ロックスター、PS3/Xbox 360「マックス・ペイン3」レポート
スタジアムの襲撃、危険なスラム街ファヴェーラでの戦い
米ロックスター・ゲームスは5月に、プレイステーション 3/Xbox 360用シネマチック・アクション「マックス・ペイン3」のメディア向けプレゼンテーションを開催した。「マックス・ペイン3」は9月6日、価格は7,770円で発売予定。ローカライズは英語音声、日本語字幕で、CEROレーティングはZ(18歳以上のみ)。
北米・ヨーロッパでは5月15日に発売されており、すでに高い評価を集めている本作。今回は英語版の開発中のバージョンから、2つのミッションをデモプレイで見ることができた。作品の雰囲気や、ゲームの感触、感想、といった部分をお伝えしていきたい。
■ 過去に囚われた男が、新天地ブラジルでも事件の渦中へ
相棒、パソスと共に身代金を持ってスタジアムへ…… |
ジャンプ中はバレットタイムがかかり、攻撃が有利に |
弾丸にカメラがフォーカスする「ファイナル・キル カメラ」 |
「マックス・ペイン」シリーズは、主人公マックス・ペインの活躍を描くTPS(サードパーソンシューティング)だ。初代「マックス・ペイン」は2001年、「マックス・ペイン2:マックス・ペインの没落」(国内版未発売)は2003年に発売されている。マックスは悲劇の主人公であり、1作目で愛する妻と娘を失い、血塗れの復讐を果たすものの、彼はその心の傷を癒やすことができなかった。
「マックス・ペイン3」ではマックスはすっかり中年となり、立ち直れないまま、酒と鎮痛剤の禁断症状に苦しむような荒んだ生活を送っている。ニューヨークで暮らしていたマックスだが、警察学校の旧友、ブラジル系アメリカ人のパソスに再会し、彼の誘いで“ブランコ”というブラジルの富豪のボディーガードを務めるようになる。しかし、マックスの目の前でブランコの妻は謎の組織に誘拐されてしまうのだった……。
「マックス・ペイン3」は、ロックスター・ゲームスのスタジオが集結した、ロックスター・スタジオズが開発を行なっている。「レッド・デッド・リデンプション」でも使われたRAGEゲームエンジンを使用。広い空間を表現し、TPSの楽しさ、エキサイティングなゲーム性を表現するために磨き込まれており、グラフィックスと共に、物理表現にもこだわりを持ったものになっているという。
「マックス・ペイン」シリーズの最大の特徴が「バレットタイム」だ。時間の流れがゆっくりになり、主人公はその中で何人もの敵を瞬時に撃ち倒すことができる。昨今のゲームでは当たり前のように取り入れられているシステムだが、その元祖が初代「マックス・ペイン」なのだ。「マックス・ペイン3」ではさらに“美しさ”にもこだわったバレットタイムを見ることができる。
「マックス・ペイン3」は、過去の作品をプレイしていない人でも楽しめるように作られており、「現在、最も進化したシネマティックシューティングゲーム」を目指しているという。それでいながら初代「マックス・ペイン」を思わせるレガシーな雰囲気も取り入れている。体力の回復は昨今のトレンドである自動回復ではなく、あえてアイテム制に拘っており、カバーアクションよりも攻撃の方が状況を打開できる。ロックスター・ゲームスのこだわりの作品となっているのだ。また、ストーリーや演出にも注力しているという。
今回、最初に見ることができたのは「スタジアム」でのミッション。ブランコの妻を誘拐した組織から、ブランコに電話が来る。サッカースタジアムで身代金の受け渡しを行ない、そこで妻を解放するというのだ。マックスとパソスは身代金を持ってスタジアムに向かう。金を渡そうとしたその瞬間、スナイパーに誘拐グループが倒され、マックスも左手に銃撃を受けてしまう。この混乱した状況から、ミッションはスタートする。
