インドネシア政府、「インドネシアのクリエイティブ産業・今後の展望について」を開催
現職大臣によるトップセールス。インドネシアの市場性とゲーム開発力をアピール
インドネシア共和国 観光クリエイティブエコノミー省は9月21日、東京ゲームショウにおいてプレスカンファレンス「インドネシアのクリエイティブ産業・今後の展望について」を実施した。カンファレンスでは何か大きな発表が行なわれたわけではないものの、東京ゲームショウに外国の現職の大臣が出席するという非常に珍しいケースなので、その模様をお伝えしておきたい。
インドネシア共和国 観光クリエイティブエコノミー大臣のマリ エルカ パンゲストゥ氏 |
メーカーを代表して質問に答えたAgate Studio COO Shieny Aprilia氏 |
インドネシアブース。来年はより大きなブースを設けるという |
今年の東京ゲームショウの特色のひとつが、バラエティ豊かな海外からの出展で、その中でもフレッシュの存在感を示しているのがインドネシアだ。今年インドネシアは、ブースを初出展し、日本のメーカーとの間でBtoBを積極的に展開。初日の9月20日に実施された「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」でも、インドネシアから大手デベロッパーAgate Studioが参加している。
そして9月21日には、インドネシアでゲーム産業を担当する観光クリエイティブエコノミー大臣のマリ エルカ パンゲストゥ氏がインドネシア大使館のスタッフやインドネシアゲームメーカーのトップを従えて東京ゲームショウの視察に訪れ、CESA関係者の先導の元、日本国内の大手メーカーのブースを見て回り、いくつかのメーカーのトップと会談したほか、当初の予定にはなかったプレスカンファレンスも開催するなど、精力的な活動を行なった。
大臣主催のプレスカンファレンスでは、インドネシアのゲーム産業の紹介と、インドネシアでの国際的なゲームショウの開催告知、そして質疑応答などが行なわれた。会場での視察や会談が長引いたためかイベントは当初の予定より30分以上遅れてスタートし、壇上に現われた大臣の周りにはインドネシア大使館スタッフや、今回インドネシアブースに参加している企業4社のトップも同席。いわゆる“トップセールス”そのものの風景が展開された。
インドネシア大使館スタッフによる大臣の紹介では、観光クリエイティブエコノミー大臣の前は商業大臣を務めており、ビジネスにも明るいことをアピール。観光クリエイティブエコノミー大臣の役目は、新しいビジネス、経済活動の創造ということで、特にゲーム産業に着目しているという。
大臣自身によるゲーム産業の紹介では、インドネシアが2億4,000万の人口を有するアジアの大国であり、国内にはすでに2,000万以上の日本のゲームを親しんでいるゲームファンがいて、2,550万人の携帯電話ユーザーが存在していることなどを取り上げ、ゲーム市場として非常に有望であることを強調。また、ゲーム開発力も育っており、クリエイターも才能のある人が多いという。
インドネシアには現在25社のゲームパブリッシャー、30社のゲーム開発会社があり、このうち有望な4社が今回東京ゲームショウに出展しており、これまでに50以上のゲームが生まれているという。それ以外には日本や中国、韓国のタイトルが入ってきているという。数字としては非常にプリミティブだが、ゼロから立ち上げたことがよく伝わってきて、ゲーム産業誕生の息吹のようなものを感じさせてくれた。
大臣は将来的な展望として、インドネシアのゲームメーカーと、日本のゲームメーカーが共に手を取り合い、コラボレーションで共同開発プロジェクトを立ち上げることだとした。また、日本のアニメーションにも強い関心があり、この分野でも協業を目指していきたいという。大臣は人材育成についても言及し、お互いの国が協力して人材育成を行ない、人材の質を高め合っていくことが大事であり、とりわけ企業間の協力関係の構築を積極的に進めていきたいと発言。
そして2013年を目標に、東京ゲームショウのような「Indonesia Game Show」をインドネシア国内で開催することを宣言。開催にあたっては東京ゲームショウの参加企業や関係者の協力を仰ぎ、その際には日本のメディアの参加もお願いしたいと笑顔で要請し、国を挙げてゲーム産業育成に取り組んでいくことを約束した。また、来年の東京ゲームショウではより大きなブースを設けることも告知された。
大臣の発表の後、短い質疑応答も行なわれたのでその内容をまとめておきたい。
Q:大臣は日本のゲーム産業についてどのような感想を持っているか?
パンゲストゥ氏:インドネシアは国内人口も多く大きな市場なので、ゲーム産業も大きな発展性があると思います。私たちは、先ほど日本の政府関係者に会ってゲーム産業の発展的な未来について話をしました。私たちは今望んでいることは、日本政府や企業に対して、研修、教育の分野で協力関係を作りたいということです。そして日本とインドネシアが協力して、独自のコンテンツを生み出すということも重要です。
Q:インドネシアではまだフィーチャーフォンが主流で、今後はスマートフォンが主流となることが予想されるが、どのようなコンテンツを作って行くつもりなのか?
パンゲストゥ氏: 基本的な考え方として、今我々が必要なのは自国向けの自国語によるアプリケーションの開発です。自らの言語、文化に根ざしたインドネシアの人がおもしろいと思えるコンテンツです。インドネシア人はとてもソーシャルであり、ゲームについてもソーシャル性の高いものを望んでいる。実際、インドネシアのソーシャルメディアはとても巨大で、Facebookには4,500万人もの世界トップクラスのユーザーがいます。
Agate Studio COO Shieny Aprilia氏: 大臣の発言を補足すると、ゲームには自国の文化、フレーバーの導入が必要だと思っています。確かに現在はフィーチャーフォンのほうが主流ですが、今後はスマートフォンに変わっていきますし、フィーチャーフォンのユーザーのゲーマー比率は低く、ゲームに親しみを感じてくれる人は限られていました。もし、我々が自国の文化に根ざしたゲームを手がけることができれば、多くの人にゲームを手にとって貰えるはずだと思っています。もちろん我々はゲーム人口を増やすために、フィーチャーフォン向けのゲーム開発も継続していきますし、インドネシアの人々が好むソーシャル性の高いゲーム、簡単にソーシャル性が感じられるタイトルの開発にチャレンジしていきます。
Q:Indonesia Game Showの開催は決定事項なのか、それともまだ願望なのか。東京ゲームショウを回って印象的だったこと、将来的にIndonesia Game Showで取り入れていきたい要素があれば教えて欲しい
インドネシア大使館スタッフ: インドネシアにもゲームショウがありますが、主に国内向けのもので、具体的には来月10月にはIndonesia Game Showがジャカルタで開催されますが、国際的なゲームショウではありません。来年度はそれを国際的なものにしていきたいと考えています。
パンゲストゥ氏: 私は会場を見て回って、ゲームというものの将来性に気づきました。それからゲームの認識を間違っていました。私の中でのゲームというものは、子供が自宅で遊んでいるプレイステーション 3のことだと思っていました。会場でこんなに多くの種類のゲームがあることを改めて知り、これを遊ぶことは社交的な面でも、教育の面でも効果のあることだと感じましたし、産業としての将来性も感じました。
それから、音楽、体育、スポーツとも関わりを持っていることも知りました。親の立場としては、そんなに長時間ゲームをしてはいけないと苦い顔で怒っていましたが(笑)、ゲームというものは遊びだけではなく、教育の道具であり、文化を伝播する要素も持っているということを改めて認識しました。今後はゲームが持つ幅広い意味合いも含めて考えていきたいと考えています。
(2012年 9月 23日)