Bethesda Softworks、「Dishonored」プレスプレビューを開催

独自システムを数多く盛り込んだレトロフューチャーアクション


4月13日開催

会場:W Hotel



 米ZeniMaxのゲーム部門Bethesda Softworksは、4月13日、米国サンフランシスコにて、2012年にリリースを予定しているプレイステーション 3、Xbox 360用FPS「Dishonored(ディスオナード)」のプレスプレビューを実施した。今回は、ゲームプレイに関するプレゼンテーションを紹介した本稿を皮切りに、ビジュアルデザインディレクターを務めるViktor Antonov氏によるビジュアルアーツに関する解説、そしてメインのプレゼンを担当したCo-Creative DirectorのRaphael Colantonio氏、Harvey Smith氏のインタビューをお届けしたい。

【「Dishonored」シネマティックトレーラー】




■ コアゲームの総本山Bethesdaが贈る新感覚ステルスアクション「Dishonored」

「Dishonored」タイトルロゴ
1815年頃のヴィクトリア朝をモチーフにしたというグラフィックス

 毎年この時期に、6月のE3に先立ち独自のプライベートショウ「BFG」を開催してきたBethesdaだが、今年は発表できるものが少なく、「Fallout 3」や「Skyrim」を手がけたBethesda Game Studiosの大型タイトルもないということで、タイトル単独のプライベートショウに規模が縮小された形となった。

 Bethesdaとしては今年、新規タイトルとして「Dishonored」と「Prey 2」を予定していたが、「Prey 2」は発売延期の告知が行なわれたばかりで、実質的には「Dishonored」のみとなる見込みだ。もちろん、「Skyrim」のダウンロードコンテンツのリリースは確実視されるとはいえ、ゲームのクオリティとオリジナリティにこだわるBethesdaの新作が少ないのは残念なことだ。

 「Dishonored」は、歴代のBethesdaタイトルと比較しても遜色のないほど個性的なタイトルに仕上がりつつある。19世紀の英国ヴィクトリア時代の世界観をベースに、FPS界に衝撃を与えたValveの出世作「Half-Life 2」でアートディレクターを務めたViktor Antonov氏によるスチームパンクの世界観を加えたレトロフューチャーステルスアクションとなっている。

 ステルスアクションは「HITMAN」(Eidos)、「Thief」(Eidos)、「Assassin's Creed」(Ubisoft)など、ヨーロッパのデベロッパーが得意としてきた印象があるが、ZeniMaxグループの一員である開発元のArkane Studiosはフランスのデベロッパーということで、それらに輪を掛けたコテコテのステルスアクションが期待できそうだ。なお、現在はフランスのリヨンに加え、アメリカのオースチンにも開発拠点を置き、2箇所で開発が進められている。

 ステルスにこだわる一方で、主人公“邪悪の仮面の男”は謎の存在アウトサイダーと手を結び、「超常能力」や「Born Charms」といった特殊能力が扱うことができるため、それらを駆使することでステルスにこだわらない正面突破のゲームプレイも可能となっている。このあたりは「Bioshock」(2K Games)、「Deus Ex」(Eidos)の影響が大きい。「Dishonored」は、ここに取り上げたタイトルの影響をどこかしら受けており、ステルスアクション+スキルアクションの集大成としてのポジションを狙っているように感じられた。

 ちなみに、正面突破のゲームプレイでは、必然的に多くの人間を自らの手で殺めることになる。この結果は、途中のストーリーやエンディングに影響を及ぼすということだ。詳細は不明ながら「Bioshock」的なマルチエンディングなのかもしれない。


【美しいグラフィックス】
ゲームエンジンはUnreal Engineを採用。ヨーロッパ風の雰囲気を再現しながら、オリジナル要素も取り入れ、非常に質感の高い独自の世界観を生み出している




■ 超常能力で難所を次々に突破していく緊張感がたまらないステルスプレイ

Co-DirectorのRaphael Colantonio氏(左)とHarvey Smith氏(右)
ステルスプレイでは、このような形で常に敵の裏をかくスタイルとなる
超常能力のひとつ「ダークビジョン」

 さて、ゲームプレイに関するプレゼンテーションでは、Co-Creative DirectorのRaphael Colantonio氏、Harvey Smith氏の2人が、実機によるデモに解説を加える形で進められた。Golden Catと呼ばれる娼婦館のような怪しげな館を舞台にした同じステージを、ステルスと正面突破という2つの異なるプレイスタイルでプレイするというもので、「Dishonored」の自由度の高いゲーム性を垣間見ることができた。

 ゲームの基本的な展開は、Dunwallと呼ばれる街が中心的な舞台となる。ミッションはそこから少し離れた安全地帯の島で獲得し、ミッションの合間に、お金を消費して武器やアイテム、そして武器のアップグレードなどが行なえる。

 ステルスプレイの基本アクションとなるのは、“超常能力”と呼ばれる特殊スキルだ。超常能力はRuneを集めることでアンロックが可能で、これによって不可能を可能にしていく。今回の紹介されたのは、以下の超常能力だ。

・Blink
プレイスタイルに関わらず最も多用することになりそうなスキル。数十メートル程度の短い距離を瞬間移動するというもので、走っては渡れないようなところや、高くてたどり着けない場所など、大ジャンプや壁登り的な感覚で使うことができる。