マックスは撃たれた腕を抱えながら、選手入場口でこちらを呼ぶパソスの元へ向かう。マックスは腕から血を滴らせながらパソスについていき、医務室へ向かう。ゲームではのべつ幕なしにマックスの“独白”が聞こえる。「この仕事は半分観光気分できたのに……そういえばサンパウロの旅行パンフにはあんな事が書いてあったよな」。「今回は左手を撃たれたが、もし右手を撃たれていれば、これからはウイスキーは左手で飲まなきゃいけなくなっていたかもしれない」。……など、マックスは常に皮肉やジョーク混じりの独白を続けており、こういったマックスの内面描写も本作の魅力だ。
医務室で鎮痛剤(ペインキラー)を投与し体力を取り戻すマックス。傷つきながらも銃を左右の手に持つ“両手持ち”もできてしまうのはいかにもゲーム的な部分ではあるが、本格的な銃撃戦が開始される。敵は誘拐犯だけではなく、マックス達と誘拐犯を襲撃した謎の勢力までいる。彼等は防弾チョッキにスナイパーライフルまでもった連中で、かなりの組織力がありそうだ。対するこちらはマックスとパソスだけだ。それでもマックス達は彼らを追う。誘拐犯と襲撃犯はマックス達が持ってきた身代金のバッグを巡り、激しい銃撃戦を繰り広げている。マックスもそのバッグを追い、銃火の中に飛びこんでいく。
ゲーム的には、マックスは体力ゲージを持ち、体力が減るとペインキラーの数だけ“回復”することができる。バレットタイムは敵を仕留めることで上昇するゲージを消費して使う。また、飛び込みジャンプすることで、周囲の時間の流れをスローにできる「シュートドッジ」も発動できる。シュートドッジはゲージがなくなってからも使えるため、ゲームではかなり飛び込みながらの戦いが多くなる。初代「マックス・ペイン」から受け継がれる、香港の映画監督ジョン・ウーのアクションシーンの雰囲気が取り入れられている。マックスは、横っ飛びに大きくジャンプしたり、前にダイブしながら敵を撃ち倒していくのだ。
この時気づかされるのが「射撃の自由度」である。TPSはキャラクターに隠れてしまったりキャラクターの向きに影響され、敵を狙う照準の移動に制限がかかる場合がある。FPSに比べ「敵が狙いにくい」というところもあるが、「マックス・ペイン3」では照準に合わせキャラクターが自然に向きを変えたり、近くの敵も狙いやすくなっている。また敵に接近すると自動で殴りかかって押し倒すことができ、その状態からトリガーを引くことでとどめを刺せる。この、とどめを刺すアクションはちょっと残酷だがとても迫力がある。
そのほかユニークなシステムとしては、ペインキラーがある場合に限り、体力が尽きる寸前に攻撃してきた敵に復讐ができる「ラストスタンド」という攻撃ができる。この攻撃が成功するとドラマチックな演出と共に、半分の体力ながら復活する事ができる。ただし、この能力は高難易度では使えなくなるとのこと。「マックス・ペイン3」では難易度を上げ、より激しく、エキサイティングな戦いに挑戦できる。クリアしてもより過酷な戦場を、美しく戦うことを目指せるのだ。
また、敵の一団の最後の敵に対しては、カメラが銃弾にフォーカスし、相手を撃ち抜くと言った演出が入る。これは「ファイナル・キル カメラ」と呼ばれるもので、敵を撃退したことを知らせ、次のシーンへプレーヤーを導く合図となる。また、ゲーム中ポーズを押すと、マックスを中心に、周りを自由に見回せるようになる。まるで映画「マトリックス」の1シーンのようだが、この演出も元祖はジョン・ウー監督だという。銃撃戦のまっただ中で、ゲームを止め、細かい部分をチェックしてみる、というのも本作では楽しい要素となるだろう。
派手で“美しい”戦闘シーンが展開する。戦闘と会話シーンもシームレスで、切れ目を感じさせない |
■ 真実はどこに? 無法地帯「ファヴェーラ」をさまよう
頭を剃り、マックスは真実を求めていく |
ファベーラでの戦いはスタジアムとはまた違った雰囲気だ |
圧倒的な質感を持ったファヴェーラの表現。遠景も美しい |
マルチプレイのスクリーンショット。こちらの要素も注目だ |
次のシーンは「マックスが誰を信じて良いかわからなくなっている場面」だという。スタジアムのミッションからストーリーがしばらく進んだところで、場面はブラジルであるが、治安の悪いスラム街「ファヴェーラ」が舞台となる。
