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海外で話題のメカアクションFPS「Hawken」インプレッション
AAAクオリティの本格F2Pゲームはワールドワイドのトレンドになるか?
(2012/12/28 15:00)
米国ゲームパブリッシャーMeteor Entertainmentは、12月13日にWindows PC用の基本プレイ無料(Free to Play: F2P)メカアクションFPS「Hawken」のオープンβテストを開始した。公式サイトで登録を行なえば、日本からでもすぐにプレイを始めることができる。ゲームクライアントは日本語化されているが、ユーザー登録や課金決済時に利用することになるWebサイトは英語のみとなっている。
「Hawken」はロサンゼルスにオフィスを構える小規模インディーズゲームデベロッパーAdhesive Gamesによる作品だ。当初予定されていたリリース時間から若干の遅延は生じたものの、今回のオープンβテスト開始を皮切りに各種有料アイテムの販売もスタート。事実上の正式サービスが始まっている。
本稿では、これまでのF2Pタイトルとはちょっと変わった存在感を持つ本タイトルについてのインプレッションをお届けしよう。
AAAクラスの映像で、ワールドワイドに展開するメカアクションFPS「Hawken」
1年半年ほど前に公開されたトレイラームービーでゲームファンの注目を一挙に集めた本作。開発には「Unreal Engine」の小規模開発向け版である「UDK」が採用されている。映像についてはご覧のとおり、現行世代のハイエンド水準を軽くクリアする雰囲気たっぷりのグラフィックスが実現されている。これをせいぜい6人程度のコア開発者で作ってしまったというのは驚きだ。
パブリッシャーとなったMeteor Entertainmentは中堅どころの事業者だが、当初からワールドワイド展開を主眼とし、世界各地にサーバーを設置。言語対応においても、主要欧米言語はもちろん、日本語を含む2バイト圏へのサポートも当初から組み込んでいる。
MMO「EVE ONLINE」やFPS「Halo」シリーズで見られるように、SFモノのゲームというのはニッチ度が高いかわりに、世界観・キャラクターデザイン等の点においてユニバーサル性が高く、文化の壁を超えやすい。それゆえにグローバル展開も比較的容易ということが言えるだろう。おかげで日本のユーザーも当初から母国語のUIで、軽いサーバーで遊ぶことができるのはいいことだ。また、このサービス形態からして、従来の海外製タイトルのように国内パブリッシャーが改めて“国内サービス”を展開するようなことはないだろう。
さて、「Hawken」はF2Pタイトルということで、ゲームのダウンロードも、実際のプレイも、いっさいお金はかからない。有料ポイント「Meteor Point」を使用して追加のメカや装備をアンロックすることができるが、ゲーム内で稼げる「Hawken Point」でも、時間は掛かるが同じことができるため、まったくお金を掛けずに遊び続けることも可能だ。
ゲームをはじめて最初に与えられるメカは、初心者用と位置づけられた基本のアサルトタイプ。そこそこの精度となかなかの攻撃力で使いやすい「攻撃用ライフル」と、他のFPSならロケットランチャー扱いとなる「ToWミサイル」が主力武器だ。他の登場メカと比べて万能タイプで、立ち回りをマスターすれば、これがなかなか強い。
操作スキームは一般的なFPSに近いが、通常移動はのっそりと遅く、「メックウォーリアー」や「鉄騎」のよう。SHIFTキー押下時にはブースターが起動し高速前進、横方向にブーストすれば一瞬の加速で攻撃をかわすドッジアクションが発動。こちらは「バーチャロン」的な動きだ。その一方で各種の攻撃はキッチリと照準を合わせる必要があり、全体のプレイ感覚は「Unreal」のように伝統的なスポーツ系FPSに近い印象だ。
立ち回りにおいては、連射の効くメイン武器は牽制・削りに使い、1発が重いサブ武器を確実に当てていくのが勝利のカギ。スキだらけの通常移動で敵をひきつけつつ、相手がサブ武器を発射するタイミングを見極めてドッジで交わしていけば、相当有利に戦いを進めることができる。
もうひとつポイントになるのが、ジャンプと空中機動だ。ジャンプ後にそのままスペースバーを押し続けるとしばらく空中に留まって移動することができる。「ToWロケット」の地面撃ちで爆風を当ててくる相手の狙いを無力化できるほか、ある程度険しい地形を無視して立ち回れるのがメリットだ。もちろん、燃料消費が激しいため、着地するまでに勝負を決めるか、障害物の背後に隠れるなどしたい。
このように、本作ではFPSの基本は踏襲しつつも、メカならではの差別化が図られている。正直なところ、巨大メカの移動は障害物にひっかかりやすく、丁寧にプレイしないとなかなか思い通りにいかない。高所に登ろうとして燃料がちょっとだけ足りず失敗することも多い。慣れないうちはこういった移動操作の特殊性が多大なストレスになるので、わりと遊び手を選ぶゲームだと言える。