・Possession
人間や動物など、様々な生物に憑依するスキル。今回のデモでは、建物の堀に棲む魚に憑依し、そのまま下水道を通って侵入を果たしたり、ターゲットの敵そのものに憑依して、ベランダまで移動し、そこで憑依を解除して、主人公自らが突き落とすという、ユニークなクリアの仕方も紹介された。さらに自らのスキルで呼び出したネズミに憑依して逃げるという方法も紹介されたが、ネズミはこの世界では疫病の原因とされており、見つかり次第駆除されるという。ネズミしか入れないような狭い通路があるような場合に有効と言えそうだ。

・Dark Vision
いわゆるミリタリーモノの暗視スコープで、壁の奥や階段の上など、視界を遮る障害物の先にいる敵の位置、動き、視界の動きが確認できるというもの。

 ミッションのターゲットとなる敵は、侵入した建物内の護衛同士の会話などを、壁際からあるいは鍵穴から盗み聞きすることで確認可能で、彼らの情報をうまく活用することで、最短ルートでのクリアが可能になるようだ。ちなみに、敵の位置や動きは完全にランダムということで、一定のリプレイバリューが確保されているのは嬉しいところだ。


【Golden Cat】
今回のデモの舞台となったGolden Cat。いわゆる娼婦館だが、ここにターゲットとなる政府の要人が出入りしているようだ




■ 超常能力で殺戮の限りを尽くす攻撃的プレイ

左手にスキル、右手に武器。基本的なバトルスタイルは「Skyrim」や「Bioshock」に近い
圧倒的な能力を持つ主人公に対して、強敵として立ちふさがるトールボーイ

 続いては敵を見つけ次第殺すという“復讐の鬼”らしいプレイスタイルも公開された。武器は銃とクロスボウ、剣を確認できたが、ほかにもあるようだ。クロスボウではスナイパーライフル的な使い方も可能で、剣はなぎ払って敵を攻撃する以外に、敵の剣戟を防ぐことができるなどアクションは多彩だ。

 ただ、銃器は常にオートエイムのサポートがあり、常に1人称視点で視界が限られるため、「アサシンクリード」や「Fable」シリーズほど複雑な駆け引きのあるアクションを行なうゲームではない印象だ。今回の攻撃的なプレイで多用されたのは以下のスキルとなる。

・Time Stop
文字通り、時間を止めるスキル。逃走に使ったり、バレットタイム的に使ったり、無限の使い道が考えられる。このスキルのおかげで、うっかり敵に見つかって、大量の敵が襲ってきても、上述のブリンクと併用で逃げ切ることができる。極めて便利なスキルとして今回のデモでも多用されていたが、あまり使い勝手が良いと、ゲームバランスを破壊してしまう恐れがあるため、チューニングが難しいところだ。

・Spring Razor
いわゆるトラップで、敵の巡回ルートに設置することで、接触した敵を細かい刃で切り刻むというもの。

・Windblast
竜巻を起こして目の前の敵をまとめてなぎ倒すスキル。

 先ほどのステルスプレイが「Hitman」や「Thief」だとすると、今回の攻撃的プレイはまさに「Bioshock」だ。スキルと武器による攻撃を組み合わせて、1対多の局面を有利に変えていく。トールボーイのような簡単には倒せない強敵も、時間を止めたり、弱点を狙ったり、ウィンドブラストを使えば撃ってきた弾を跳ね返すこともできるようだ。このあたりのゲームプレイは「Bioshock」の影響が非常に強い。

 攻撃的プレイのデモを見て感じたのは、主人公の圧倒的な能力の高さだ。時を止め、瞬間移動を繰り返して、一方的に攻撃する。極端な例では、時を止めて、銃を撃って、敵に憑依して撃った弾の目の前まで移動して、憑依を解除して、タイムストップを解除して殺すという凝った倒し方もできるという。まさに全知全能のマーベルヒーローのようだ。ただ、2人のCO-Directorの話によれば、どうも敵を殺めることは、この世界にあまり良い結果をもたらさないようで、言外にターゲットのみを狙った“サイレントアサシン”がベストプレイスタイルと言っているように感じられた。

 ちなみに、このゲームでは超常現象のほかに、「Bone Charms」と呼ばれるパッシブスキルも存在する。「Bone Charms」は全部で50個存在し、1回のプレイでは20個までしか取得できない。つまり、すべての「Bone Charms」を体験するには最低でも3回はプレイする必要があるということだ。このリプレイバリューの設定も、このゲームのウリのひとつと言えそうだ。

 残念ながら今回は試遊は行なわれず、リアルタイムデモを見るだけだったが、見た感じでは主人公の能力が非常に高く、実行できる選択肢も多いため、ゲームバランスを取るのが難しいのではないかという印象を受けた。その一方で、ゲームのチューニング次第では大きく化けるタイトルになるという期待感も持てた。ゲームのチューニングに関しては定評のあるBethesdaのタイトルだけに、どの遊び方をしても破綻のないバランシング、繰り返しプレイしたくなるチューニングを期待したいところだ。


【バトルシーン】
今回のデモでは説明がなかったが、武器やスキル以外に各種アイテムも用意されているようで、自分好みの戦い方ができる




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(2012年 4月 27日)

[Reported by 中村聖司]