ゲーム中盤あたりということだが、まだブランコの妻は取り戻せていない。そんなマックスに対して、雇い主ブランコの信頼は揺らぎ始めていた。状況がどんどん悪化していく中、マックスは自分の中の過去と決別するため頭を剃り、スキンヘッド姿となって単身真実を追い続けることになるという。
ゲームシーンはファヴェーラの入り口にたたずむマックスからスタートする。画面を見た瞬間、「危険な地域だ」というのがはっきりわかる。崩れかけた建物が、折り重なるかのように密集しており、地面は所々むき出しで、ゴミが散乱している。外国人がこんなところに来るなんて有り得ない、貧困層の人々が住んでいる地域だ。実際、マックスもこの地域に踏み込んだ瞬間、暴漢に襲われ金も武器も、携帯電話も奪われてしまった。
マックスはそんな状況で、ファヴェーラを歩いている。道ばたでくつろいでいる人達に片言のポルトガル語で電話を借りようとするも、警戒されるばかりでらちが明かない。そのまま街をさまよい、怪しげなクラブに入る。昼間から怪しげな連中がたむろしているクラブで銃を手に入れることができるものの、マックスはここでギャング達とトラブルを起こしてしまう。
クラブの熱狂的な音楽の中、始まる銃撃戦。薄暗い建物の様々な入り口から派手な服を着たギャング達がなだれ込んでくる。装飾は壊れ、テーブルはひっくり返り、撃たれたギャングは血を吹き出す。ギャングを撃ち倒したマックスは店から出るが、ギャングは仲間を呼んでいた。マックスはファヴェーラから脱出できるのだろうか……。
酒瓶や、テーブル、様々なものがある狭い空間での銃撃戦は、スタジアムとはまた違った雰囲気がある。ギャング達の武器も、ソードオフショットガンや、SMGなど現地のギャングらしいものだ。また、ファヴェーラそのものの描写もとても素晴らしい。見ているだけで危険そうな、しかし間違いなくそこで人々が生活している、「ここの人達はどのような人生を過ごすのだろうか」と思わせられる、リアリティのある風景を作り出している。
BGMの素晴らしさも、取り上げておきたい要素だ。全体的なBGMは「ヘルス」というロサンジェルスのインディーズロックバンドが担当しており、普段のBGMはそれほど強く自己主張するタイプではなく、アクションシーンなどで効果的に挿入され、ゲームを盛り上げる。敵に追われる焦燥感や、多くの敵と戦う高揚感を一層強くしてくれる。そしてファヴェーラのクラブで流れていた曲は、「エヌシーダ」というサンパウロの代表的なアーティストを起用しているという。ファヴェーラのラップや、ジャズなども用意されていると言うことで、音楽は大きなセールスポイントだ。
今回は観る事ができなかったが、「マックス・ペイン3」はシリーズ初めてのマルチプレイを搭載している。開発はシングルプレイに負けないくらいこちらにも注力しており、注目のコンテンツだ。なお、マルチプレイでもバレットタイムは使用できるという。ゲージがあるとき、バレットタイムを発動させたり、シュートドッジを使うと、視界に入った敵をスローモーにすることができる。いかに相手より先にバレットタイムを発動させるか、また反対に視界に入らないか、といった独特な駆け引きが楽しめるとのことだ。シングルプレイ時と違う点は、ゲージがない場合はシュートドッジも使用不可になることだ。
今回、「マックス・ペイン3」を見て、「早くプレイしたい」と、強く感じさせられた。耐久力が自動回復ではないため、物陰に隠れて回復を待つという駆け引きがなく、そしてバレットタイムやシュートドッジを駆使した攻撃で、プレーヤーは常に銃火に身をさらしならがも華麗に敵を撃退していく。そうした攻撃的なスタイルは面白いと感じた。
戦っている場面も、薄暗い通路や観客席、中継室とめまぐるしく変わるスタジアムや、激しいBGMの中、ものをまき散らしながら戦うファヴェーラのクラブと、演出とアクションが組み合わさったステージが楽しかった。キャラクターの会話シーンからアクションへの繋がりもシームレスであり、広大なスタジアムや、広がるファヴェーラ地域と遠景の表現も見事だった。欧米での人気が実感させられる作品だった。本当に、早くプレイしたい。
(C) 2012 Rockstar Games, Inc.
(2012年 6月 4日)