そのストレスを超えて操作をマスターし、打ち合いの立ち回りもしっかり把握できてくれば、本作はなかなかの爽快感を与えてくれる。相手の渾身のロケット弾を華麗なドッジで交わし、戦いのペースを握る。相手を追い詰め、攻撃力の高いセカンダリ武器を命中させて破壊。ド派手な爆発エフェクトで「よし、次!」と気合も入る。まずはデスマッチかチームデスマッチで感覚を掴むのがオススメだ。
4つのゲームモードを戦い、新装備のアンロックを目指す
現時点で実装されているゲームルールは「デスマッチ」、「チームデスマッチ」、「ミサイルアサルト」、「シージ」の4種類。前の2種類は名前の通り、一定時間内のキル数を競うモードだが、後者2つはそれぞれ陣取り、CTF(Capture The Flag)の変形のようなものになっている。
「ミサイルアサルト」では、マップ中に3つ設置されたミサイル陣地の占領・維持を競う。「シージ」では、マップ中2つのエネルギーユニットからエネルギーを集め、基地に持ち帰って戦艦を発進させる。その後、対空ミサイルサイトを確保して防空し、やがて戦艦の攻撃で敵本営の破壊を達成したチームが勝利、というルールだ。
いずれのルールでも、1試合は15分程度で終わるようになっている。そして試合中に倒した敵の数、与えたダメージ、陣地占領への貢献具合などによって「経験値」と「Hawken Point」の報酬が得られる仕組みで、これによってメカのアップグレードが可能になったり、新たな武器の購入資金が溜まっていくわけだ。
経験値は使用メカ毎に与えられる仕組みだ。メカのレベルが上がると、各武器の性能が自動的にアップグレードされたり、「最適化ポイント」を得られる。このポイントはメカの選択的アップグレードに使用でき、大別して攻撃力、防御力、機動力の各性能を選んで向上させることが可能だ。
各メカの最大レベルは25。初期状態と比べて劇的に強くなるわけではないものの、立ち回りに適したアップグレードを選んでいればキル数を1.5~2倍に延ばす程度の効果は期待できる。初心者向けの初期メカは通常の倍程度のペースでレベルアップしていくので、そこでカスタマイズのコツを掴んでみるといいだろう。
新メカのアンロックについては、ゲーム内ポイントで目指す限りはかなりの時間がかかる。メカ1つのアンロックで6400ポイントあまり必要なところ、1試合で稼げるポイントは160程度が上限。毎試合スコアトップの活躍でこれなので、少なくとも新メカひとつで50~60試合のプレイが必要だ。
1試合、前後の待ち時間も含めて20分とすると、およそ20時間かかる計算。1日2時間プレイしても10日かかる。レンタル制を取る多くのオンラインFPSと違い、いちどアンロックしたメカや装備は永久に使えるので、これはこれで仕方ないか、というバランスではある。
筆者の場合はスナイパー系メカ「シャープシューター」のアンロックを目指してみた。毎日熱心にプレイしておおむね1週間くらいかかったのだが、その間に初期メカがちょうどレベルキャップに到達。やることが無くなりそうなタイミングに合わせて新メカをゲットできたので、もう少し続けてみようというモチベーションにつながった。
コミュニティ機能とゲームモードの充実が次なるステップ?
そこでちょっと心配になってくるのが、さらなるアンロックを目指して遊ぶ間に飽きてしまわないか、ということだ。原因は、現状でコミュニティ機能がほぼ無いに等しいことと、ゲームモードの不足感にある。
コミュニティ機能については、フレンドの名前を直接入力して追加するタイプの基本的なフレンドリスト機能があるのみだ。予め相手の名前を正確に知っていなければならず、検索や、最近遊んだセッションから選ぶことすらできない。
そして、フレンドリストからできることは1対1のチャットと、プレイ中のセッションに参加することだが、後者はよく失敗する。対象サーバーが満員などの理由が多い。これにゲームの仕組みが拍車をかけて、ほとんどフレンドと遊べないのが現状だ。国内のオンラインFPSのように、まずロビーがあって次にゲームがあるという構造ではなく、いきなりランダムなサーバーにオートジョインする仕組みしか無いので、必然的にほぼ孤独なプレイになってしまうのだ。
そうであっても、遊びにある程度の広がりがあればゲームを続ける原動力になりそうだが、現時点で用意されている4つのゲームモードは、少なくとも既存FPSの王道ゲームモードの範疇内に収まっており、それほどユニークな遊びが提供されているとは言いがたい。もう少し、メカゲーならではの設定を生かした面白い遊びを見てみたいところである。
というわけで、本作の次なるステップはコミュニティ機能の充実と、ゲームモードのさらなる拡充にあるべきだと感じている。実際、開発元のAdhesive Gamesではコミュニティ機能の強化、クラン機能のサポートを重要アップデート項目として示唆しており、サービスのスタートダッシュが落ち着く来年早々にも機能拡充が行なわれそうな気配だ。
キャッチーなグラフィックスとユニークなアクションで、1度は試してみたいと思わせる魅力に溢れたゲームであるだけに、一瞬で飽きてしまうのは惜しい。インディーズ発F2Pの成功例を目指す本作にはぜひ、長く遊べる、繰り返し遊べるための骨太なアップデートを期待していきたい。