともありますが、できるだけ皆さんの要望に応えていきたいです」とPang氏は語った。

 開発側とユーザーの考え方の違いを感じた1つの例としてPang氏は「ファイターの剣のスピード」を挙げた。開発側は初期のキャラクターは剣がうまく使えないので、剣は重く、キャラクターの攻撃モーションを遅くすることで、駆け出しのファイターの雰囲気を出そうと考えていた。しかしテスターは「初期のファイターの剣は弱い代わりに速い剣を使いたい」といわれ、剣の振りを含めて動作が早くなるように設定した。ただ、PvPで剣が速すぎると強くなりすぎてしまいそうで、バランスを検討中だ。

 2月6日から予定しているクローズドβテストの後、オープンβテストを行なう予定で、クローズドβの2次テストなどは現在は予定に入っていない。オープンβテストまでは期間をあけていく予定だ。聞いた意見をきちんと活かしてオープンβテストを実施する予定だ。12月に寄せられた意見はオープンβテストに反映される。その1つが、キャラクターメイキングで、身長や胸の大きさなどもカスタマイズできる予定で、現在開発を行なっている。

 金子氏は「現在『ティアラ コンチェルト』はアクションMOとして、すごくフラットな場所まで来ている。普通に遊べる、楽しめる作品となっている。ここからどのような方向性を持たせていくか、どう強調していくかが課題だと感じています」と語った。

 最後に、「日本のコンテンツで、特に何が好きか?」というところも聞いてみた。Li氏は「ロボットアニメが大好き」だという。香港では昔から日本のロボットアニメが放映されていて、初代の「ゲッターロボ」が大好きで、ガンダムもこれまた最初の「機動戦士ガンダム」が最高だという。最近のアニメとしては「天元突破グレンラガン」がお気に入りということで、かなり硬派なロボットアニメが好きなようだ。

 Pang氏は“ライトノベル”が大好きで、エンターブレインの「まおゆう魔王勇者」や、アスキー・メディアワークスの「ソードアート・オンライン」などファンタジーの世界観が感じられる作品が好きだという。開発の中心である両氏の嗜好が作品にどう活かされるかも注目したい。

 ユーザーへのメッセージとしてPang氏は「是非プレイしていただき、要望をください。実装できるように努力したいと思います。よろしくお願いします」。Li氏は「私は日本のアニメ作品が大好きで、『ティアラ コンチェルト』はその想いを込めました。私たちの愛も感じてください」と語った。

 金子氏は「皆さんが何を期待し、求めているかを理解したうえで開発・運営で力を合わせよりよい作品に仕上げていければと思っています。『ティアラ コンチェルト』の今後にご期待ください」と語った。

(勝田哲也)